【自民党・内部報告書入手】業界に補助金バラ撒き、税制優遇のオンパレード 「国民から召し上げたカネを業界に配っている」と荻原博子氏

 
「本来、政治は国民の生活を豊かにするものでしょう。しかし、この資料からは、自民党は国民に負担増を押しつけているのに、パーティー券を買ってくれたり、選挙を手伝ってくれる業界や団体には補助金や税の優遇で細かくサービスしていることがわかる。国民から召し上げたカネを業界にせっせと配っているのが自民党政治の実態なんです」
 
山添拓さん
次期戦闘機の開発・生産・輸出で受注企業となる3社は、10年間の合計でそれぞれ億単位で自民党に献金し、数十名の天下りを受け入れ、政府の防衛調達で巨額の受注を重ねている。「環流」というほかない。
防衛大臣は「指摘はあたらない」と述べたが、根拠は示せず。

 

 
 自民党の支持率が低迷するなか、岸田文雄・首相が目論んでいたとされる「6月解散」に黄信号が灯ったように見える。ところが、崖っぷちのはずの岸田首相は“伝家の宝刀”を抜くため、密かに準備を進めていた。その証拠となる内部報告書を入手した。
 
「岸田おろし」が起きないワケ
 大型連休明けの国会は会期終盤を迎えるが、自民党議員の間に「奇妙な安堵感」が広がっている。

「いま自民党は非常に厳しい状況だ。(総選挙になれば)政権交代が起こってもおかしくない」

 岸田首相側近の木原誠二・自民党幹事長代理がそう語るなど、「補選全敗で岸田さんも解散・総選挙は打てないはずだ」(閣僚経験者)との見方が広がっているからだ。

 自民党内では予想されていた「岸田おろし」の動きも起きない。

「岸田総理がいち早く派閥の解散を決め、裏金議員を大量処分したことで党内に不満があっても反岸田勢力は身動きが取れない。官邸は補選後に党内情勢が不穏になると予測していたから、危機管理として事前に手を打っていたわけです。総理のリスク管理が機能している」(岸田側近)

 さらに岸田首相は会期末の6月、派閥解散で派閥からの「氷代」がもらえない議員たちにカネを大盤振る舞いする。自民党本部は例年7月末に支給していた各議員(党支部)への活動費を400万円から500万円に増額し、6月に前倒しして配ることを決めた。「資金」の根元を押さえられ、特に若手議員は岸田首相にますます弓を引けなくなった。

 その岸田首相は、解散・総選挙も自民党総裁選での再選も全く諦めていなかった。

 衆院補選では「保守王国」の島根1区で岸田首相が2回も応援に入ったにもかかわらず大敗し、首相の“解散断念”につながったとされているが、官邸では補選直後に敗因を分析し、全く違う結論を出したという。

「最大の敗因は自民党のサボタージュだ。島根で勝てば総理が解散・総選挙に踏み切ると心配した自民党議員や公明党が、“負けたほうがいい”と考えて選挙に身を入れなかった。そのため組織票が動かなかった。衆院の補選は3選挙区ともに投票率が過去最低だったが、総理は、解散・総選挙を打っても組織票さえ動けば戦えると考えている」(前出・岸田側近)

 岸田首相には、自民党の組織票を動かす「奥の手」がある。それを発動していた。

 本誌・週刊ポストはそれを示す自民党の内部資料を入手した。
 
「前年度を上回る」を連発
 自民党組織運動本部団体総局が3月に作成した〈令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】〉と題するA4判31ページの文書だ。

 全国1000社以上が加盟する団体の事務局幹部が語る。

「自民党は300以上の業界団体を建設、農林水産、厚生、宗教関係など15分野に分類し、分野別に都内のホテルで総理や幹事長らが出席する『各種団体協議会懇談会』という陳情会を開いている。そこで各団体の代表が予算や補助金、税制特別措置の要望書を手渡し、予算概算要求の前や年末の税制改正の前には役所や議員会館に陳情攻勢をかけるわけです。

 そして自民党議員たちは新年度の前に、各団体に『あなたがたの要求をこれだけ実現した』と成果をアピールする。資料はそのためのものです。われわれ団体側は見返りに献金やパーティー券を引き受け、選挙になれば名簿を提供し、総理など党幹部の遊説には各団体から応援の人出を動員し、人も票もカネも出すわけです」

 文書は自民党の「票とカネ」を根幹で支える業界へのバラ撒きを示すものだ。

 内容を個別に見ていくと、日本医師会などは診療報酬引き上げ、建設コンサルタンツ協会は公共事業費の確保など、各団体が予算や補助金の増額、業界への税制優遇を求める要求のオンパレードで、ほぼ“満額回答”だ(リスト参照)。

「資料を見れば、岸田首相が今年を“総選挙イヤー”にする見通しを持っていたことがよくわかる。資料の中の『自民党の回答』欄には『前年度を上回る』という文言が連発され、今年は特に幅広い業界に例年以上の補助金を計上、税制優遇の措置が取られている」(同前)

 古くからの自民党支持団体として知られる日本行政書士会連合会は、「マイナンバーカード交付事務費補助金の確保」を要望し、自治体に約743億円の補助金が出た。なぜ行政書士会がマイナ普及を求めるかというと、自治体は地元の行政書士会にマイナカードの申請サポートや代理交付の業務委託を行なっており、行政書士には申請1件2000円、代理交付の受け取りも1件2000円が入る。その予算は国が自治体に出す補助金で賄われており、行政書士のビジネスに直結するのだ。
 
 政策の意外な舞台裏も見えてくる。

 この4月から、サラリーマンが社外の人と飲食した時に損金不算入(非課税)となる交際費が従来の1人当たり5000円以下から「1万円以下」へと2018年ぶりに引き上げられた。喜んだ“社用族”も多いだろう。政府は「物価上昇のため」と説明しているが、文書からは、サラリーマンのためではなく、自民党の支持団体である全国商工会連合会などが売り上げを増やそうと強く働きかけたことで実現したことがわかる。

 庶民には無縁なものも目立つ。経団連や日本暗号資産ビジネス協会は、企業が保有する「暗号資産」の税制見直し(優遇)を求めて実現した。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。

「本来、政治は国民の生活を豊かにするものでしょう。しかし、この資料からは、自民党は国民に負担増を押しつけているのに、パーティー券を買ってくれたり、選挙を手伝ってくれる業界や団体には補助金や税の優遇で細かくサービスしていることがわかる。国民から召し上げたカネを業界にせっせと配っているのが自民党政治の実態なんです」
 
 

【自民党・内部報告書入手】業界への補助金バラ撒きを進めて「組織票」頼みの解散・総選挙に踏み込む岸田首相

 
 
 岸田首相には、自民党の組織票を動かす「奥の手」がある。それを発動していた。本誌・週刊ポストはそれを示す自民党の内部資料を入手した。

 自民党組織運動本部団体総局が3月に作成した〈令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】〉と題するA4判31ページの文書だ。文書は自民党の「票とカネ」を根幹で支える業界へのバラ撒きを示すものだ。

 内容を個別に見ていくと、日本医師会などは診療報酬引き上げ、建設コンサルタンツ協会は公共事業費の確保など、各団体が予算や補助金の増額、業界への税制優遇を求める要求のオンパレードで、ほぼ“満額回答”だ(リスト参照)。そして、これらの団体は選挙において“組織票”となるというわけだ。

解散前の人事で勝負
 これらの団体はどれだけの集票力を持つのか。

 有力な団体は、自民党の参院の比例代表に「組織内候補」を擁立し、議員を送り込む。組織内候補の得票数(2022年参院選)を見ると、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護連盟など医療系団体は約69万票、全国郵便局長会は約41万票、農政連など農協系は約18万票と巨大だ。
 
 自民党が何度も政治とカネの不祥事を起こし、国民の怒りを買っても政権を維持できるのは、補助金(カネ)と票のギブ・アンド・テイクで結びついたこれらの団体の「組織票」があるからだ。

 岸田首相は業界団体へのバラ撒きを進めることで、「組織票」を頼みに解散・総選挙に踏み込もうとしている。
 
 4月末の補選全敗を受けて、岸田首相側近の木原誠二・自民党幹事長代理は「いま自民党は非常に厳しい状況だ。(総選挙になれば)政権交代が起こってもおかしくない」と語ったが、その真意は別にある。

「自民党が政権を失うと業界団体は困る。木原さんは総理の意を汲んで、業界団体の危機感を煽ることで総選挙で組織票をフル動員させようとしている」(岸田側近)

 官邸では国会閉会後に内閣改造と自民党役員人事を行なって人事一新し、「総選挙シフト」を敷くプランが練られている。官邸スタッフが言う。

「岸田首相が警戒しているのは大臣たちの解散への抵抗だ。閣僚で解散に強硬に反対しそうな大臣を全員交代させておく必要があると考えている」

 党役員人事では、これまで主流3派として政権を支えてきた麻生太郎・副総裁、茂木敏充・幹事長の交代が既定路線だ。自民党閣僚経験者はこう見る。

「総理は就任時に党役員の任期を最長3年に制限した。麻生さんも茂木さんも任期3年目の半ばを過ぎたから、役員改選となれば自動的に退任でしょう。後任の幹事長は選対委員長を経験した森山裕・総務会長を起用するんじゃないか。他に選挙を仕切れる人物はいない。

 内閣改造も大幅になる。新大臣は安倍派や二階派を一掃し、ポスト岸田に名前が挙がる石破茂、河野太郎、小泉進次郎の小石河トリオ、上川陽子・外相や高市早苗・経済安保相も全員入閣・留任させる。

 麻生さんの後任の副総裁には、反主流派の菅義偉・前総理に打診する可能性もある」

 総裁選で動けないようにライバルを閣内と党役員に封じ込めておく構想だ。そのうえで、「組織票」に選挙の号令をかける。
 
 政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。

「解散を諦めたと思われている岸田首相が抜き打ちで解散に動けば、自民党内は阿鼻叫喚になるでしょう。しかし、総理大臣がひとたび伝家の宝刀(解散権)を抜くと腹を固めれば、自民党にも野党にも総理を引きずり下ろす手段はない」

 だが、そんなやり方で有権者の批判をかわし、業界頼みで選挙を乗り切れると思っているなら、岸田首相はいまや完全に「裸の王様」である。
 
 

参院憲法審、初の討議 緊急集会めぐり論戦 改憲前提の衆院とは距離

 
山添拓 議員は憲法審査会で意見表明。「裏金が選挙犯罪に使われた疑いが拭えず、現在の議席は公正な選挙の結果とは言えないのではないか、憲法前文の『正当に選挙された国会における代表者』に値しないのではとの批判を免れない。民主政治の土台を揺るがす事態を招いた議員に改憲を語る資格はない」
 
 
 今国会で初めてとなる参院憲法審査会の自由討議が8日、開かれた。大規模災害などの緊急事態時に、憲法が定める参院の緊急集会で対応が十分かという点を軸に議論を交わした。ただ、衆院憲法審のように、緊急時対応のための憲法改正を前提にした議論とは、距離をとる形となった。
 
 これまでの衆参両院の憲法審では、緊急事態を想定して、憲法を改正して衆院議員の任期を延長するべきか、現行の憲法54条に定められた参院の緊急集会で対応するかが主な論点となってきた。

 この日の討議では、自民の佐藤正久筆頭幹事が「(緊急集会で対応すべきかどうか)参院の考えを明確にする必要がある」と議論を呼びかけた。衆院の任期延長のための改憲には触れなかった。