「1月1日のまま・・・」隆起したマンホール、使えない水道 能登半島地震からまもなく5か月 進まない復興の現実【報道特集】

 

名古屋大学 減災連携研究センター 平山修久准教授
「今回は(水道管と浄水場の)両方が大きな被害を受けている初めての直下型地震。やはりどうしても(浄水場など)上流部分を直してからでないと、管路(水道管)の被害の復旧にかかれない。時間がかかってしまう」

全国で耐震性のある主な水道管の割合は4割に留まっていて、平山氏はさらに細い水道管にまで対象を広げ耐震化を進めるべきだという。

名古屋大学 平山 准教授
「耐震化率が低いです。もっとしっかりと進めないといけない。奥能登だけではなく全国どこでもあり得る」

 


 
能登半島地震からまもなく5か月。現地を取材して見えてきたのは、いまだに続く断水、あまりにも復興が進んでいない現状でした。そして被災者は、取り残される不安をかかえています。
 
■倒れたビルは当時のまま 復興進まぬ 能登半島地震

能登半島地震からまもなく5か月。甚大な被害を受けた石川県・輪島市に入った。

村瀬健介キャスター
「この場所が地震直後に大規模な火災が起きた輪島朝市の現場です。道を塞いでいる倒壊した建物もそのままですし、焼け落ちた建物もほぼ手付かずの状態で残されています」
「普通だったら、半年近く経っていますので、復興のための工事の音が鳴り響いてるのかと思ったら、ほとんど音がしない。復興の音がですね、感じられないっていうのが、この静けさからも分かると思うんです」

朝市で働いていた女性
「輪島市っていうのは、何もできないのかなと思うぐらいそのまんま、1月1日のまんまですよ、何も進まない」

地震直後、輪島市内では7階建てのビルも倒れた。その場所に向かうと…

村瀬キャスター
「倒れたビルが当時と変わらないまま残されています。能登半島地震の後に、台湾でも地震がありまして、その時の台湾での撤去作業の早さを私たちは目の当たりにしました」
「5か月経っても倒壊した建物が残されている、この違いは何だろうというふうに思ってしまいます」

■「電気が来なければ…」輪島市 孤立集落は今

輪島市では一時、2800人以上が孤立した。当時、孤立していた集落は…。

竹中栄信さんは今、市街地の仮設住宅に暮らしている。田植えのために、一時的に戻って来ていたが…

住民・竹中栄信さん(79)
「5か月も過ぎようとしているのに、まだ電気が来ていない」
「田植えは終わっても、もみすり機とかは電気が来なければ、お米にすることができない」

竹中さんの集落では電気・水道がいまだに止まっていて、多くの住民が集落を出たという。

ーーこの地区、集落がまた元通りに戻るということについてはどう思いますか?
 
竹中さん
「厳しいな。『生活はできんから戻らん』って」

ーーそういう声があった?

竹中さん
「もう出てったもん、そう言って。『あと頼むね、すみませんねって』出ていきましたよ。悲しい」
「ここは不便であってもやっぱり、ここしか。私、やがて80歳ですけど(集落を)出たことないですからね」

■なぜ「断水」は解消されない?

輪島市の隣、珠洲市も町の風景は、ほとんど変わっていない。

山本恵里伽キャスター
「瓦も落ちたままになっています。この建物も大きく、倒れています。道路は通れるようになっていますけど、瓦礫は積み上がったままの状態になっています」
「マンホールが私の身長くらい隆起しています。これも手つかずの状況ですね」

宝立町・鵜飼地区は揺れに加え、津波の被害にも見舞われた。傾いた電柱。亀裂の入った道路。多くのライフラインが被害を受けたが、特に深刻な影響が「水道」に出ている。

珠洲市では石川県内で最も多い、約1290戸で今も断水が続いている。(5月21日・石川県発表)

自治体による水道の復旧工事が進められているが、なぜ断水は解消されないのか。

自宅の隣にある車庫で暮らしている橋元泰博さん(83)と妻の公子さん(79)。橋元さんの自宅は柱や壁、天井が大きく壊れてしまい住める状態ではなくなってしまった。

橋元さんの宅地に繋がる水道管は、自治体が工事をしたにもかかわらず水道水が使えないままだという。橋元さんに水道の元栓をひねってもらうと、水が溢れ出てきた。

橋元さん
「漏れたでしょ。ここに水道管を繋いでいるが、外れてしまっている。だからここから台所へ水が行かないんです。ここで漏れてしまって」

自治体などが行う復旧工事は、配水管から宅地内にある止水栓まで。この工事は公費でまかなわれ、通水すれば、断水は解消したとみなされる。

しかし、橋元さんのように水道メーターよりも宅地側で漏水が起きている「宅地内漏水」は、所有者自ら工事業者に依頼する必要があり、費用は自己負担だ。
 
橋元さん
「(珠洲市の)業者に工事を頼むと『お宅は150番目とか200番目だから、しばらく待ってください』と」

珠洲市で宅地内漏水の修繕待ちは、約1700件にのぼるという。(5月8日・珠洲市長によると)

水道が使えないため、給水所に通うのが橋元さんの日課になった。車で往復20分かけ、80リットルの水を自宅に運ぶ。

橋元さん
「一番水が必要なのは洗濯ですね。風呂は近くの小学校の横に自衛隊が毎日風呂を沸かして入れてくれる」

ーー毎日辛くないですか?
橋元さん「慣れっこになったからね」

1日3往復もしなければならない日もある。

橋元さん「重いですよ、こんなのをトラックに・・・」
ーー重い…これを持ち歩くわけですか?

震災直後から隙間風や暑さをしのげない、車庫での暮らしを強いられている。

家電や布団など使えるものは自宅から運び出したが、生活再建の見通しは立たないという。

橋元さん
「復興・復旧なんて、夢の夢。何にも手がついてない。まず心の復興。大きい支援が欲しい。大きい支援があれば、そんな余裕が出てくる。でも今はそんな余裕なんてない」 

橋元さん
「だんだんね、災害にあった地方のことが薄れてくる。だから見放されてる」

■「奥能登だけではなく全国どこでもあり得る」求められる水道管の耐震化

なぜ今回の地震で漏水が頻発しているのか。

名古屋大の平山修久准教授は15秒間に大きな揺れが3回発生したことで、水道管、そして浄水場にも大きな被害が出たことが原因だという。

名古屋大学 減災連携研究センター 平山修久准教授
「今回は(水道管と浄水場の)両方が大きな被害を受けている初めての直下型地震。やはりどうしても(浄水場など)上流部分を直してからでないと、管路(水道管)の被害の復旧にかかれない。時間がかかってしまう」

全国で耐震性のある主な水道管の割合は4割に留まっていて、平山氏はさらに細い水道管にまで対象を広げ耐震化を進めるべきだという。

名古屋大学 平山 准教授
「耐震化率が低いです。もっとしっかりと進めないといけない。奥能登だけではなく全国どこでもあり得る」
 
 
避難所の仮設トイレ8割超が和式便器 設置も遅く 能登半島地震
 
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 元日に発生した能登半島地震では、陸路の寸断や断水などの影響で、多くの被災者がトイレの利用が困難となった。NPO法人「日本トイレ研究所」(東京都)は22日、被災地の避難所21カ所を調べたところ、設置された仮設トイレの8割超が和式便器だったと発表した。仮設トイレの設置日を把握している避難所のうち、設置に8日以上かかった避難所が4割に上った。足腰の弱い高齢者や子どもは和式を使えないこともあり、「奥能登地域の高齢化率は50%近くあり、支援のニーズとのミスマッチが起きていた」と指摘する。
 調査は2月10、11日と同24、25日に、石川県輪島市内12カ所、七尾市内9カ所の避難所の運営担当者らにヒアリングし、災害用トイレの設置や利用状況を調べた。
 発災当初は、調査した避難所21カ所の90%で便座に袋を取り付ける携帯トイレを使用していたが、発災から1カ月以上たった調査時点でも38%が携帯トイレを使用していた。
 避難所に設置された仮設トイレは85%が和式便器で、調査した島村允也研究員は「避難所の中には和式便器を使用して高齢者が転倒してけがをした事例もあった」という。
 これまで仮設トイレは和式が主流だったが、洋式便器の仮設トイレも普及が進んでおり、洋式での支援がさらに求められると指摘。建設現場では国土交通省の基準を満たし、男女が使用できる洋式仮設トイレ「快適トイレ」の普及が進んでおり、災害時にも活用すべきだとしている。一方、調査時点で避難所7カ所に設置されていたトイレトレーラーやトイレカーは全て洋式便器だった。
 仮設トイレの設置日がわかる避難所10カ所のうち、設置が最も早かったのは1月3日で1カ所、同4~7日が5カ所と、6割が1週間以内に設置できた。しかし、設置に8~14日かかった避難所が3カ所、15日以上を要したところも1カ所あった。道路の寸断などにより支援が行き届くまで地域によって時間差があり、こうした状況を考慮した上での準備が必要だという。
 加藤篤代表理事は「過去の震災でもトイレ不足に陥る『トイレパニック』になったが、能登半島地震でも全く変わらない状況で被災者はつらい状況を強いられた。災害が起きてから効率的に集めるのは無理で、平時から現場に備えが必要」と訴えた。【宮城裕也】