「『誰かが罪をかぶり、総理の判断を願い出るようにすればいい』と知恵をつけた人が党内にいたそうです。それで五人衆が相談し、座長の塩谷君にその役を担ってもらおう、となった。五人衆の総意として、塩谷君の説得を『森先生に頼むしかない』となったようです」 「塩谷先生が派閥の責任を引き受けてくれたらありがたい、というのが皆の意見です」 ひどい

 

 

 

「塩谷先生が派閥の責任を引き受けてくれたらありがたい、というのが皆の意見です」“塩谷座長の説得”を森喜朗元首相に依頼した安倍派五人衆

 
 
 4月26日に「文藝春秋 電子版」が配信した「森喜朗元首相『裏金問題』真相を語る」が波紋を広げている。240分にわたってノンフィクション作家・森功氏のインタビューに応じた森元首相は、これまで口を閉ざしていた自民党の政治資金パーティを巡る裏金問題について初めて言及した。
 
 4月上旬に岸田文雄首相から電話で聴取をされた際のやり取りについても詳細に明かしたが、その内容は、岸田首相のこれまでの説明と大きく異なっており、今後の国会で議論となる可能性が高い。

「岸田首相は国会などで、裏金作りへの関与について、森元首相に直接尋ねたと説明してきましたが、森元首相はインタビューで、キックバックへの関与などについて、岸田首相から具体的な質問はなかったと語っています。5月10日には政治改革を議論する特別委員会が参院で開催される予定です。今後の国会で、岸田首相は森元首相の証言について追及されると見られます」(政治部記者)

「森先生に頼むしかない」
 今回のインタビューで初めて明かした秘話は、岸田首相からの事情聴取だけではない。そのひとつが、裏金問題を巡って安倍派(清和政策研究会)幹部の五人衆が、森元首相を介して座長である塩谷立元文科相が引責辞職することで、派閥としての責任を取るかたちにしようとしていたという一件だ。

 五人衆の要請を受けた森元首相は今年1月26日、塩谷氏を呼び出して、安倍派座長として裏金事件の責任を取って議員辞職するよう迫っていたことを明かし、その経緯についてこう説明した。

「『誰かが罪をかぶり、総理の判断を願い出るようにすればいい』と知恵をつけた人が党内にいたそうです。それで五人衆が相談し、座長の塩谷君にその役を担ってもらおう、となった。五人衆の総意として、塩谷君の説得を『森先生に頼むしかない』となったようです」

 塩谷氏を説得するよう連絡してきたのは、萩生田光一前政調会長だったという。

「萩生田君から『こんなことを先生にお願いするのも変だけれど、ここは塩谷先生が引き受けてくれたらありがたい、というのが皆の意見です』と連絡をもらいました。直接会うとマスコミがうるさいので電話です」
 
「なんで私一人が貧乏くじを……」
 萩生田氏の要請を受けて、森元首相は塩谷氏を呼び出してこう説得した。

「ここはいったん議員辞職して次をねらったらどうかね。全責任を取るので仲間を救ってください、と申し出れば、君は立派だと光り輝くよ」

 だが、塩谷氏は首を縦に振らなかった。

「なんで私一人が貧乏くじを引かねばならないのですか。議員辞職だけは絶対に承服できません」

 結局、15分ほどの面談は物別れに終わり、塩谷氏は4月4日、岸田首相から党内で2番目に重い離党勧告処分をくだされた。処分理由について「事実と違う」などと訴えて再審査請求を行ったものの認められず、4月23日には離党届を提出した。

 他方、森元首相に塩谷氏の説得を依頼した萩生田氏に対する処分は、「党の役職停止」に留まった。萩生田氏にとって処分としての実質的な意味はなく、将来の総理総裁候補としての目も残した。

 森元首相もインタビューの中でこう語っている。

「派閥内では萩生田君を(総理総裁に)推す声が多いけれど、彼もあちこちに弾を受けてますから、少し時間を置いた方がいい」

 240分にわたってインタビューに応じた記事「森喜朗元首相『裏金問題』真相を語る」は、「文藝春秋 電子版」で先行配信しているほか、5月10日発売の「文藝春秋」6月号に掲載している。森元首相が会長を務めていた頃に始まったとされる裏金作りについて、詳細に述べただけでなく、昨年7月、安倍派の会長になることを望んだ下村博文元文科相から、2000万円の入った紙袋を持参された際のやり取りなどについても明かしている。

「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年6月号
 
 

政治資金問題、安倍派会計責任者が起訴事実を大筋で認める…東京地裁

 
 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、政治資金規正法違反(虚偽記入)で在宅起訴された「清和政策研究会」(安倍派)の松本淳一郎・会計責任者(76)の初公判が10日午後、東京地裁(細谷 泰暢(やすのぶ) 裁判長)で始まった。松本被告は罪状認否で起訴事実を大筋で認めたが、起訴対象の一部については虚偽記入の認識を否定した。
 
 一連の事件では、安倍、二階、岸田各派で計10億円近くのパーティー収入の不記載が発覚。各派の会計責任者や安倍派の議員3人ら計10人が起訴(在宅、略式を含む)されたが、公開の法廷で審理が開かれるのは松本被告が初めて。