元ジャニーズJr.・二本樹顕理氏 「誹謗中傷から家族を守るため、日本を離れることにしました」

 
日本を離れても貴重な活動。頭が下がる>元ジャニーズJr二本樹顕理氏「子供たちへの性加害を根絶したい。そう考える仲間と『ワニズアクション』という団体を立ち上げました。オンラインで活動を続けます 」「誹謗中傷から家族を守るため日本を離れることにしました」
 
 
3月30日に放送された英BBCのドキュメンタリー『捕食者の影 ジャニーズ解体のその後』は衝撃的な内容だった。
 
故・ジャニー喜多川氏以外に、事務所スタッフ2名が所属タレントに性加害をしていたことを、スマイルアップの東山紀之社長(57)が認めたのである。

’96年8月に13歳でジャニーズ事務所に入所。同年秋から始まった10回にもおよぶ故・ジャニー喜多川氏による性加害の実態を実名告発した二本樹顕理(にほんぎあきまさ)氏(40)も衝撃を受けた一人だ。ただしそれは、長くジャニーズタレントのトップに君臨した東山社長の発言に対してだ。

「BBCの記者に『性加害が横行する風潮があったのか』と問われ、東山社長は否定しました。しかし実際は、半世紀にもわたってジャニーズ事務所内で性加害が行われていたわけです。東山社長にはせめて事実を語ってほしかった」

二本樹氏は同期入所に二宮和也(40)、村上信五(42)、山下智久(39)ら大物がズラリと並ぶ、「ジュニア黄金期」のメンバー。通過儀礼として、あるいは生き残るための手段として、性加害を受け入れたJr.たちをたくさん見てきた。

「被害を訴えている方々に対する誹謗中傷について、東山社長は『言論の自由もある』と言いました。人を傷付ける『言論の自由』は規制の対象になるのではないでしょうか。私たちは性加害を受けて、勇気をもって被害を告発したことで今度は誹謗中傷を受けている。二重に苦しんでいるのです。HPで注意喚起するだけでなく、誹謗中傷に対して具体的な策を講じてほしい」

スマイルアップの本業である補償の交渉プロセスにも、違和感しかないと二本樹氏は首を傾げる。

「弁護士らからなる被害者救済委員会と面談した後、金額が記載された文書が届くのですが……補償を受けるか受けないかの二択しか提示されないのです。被害者の方、何人かに話を聞きましたが皆、『どうやって補償額を決めたのかの根拠や基準が曖昧』と困惑していました」

二本樹氏の補償金額は「現在、救済委員会が算定中」なのだという。スマイルアップ広報は「被害者から要望があれば、可能な範囲で補償金額の算出理由などをご説明しております」と言うが、二本樹氏は「在籍確認の方法にも問題があった」と続けた。

「テレビや雑誌などメディアへの出演が基準にされていたのです(スマイルアップ広報は否定)。しかし、中にはレッスンを受けていただけで、性加害を受けた方もいた。他の芸能事務所に所属していたものの、関係者に紹介されて被害に遭った方もいた。そういった状況も考慮すべきです。『ジャニーズ性加害問題当事者の会』の顧問弁護士と当時の所属者の目撃証言も調査するよう要請したところ、証言できる第三者がいれば在籍を認めるなど一定の前進がありました」

当事者の会の平本淳也代表(57)の尽力が大きかったが、平本代表は体調を崩して辞任している。同会から退会者が続出しているのは「立ち上げ当初から『金目的だ』と誹謗中傷されていたことが一番の原因」だという。そして、かく言う二本樹氏もこの4月で日本を去った。

「昨年2月に子供が生まれたのですが、誹謗中傷で妻の心労が絶えず……夫婦で話し合って、彼女の祖国・アイルランドで子育てをすることにしました。性加害の事実認定と被害者の救済という第一目的は一定の成果を上げたと考えています。ただ、補償を受けたら終わりではない。この経験を生かし、子供たちへの性加害を根絶したい。そう考える仲間と『ワニズアクション』という団体を立ち上げました。オンラインで活動を続けます」

決して求めた未来ではない。それでも、二本樹氏は前を向く。芸能界の後輩たちのために。

『FRIDAY』2024年5月10・17日号より

取材・文:深月ユリア

FRIDAYデジタル