物価高で苦しむ庶民を尻目に…日米の金利差5%と2年間で40円の円安という為替で二重に儲けた富裕者の思考

 
右往左往の日銀
政府・日銀が支離滅裂になってきた。ウエダメ総裁は「物価上昇に影響なし」発言で円安放置、円安に慌ててカンダメは無駄な為替介入。対して日銀は国債買い入れ減額で国債価格下落で長期金利上昇。展望のないまま投機筋に右往左往だ。
 
負け犬カ神田財務
5兆円の為替介入の後、5月2日に3兆円の為替介入し、またもわずか10日で元の木阿弥の156円台に逆戻り。神田財務官の「原資は無限」の嘘はもはや誰も信じない。神田就任時2021年7月110円から円の下落が続く、負け犬の遠吠えか?
 
 
2022年1月のドル・円相場は114円程度だった。それが2024年4月下旬に一時160円まで円安が進み、政府・日銀の介入などにより今は156円台。この約2年の間、日本ではインフレが進み、庶民は物価高に苦しんでいるが、日米の金利差と為替により二重で儲ける者もいる。経営コンサルタントの小宮一慶さんが最近の円相場の動向と今後の動きをやさしく解説・予測する――。
 
 一時、1ドル160円まで円安が進んだものの政府・日銀による(覆面)介入もあり151円台まで円が買われ、その後はさらなる介入の可能性もにらんだ神経質な展開が続いています。日米金利差が縮まらないこともあり、この原稿を書いている段階では155円台です。今回は、これまでの円相場の経緯と今後の見通しを説明します。

■日米金利差で円安に

 これまでの円安は多くの部分を日米金利差で説明することができます。図表1をご覧いただきたいのですが、表にある「TB3カ月」という数字は、「Treasury Bill3カ月物」で、3カ月物の国債金利を表しています。米国の短期金利のひとつで、自由金利ですが政策金利にほぼ連動して動きます。

 ちなみに米国の政策金利は、フェッドファンド金利(FF金利)オーバーナイトといい、1日だけ銀行間で貸し借りするときに使われる金利です。そこに毎日、中央銀行(FRB)が介入し金利を調節しています。ちなみに現在の政策金利は5.25~5.50%と歴史的に見ても高い金利です。

 表の一番上にあるのは、2022年3月の数字ですが、この頃は米国の短期金利はまだ0%台でした。当時、インフレ率はすでに8%台に達していましたが、FRBは「インフレは一時的」との見方から、コロナで傷んだ経済の立て直しを優先したために、金利を上昇させていなかったのです。FRBはインフレの先行きを見誤ったのです。その頃のドル円相場は表にあるように118円台でした。ちなみにその年(2022年)1月のドル・円相場は114円程度でした。

 それが、インフレが収まるどころかどんどんひどくなり、その年の6月には9.1%にまで達しました。FRBも「一過性」などとは言っておれず、急速に政策金利を上昇させ、それにつれ、表にあるように3カ月物の金利も急激に上昇を続けたのです。

 一方、円の短期金利は、日銀が政策金利を変更せず、ずっとマイナスだったので、米金利そのものが、ほぼ日米金利差と言えます。日米金利差が広がるにしたがって、高い金利のドルが買われ、先ほども述べたように2022年初には114円程度だったドル相場が、130円台、140円台と一気に円安が進んだといった構図です。

 ただ、2022年暮れから23年初にかけて、米金利は4%台まで上昇したにもかかわらず、つまり日米金利差が拡大したにもかかわらず、一時130円台まで円相場が戻しました。これは、シリコンバレーバンクなどの銀行の破綻が懸念されたからです。金利の急上昇により、米国債などを大量に保有していた銀行の中には、その含み損が急に膨らみ、金融危機がささやかれました。

 その際には、「避難通貨」として円が買われ、22年秋には一時150円台まで進んだ円安が、130円程度まで円が買われたわけです。
 
■金利差拡大でキャリー取引が急増

 その後、2023年に入り米国での金融危機懸念が遠ざかると、また金利差に焦点が集まり、ドル高・円安の方向に動きました。そして、「キャリー取引」が活発に行われるようになりました。

 一般的に、金利が高い通貨が買われる傾向があるのですが、キャリー取引というのは、金利がほぼゼロの円を借りて、即座にその円を売り、金利の高いドルを買って運用することによって金利差を稼ごうとするものです。一般的には4%くらいの金利差があるとキャリー取引は起こりやすいと言われています。

 2022年末には4%以上の金利差が発生し、2023年にはそれが5%まで拡大したのですから、キャリー取引が活発に行われるようになりました。

 キャリー取引が起こると、円が売られドルが買われるわけですから、円安が進みます。これによりキャリー取引を行っている人は、借りた円が安くなるわけですから、金利差だけでなく、為替でも二重に儲かるという利点があります。

 そうして、じりじりと円安が進んだわけです。

■4月の日銀政策決定会合が現状維持で円安が加速

 ここまで見たように、日米金利差が円相場に大きな影響を与えてきたわけですが、3月18日、19日の日銀の政策決定会合で、それまでマイナスだった政策金利を0~0.1%程度まで戻す決定が行われました。

 マイナス金利からの脱却は、日本の金融政策を正常化させる第一歩としては評価されたものの、しょせん、日本の金利は0.1%程度上がったにすぎず、米国が「インフレの粘着性が高い」として政策金利を下げないことから、日米金利差はほとんど縮まらない状態が続き、円相場も150円を超える円安が続きました。

 そこで注目されたのが4月25日、26日に行われた日銀の政策決定会合だったのです。マイナス金利解除にもかかわらず円安が収まらないことで、この4月の政策決定会合では政策金利を0.1%程度上昇させるのではないかという市場の意見もありました。実際、政策決定会合でも円安に対する懸念は大きかったようです。しかし、現状の緩和策を続けるというのが結論でした。

 これを受けて、市場はさらに円を売る方向で進み、一時160円をつけるまでの円安となりました。政府としても、過度の円安や急激な為替相場の変動を見過ごすわけにはいかず、2度のドル売り・円買いの介入を行ったと市場では言われています。
 
■米雇用統計で流れが少し変化

 介入で市場の流れは一時的に変わりましたが、もうひとつ市場の流れを変えたのは、図表2にある米国の雇用統計です。

 米国政府も中央銀行であるFRBも世界中のエコノミストたちも注目の数字で、原則毎月第1金曜日に発表になりますが、この統計の発表で相場が大きく動いたり、相場の流れが変わったりすることがあります。今回もそうでした。市場が想定していたほど数字が良くなかったのです。

 それにより、粘着性の高いインフレですが、FRBは当面は政策金利を動かさないものの、そう遠くないうちに政策金利を下げる、つまり、その時点で日米金利差は縮まると予想する市場関係者が増え、円高に振れたということです。また、介入の影におびえた投機筋もありました。

 その後は、再度じりじりと円安に向かい、この原稿を書いている時点では156円台です。

 今後も米国で強めの景気指標が出れば、インフレが長引くとの懸念から、短期金利が下がらずにドル買い、逆に今回の雇用統計のように予想より弱い景気指標が出れば、ドル売りという構図が続くと考えられます。

 その際に、キャリー取引を行っている人たちから見れば、現状では「年利で」5%程度の利ザヤが取れますが、為替が介入などにより短期間で数円程度円高に振れるようなことがあれば、年利5%程度の利ザヤは一気に吹っ飛びますから、為替動向によっては一気にキャリーで作った円売り・ドル買い=ドルでの運用というポジションをひっくり返す動きが出て、為替が乱高下する可能性もあります。

■円安の悪影響

 ここまで説明したように、日米金利差がドル・円レートを決めている要因だと考えられるので、今後、日本が金利上昇、米国が利下げを徐々に行っていけば、円安はかなり是正されると考えられます。

 今般の円安は、インバウンド客を増やしたという利点はありますが、日本全体から見れば、それほどのメリットはないどころか、むしろマイナスに働いているとも言えます。

 インバウンド客は、3月で308万人と、月別では過去最高を記録しましたが、京都をはじめ、各観光地ではオーバーツーリズムの問題が起こっています。

 日本人のビジネスパーソンにとっては、ホテル代金が跳ね上げり、まともなホテルに泊まるにはかなりの費用が必要となっています。ホテル側も強気ですが、京都などではレストランも外国人が席巻し、値付けも日本人にはかなり高いと感じる値段となっています。

 経営コンサルタントとしての当社の顧客は中堅中小企業が多いのですが、円安のせいで仕入れ価格がかなり上昇しています。大企業なら、それを転嫁することなどが可能かもしれませんが、中小企業ではなかなか厳しいのが現実です。

 大企業など海外で稼ぐ企業の中には、外貨建て利益の円換算額を押し上げますが、その利益が日本に還流していないことも問題視されています。

 いずれにしても、急激で過度な円安は現状の日本経済にはマイナスだと考えます。日銀は金融正常化、つまり、政策金利を上昇させることで、円安を阻止してほしいと願っています。



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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。
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為替介入で注目される令和のミスター円・神田財務官の人物像「人懐っこさのあるチャーミングな方」「寝ていない説が出るくらいスーパーマン」

 
くだらん記事だ!
 
 
 為替介入の質問にいつも「ノーコメント」の財務省・神田眞人財務官の意外な素顔に迫った。
 
 円安ドル高が進み、日本の物価高への影響が懸念されている。多くの貿易はドル建てのため、円安では輸出がもうかる一方、輸入はこれまでと比べて損をする。そんな中、政府や日本銀行による為替介入に“警戒感”が高まっている。

 為替介入とはなにか。ニュース検定1級に最年少で合格した、中学3年生の松木孝太朗さんは、「行きすぎた円安・円高に対して、円売りドル買いや、円買いドル売りを行い、為替市場に財務省や日銀が介入すること」と説明する。

 一連のニュースでは、松木さんが注目している人物がいる。「黒田東彦氏のように、ゆくゆくは日銀総裁になる可能性もある」と見ているその人物は、財務省の神田眞人財務官だ。テレビ朝日経済部の佐藤美妃記者は「さまざまな国際金融政策を担当する、為替政策の責任者。鈴木俊一財務大臣とコミュニケーションをとった上で、政府日銀による為替介入を決めている」と説明する。

 神田氏はこれまで、「過度な変動に対してはあらゆる手段を排除せず、適切な行動をとっていきたい」としつつ、その手段に為替介入が含まれるか問われると、「それについては申さないが『あらゆる手段』だ」と示唆していた。これは「口先介入」と呼ばれ、実際に為替介入を行わなくても、市場は発言に反応する。

 そして2024年4月末、1ドル160円突破とともに、為替介入と思われる形で、円安が反転した。しかし神田氏は「介入の有無について申し上げることはない」とコメント。この発言の意図として、佐藤記者は「介入したかを明らかにしない方がスタンダード。一番困るのは取材に応じないことだが、神田氏は『コメントしない』とコメントしてくれる」とした。専業トレーディング歴10年のFXトレーダー・ジュン氏も「神田氏の発言はすごく気にしている」と語る。

 “令和のミスター円”とも呼ばれる神田氏は、どんな人物なのか。1965年兵庫県出身で、灘中高から東大法学部へ進み、国際政治学者・舛添要一氏のゼミで学ぶ。1987年に大蔵省(当時)へ入り、オックスフォード大学に留学して経済学大学院を修了。2021年からは国際業務を担当する次官級ポストの「財務官」を務めている。かつて“ミスター円”と呼ばれた榊原英資氏や、黒田氏も務めたポストだ。

 エリートコースを歩んできたが、その横顔には親しみもある。佐藤記者は「聞いてもいないのに『20億円抜かれて気づかないなんて、大谷翔平選手、スケールが違うよね』といった話をしてくれる。怖い人という印象は全然なく、むしろ人懐っこさもあり、ちょっと失礼かもしれないがチャーミングな方」。一方で「いつも忙しそうで、いつ休んでいるのか。“寝てない説”が財務省内で流れるくらいスーパーマンのような働きをしている」ともいう。

 舛添氏は、自身のゼミについて「優秀じゃないと落ちる。英語の本だと1冊、日本語だと5~6冊、毎週読ませていた。脱落するゼミ生がほとんどの中、神田くんだけでなく皆優秀だった」と振り返る。神田氏個人については「ひょうきんなところがあり、同窓会でも分け隔てなく冗談を言って、居ると明るくなる」と語る。

 その上で舛添氏は、為替介入の有無を明かさない理由を解説する。「基本的に市場に任せて、手の内も示してはいけない。為替レートの変動を見ると“やった”と思うが、『いつ何をやるかわからない』がけん制球になり、過度な円安を防止する」。

(『ABEMA的ニュースショー』より)