自民“裏金”議員が今月開催パーティー案内に「ご入金のみ」 有識者は問題視、規正法改正案が衆院通過へ 「抜け穴」は?【news23】

 
自民党は三つの過ちを犯してると思う。一つは「裏金自体」です。裏金という非課税という枠を使う。それから、「説明」。秘書のせいにしたり、会計責任者のせいにしたり。または、嘘をついたり。三つ目、「再発防止がいかにも抜け穴だらけ」ということで、“3連発の過ち”

 

 

 
「政治とカネ」の問題を受けて、自民党は政治資金規正法改正案の修正を重ねてきましたが、野党からは「抜け穴だらけ」と批判が噴出しています。自民党は先週合意した維新の反発を受けて、政策活動費に関して、さらなる修正を検討しています。一方、派閥の“裏金”で厳重注意を受けた議員にパーティー券をめぐる新たな問題が浮上。「違法性」を指摘する声も出ています。

【写真を見る】自民“裏金”議員が今月開催パーティー案内に「ご入金のみ」 有識者は問題視、規正法改正案が衆院通過へ 「抜け穴」は?【news23】

■“裏金”議員が6月開催パーティー案内に「ご入金のみ」と記載

5年間で不記載68万円。裏金問題で幹事長から厳重注意を受けた自民党の田畑裕明衆議院議員。6月に都内で政治資金パーティを開く予定ですが、その会費の扱いをめぐって政治資金規正法に違反する可能性が指摘されています。

パーティの案内状には出席、欠席のほか「ご入金のみ」と記載されています。

神戸学院大学 上脇博之 教授
「“お金だけ払ってください”と。これ『寄付』になるんですね。今の法律は『寄付』と『政治資金パーティー』を法的に分けているんです」

入金のみなら「寄付」。これを「パーティ収入」にすると政治資金規正法に抵触する恐れがあるといいます。案内状に“入金のみだと寄付にあたる”との但し書きはありません。

神戸学院大学 上脇博之 教授
「全部パーティ収入に入れ込んでしまうと虚偽記入になるし、寄付について書かなかったという不記載になってますね。政治資金規正法違反です」

JNNは1週間前、田畑議員の事務所にパーティに関する質問状を送りましたが、まだ回答は来ていません。

■政治資金規正法 自民党案に「抜け穴」批判

一方、国会では政治資金規正法改正案をめぐり、与野党の応酬が続きました。

政党が議員に支出する政策活動費の公開基準を自民党が「10年後」としていることについて、立憲民主党が批判しました。

立憲民主党 山岸一生 衆院議員
「この10年間という基準をつくるに際して、こういった政治と金に関わる犯罪の公訴時効が10年であるということは、何らかの考慮の理由になったのか、なっていないのか」
 
自民党 鈴木馨祐 衆院議員
「そういったことが考慮事項であったとは、承知をしておりません」

自民党の法案への批判は、合意したはずの日本維新の会からも上がりました。

日本維新の会 音喜多駿 政調会長
「例外があって抜け道がある状態の自民党案には賛成することが難しい」

自民党と維新は10年後に政策活動費の使途を公開する方針で一致していましたが、自民党が「数千万円単位の支出が多い」として、公開対象を「50万円超の支出」としたことに維新が「抜け穴」「抜け道」だと強く反発。「全ての領収書を公開すべきだ」と主張しています。

このため、自民党は公開対象を限定する案を撤回し、全面公開する方向で調整を進めていることがわかりました。

与野党は4日、衆院の特別委員会で岸田総理への質疑を行った上で、改正案を採決する日程で一致していて、4日中に衆院を通過する見通しとなっています。

■自民党修正案は「抜け穴」だらけ?

藤森祥平キャスター:
公明党や日本維新の会の案に譲歩する形で示された自民党の修正案。しかし、野党側からは「抜け穴や抜け道だらけだ」という批判の声が上がっています。

自民党の修正案を見てみると...

▼政治資金パーティーの購入者の公開基準:20万円超⇒5万円超に引き下げ
▼政策活動費:年間上限額を定め領収書などを10年後に公開

小川彩佳キャスター:
10年後の公開はかなり踏み込んだ、というふうにはしていますが、実効性はどうなんでしょうか。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
そもそも経過を辿ると、公明党との協議の中で、自民党では麻生副総裁や茂木幹事長は「公明党に譲歩すべきじゃない」とかなり強く主張しました。しかし、三役の1人の森山裕総務会長が「迷惑かけた方(自民党)が譲るのが当然だ」という、ある意味では至極常識的なことを岸田総理に伝え、岸田総理が最終的に折れる、という決断をしたわけです。

しかし、よくよく見ると抜け穴だらけで、例えばパーティー券購入者の公開基準は「1回につき」なんです。そうすると、20万円超を5万円超にしましたが、「パーティーを4回開けば今までと同じようなことができる」という仕組みですから、明らかに抜け道です。
 
また、政策活動費について言うと、政治資金規正法違反などの犯罪では時効は5年が多いです。そうすると“公開した後、犯罪がわかったとしても立件できない”ということですし、今の自民党の案では、これに場所や名前などに黒塗りが多く出てくる、ということも考えられます。そうすると、ほとんど実効性はない、ということになってしまいます。

小川キャスター:
まだ、この後に及んで「10年後に公開される領収書などが黒塗りの可能性がある」ということですか

星浩さん:
全くそこは否定していないので、このままいくと「10年後見たらかなりの部分が黒塗りでした」ということになってしまいますね。

■「修正案評価しない」と回答7割 世論調査

小川キャスター:
すっきりしない自民党修正案ですが、JNNが行った世論調査では…

【自民党の修正案を評価するか】
「大いに評価する」「ある程度評価する」:28%
「全く評価しない」「あまり評価しない」:70%

このように7割の人が「評価しない」と回答。世間の目もかなり厳しいものになっています。

データサイエンティスト 宮田裕章さん:
今回の一連の対応も、まず甘めの案を出しておいて、すこし思わしくないので調整をしている、ということですが、これで「良くなったかどうか」というと良くなった保証がないわけです。

今の話だと、やり方を変えればいいだけになってしまっている。国民の方を見ていない、自分たちが使いやすいように、という論理が先行してしまっているのかな、ということですね。

そもそも一連の裏金問題は何かというと、使途の見えないお金が跋扈することにより、不誠実な利害関係者が政治を歪めている可能性があるわけです。それをどう変えなければいけないか、ということが根本にある。

派閥の解散や、今回の規制法を出してきましたが、この一連の対応が、そもそも問題の根本に対して十分アプローチできてない可能性がまだあるのではないかなと、いうことですね。
 
■自民党の“三つの過ち”

藤森キャスター:
東京地検特捜部が、裏金事件の強制捜査に入ってからもう半年ほど経ち、これだけやっていて、例えば自民党内で「さすがに国民目線が不在だ」と声を上げたり、大きな流れを作るなど、そういうのもないのでしょうか。

星浩さん:
私は自民党は三つの過ちを犯してると思う。一つは「裏金自体」です。裏金という非課税という枠を使う。それから、「説明」。秘書のせいにしたり、会計責任者のせいにしたり。または、嘘をついたり。三つ目、「再発防止がいかにも抜け穴だらけ」ということで、“3連発の過ち”です。

ただ岸田総理からすると「とにかくこれでこの半年間の騒ぎの区切りをつけたい」ということで採決を急ぎ、来週はイタリアサミットなど外遊に向かう、というスケジュールになってくるわけです。

小川キャスター:
この先ですが、岸田さんとしては“ひと山越えた”という事なのでしょうか。

星浩さん:
参議院に審議が移り、イタリアサミットに岸田総理が出かけている前後に可決して成立する、というスケジュールになっています。国会は23日までなので、この国会では非常に中身は不十分な内容ですが、成立する、と。ひと区切り、ということですが、最終的には「これでは不十分だ」ということで野党は不信任案を提出し、国会の会期末直前に山場を迎えますが、岸田総理がそこで「区切りがついたので、ここで解散総選挙で国民に判断してもらおう」とこの一連の問題について、そういう判断をするかしないか。その辺りが、来週にかけての国会での最後の山場になってくると思いますね。

小川キャスター:
どのくらいその可能性があるのでしょうか。

星浩さん:
私はまだ2割ぐらいはあるかな、と思っています。