企業・団体献金禁止など四つの要求

裏金解明 一歩も譲らず

田村委員長が政治改革で見解

 
 日本共産党の田村智子委員長は8日、国会内で記者会見し、自民党の裏金事件について、政治改革特別委員会などの場でも追及していく必要があると強調し、「政治改革が必要になったのは、自民党の組織的犯罪である裏金事件が契機だ。この事実を明らかにしてこそ、実のある政治改革が進んでいく。真相解明を一歩も譲らず求めていく」と述べました。

 その上で、政治資金規正法の改正にあたって三つの点が必要だと主張しました。1点目は、裏金事件の温床にもなった企業・団体献金の全面禁止です。田村氏は、「パーティー券の購入、政党と政党支部に対する献金を禁止し、全面的な企業・団体献金の禁止へと、今度こそこの政治改革をやるべきだ」と主張しました。

 2点目は、政策活動費の廃止です。田村氏は「公開できない金を政策活動費というブラックボックスにまとめているのだから、これ自体を廃止すれば、当然全面公開になる」と指摘しました。

 3点目は、政治家の責任逃れが許されない仕組みの導入です。田村氏は「秘書がやった、事務局がやったという言い逃れが許されない仕組みをつくるために頑張っていきたい」と述べました。

 加えて、政治資金や、政党そのもののあり方に関わるものとして、政党助成金廃止の立場を貫いていくと強調。「企業・団体献金の禁止だけではなく、政党助成金の廃止も国民に呼びかけ、政治改革を進めていきたい」と語りました。
 
 
【自民党・内部報告書入手】業界への補助金バラ撒きを進めて「組織票」頼みの解散・総選挙に踏み込む岸田首相
 
 
 自民党の支持率が低迷するなか、岸田文雄・首相が目論んでいたとされる「6月解散」に黄信号が灯ったように見える。ところが、崖っぷちのはずの岸田首相は“伝家の宝刀”を抜くため、密かに準備を進めていた。その証拠となる内部報告書を入手した。
 
 岸田首相には、自民党の組織票を動かす「奥の手」がある。それを発動していた。本誌・週刊ポストはそれを示す自民党の内部資料を入手した。
 
 自民党組織運動本部団体総局が3月に作成した〈令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】〉と題するA4判31ページの文書だ。文書は自民党の「票とカネ」を根幹で支える業界へのバラ撒きを示すものだ。

 内容を個別に見ていくと、日本医師会などは診療報酬引き上げ、建設コンサルタンツ協会は公共事業費の確保など、各団体が予算や補助金の増額、業界への税制優遇を求める要求のオンパレードで、ほぼ“満額回答”だ(リスト参照)。そして、これらの団体は選挙において“組織票”となるというわけだ。

解散前の人事で勝負
 これらの団体はどれだけの集票力を持つのか。

 有力な団体は、自民党の参院の比例代表に「組織内候補」を擁立し、議員を送り込む。組織内候補の得票数(2022年参院選)を見ると、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護連盟など医療系団体は約69万票、全国郵便局長会は約41万票、農政連など農協系は約18万票と巨大だ。

 自民党が何度も政治とカネの不祥事を起こし、国民の怒りを買っても政権を維持できるのは、補助金(カネ)と票のギブ・アンド・テイクで結びついたこれらの団体の「組織票」があるからだ。

 岸田首相は業界団体へのバラ撒きを進めることで、「組織票」を頼みに解散・総選挙に踏み込もうとしている。

 4月末の補選全敗を受けて、岸田首相側近の木原誠二・自民党幹事長代理は「いま自民党は非常に厳しい状況だ。(総選挙になれば)政権交代が起こってもおかしくない」と語ったが、その真意は別にある。

「自民党が政権を失うと業界団体は困る。木原さんは総理の意を汲んで、業界団体の危機感を煽ることで総選挙で組織票をフル動員させようとしている」(岸田側近)

 官邸では国会閉会後に内閣改造と自民党役員人事を行なって人事一新し、「総選挙シフト」を敷くプランが練られている。官邸スタッフが言う。

「岸田首相が警戒しているのは大臣たちの解散への抵抗だ。閣僚で解散に強硬に反対しそうな大臣を全員交代させておく必要があると考えている」

 党役員人事では、これまで主流3派として政権を支えてきた麻生太郎・副総裁、茂木敏充・幹事長の交代が既定路線だ。自民党閣僚経験者はこう見る。

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「総理は就任時に党役員の任期を最長3年に制限した。麻生さんも茂木さんも任期3年目の半ばを過ぎたから、役員改選となれば自動的に退任でしょう。後任の幹事長は選対委員長を経験した森山裕・総務会長を起用するんじゃないか。他に選挙を仕切れる人物はいない。

 内閣改造も大幅になる。新大臣は安倍派や二階派を一掃し、ポスト岸田に名前が挙がる石破茂、河野太郎、小泉進次郎の小石河トリオ、上川陽子・外相や高市早苗・経済安保相も全員入閣・留任させる。

 麻生さんの後任の副総裁には、反主流派の菅義偉・前総理に打診する可能性もある」

 総裁選で動けないようにライバルを閣内と党役員に封じ込めておく構想だ。そのうえで、「組織票」に選挙の号令をかける。

 政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。

「解散を諦めたと思われている岸田首相が抜き打ちで解散に動けば、自民党内は阿鼻叫喚になるでしょう。しかし、総理大臣がひとたび伝家の宝刀(解散権)を抜くと腹を固めれば、自民党にも野党にも総理を引きずり下ろす手段はない」

 だが、そんなやり方で有権者の批判をかわし、業界頼みで選挙を乗り切れると思っているなら、岸田首相はいまや完全に「裸の王様」である。



パーティー券、公開基準で隔たり 規正法改正、額で自公折り合わず
 
 
 自民、公明両党は9日午前、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正の実務者協議を開いた。パーティー券購入者名の公開基準額引き下げを巡り主張に隔たりがあり、折り合わなかった。午後に再協議する。公明が現行の「20万円超」から「5万円超」への引き下げを提案したのに対し、自民は慎重姿勢を示した。政策活動費の扱いも議題になった。

 パーティー券の公開基準額を巡り、自民は下げ過ぎれば公表を嫌がる企業・団体が購入を避け、資金集めに影響すると懸念し「10万円超」にとどめたい考え。公明が唱える5万円超は、寄付の公開基準と同額となる。
 
 

自民の「政治資金規正法」改正案はデタラメ、公明は譲歩する気なし…岸田首相が立ち往生の惨め

 
 
 終盤国会の一大テーマとなってきた政治資金規正法の改正。派閥の裏金づくりの実態を解明することなく、法改正で目くらましを図ろうとする姑息な自民党だが、その改正案ですら自民案はデタラメの極みだ。“なんちゃって連座制”を設けただけの後ろ向きで、与党協議の公明党が納得せず、GW明けから岸田首相が前面に出て動き出した。
 
「総理が公明案に寄せる見直しで調整役に乗り出した。執行部や国対幹部とも相次ぎ会談。裏を返せば、自ら動かざるを得ないほど、党内がみな総理にソッポを向いている証左」(ベテラン議員)

 公明案では、政治資金パーティー券の購入者の公開を、現在の20万円超から5万円超に引き下げ、政策活動費(政活費)も支給された議員に使途の明細書提出を義務づけるとしている。自民案ではパー券公開は10万円超、政活費は支給段階での項目のみの公表が検討されている。自公間の隔たりは依然大きい。

 そりゃそうだ。自民党は使途を明らかにせず動かすカネこそが力の源泉だとしてきた政党だ。党内からは「パー券公表を5万円になんてしたら、政治資金が集まらなくなる。事務所運営にも支障が出る」(中堅議員)と悲鳴が上がる。

■衆院解散か、自滅退陣か…

 一方、公明党に譲歩する気配はない。山口那津男代表は8日も「透明性をどう高めていくかが焦点」と言い、公明幹部は「自公が同じ方向を向いているかどうか分からない」と不満を漏らしている。

「公明党は世論の猛批判を浴びる自民党の道連れは避けたいのだろう。選挙を考えたら法改正はできるだけ厳しい案にしたい。最終的に総理は公明党案を丸のみするつもりじゃないか」(官邸関係者)

 自公で合意できたとしても、その先の与野党協議は視界不良だ。政治資金パーティー禁止や企業・団体のパー券購入禁止を主張する野党案との距離がありすぎる。与党案にない企業・団体献金の禁止でも、野党は一致している。

 来月23日の国会会期末まで1カ月半。会期内に規正法改正を成立させられるのか。野党案への譲歩は、厳しい改正を求める公明党はのめるとしても、自民党内は紛糾必至。岸田は立ち往生することになる。

 岸田は会期末解散・総選挙を視野に入れている。しかし、規正法改正がまとまらなければ会期延長を余儀なくされる。ただでさえ党内にソッポを向かれている岸田の求心力はさらに低下する。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

「岸田首相は相変わらずの『やってる感』。世論を見て対応を変えるので、サプライズで野党に寄って、維新に救いの手を求める可能性もある」

 衆院解散か、自滅退陣か──。規正法改正の行方に岸田の命運がかかる。