小池都知事の公約「築地は守る」どこへ? 食のテーマパーク機能を有する市場のはずが“多目的スタジアム”に巨人が移転?

 
「仲卸を築地と豊洲に分断すれば『世界一の魚市場』のスケールメリットを失う。最初から現実味のない構想でしたが、言いっ放しの小池知事に今も一部業者は『だまされた』との思いが強い。本人はどこ吹く風でしょうが、だまされた側は決して忘れません」
 
 7年前の公約は全て口から出任せ。恐ろしいのは、まだ小池知事が「築地は守る、豊洲を生かす」の方針を撤回しないことだ。再燃した学歴詐称疑惑も「ウソつき女帝なら……」と思えてくる。
 
 
 2018年に83年の歴史に幕を下ろした東京・築地市場。その跡地の再開発事業者が先週、三井不動産中心の企業連合に決まった。計画案では中央に5万人収容の屋根付き「多目的スタジアム」を配し、総事業費は約9000億円、32年度の開業を目指す。読売新聞グループも企業連合に参加。「巨人の本拠地、築地移転か」と世間をにぎわせたが、ちょっと待て。

「築地は守る、豊洲を生かす」──。小池都知事の公約を忘れては困る。17年6月に豊洲市場への移転と築地再開発の基本方針を表明。長年培った築地市場のブランド力を活用し、22年度をメドに跡地を「食のテーマパーク機能を有する新たな市場として東京を牽引する一大拠点とする」と力説したものだ。同時に築地に戻る仲卸業者への経営支援にも言及。移転反対派が多かった仲卸に配慮した懐柔策には、大きな関心が寄せられた。


 ところが、同年11月に小池知事は「食のテーマパークとは、築地の歴史を踏まえた一つの考えた方」と選択肢の一つに過ぎない点を強調。豊洲移転を果たすと、構想はすっかり立ち消えに。今回の計画案にも〈歴史ある「食」を堪能できるフードホール〉が申し訳程度にあるだけで「新たな市場」はどこにもない。移転反対派で東京中央市場労組・執行委員長の中澤誠氏が言う。
 
 
豊洲も生かしきれず
 
「仲卸を築地と豊洲に分断すれば『世界一の魚市場』のスケールメリットを失う。最初から現実味のない構想でしたが、言いっ放しの小池知事に今も一部業者は『だまされた』との思いが強い。本人はどこ吹く風でしょうが、だまされた側は決して忘れません」

 約6000億円も投じた豊洲市場も生かせていない。開場5年で水産物の取扱量を年約62万トンに引き上げる計画なのに、昨年度の取扱量は約29.5万トンと半分以下だ。築地時代最後(17年度)の38.5万トンよりも落ち込んでいる。

 場内では運搬車「ターレ」に乗車中の死亡事故が少なくとも3件あり、今年2月にも発生したばかり。地盤沈下のくぼみでバランスを崩し、運転者が転落。地面に頭部を強く打ち付けたという。


「立地の悪さのせいで客足は減り、人手不足で従業員を募集しても誰も来ません。2月開業の『豊洲 千客万来』はにぎわっていますが、場内の飲食店にすれば客を奪う“ハラスメント施設”です」(中澤誠氏)

 7年前の公約は全て口から出任せ。恐ろしいのは、まだ小池知事が「築地は守る、豊洲を生かす」の方針を撤回しないことだ。再燃した学歴詐称疑惑も「ウソつき女帝なら……」と思えてくる。
 
 

〈東京15区補選・女帝の面目丸つぶれか?〉学歴詐称疑惑、つばさの党の「凸」で大苦戦中の小池百合子都知事に手を差し伸べた「自民党大物議員」の名前

 

4月28日に投開票される東京15区補選。自民、公明が候補者を擁立しなかったなか、小池百合子東京都知事が擁立した乙武洋匡氏が各社の情勢調査で、まさかの大苦戦を強いられている。政治団体「つばさの党」が乙武氏陣営に「凸」と称して妨害行為を繰り返していることも悩みの種となっており、7月の東京都知事選を前に小池氏の焦りは増すばかりだ。
 
小池氏自ら「ウグイス嬢」となり「ゲリラ戦」
「私、小池百合子とともに、候補者本人、乙武洋匡。この車からみなさま方にお願いでございます」

選挙戦も折り返しを過ぎた4月23日、小池氏自らが「ウグイス嬢」となって選挙カーから乙武氏への支持を呼びかけた。
その1、2日前から各社で相次いで報じられた情勢調査は衝撃的なものだった。

「いずれも、立憲の酒井菜摘氏が1番手。2番手として最も多く名前が挙がっていたのは維新の金澤結衣氏でした。そして、その後に日本保守党の飯山陽氏や乙武氏、須藤元気氏らが団子状態で続く、という傾向がおおむね共通しており、『小池氏が擁立した乙武氏が3位以下では、目も当てられない』と永田町がざわつきました」(全国紙政治部記者)

乙武氏の過去の女性問題に加え、最近では小池氏の学歴詐称疑惑も再燃。自民、公明の推薦を受けない事態となったことも小池氏にとっては誤算だった。さらに、各陣営に「凸」と称して妨害行為を繰り返しているつばさの党の存在も、小池氏の悩みの種になっているようだ。

「選挙戦が始まった序盤から、演説中の小池氏が学歴詐称疑惑についてマイクでヤジを飛ばされる妨害を受け、乙武陣営はすぐに警察側に対処を要請。その後、小池氏の街頭演説の日程については事前のアナウンスをしなくなりました。

現在は陣営スタッフが当日に地図を見ながら、その日の行き先を決めています。つばさの党は車を数台用意し、東京15区内を走って各陣営の選挙カーを探し回っているので、乙武陣営も小池氏を守るために、『ゲリラ戦』をするしかないのです」(同)

これまでの選挙では知名度の高い小池氏が街頭演説を告知すれば、大勢の聴衆が集まっていたが、それもできなくなってしまったのだ。
さらに、4月21日に投開票された目黒区長選でも、都民ファーストが推薦した候補者が現職に敗北。東京都内の各自治体に自身の息のかかった首長を置いておきたい小池氏としては、手痛い負けとなった。
 
窮地の小池氏に手を差し伸べたのは…
ただ、ここにきて、窮地の小池氏に救いの手を差し伸べる動きも出てきたようだ。
小池氏は23日、自民党本部で開かれた自民東京都連の勉強会に、都の幹部とともに出席。この勉強会には萩生田光一政調会長や丸川珠代都連会長代行らが出席し、小池氏は「都の成長戦略」をテーマに議論したという。
小池氏は記者団に、補選については話題に出なかったと強調したが、このタイミングで初めて開催された自民都連と小池氏との会合に、永田町は色めき立った。

「今回、自民は乙武氏の推薦を見送りましたが、もともと小池氏と萩生田氏は頻繁に会食を重ねるなど近い間柄。
萩生田氏の地元・八王子市で1月にあった市長選では、裏金問題を抱えていた萩生田氏が表立って身動きがとれなかったところ、小池氏が選挙戦終盤、自民推薦候補の応援に入り、なんとか勝利を収めました。いわば萩生田氏は小池氏に『借り』ができた状態。

今回、乙武氏が2位どころか3位、4位になってしまうと、小池氏の求心力は大きく低下し、7月の都知事選での再選も厳しくなってしまうかもしれません。そのため、小池氏が萩生田氏に協力を求めた、とささやかれています」(自民党関係者)

実際、永田町では「小池氏が自民都連関係者に『乙武氏をよろしく』と頼み込んでいるため、乙武氏が追い上げてきた」との見方が強まっている。

「日経新聞やJNN、共同通信、読売新聞の情勢調査では4番手以下だった乙武氏ですが、4月21日に報道された朝日新聞の情勢調査では2番手。いずれにせよ、金澤氏、飯山氏らとの混戦状態に変わりはなさそうですが、自民の水面下の協力による伸びしろはありそうです」(全国紙政治部記者)

昵懇の二階氏も引退……小池氏の今後の勝負どころは
これまでも希望の党政局での失速や、都議選での都民ファーストの会の議席減など、自身が関わった選挙戦では必ずしも勝利ばかりではなかった小池氏。
今回の東京15区補選も、永田町では立憲・酒井氏が優位との見方が圧倒的だ。それでも、小池氏が擁立した乙武氏がどのような結果を残し、小池氏が7月の東京都知事選に向けどう動いてくるか、また国政復帰はあるのかについての関心は相変わらず高い。

小池氏は現在、71歳。首相を狙うなら、国政復帰のタイムリミットは迫っているが、そのシナリオは狭まってきている。

「これまで小池氏と昵懇だった二階俊博元幹事長は、次期衆院選には立候補しないことを決めました。小池氏と近い関係の萩生田氏が党内にいるとはいえ、自民党を離れて5年以上にもなる小池氏が、はたして自民党総裁になれるのか。
さらに首相を目指すとなると、今回のように学歴詐称疑惑が再び注目されるのは間違いない。道は険しいと思います」(自民党関係者)

現状、7月の都知事選での再選を目指すとみられる小池氏だが、「今回の東京15区補選だって、つばさの党の妨害の被害者として同情を集める可能性もある。とにかくどんなタイミングで風を吹かせ、何を仕掛けてくるかわからない」(立憲衆院議員)と相変わらず恐れられている。

「女帝・小池百合子」が再び息を吹き返すことはあるのか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班