メキシコ連邦議会の下院の女性議員比率は、1991年には8.8%でしたが、96年のクオータ制推奨で97年に14.2%、2002年の義務化(30%)で22.6%と2割を超えました。08年には40%のクオータ制を義務化し、12年に3割を超え、14年には政党候補者を男女同数にする「パリテ」を導入。その結果、下院の女性議員比率は48.2%、上院でも49.2%へと躍進したのです。

 

 

6月2日に行われたメキシコ大統領選で当選を果たし、同国初の女性大統領就任を決めたクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長。大統領の座を争ったのは同じく女性の上院議員でした。翻って日本を見れば、政界を含め指導的地位にある女性の割合は極めて低いのが現状です。女性が活躍する国と我が国の違いはどこにあるのでしょうか。健康社会学者の河合さんが、「クオータ制」に注目し日本が「女性活躍後進国」である理由を考察。その上で、呆れるほど女性問題に無関心な日本社会に対する率直な感情を綴っています。

 

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

女性への無関心の“謎”
女性の大統領が、“また”誕生しました。

クラウディア・シェインバウム氏。メキシコ国立自治大学とアメリカのカリフォルニア大学バークレー校で物理学やエネルギーを学んだ才媛です。博士論文のテーマは、メキシコの公共交通機関におけるエネルギー利用についての分析だとか。

また、2018年から23年まで、女性およびユダヤ系として初めてメキシコシティ市長を務めるなど、政治家としての経験を積んできました。市長時代には、市内の交通渋滞緩和のため、200キロメートルにおよぶ自転車専用レーンの設置、公共交通機関への補助金の増額などさまざまな施策や制度を導入し、科学者政治家としての手腕を発揮しました。

そして、今回の大統領選に挑んだわけですが、対立候補も女性。事実上女性同士の一騎討ちで、野党連合のソチル・ガルベス前上院議員か、シェインバウム氏か?と去年から盛り上がっていたのです。

日本でも2021年の自民党総裁選の時には、野田聖子氏と高市早苗氏が立候補し、初めて見る景色に「日本も変わるかも」と期待が高まりました。が、結局、変わらなかった。むしろ後退というか、悪化したようにさえ思えます。

先日の上川陽子外相の「うまずして何が女性か」発言は、申し訳ないけど気持ち悪かった。紅一点の組織にありがちな、発言とも言えます。

「マスコミが作り上げた失言」との意見も識者たちから出ていましたが、「うむ」と、「何が女性か」をセットで使う思考回路を、女性活躍後進国の数少ない女性大臣がお持ちだという事実には、悲しくなりました。だから日本は変わらないのだよ、と。日本はどんどんと世界に置いてけぼりをくらっている。そう思えてなりません。

 

女性が政治分野で活躍する国に共通するのは、「クオータ制」を導入している点です。メキシコも然りです。

 

メキシコ連邦議会の下院の女性議員比率は、1991年には8.8%でしたが、96年のクオータ制推奨で97年に14.2%、2002年の義務化(30%)で22.6%と2割を超えました。08年には40%のクオータ制を義務化し、12年に3割を超え、14年には政党候補者を男女同数にする「パリテ」を導入。その結果、下院の女性議員比率は48.2%、上院でも49.2%へと躍進したのです。

クオータ制の義務化から22年の歳月を経て、やっと2人の女性政治家が大統領の座を目指す戦いを繰り広げるまでに至ったのですから、初の女性大統領のシェインバウム氏への期待も大きいでしょうし、一挙手一投足に注目が集まるに違いありません。

「クオータ制」はもともと政治の舞台から始まりました。政治家が国民の代表であるとするなら、国と同じように一般領域でも男性と女性が同じような割合であるべきだという発想に基づき、女性一般の利益が害されないためという理由で取り入れられたのです。

 

日本では政府主導の下「2020年までに30%」を掲げ「女性活躍」だの「女性を輝かせる」だのというフレーズが多用されましたが、結局、「現実的じゃない」との理由で数値目標は消滅。静かに静かにまるで数値目標などなかったように消え、「首相になったら女性閣僚を半分にする」と宣言しただけで(by 野田氏・自民党総裁選)たたかれる社会になりさがってしまいました。

私はこれまで繰り返し、女性問題、クオータ制問題を取り上げてきましたが、この数年感じるのは、社会の呆れるほどの無関心さです。ありとあらゆる角度から問題を提起してきましたが、もはや「謎」レベルの無関心さです。

 

 

出生率 過去最低1.20
人生の選択自由奪う自民党の政治に責任
田村氏が会見

 
 
 日本共産党の田村智子委員長は5日、国会内で記者会見し、1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率が1・20と過去最低を更新したことについて問われ、「結婚したくてもその選択ができなかったり、子どもを産みたいのにその自由がなかったりする状況をつくった自民党政治に大きな責任がある」と述べました。

 田村氏は、大前提として、一人一人に人生の選択の自由があり、結婚するかしないか、どのような家庭を持つかは個人の尊厳が最も大切にされるべきだと強調。「いま日本が子どもが幸せでない国になってしまい、そのことをおとなも実感しているため安心して子どもを産み育てられない。子どもの人生がどうなるか不安ばかりが増していく中で選択の自由が奪われてしまっている」と指摘しました。

 また、若者の中で、人生の将来設計ができない不安定な非正規雇用が広がり、大学に進学した多くの人が奨学金という名の借金を返し続けていると指摘。「重い教育費負担を心配し続ける状況にあって、どうしていまの問題を打開できるのか」と語りました。

 同日成立した改定子ども・子育て支援法も、こうした問題に根本的にメスを入れるものになっていないと指摘し、「自民党政治そのものの転換がますます求められている」と強調しました。

 

出生率、過去最低1.20 8年連続低下、東京は初の1割れ―人口減少幅は最大・厚労省

 
 
 厚生労働省は5日、2023年の人口動態統計を公表した。1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率は1.20で、22年の1.26を下回り、過去最低を更新した。低下は8年連続。東京は0.99で、全国で初めて1を割り込んだ。
 
 年間出生数は8年連続減の72万7277人で、同様に過去最少を更新。出生数から死亡数を引いた人口自然減は過去最大の84万8659人で、少子化と人口減少に歯止めがかからない現状が浮き彫りになった。

 厚労省の担当者は「経済的な不安定さ、仕事と子育ての両立の難しさなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っている」と背景を分析。コロナ禍の影響も少なからずあったとして、「少子化の進行は危機的な状況にある」との認識を示した。

 都道府県別の出生率は沖縄の1.60が最も高く、宮崎と長崎が1.49で続いた。最低は東京で、次いで北海道1.06、宮城1.07だった。

 年間出生数は前年から4万3482人減った。第2次ベビーブーム(1971~74年)以降、減少傾向が続いており、15年に一時増加したが、翌16年には100万人を割り込んだ。その後は19年に90万人、22年に80万人を下回り、70万人割れが目前に迫った。

 晩婚・晩産化の傾向は変わらず、平均初婚年齢は男性が31.1歳、女性が29.7歳でいずれも前年と同じだった。第1子出生時の母親の平均年齢は31.0歳と2年ぶりに上昇した。

 婚姻数は47万4717組で、前年比3万213組減少。一方、離婚数は18万3808組で、同4709組増加した。

 死亡数は前年比6886人増加し、157万5936人だった。新型コロナに感染して死亡したと報告された人は3万8080人で、死亡総数に占める割合は2.4%だった。