「リニアは全線の86%がトンネルで、どこでも影響が出るおそれがある。住環境を守ることや生態系の保全は二の次という姿勢は許されない」

 

(写真)水位が下がって底に亀裂が生じた池=16日、岐阜県瑞浪市(撮影・小関祥子党東濃西地区委員長)

 

 JR東海がリニア中央新幹線(東京・品川―名古屋間)の日吉トンネル(14・5キロ)掘削工事を進めている岐阜県瑞浪(みずなみ)市大湫(おおくて)町で、ため池や井戸などの水位が低下していることが16日までに分かりました。同社は、周辺で他に大規模な工事が行われていないことなどから「リニアの工事による影響の可能性が高い」としています。住民らは生活への影響を懸念しています。

 JR東海によると、昨年12月と今年2月にトンネル内で湧水が発生しました。2月下旬に観測用の井戸で水位の低下を把握。瑞浪市内の32カ所を調べたところ、集落に水を供給する共同水源3カ所、個人宅の井戸9カ所、ため池2カ所の計14カ所で水位の低下が確認されました。共同水源のうち1カ所は枯渇し、井戸の新設や上水道の工事を同社の負担で進めます。

 大湫町で湧き水を生活に利用する女性(78)は、ため池の水位が明らかに下がったとして「地下水が枯れたら私は生活できません。リニアの工事は止めてほしいというのが本心です」と話しています。

 リニアの工事実施計画の認可取り消しを国に求めている「ストップ・リニア!訴訟」の川村晃生団長(甲府市在住)は、山梨リニア実験線の工事でも沢の水枯れが起きたとして「リニアは全線の86%がトンネルで、どこでも影響が出るおそれがある。住環境を守ることや生態系の保全は二の次という姿勢は許されない」と述べています。

 

 

岐阜の井戸で水位低下、リニア工事を一時中断へ…JR東海社長「工事の影響による可能性が高い」

 

 

 リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が進む岐阜県瑞浪市で家庭用の井戸などの水位が低下した問題を受け、JR東海の丹羽俊介社長は16日、工事を一時中断し、ボーリング調査を行う方針を明らかにした。地質の詳しい状況などを確認する。

 

 工事を巡っては、同市大湫(おおくて)町の井戸やため池計14か所で水位の低下が確認された。この日の記者会見で、丹羽社長は「地域の皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけしている。本工事の影響による可能性が高い」と述べた。その上で、掘削ルートが大湫町中心部の水田の広がる盆地を通る計画であるため、その手前まで進んだ段階で工事を中断し、調査を行う考えを示した。一方、リニアの開業時期については、「影響を与えるものではない」と話した