「首相裁定」に至った診療報酬改定の攻防…主役は医師団体から巨額の献金を受けた人物だった 利権構造の典型

 
医療費は回りまわって献金として政治家に流れ込む。喘息患者が帰宅途中喘息発作が起き息切れ切れに近くにあった病院へ飛び込んだ。するとマイナンバーカードの提出を求められた。しかし保険証は紐付きにしていなく、紙の保険証を出すと「これでは受診できない」としてマイナ保険証にすることを進められ仕方がなくその場で受付の職員の言われるとおりにマイナ保険証を作り、やっと受診出来たという。受診が終わって「やっぱりこれおかしいよな」と思ったと語っている。命に関わる事を後回しにしてマイナ保険証を作らせる。政府の強い要請により医療機関では「紙の保険証は使えない」とする所も出ているという。とんでもない事がまかり通っている。今度は成績の良かった医療機関には補助金が支給されるそう。こぞって参加する医療機関が増えそうだ。犠牲になるのは私達国民。私など喘息持ち、心細くなる状況である。いつからこんな独裁的手法を政府は平気で使うようになったのか?怒りを覚える。
 
 
<医療の値段・第3部・明細書を見よう>番外編

 昨年12月15日午後、首相官邸。厚生労働相の武見敬三と財務相の鈴木俊一が部下を伴い、首相の岸田文雄に入れ替わり面会した。

 2024年度診療報酬の改定率が大臣協議で決着せず、2年前の前回改定と同じように「首相裁定」に持ち込まれたからだった。

 厚労省は23年度の国民医療費48兆円に高齢化などの自然増分8800億円を上乗せし、さらにそこから医療従事者の賃上げや物価高を理由に1%台後半のプラス改定を要求。財務省は「プラス改定をすれば、保険料負担が増加して現役世代の手取りが減る」などとマイナス改定を主張した。重視したのは診療所の高い収益率だった。
 
◆無床診療所の利益剰余金は「平均1億2400万円」
 地方財務局を使った初の全国調査で、22年度の無床診療所の経常利益率は平均8.8%と、病院の平均5.0%や中小企業の平均3.4%を大きく上回ったことが判明。利益剰余金は平均1億2400万円で、財務省は看護師らの3%の賃上げに必要な費用の14年分に当たると推計した。

 これを受け民間委員からなる財政制度審議会(財政審)は「過度な利益が生じている診療所の報酬単価を5.5%程度(診療報酬の1%相当)引き下げてマイナス改定とし、国民負担を軽減すべきだ」と提言。
 日本医師会(日医)会長の松本吉郎は怒りをあらわにし、「調査の対象になった3年間はコロナ特例の上振れ分が含まれている。もうかっているという印象を与える恣意(しい)的なものと言わざるを得ない」と会見で財務省側を強く批判した。

◆報酬を決める財務相や首相に献金・献金・献金
 診療報酬を調べるきっかけになったのは21年度末の前回改定率の決定を巡り、日医の政治団体「日本医師連盟」(日医連)と「国民医療を考える会」が、決定約3カ月前の同年9月27日と10月1日、財務相(当時)の麻生太郎が率いる麻生派に計5000万円もの異例の高額を献金したことだった。

 この間の9月29日には自民党総裁選が行われ、岸田が勝利したが、日医連は総裁選当日、岸田の資金管理団体「新政治経済研究会」に、例年の岸田側への数百万円に上乗せして1000万円を献金していた。

 眼科医の政治団体「日本眼科医連盟」も岸田政権誕生9日後の10月13日、同会に1000万円を献金。確認できた13年以降で、岸田側への初めての献金だった。
 
 改定率決定に最も大きな影響力を持つ政府中枢に、なぜこれほどの医療マネーが流れこむのか。改定率は果たして合理的な根拠に基づいて決まっているのかという疑問が膨らんだ。

◆医療費は回りまわって献金として政治家に流れ込む
 冒頭の首相官邸。岸田は厚労、財務双方のメンバーと続けて会談した後、執務室にこもった。「首相はそのとき、党幹部や厚労族らと電話で話したようだ」と関係者。30分後、武見と鈴木らが今度は一緒に呼ばれ、首相の裁定が伝えられた。

 プラス0.88%(約4300億円)。双方の主張の真ん中を落としどころにしたような政治決着だった。

 政権与党の中枢に提供された多額のカネの原資は医師が支払う政治連盟会費であり、もとは保険料と税などによる医療費だ。国民に負担増を強いる一方で、業界からカネが還流する利権の構造にほかならない。昨年分の政治資金収支報告書は今秋公開される。(文中敬称略、杉谷剛)

 

マイナ保険証“優遇”に戸惑いの声…法的に問題ない?利用率6% 国は普及に“総力”

 
「薬局で『マイナ保険証のみの受付になります。マイナカードはお持ちですか』と言われ、本当に苦しくて薬が欲しかったんでしょうがなくマイナカードを保険証と紐づけて受け付けてもらいました。強制的に紐づけさせられ怒りを覚えています」

戸惑いの声どころか、怒りの声だ
 
 
 
 
国が医療機関に支援金を出して推し進めている『マイナ保険証』の普及策。現在、キャンペーンの真っ最中です。マイナ保険証を優遇するなどの状況が生まれ、病院や薬局の窓口で“戸惑いの声”が上がっています。

武見厚生労働大臣(4月):「5月、6月、7月と3カ月間『マイナ保険証利用促進集中取組月間』、総力を挙げて取り組んでまいります。医療現場においては、窓口での呼びかけが重要です」

マイナ保険証の利用者を増やした病院には最大20万円。クリニックや薬局には最大10万円が支給されます。

東京都中野区にある薬局では、これまで患者に「お薬手帳」と「保険証」の持参を呼び掛けていましたが、先月から「マイナ保険証」の利用を呼びかけることにしました。

遠山薬局薬剤師・遠山伊吹さん:「こちらが我々のマニュアルです。厚労省から配布されまして、それに沿って、患者さんにお声掛けして、持っていない方にはマイナ保険証のメリットを説明して、作り方をご案内する」

これまで数々の不備が指摘されたマイナ保険証。なかなか思うように利用が広がらないのが現実です。

遠山薬局薬剤師・遠山伊吹さん:「いかに浸透させるかというのを、国からではなく、現場の薬局や医療機関にゆだねられている面があるので、なかなか時間と労力がかかる段階だと思う。こちらの声掛けの仕方も工夫が必要で、『次回から持ってきてください』とか『作ってください』と強く言ってしまうと、患者さんも気になってしまうので、柔らかく説明するようにしています」

ただ、別の薬局では、驚くようなケースもありました。
先月、ぜん息の症状がひどくなり、職場近くの薬局に駆け込んだ男性。マイナンバーカードを持っていましたが、保険証としての登録はしていませんでした。

従来の保険証で処方を断られた人:「処方せんと普通の保険証を出したら、処方せんは受け取ってくれたが、保険証は受け取ってくれなくて。薬局のスタッフから『普通の保険証の受付はできなくなりました』『マイナ保険証のみの受付になります。マイナンバーカードはお持ちですか』と。本当に苦しくて、薬が欲しかったんで、しょうがなくマイナンバーカードを、そのときに初めて保険証と紐づけて、受け付けてもらいました。(マイナ保険証を)強制的に使わされた、紐づけさせられたというのが、ちょっと怒りを覚えています」

男性は、転職などもしておらず、保険証は“有効”です。なぜ、このような対応になったのでしょうか。

男性が駆け込んだ薬局:「厚労省の指示に沿った呼びかけを行ったが、それが強制と受け止められたかもしれない。今後、どのような伝え方をすればよいのか、社内で検討している」

混乱はほかにも。
関東のクリニックに通う女性。医師から、突如、告げられたのは“マイナ保険証の優先診察”です。女性は、マイナ保険証の利用登録をしていないため、順番を後回しにされても受け入れるしかないといいます。

従来の保険証で診察が後回しになった人:「『次回からマイナカードじゃないと後回しになります』と言われた。自分が、一番、最初に来ても、そのあとにマイナカードを持っている人がどんどん来たら、自分は、段々、あとになる。ちょっとした嫌がらせをして(マイナ保険証を)作らせようとしているように感じました。行くのが嫌になっちゃいますけど、持病の特性上、その先生にはかかり続けないといけない」

この“マイナ優先診察”を打ち出すクリニックは、ここだけではなく、複数の医療機関で始まっていました。
クリニックA:「受付での本人確認が簡単なマイナ保険証の患者を優先すれば、待合室の混雑が解消される」
クリニックB:「マイナ保険証に切り替えた人が一気に来ると、説明が大変でパンクする。今のうちに切り替えてほしいので優先している」

マイナ保険証の利用登録は、あくまで“任意”です。

こういった現状について、厚労省は。
厚生労働省:「マイナ保険証の利用自体は推進しているが、マイナ保険証の利用者を優先してくださいとも、区別しないでくれとも示したことはない」

◆そもそも、従来の健康保険証もまだ使えるのでしょうか。
12月1日までに発行された保険証は、経過措置が設けられ、最長1年間は有効です。マイナ保険証を持っていない人には『資格確認書』が交付され、保険証として利用可能で、有効期限は最長5年です。つまり、こうしたものがあれば、保険証として使えます。

一方で、厚生労働省によりますと、マイナ保険証の利用率は6%ほどにとどまっています。普及を進めるために、政府は、さまざまな対策を行っています。
●マイナ保険証の利用者を増やした病院に最大20万円、クリニックや薬局に最大10万円の一時金を支給
●利用率が高い医療機関や薬局を表彰

こうした取り組みに対し、マイナンバー制度と法律に詳しい中央大学の宮下紘教授は「マイナ保険証の利用率が高い医療機関に政府が一時金を出すので、マイナ保険証の患者を優先的に取り扱うという現象が起きているのでは。本来あるべき医療の質を高めることより、マイナ保険証の利用率を高めることに焦点が移っている」と指摘します。

保険証の種類によって、患者の扱いを変えるのは法的に問題ないのでしょうか。

宮下教授は「事務手続きの短縮など、合理的な理由があれば、優先順位をつけることに法的な問題はない」としています。

ただ、『薬剤師法第21条』には、正当な理由なく、調剤の求めを拒んではならないとあります。『医師法第19条』には、正当な理由なく、診察治療の求めを拒んではならないと規定されていて、宮下教授は「保険証の種類で、患者が受けられる医療行為に差があってはならない。“マイナ保険証を使ったから優先”というのは、患者に寄り添った方針ではない」としています。

テレビ朝日