働き方ネットは、中教審特別部会が出した「審議のまとめ」を受けて、本日記者発表をしました。全教の宮下委員長は、「これでは長時間労働や教職員未配置問題が解決できない」と批判しました。現場や退職教職員からも学校の切実な実態が語られました。

 

 

 文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審)の特別部会が取りまとめた教員不足解消策に対し、教職員らでつくる労働組合2団体が14日、東京都千代田区の文科省内で相次いで記者会見し「特別部会の審議は不十分だ」などと批判した。

 特別部会は、教員に一律支給される教職調整額を現行の給料月額4%から10%以上に引き上げるよう国に提言した。日本教職員組合(日教組)の薄田綾子・政策局次長は会見で「処遇改善は実現してほしい」とした上で、残業代の代わりに教職調整額を支給すると定めた教員給与特別措置法(給特法)について「勤務時間管理の意識を希薄にしている」とし、廃止や抜本的な法改正に向けた継続的な議論を求めた。

 提言には教科担任制の拡充や生徒指導担当の加配が盛り込まれたが、薄田氏は「そもそも教える内容が多く指導要領を精選すべきだと求めてきたが、特別部会は踏み込まなかった。教員を増やす具体策も足りない」と述べた。

 一方、全日本教職員組合(全教)の宮下直樹・中央執行委員長は、特別部会が残業代の導入を見送ったことについて「国立や私立の学校では残業代が支払われており、公立で支払えないとするには論理矛盾がある」と指摘した。【斎藤文太郎】

 

 

教員 長時間悪化も

全教など 中教審「まとめ」批判

 
 
 全教や新日本婦人の会などでつくる「学校に希望を! 長時間労働に歯止めを! ネットワーク」は14日、文部科学省で会見し、教職員の働き方を議論する中央教育審議会が出した「審議まとめ」は、長時間過密労働を解消できず、いっそうの長時間労働を強いると批判する声明を発表しました。

 声明は、「まとめ」の問題点について、公立の教員の残業手当支給を真っ向から否定したと指摘。公立学校教員に残業代が支払われない給与特別措置法(給特法)の枠組みを維持し、残業代の代わりに上乗せする月給4%相当の「教職調整額」を10%以上に引き上げてごまかしたとして「いっそうの長時間労働を強いる」と批判しています。

 長時間労働打開策として重要なのは増員だと強調。「まとめ」は定数増ではなく加配にとどめたと批判し「臨時・非常勤教員増につながる」と告発しました。教諭と管理職の間に「新たな職」を設け、能力・成果主義の徹底を図ろうとしていると批判しています。

 会見で、全教の宮下直樹委員長は、残業代支給の仕組みをつくらずに、教職調整額を増額することは「残業代が増えたのだから今まで以上に残業するのは当然だと、労働時間短縮と逆の作用が生じ、これまで以上の長時間労働を強いられる」と指摘しました。

 「新たな職」が職場に先行導入されている東京都教職員組合の木下雅英委員長は、教職員の序列化が起こり、管理と競争を強め、教師や子どもを苦しめていると指摘しました。

 川崎市教職員連絡会の大前博事務局次長は、川崎市内174校中101校で未配置が生じ、臨時教職員で埋め合わせる悪循環が起きていると強調。「業務量に見合った教員を配置するなど根本にメスを入れる改革が必要だ」と訴えました。

 

 

「残業代不支給」を温存 教員長時間労働解消 実効策なし 中教審特別部会「審議まとめ」

 

根本的な解決になっていない。残業代を上げたと言っても仕事量が減るわけではない。教職員の増員し、教師一人一人が子供と向かい合う時間を増やしていく施策が全くない。小手先のことしか考えていない。

 

 

 公立学校の教員の長時間労働の解消について議論してきた中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別部会は13日、「審議まとめ」を大筋で了承し、盛山正仁文科相に手渡しました。教員を労働基準法の残業規制の対象外とし長時間労働を野放しにしてきた「残業代不支給制度」には手を着けないまま、現在月給の4%を一律に支給している教職調整額の10%以上への引き上げを求めました。

 今後、中教審総会での議論やパブリックコメント(意見公募)を経て、文科相に正式に答申する予定です。

 審議まとめは、現場の要望が強かった教員1人が受け持つ授業時数の上限設定や、教職員の基礎定数の改善も見送りました。一方で中堅教員向けに「新たな職」を創設し、給与面で優遇する方向性を提示。教員を階層化し教職員の共同を破壊しかねないとの批判が上がっています。

 委員からは「超過勤務への歯止めが無いままでは健康確保はできない」、「自己研さんであっても全てを自発的行為とするのは時代にそぐわない。今後、在校等時間を労働安全衛生法上の労働時間相当として見なすようにすべきだ」などの意見が出されました。

 齊藤正富・全日本中学校長会会長は、小学校での35人学級の効果検証を待つことなく、速やかに中学校を35人学級化するよう強く求めました。

 審議まとめが、法律で定める基礎定数より、国が政策目的に応じて配分する加配定数を重視していることについても、財源が毎年度変動する不安定さから非正規雇用教員の増加につながりかねず「教員不足はいっそう悪化する」との批判が出されました。

 国内総生産(GDP)比で先進国のなかで最低水準となっている日本の公的教育支出を高め、教育環境を改善するよう求める声もありました。

 

 

定数増・給特法見直しを

教員・学生ら共同会見

 
 
 中央教育審議会の特別部会が「審議まとめ」を大筋で了承した13日、教員、学生、教育研究者、弁護士らが文部科学省内で共同記者会見を開き、「教員の長時間労働を何も改善できず、教員数も増えない」と批判の声を上げました。

 「教員の長時間勤務に歯止めをかけ、豊かな学校教育の実現を求める教育研究者有志の会」の中嶋哲彦愛知工業大学教授は、審議まとめが時間外勤務手当を支給しないという教職員給与特別措置法(給特法)の枠組みを維持していることを批判。「都道府県教育委員会も市町村教育委員会も、何とかして教員の長時間勤務を解消しようとして問題意識を共有している。教員の基礎定数を増やすことで、学校の現場で自由に活用できる人を増やさないと問題は解決しない」と述べました。

 教員志望の学生で「給特法のこれからを考える有志の会」の宇惠野珠美さんは、体育教諭志望の友人が、最近その夢を諦めたと語りました。「教育実習で指導教諭から『朝7時30分に部活朝練で学校に行き、夜7時過ぎに学校を出る。土日は部活動指導で出勤』と聞いて、無理だと確信したそうです。給特法がある限り、教員は際限なく働かされる。そこに手を付けない今回の審議まとめは、教員志望学生に響かない」と訴えました。

 日本労働弁護団の竹村和也事務局長は「審議まとめ」で示された方針に反対する緊急声明を発表。教職調整額の増額を掲げても給特法の抜本的見直しを否定していると批判しました。