警察や政治家と賄賂でつながっている…!あいつらは恐ろしすぎる…!「ルフィ」すら支配下に置く日本人最恐マフィア「JPドラゴン」現地ルポ

 
 
 「ルフィ」を逮捕しても、連続強盗事件は終わりではなかった―。常軌を逸した暴力でメンバーを支配し、凶悪事件を裏で操った「JPドラゴン」の実態とは。気鋭のジャーナリストが徹底取材で暴く。
 
これ以上、深入りしないほうがいい
 フィリピンの首都・マニラにある歓楽街マラテ。日本料理店やキャバクラ、カジノなどが立ち並ぶこのエリアで聞き込み取材をしていると、「JPドラゴン」の仕事を手伝っていたという男性から話を聞くことができた。男性は周囲を見回し、声をひそめてこう語った。

 「あの組織はフィリピンの警察、入国管理局、政治家、実業家すべてとカネでつながっている。現金を渡すこともあるし、何百万円分もの日本の高級フルーツを配ることもある。フィリピンはカネがあれば何でもできる。犯罪をしても逮捕されないし、人を殺したって……。アンタも、これ以上あいつらには深入りしないほうがいい」

 '22~'23年にかけて、特殊詐欺や強盗事件を繰り返し、日本全国を震撼させた「ルフィグループ(以下・ルフィG)」の幹部らが逮捕されてから1年以上が過ぎた。主犯格とされる今村磨人被告(39歳)については、再逮捕が繰り返されるなどして未だ裁判は始まっていないが、最近になって、ルフィGの黒幕といわれる存在がいたことが明らかになった。

 今年3月、フィリピン司法当局が、「JPドラゴン」と呼ばれる犯罪集団のナンバー3・小山智広容疑者(49歳)を詐欺容疑で拘束したことを明らかにしたのだ。

ルフィとドラゴンの会話
 ルフィGはJPドラゴンの支配下にあった。そのことを示す、こんなエピソードがある。

 小山容疑者は昨年2月下旬、協力者の弁護士を使って警視庁原宿署内に携帯電話を持ち込ませ、勾留中の今村被告とLINEのビデオ通話で"面会"していた。そのなかで小山容疑者は、

 「磨人、お前のことは守ってやるからな。でも、ボスや俺たちのことは話すなよ」

 と、指示。それに対し今村被告は、

 「ありがとうございます!」

 と語り、スマホの画面越しに深々と頭を下げた。まさに、暴力団の兄貴分と舎弟のようなやり取りである。

 東京都狛江市に住む90歳の女性宅に強盗に入り、何度も殴りつけて死亡させるなど、ルフィGは数々の凶悪事件を起こしてきたことで知られる。そんな極悪集団のトップとされる今村被告を、手下として扱うJPドラゴンとは何者なのか。その実態を明らかにすべく、筆者は4月上旬、彼らが根城とするフィリピンに飛んだ―。
 
賄賂で地位を築いた
 JPドラゴンが活動拠点の一つとしているマニラで聞き込みをしても、冒頭のとおり、関わった人物のほとんどは多くを語らなかった。幹部を接客したことがあるというキャバクラの女性は、JPドラゴンの名前を出した途端、恐怖のあまりガタガタ震えながらトイレに駆け込み、二度と席には戻らなかったほどだ。

 だが、取材を続けていると、JPドラゴンの成り立ちを知るという元メンバーにたどり着くことができた。

 「JPドラゴンは、ボスのヨシオカリュウジ(50代)が30年ほど前に作った組織です。もともとヨシオカは親戚が神戸山口組の組員で、自身も深い関係があるとされています。

 JPドラゴンの名前の由来は、ジャパンとフィリピンの頭文字に、『リュウジ』からもじったドラゴンをつけたもの。フィリピンに渡ってきた当初は、日本料理店のオーナーを恐喝して『みかじめ料』をかすめとることをシノギにしていました。ヨシオカは神戸山口組の後ろ盾を使ってカネを稼ぎ、警察や政治家にワイロを渡して地位を築いていきました」

警察を使って逮捕させた
 組織が巨大化したのは、'18年頃。それまでタイを拠点に活動していたルフィGが、大規模摘発を逃れるためフィリピンへと移ってきたことがきっかけだった。元メンバーが続ける。

 「JPドラゴンはルフィGの存在を知ると、『俺たちに上納金を払わないと警察に言っちゃうよ』と得意の恐喝を行いました。当初、上納金は月に500万円でしたが、その後どんどん釣り上がり、最終的には5000万円を要求。ルフィGが一度支払いを拒むと、JPドラゴンは囲っている警察を使って拠点に踏み込ませ、ルフィGのメンバー36人を逮捕させたのです。

 これにより、ルフィGはヨシオカの恐ろしさを思い知らされ、JPドラゴンの完全な支配下に入りました」

 それまで、JPドラゴンには5人ほどのメンバーしかいなかったが、ルフィGを吸収したことで急成長。メンバー30人以上の犯罪集団となり、年間100億円超ともいわれる莫大な稼ぎを得るようになった。

 

裏切れば警察に密告…!すでに10人ほどが殺されている…!ルフィの黒幕「JPドラゴン」の異常すぎる「暴力支配」をすべて明かす

 
JPドラゴンが「強盗リスト」を購入していた
 筆者は'23年5月に窃盗容疑で逮捕された佐藤翔平・ルフィG元幹部にも取材。「箱」と呼ばれるフィリピン国内の詐欺拠点を管理していた佐藤は、JPドラゴンとルフィGの関係についてこう証言した。

 「JPドラゴンは強盗をするためのリストを日本にいる『業者』から買っていました。リストには狙いやすい家の住所が並び、タンス預金がいくらあるか、どこに隠してあるかなど強盗に必要な情報が書かれていた。強盗のリストは特殊詐欺のリストよりも値段が高く、1件10万円はしますが、JPドラゴンの幹部が買い、ルフィGの今村に届けていました」

 リストを買っていたこの幹部こそ、「俺たちのことはしゃべるな」と今村被告に語っていたナンバー3の小山容疑者だ。ルフィGの幹部らはフィリピンの外国人収容施設から指示を出していたことが知られているが、小山容疑者は施設にいるルフィG幹部と毎日のように連絡を取り、名簿やスマホ、現金や食料を届けていたという。

 佐藤が続ける。

 「小山は『あいつらは収容所にいるので、もう捕まることがない。ドンドン(犯罪を)やらせよう』と言っていました。特殊詐欺だけでなく、強盗をやるようになったのもJPドラゴンの指示。やっぱり、詐欺よりタタキ(強盗)のほうが稼ぎがいいですからね。一度に3000万円といった大金が入ることもありました」

 ヨシオカらJPドラゴンの幹部による支配の方法は、警察への「密告」だけではない。ときには、日本の暴力団関係者をフィリピンに招いて豪華なパーティを開催するなど、影響力を誇示することもあった。
 
日常的に殺しが行われる
 そして、徹底的な暴力と恐怖によって、メンバーを逃げられない状況に置いていたという。

 「ボスのヨシオカや『キング』と呼ばれるナンバー2が、かけ子を監視しながらカネを稼ぐように尻を叩き、ミスをすれば拳銃を突きつけ脅す。パスポートも没収され、『裏切ったら警察に通告するぞ』『日本の実家に行くぞ』と脅されるから、メンバーは逃げることができなかった」(元メンバー)

 そんな組織に不満を持ち、裏切りを試みる者もなかにはいたという。前出の佐藤もその一人で、「箱」に置いてあったカネを持ち逃げしようとしたことがある。

 別の元メンバーが明かす。

 「しかし結局、佐藤の計画は露見し失敗に終わりました。ヨシオカは自身が住む高級ペントハウスに佐藤を呼び出すと、いきなりペットボトルの水を顔にかけ、『お前がカネをとったのか』と凄んだ。佐藤は必死に関与を否定し、なんとかヨシオカの追及を免れました。するとヨシオカの怒りの矛先は、佐藤と一緒に持ち逃げを共謀したAという別のメンバーへと向かいました」

 Aはその後、「行方不明」ということになっているが、JPドラゴンの関係者は口をそろえて「すでに殺されている」と断言した。

 「ミスをしたかけ子の一人が、みんなの前でいきなり撃ち殺されるのを見た人もいる。それくらい、JPドラゴンでは殺しが日常的に行われていました。しかし、警察にワイロを渡しているため罪が及ぶことはない。『自殺』として処理されたり、『病死』ということになったり……。私が知る限りでも、10人ほどが謎の死を遂げています」(同前)

オンナJPドラゴンも登場
 ルフィGを支配下に置き、詐欺や強盗をやらせ、逆らう者は容赦なく抹殺―。まさに最恐マフィアともいえるJPドラゴンだが、彼らの栄華にも最近は陰りが見え始めている。

 支配していたとはいえ、JPドラゴンの稼ぎの大半はルフィGの強盗や詐欺によるものだった。それだけに、'23年以降、ルフィGのメンバーや幹部が次々と逮捕されると、勢力は激減。ヨシオカの目を盗んで脱走するメンバーも続出しており、JPドラゴンの正規メンバーは現在、7~8人ほどしかいないという。

 「代わりにフィリピンで台頭してきているのが、『アスカ』と呼ばれるオンナ詐欺師です。アスカもJPドラゴンの脱走組だけに、『オンナJPドラゴン』なんて呼ばれ方もしています。アスカは現在、7人ほどのメンバーとともにマニラ北部で特殊詐欺をして荒稼ぎしています」

 そう語るのは、かつてアスカと同じ箱で仕事をしていたことがあるという元かけ子の男性だ。アスカには、天才的な詐欺センスがあるという。

 「アスカの詳しい素性はわかりませんが、シングルマザーで、幼い子供をベビーシッターに預けながら詐欺をしていました。体重は100kgくらいあって迫力がありますが、見た目とは裏腹に詐欺の電話をかけるときはソフトなしゃべり方。アスカの詐欺の才能は本物で、『今日は5000万円稼ぐ』と宣言すると、本当に一日で5000万円を稼いでいました」
 
極悪集団を壊滅させることはできるか
 そんな"天才詐欺師"をヨシオカが放っておくはずがない。関係者によると、ヨシオカはフィリピン人の探偵を雇い、アスカの居場所を探って張り込みを続けさせているという。

 「才能があるだけに、ヨシオカがアスカを見つけてもすぐに殺すことはない。拉致して詐欺をやらせるでしょう。でも、従わなかったときはどうなるかわかりません……」(同前)

 勢力の低下と同時に、フィリピンの現地警察も動き出している。ルフィGの事件以降、日本からJPドラゴンについても逮捕・引き渡しの要請があったとみられ、ようやくナンバー3の小山容疑者を拘束した。

 だが、実はこれも、ヨシオカの仕組んだことだという見方もある。

 「小山が捕まったのは、JPドラゴンが経営する飲食店。ヨシオカの命令で小山が店に行ったところを逮捕された。自身が逮捕を免れるため、ヨシオカが小山を身代わりとして差し出したのかもしれません」(元メンバー)

 現在もJPドラゴンが関与する詐欺事件は多数起きているとされる。極悪集団を壊滅させることはできるか。

 「週刊現代」2024年4月27日・5月4日合併号より