デジタル化推進を理由に2兆円超の血税を投じ、マイナ保険証への一本化に突き進む岸田政権。マイナンバーカードの保有は任意だったはずだが、いつの間にか紙の保険証廃止などによって事実上の「強制」となった。12月2日廃止というタイムリミットが近づく中、岸田首相に「聞く力」はもはやない。
 

 

 


田村貴昭さん
「いままで通り保険証を残そう」。全国保険医団体連合会(保団連)の国会前で行動。私も連帯(23日)。
マイナンバーカード がなくてもなんら不便を感じず。カードを使ったら不具合。だから利用率も上がらず。能登地震では一時4万戸が停電、電気がなければ機能せず。やっぱり保険証は絶対必要。

 

 

 

 

 現行の健康保険証を廃止しマイナンバーカードに一体化させる政府方針に反対する集会が23日、東京・永田町の衆院第1議員会館前で開かれた。

 

 開業医らでつくる全国保険医団体連合会(保団連)が主催。医師や歯科医師ら約100人が「患者も国民も廃止を望んでいない」「保険証を残して命を守れ」と声を上げた。立憲民主、共産、社民各党の国会議員4人が参加した。
 

 竹田智雄会長は「マイナ保険証は申請しないともらえない。暗証番号を忘れたり、カードが読み取れなかったりして、本来は保険で医療にかかれる人がかかれなくなっている」と現場の状況を説明。「現行の健康保険証があるから保険資格を確認できている。保険証を存続して皆保険制度を守らなければならない」と訴えた。(戎野文菜)

 

 

「マイナ保険証」強制問題…国家公務員の利用率5%なのに嫌がる国民に強要!首相「積極的に促進」の恐怖

 
 現行の健康保険証が12月に廃止され、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」に一本化される。岸田文雄首相は「国民への周知・広報を行いながら、利用促進を積極的に推進していく」と述べた。だが、「デジタル社会のパスポート」されるものの、利用率はいまだ1割に満たないままだ。経済アナリストの佐藤健太氏は「岸田政権は強行にマイナ保険証への一本化を進めるが、国民も自治体もついていけていない。2兆円を超える巨額の税金を投じてきたため一歩も引けない気持ちがあるのだろうが、廃止時期の見直しは必要だろう」と指摘する。

利用登録が多いのにマイナ保険証の利用率が1割に満たないのか
「国民への周知・広報を行いながら、利用促進を積極的に推進していく」。岸田首相は5月19日、利用率が低迷するマイナ保険証について「すべての方が安心して確実に保険診療を受けていただける環境整備を進めていく」と語った。

 直近のマイナンバーカード保有枚数は約9215万枚で、人口に対する保有率は73.5%。健康保険証としての利用登録は約7207万件あり、有効登録率は78.2%となっている。だが、4月のマイナ保険証の利用率は6.56%%と低迷したままだ。

 なぜ利用登録が多いのにマイナ保険証の利用率が1割に満たないのかと言えば、それは相次ぐトラブルに加えてマイナ保険証を利用するメリットを感じていないからだろう。デジタル庁が2023年11~12月に実施したアンケート調査によれば、マイナンバーカードの携行率は保有者の5割に達している。これは厚生労働省が18歳以上の保有者を対象に今年2月に実施した調査でも同じ傾向で、常に携行している人は約4割に上った。ただ、マイナンバーカードを健康保険証として利用したことがある人は約4人に1人にとどまる。

別人の情報が誤登録されるなどのトラブルは9000件を超える
マイナンバーカードをめぐっては、同姓同名の他人にカードが交付されたり、別人の年金や医療費などの情報が閲覧できる状態になっていたりとトラブルが尽きない。健康保険証とマイナンバーカードの情報を紐付けた際のミスによって別人の情報が誤登録されるなどのトラブルは9000件を超える。医師や歯科医師でつくる「全国保険医団体連合会」が1月に公表したマイナ保険証に関する調査によると、回答した医療機関の約6割が「トラブルがあった」と答えている。具体的には「名前や住所で『●』が表示される」(67%)、「資格情報の無効がある」(49%)、「カードリーダーでエラーが出る」(40%)といったトラブルが相次ぎ、「名前や住所の間違い」(21%)、「負担割合の齟齬」(15%)もあった。

 メリットを実感できない点もマイナ保険証の利用が進まない理由だ。厚労省が2023年11月に公表した調査結果によれば、マイナ保険証を活用できるシステムを整備している892病院のうち、薬の処方歴などを閲覧する仕組みを「活用している」と答えたのは29.6%で、「活用していない」は7割近くに上った。「活用している」病院においても、患者側のメリットが「特にない・わからない」は5割を超えている。

 厚労省は、マイナ保険証の利用が医療費の節約や自己負担減につながることや、過去の薬剤情報・医療情報を医師に共有することでデータに基づく医療が受けられること、さらに手続きなしで高額医療の限度額を超えた支払いが免除される点などのメリットを強調する。だが、政府によるマイナンバーカード情報の点検で判明した紐付けの誤りは、健康保険証情報の他にも共済年金情報や公金受取口座情報、所得・個人住民税情報、生活保護情報など多岐にわたる。
 
個人情報の照会システムも自治体で活用されているとは言い難い
 武見敬三厚労相は5~7月を「集中取組月間」として、マイナ保険証の利用を患者に呼びかける医療機関に最大20万円を支給する促進策を打ち出した。利用者数の増加に応じて病院に20万円、診療所と薬局には10万円を上限に支給するというが、医療現場でもトラブルが続いている上に患者側がメリットを実感できないのであれば、政府が目指す利用率向上は容易ではないだろう。

 マイナンバーを使う個人情報の照会システムも自治体で活用されているとは言い難い。会計検査院は5月15日、会計検査院法第30条の2に基づく国会および内閣への随時報告を行った。「マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況について」と題した調査結果によれば、1258種類の事務手続きのうち485種類は1度も利用されていなかったことが判明した。理由としては「書類を提出してもらう方が効率的だから」「業務フロー見直しやマニュアル作成ができていない」との回答が寄せられたという。
 国はマイナンバーによる個人情報の照会システムの整備に2000億円以上かけてきたが、行政機関ですら使いこなせていないのは問題だろう。それでも推進役の河野太郎デジタル相は「12月2日の予定に変更ございません」(5月17日の記者会見)と現行の健康保険証廃止時期を見直す考えはないようだ。岸田首相も「マイナンバーカードはデジタル社会のパスポートとして国民に利用いただくために様々な取り組み、キャンペーンを行ってきた。これからも普及を進めていかなければならない」と述べている。

マイナ保険証は国家公務員でも利用率(3月)が5.73%にとどまる
 医療現場も、国民も、行政機関も首相がうたう「デジタル社会のパスポート」を活用できていないにもかかわらず、国民が望んでいない紙の保険証廃止へ突き進む岸田政権。誤解を恐れずに言えば、6%程度しか使われていないのに廃止を強行する意味がわからない。紙の保険証の代わりとなる「資格確認証」を発行する事務コスト負担も膨らむことだろう。

 国は2020年9月から始まった「マイナポイント」事業や広報費などに巨額の税金を投じ、関連予算は総額2兆1000億円以上になる。マイナ保険証の登録が思うように伸びず、マイナポイント事業では約7300億円が使用されなかったが、これまで投入してきた税金の効果や検証も必要だ。

 厚労省によれば、マイナ保険証は国家公務員でも利用率(3月)が5.73%にとどまり、最も高い総務省は10.31%にすぎない。所管する厚労省は6.49%、防衛省は最低の3.54%だ。ネット上には「情報通の官僚も使っていないのに国民に広がるとは思えない」「岸田首相や河野大臣をはじめ閣僚全員が本当に利用しているのか」などの声が相次ぐ。

 デジタル化推進を理由に2兆円超の血税を投じ、マイナ保険証への一本化に突き進む岸田政権。マイナンバーカードの保有は任意だったはずだが、いつの間にか紙の保険証廃止などによって事実上の「強制」となった。12月2日廃止というタイムリミットが近づく中、岸田首相に「聞く力」はもはやない。

佐藤健太