ふざけないでくれますか?
65歳支給だって遅いんだよ!
「あの世でもらえ国民年金」やるつもり?

 

 

厚生労働省が5年一度、年金財政の持続性をチェックする「財政検証」が実施される。夏にまとめる検証結果は、来年の年金制度改正の議論に反映される。昭和女子大の八代尚宏特命教授は産経新聞の取材に対し、議論すべきポイントとして「年金の支給開始年齢の引き上げ」を挙げた。詳細は次の通り。

年金の財政検証で示された改革項目は、政治的に大きな争点を避けている。本当に議論すべき問題は年金の支給開始年齢の引き上げだ。かつて60歳だった厚生年金の支給開始年齢が、3年ごとに1歳ずつ引き上げられてきた。来年、目標の65歳に達するが、その後はどうするのか全く議論されていない。

これは国民の大きな反発を受ける支給開始年齢引き上げではなく、法改正なしに毎年の給付額を継続的に抑制できる「マクロ経済スライド」という仕組みを採用したからだ。だが、日本の厚生年金の個人単位の給付水準は、平均賃金比で39%と経済協力開発機構(OECD)平均の61%よりもはるかに低い水準だ。このさらなる引き下げは国民の窮乏化を意味する。

世界保健機関(WHO)によると、日本人の平均寿命は84・3歳で世界で最も長い。寿命が延びることで自動的に増える給付額をどう抑制するかが、年金保険の最大のリスクだ。他国も同様の課題を抱えるが、米国やドイツなどは長寿化に対応して支給開始年齢を引き上げ、個人の生涯受給額を抑制する合理的な仕組みとしている。

米国の平均寿命は78・5歳、ドイツは81・7歳だが、支給開始年齢は67歳としている。世界トップで今後も寿命の延びる日本が、65歳からの支給開始のままでは、年金財政が持つはずがない。

他の先進国は国民の反発を受けながら、支給開始年齢を引き上げた。最長寿国の日本も国民に年金制度を守るためと丁寧に説明を尽くし、他国並みの引き上げに取り組むべきだ。その際、年金問題を政争の具にはせず、与野党で合意して進める必要がある。仮に野党が政権をとっても同じ問題が浮上するからだ。

厚生年金の対象拡大も、専業主婦ら「第3号被保険者」が、自身の保険料負担なしで基礎年金を受給できる不公平についての問題には踏み込んでいない。これだけ共働きが増えて専業主婦が減る中、なぜこの問題を放置するのか疑問だ。(聞き手 大島悠亮)