きょうの潮流
 

 家電や家具、寝具にベビーカー。買い物に行った総合スーパーで、4万円均一のセールが始まっていました。買い控えが広がるなか、一部商品を割り引いて消費を喚起する狙いです

 

▼今月から実施される「定額減税」。物価高の影響をうけ、1人4万円を減税するというものですが、街の声は厳しい。生活に欠かせないあらゆるものの値段が上がり続け、これから電気やガス代も。これではまったく足らないと

 

▼テレビの世論調査では6割が「評価しない」と回答。専門家も「物価高の逆風を打ち消すほどの影響力はない」といいます。不公平さも指摘され、物価高騰の対策をいうならば、消費税減税こそ必要ではないかと批判されています

 

▼しかも減税を実感させるために、政府が無理やり給与明細に明記するよう義務付けたことで事務作業は煩雑化。制度の複雑さに加え企業や自治体に大きな負担を強いることとなっています。1回限りの減税なのに

 

▼対策にもならず、効果も期待できない。その場しのぎで、無駄なコストをかけ、あちこちで悲鳴があがる愚策をよくも。いくら政権浮揚をもくろんでの減税といっても、あまりに国民を愚弄(ぐろう)するやり方にこの政権の救いようのなさが表れています

 

▼内閣府の国民生活に関する世論調査をみると、現在の生活に「不満」と答えた人が初めて5割をこえ、1年前に比べてくらしが悪くなったという人は過去最多に。一方で私腹を肥やす自民党。いま最も家計の助けになるのは政権交代ではなかろうか。

 

 

主張
定額減税の問題点
選挙目当てで複雑・不公平に

 

 政府が今月から実施する定額減税で自治体や企業が膨大な負担に悲鳴をあげています。給与明細への減税額記載の義務付けだけではなく、減税と給付金が一体になっているうえ、1人4万円の減税の内訳が所得税と住民税に分かれているなど仕組みが非常に複雑なためです。選挙目当て・政権浮揚のために始めた制度の矛盾が噴出しています。

 増税イメージを払拭したい岸田文雄首相が持ち出したのが1回限りの定額減税でした。しかし低所得で所得税非課税の人には恩恵がないため、「物価対策」として低所得者には1世帯10万円などの給付をし、所得税・住民税の納税額が4万円より少ない人には減税しきれない分を1万円単位で「調整給付」することになり減税と給付が混じることになりました。

 そのため、いま地方自治体は、税務署から住民の2023年の所得税納税額や扶養家族の情報をもらい、調整給付の対象者を推定し、給付額を計算、対象者に確認書を送るなどの事務に追われています。計算ミスなどを招く恐れがあります。国民に一律4万円を給付すれば、はるかにシンプルで、今年初めには実施できていました。

■6月実施で負担増
 今回、減税対象となる所得税額は本来、24年末に確定します。しかし、首相の念頭にあったとされる6月の解散・総選挙に合わせるため、23年の所得をもとに減税・調整給付額を推定して実施されます。また、現行税制では所得税と住民税で税額確定の時期が異なるなどのため、仕組みがより複雑化し、さらなる自治体負担や不公平が生じることになりました。

 例えば、23年に納税していた人が今年、失業や退職などで課税されなくなると、低所得者向け給付も所得税の定額減税も受けられません。そこで政府は、そうした場合、今年末の所得確定を待って追加的に減税分を給付するとしました。それらの人は来年春に確定申告しないと給付を受け取れません。自治体にも新たな事務負担が生じます。

 定額減税と給付が二重に受けられるなども起こります。その場合は返さなくていいとされ、所得1千万円超の人で配偶者の所得が48万円以下の人は住民税減税が2回受けられることも判明しています。

■論戦と運動成果も
 企業負担も膨大です。ある零細業者は給与システム改修などで数十万円かかったといい、賃上げを阻害しかねません。年末調整で一括して減税すれば負担が減りますが、政府は6月からやらないと「労働基準法違反になる」と脅しをかけて6月実施を迫っています。

 自営業やフリーランスでは当初、配偶者や親族の従業員が定額減税の対象から外れていました。日本共産党の田村貴昭衆院議員、小池晃参院議員の追及や全商連などの運動で、政府は来春の確定申告後に調整給付をすると答弁。国会質問と運動の大きな成果です。

 今回、一番低所得の世帯への給付が、それより収入の多い世帯に比べて少ない事例も起きます。物価高騰対策というなら消費税減税と低所得者への手厚い支援こそ必要です。一体この定額減税は何のためなのか。政権の姿勢が問われます。


【政界地獄耳】「不正したが安全」開き直る姿は車業界も政治家と同じか

 

★戦後日本経済の再生の象徴であり、ものづくり大国の名前をほしいままにしてきた自動車産業の信頼が地に落ちた。量産に必要な認証「型式指定」に関する国交省の指示を受けた調査で、トヨタ自動車は7車種の認証試験で不適切な行為が見つかったと発表した。トヨタの完全子会社のダイハツ工業で23年12月、全64車種174件の不正行為が発覚し、全ての出荷を一時停止した。豊田自動織機でも今年1月、自動車用エンジンの認証手続きで不正が見つかっている。ホンダ、スズキ、マツダでも同様の認証不正が判明した。

★過去には16年に三菱自動車で燃費を良く見せる不正が判明。17年には日産自動車で出荷前の完成検査で不正が発覚し、スバルの完成検査でも不正があった。つまり世界に冠たる日本自家用車業界はすべて不正をしていた。3日、トヨタ自動車会長・豊田章男は「今回の事案はトヨタ自動車とトヨタ自動車東日本の2社にまたがる問題でございます。日野、ダイハツ、豊田自動織機に続き、グループ内で問題が発生しておりますことに対し、トヨタグループの責任者として、お客様、車ファン、全てのステークホルダーの皆様に心よりおわび申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」と謝罪したが「法規に定められた基準はクリアしておりますので、お客様に安全にお使い頂けることを確認しております。しかしながら、こうした行為は認証制度の根底を揺るがすものであり、自動車メーカーとして絶対にやってはいけないことだと考えています」とした。

★「不正はしたが安全だ」「基準はクリアしている」と開き直る姿は「責任はあるが辞めない」という一連の政治家の答弁とそっくりだ。結局それで切り抜けてきた政治手法が日本社会にまかり通り、産業界でもそんな詭弁(きべん)が横行するのだろう。では彼らは国土交通省の検査基準や方法に問題があると、訴えたり政治に働きかけていたのだろうか。そうでなければ命を預かる自動車産業の幹部は、ポストにしがみついているだけの政治家と変わらない。政治も経済も三流だ。(K)※敬称略

 

 

【速報】今月開始の定額減税「評価しない」が60% 6月JNN世論調査

 

政府が物価高対策として今月から始める1人あたり4万円の「定額減税」について、最新のJNNの世論調査で60%の人が「評価しない」と答えました。

「大いに評価する」は6%、「ある程度評価する」は31%、「あまり評価しない」は37%、「全く評価しない」は23%でした。

【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。

6月1日(土)、2日(日)に全国18歳以上の男女2231人〔固定890人、携帯1341人〕に調査を行い、そのうち45.2%にあたる1008人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話503人、携帯505人でした。

インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。