「袴田事件」の再審で再び死刑を求刑。拘禁状態で精神障害を発症した被告に極刑を求める冷酷で残忍な検察への違和感

 
50年近い袴田さんの人生を返せ!余りにも残酷、そして検察側は今もなお「死刑」求刑する。冤罪を犯した反省は皆無💢
 
 
「袴田事件」やり直し裁判結審に思う、拘禁状態の患者への死刑求刑と制度の残忍性
1966年6月に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人を殺害したとして、強盗殺人などの罪で死刑が確定した袴田巌さんは現在、拘禁反応が慢性化しているという。

東京新聞によると、弁護側が裁判所に提出した書類で、袴田さんは歯痛や腰痛、発熱などの不調を外部からの攻撃と捉えがちだとし、特に男性への警戒心が強く、「男は殺し合いを始める」などと発言する場面もあるという。

静岡地裁でのやり直しの裁判(再審)は今月結審し、判決期日は9月26日の予定。
 
証拠が捏造されたと認定し、無実の公算が大きいが、映像で見る袴田さんの認知は乏しい様子で、その症状を見る限り、裁判を闘うよりも、日常のケアが必須で疾患者を治癒する当たり前の日々が優先してほしいとも思う。

死刑囚への再審公判は戦後5件目で、これまですべて無罪判決が出ている。

疾患者の安心した日常の中で、支援者はいち早く「無実」を伝えてあげたいだろう。

やはり、あまりにも長すぎた。

論告で検察側は死刑求刑し、「多くの証拠が(袴田さんが)犯人だと指し示している。4人の将来が一瞬にして奪われ、犯行は冷酷、残忍だ」との理由を述べた。

ケアの現場にいる者としては、拘禁反応が出ている疾患者に死刑を求刑する社会の残忍性を想う。

日常生活が支援なしでは営めず、周囲の状況への認知も希薄になっていく中での死刑求刑への違和感。

医学書院の医療情報サービスによると、拘禁反応は拘禁という特殊な状況を契機として発症するさまざまな精神障害の総称であり、診断体系では心因反応に分類される。

明らかに環境が作った疾患である。

同サービスは症状として「多岐にわたっており、軽度の不安・抑うつ・不眠などの反応から昏迷・幻覚妄想状態などの精神病性の症状やけいれん・失立失歩などの身体症状まで、ありとあらゆる状態がありうる」とし、拘禁反応が生じる根底には「将来への強い不安・自由の束縛による圧迫・乏しい外的刺激・悔恨などの心因が関与していると考えられている」とする。

特に将来への不安が影響するため刑が確定した刑務所・少年院よりも未決で収容される拘置所・少年鑑別所で発生頻度が高いという。
 
1980年の死刑確定以降に現れた袴田氏の拘禁反応の症状
袴田さんの疾患に焦点を当てると、捜査の強引さは当然であるが、死刑制度の存在そのものが人間への尊厳を崩壊させている実態が浮かび上がってくる。
 
釈放時の主治医を務めた精神科医の話では「袴田さんの特徴は、拘禁反応の慢性化。拘禁状態では、誰もが程度の差こそあれ発症するが、多くは数日で消える」(東京新聞)と語るが、私はまだそれが信じられない。

再審で無罪が出た時に、どんなに喜ぶのかを見てみたいと思うのはケアの視点から強く願う。

袴田さんの症状は1980年の死刑確定以降で、「激しい興奮を示す」「食事や排せつ物を用いたいたずら」「面会の拒否」「『悪いやつが電波を出している』などの妄言」があったという。
 
アムネスティ・インターナショナルは「特に日本の死刑囚については、独居房で過ごすうちに、孤独の中、死の恐怖に日々おびえ、精神がさいなまれていく。毎朝次は自分が処刑される番だという恐怖にさらされることになる」と報告し、制度そのものに疑問を呈し続けている。

2014年、国連自由権規約委員会は日本政府報告審査で「死刑執行に直面する人が『心神喪失状態』にあるか否かに関する精神状態の検査が独立していないこと」に留意する」とし、「死刑確定者に対して非常に例外的な事情がある場合であり、かつ、厳格に制限された期間を除き、昼夜独居処遇を科さないことにより、死刑確定者の収容体制が残虐、非人道的あるいは品位を傷つける取扱いまたは刑罰とならないように確保すること」「死刑確定者の精神状態の健康に関する独立した審査の制度を確立すること」を勧告した。

先進国で米国とともに死刑制度を残す日本は国際社会では少数派である。

加えて、刑務所の中が密室化され、捜査機関による取り調べの可視化も実現せず、法務省が威厳として守ろうとする密室性は安全を保障する仕組みとはかけ離れている実態もある。

袴田さんが症状から回復することをお祈りしたい。