作物で採算とれる水準を

岩手 農業基本法改定案 地方公聴会

紙議員が参加

 
坂本大臣は23日になって、同委員会で「私の認識に誤りがあった」として16日の発言を撤回、謝罪したが、認識をただすためにも一度、農家を対象に「車座集会」を開いて意見を聞いた方がいい。
 
 
 参院農林水産委員会は21日、食料・農業・農村基本法改定案について盛岡市で地方公聴会を開きました。農業者や学者の公述人4氏が意見陳述し、コスト増加分を価格に転嫁できない実態や後継者問題、中山間地や耕作放棄地対策などを訴えました。日本共産党の紙智子議員が参加しました。

 意見陳述で岩手大学の横山英信教授は、食料自給率が食料安全保障に関するさまざまな指標と並列で扱われているため自給率の目標がぼやけるとし、「現行基本法からの後退だ」と指摘。日本の人口減によって農産物の需要も減るため輸出に活路を見いだすよう促していることに対し、「低自給率の状況で農政の基本に置くべき性格の問題ではない」と批判しました。

 紙氏は水田活用交付金の見直しや水田の畑地化が日本の実情に合うか尋ねました。横山氏は、市場価格や畑作物への直接支払い交付金だけでは採算が取れず、水田活用交付金が入って採算が取れる現状だと指摘。「作物で採算がとれる水準に引き上げることが要です」と話しました。

 紙氏が、日本生活協同組合連合会が同基本法改定案への意見書で財政支出に基づく生産者への直接支払いを求めていると語ると、公述人全員が賛成を表明。横山氏は「食料安全保障のために本気で国内生産を向上させようとするならば、生産者の所得を確保するための財政支出に基づく制度の確立が必要です」と話しました。
 
 

農水相、発言撤回し謝罪

紙氏「認識の誤り」ただす

参院農水委

 
 
 坂本哲志農林水産相は23日の参院農林水産委員会で、「(日本農業の)生産基盤が弱体化したとは思っていない」と述べた16日の同委員会での答弁を撤回し謝罪しました。「弱体化」を指摘した立憲民主党の徳永エリ議員に「決め付けの質問」と述べたことも、「行き過ぎた発言だった」と謝罪しました。

 坂本農水相は審議中の食料・農業・農村基本法改定案について、「農業の生産基盤が弱体化していることを背景に提出したもの」と釈明。過去の政府文書や国会答弁等でも「生産基盤の弱体化などの課題に直面している」とされているとして、「私の認識に誤りがあった」と認めました。日本共産党の紙智子議員は「撤回するまでは、弱体化していないとの認識だったことになる」と批判しました。

 16日の質疑で、紙氏が2019年に安倍晋三元首相から「弱体化を受け止め(ている)」という答弁があったことを指摘すると、坂本氏は「(安倍氏の答弁は)だからもう少し農業を自由化しなければならない、競争にさらさなければならないということに続くのだろう」と答弁。紙氏はこの発言の意図をただしました。

 坂本氏は「推測で答弁をした」と陳謝。紙氏は「衆院で23時間、参院で十数時間やってきた質疑自体が何だったのか」「農水相の資質が問われる発言だ」と強調しました。

 
坂本農水相「弱体化したとは思っていない」大甘認識を平然と答弁…日本の農業への危機感ゼロ
 
 
 今国会の会期末まで残り1カ月。衆参両院では連日、各委員会で改正(改定)法案などの審議が大詰めを迎えつつあるが、そんな中、野党議員から「大臣更迭に値するのではないか」と怒りの声が上がったのが参院農林水産委員会だ。

 同委員会では「農業政策の憲法」と言われる「食料・農業・農村基本法」について四半世紀ぶりの改正(改定)案を審議中だ。

 生産資材が高騰する中で農業経営をどう安定させるのか。世界的な気候変動やロシア軍によるウクライナ侵攻などを背景にした食料の調達リスクにどう備えるのか(食料安全保障の確保)。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で政治資金規正法改正案ばかりに注目が集まるが、日本の農業の将来を左右しかねない重要な議論なのは言うまでもない。

 コトの発端は16日。質問に立った立憲民主党の徳永エリ議員(62)が「基本法改正では生産基盤を強化とあるが、どう強化していくのか分からない」と切り出し、その理由として、農業従事者の高齢化や担い手不足などを指摘した。すると、答弁に立った坂本哲志農水相(73)は、「私は(日本農業の)生産基盤が弱体化したとは思ってない」と反論したのだ。
 
■日本の農業は、大臣がこんな認識で大丈夫か?

 経団連などの資料によると、国内の農業経営体の96%を占める個人経営のうち、世帯員である基幹農業従事者は2020年に136万人となり、20年前と比べて104万人も減少。20年時点で農業従事者全体における65歳以上の割合は7割に上り、20年前に483万ヘクタールあった農地面積も437万ヘクタール(20年)と1割も減少した。

 食料自給率も減少傾向が顕著で、誰がどう見ても、日本の農業の生産基盤は弱体化していると指摘せざるを得ないだろう。そもそも弱体化しているからこその改正案ではないのか。

《大臣がこの認識で大丈夫なんか、日本の農業》

《農水相が「弱体化したと思っていない」と。でも、耕作放棄農地が増えているよ》

 SNS上でも批判の声が上がり、坂本大臣は23日になって、同委員会で「私の認識に誤りがあった」として16日の発言を撤回、謝罪したが、認識をただすためにも一度、農家を対象に「車座集会」を開いて意見を聞いた方がいい。