1ドル155円台突入でバレた日銀の嘘…「円安は全体としてプラス」の誤認識で国民疲弊、日本経済は衰弱へ=斎藤満

 
アベノミクスのツケで出口がなく日銀袋叩き
日銀の金融政策決定会合中に、1ドル=155円70銭と155円台後半に入った。まもなくあと一歩で156円を迫っている。
 
植田和男日銀の不都合な真
植田和男総裁になって1年、日銀の営業毎旬報告で当座預金は28兆円増えて571兆円、資産/負債は24兆円増えて757兆円に拡大し、防衛費拡大を支えてきた。金融政策決定会合を前に、足下を見られている。植田日銀だ。
植田和男日銀が中央銀行として禁じ手の財政ファイナンスを行い、円安バブルと格差拡大を続け、日本から資金が流出し続けテイル。日銀は600兆円を回収できず、FRBは260兆円を回収できた。ますます脆弱化する日銀だ。
 
日銀の金融政策決定会合をあざ笑うように、1ドル=155円を突破した。ウエダメは利上げなどできるならしてみろと言わんばかりだ。キシダメ政権の無力ぶりもひどい。次は国債売りが待ち構えている。財務省のインフレ課税路線に協力するリフレ派とMMTは犯罪的。

ついに1ドル155円台へ突入し、約34年ぶりの大幅な円安となっています。外国人旅行者が喜ぶ一方で、日本人が苦しい生活を余儀なくされる現実を突きつけられる結果に。そもそも自国通貨の下落で栄えた国はありません。「円安は全体としてみれば日本経済にプラス」と言って国民を騙してきた政府・日銀の責任が問われます。
 
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

「円安はプラス」という誤った認識
34年ぶりという1ドル155円台の大幅な円安がはびこり、外国人旅行者が喜ぶ一方で、日本人が苦しい生活を余儀なくされる現実を突きつけられています。

この状況を目の当たりにして産業界からも円安は困る、との声が上がるようになり、ワシントンでの日米韓財務相会合で、急激な円安、ウォン安が問題だとの認識を共有しました。

日本の自国通貨安をプラスとしてきた為替に対する誤った認識がようやく修正されようとしています。
 
 
バブル崩壊後の日本経済の停滞を円高のせいにして、アベノミクスは大規模緩和による自国通貨の下落、つまり円安を利用して日本経済(企業)を活気づけようとしました。

ところが、企業は円安で容易に利益を上げられた一方で、多くの国民が長い間価値の低下した円通貨のもと、生活水準を大きく低下させるという負担を強いられることになりました。

円高デフレのウソから始まった
ニクソンショック以降、日本経済は約20年の間、円高傾向の中で繁栄してきました。

80年代後半には強い円が米国の象徴的なビル買収を可能にし、ハワイも買えると豪語する向きもありました。ここまでは円高で日本は強さを世界にアピールしました。

ところが、90年にバブルがはじけてその後資産デフレ、バランスシート不況に陥ると、日本は「失われた10年、20年」を余儀なくされ、長期停滞局面に入りました。銀行の不良債権処理の遅れ、対応の間違いを棚に上げ、時の政府は経済停滞の責任を円高、並びにこれを放置した日銀に押し付けました。

ここに「円高デフレ」という言葉が不用意に使われ、メディアもこれを無批判に使いました。
 
経済停滞の原因はパブルの崩壊と資産デフレ、バランスシート不況にあり、それを生んだ80年代のバブル政策だったのですが、病根にはメスが入らず、「円高デフレ」が敵視され、安倍政権は日銀に異次元緩和を求め、ひたすら円安誘導を進めました。

実際には円高で日本がデフレに陥ったことはないのですが。それでも大規模緩和で円安株高が実現したために、「アベノミクスの成果」と喧伝されました。
 
円安は全体としてプラスとした日銀の大罪
異次元の金融緩和で円安が進み、株価も上昇したのですが、その一方で国民は高い輸入品を買わされることになり、日本経済の採算が悪化、国内所得はかえってマイナスになりました。

しかも金利は長短ともになくなり、預金者は金利収入を奪われたばかりか、利ザヤを得られなくなった銀行の収益悪化が、預金者にしわ寄せされました。
 
コスト削減と言って銀行は店舗やATMを減らし、銀行サービスが劣化しただけでなく、振込手数料が引き上げられ、新規の通帳発行も有料になりました。

YCCによる大規模緩和が結局預金者に付け回しされる羽目となりました。日銀が国債やETFを買い占めたために、市場の流動性が減り、市場機能が低下しました。

こうした副作用満載の異次元緩和、円安誘導に対しても、黒田日銀総裁(当時)は「円安は全体としてみれば日本経済にプラス」と言って放置しました。

この10年の積み重ねが、日米で5%以上開いた政策金利差、150円越えの円安をもたらしました。アベノミクスによる円安誘導の大罪が問われています。
 
甘いハンデで鍛錬をさぼった日本企業
円安で企業は容易に利益を上げられるようになったのですが、かつてシングルハンデの実力を持った日本企業も36の甘いハンデをもらって楽勝となったため、練習をさぼっているうちに力も落ちてしまい、アジアの新興国に追い上げられました。

円安でかえって、日本の競争力は低下しました。

80年代末に世界の株式時価総額トップ10は日本企業(特に銀行)がほぼ独占していましたが、いまやトップ10に入る日本企業は消えました。

気が付けば中進国
80年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称えられた日本も、昨年のGDP(国内総生産)はドイツにも抜かれて4位に後退、近いうちにインドにも抜かれそうです。

1人当たりGDPではさらに悲惨で、IMFによる予測では23年の1人当たりGDPはトップのルクセンブルクが13万5,000ドル余りに対して、日本はその4分の1の3万4,000ドル弱で世界第34位に落ちました。キプロスやバハマにも抜かれました。
 
80年代には世界経済のリーダー国の1つと見られましたが、今日ではOECD38か国の中でも21位と下位に甘んじるようになり、世界の中進国になり下がりました。円安で日本経済の大安売りをした結果です。

この円安が続くと、1人当たりGDPは間もなく韓国、台湾にも抜かれます。
 
膨らんだ日銀資産のツケ
植田日銀総裁は3月19日、異次元緩和はすでに役割を終え、今後は短期政策金利による金融調節に戻ると述べました。しかし、異次元緩和を10年も続けた結果、日銀が保有する国債の残高は590兆円にのぼり、国債発行総額の半分以上を保有する事態となりました。日銀の総資産は3月末で756兆円に上ります。
 
この資産に見合った流動性が市場に供給されているわけで、これを吸収する過程では新たな副作用、軋轢が生じます。

ワシントンG20後の会見で、植田日銀総裁は、円安が物価に大きな影響を与えるなら政策の調整(追加利上げ)を検討するといい、財務省の鈴木大臣は、(円安は困るが)円安は金利差だけで決まるわけではないと述べています。

金利上昇による膨大な国債の金利負担の高まりを警戒しています。金融政策の正常化には程遠い状況にあります。

自国通貨の下落で栄えた国はない
日銀による円安誘導のための大規模緩和を「国是」とするアベノミクスを10年も続けた結果、日本経済の衰弱が明らかになりました。“円安は全体としてプラス”と国民をだました結果です。

これは昨年の日本のGDP590兆円の128%にのぼります。FRBが膨らんだ資産の圧縮を迫られていますが7兆ドルのFRB資産は28兆ドルの米国GDPの25%になります。日銀資産がいかに膨大になったかがわかります。
 
そもそも、自国通貨が下落して栄えた国はありません。むしろアルゼンチン、トルコなどは通貨下落で経済危機に陥り、90年代後半にはアジア通貨危機、ロシアのルーブル危機を目の当たりにしています。

通貨安誘導が経済によいなら、今頃アルゼンチンもトルコも世界の先進国になっていてよいはずです。タイやインドネシア、ロシアも通貨下落に苦しまずに栄えても良さそうですが、現実は通貨安が経済の大きな負担になりました。

「嘘も方便」といいますが、日本だけが円安で栄えるというのは、あまりに稚拙な嘘で、そのウソに気づくまでに日本は高い授業料を払う結果となりました。
 

日銀のマイナス金利の解除で「円安も止まる」と考えていた「関係者たち」の残念すぎる勘違い

 
<日銀が金融政策を転換した後も、為替は円高に戻すどころか円安がさらに進行。予測を外した関係者たちが「見落としていた」ものとは?>【加谷珪一(経済評論家)】
 
日銀が「マイナス金利の解除」という政策転換を実施したにもかかわらず円安が進んでいる。多くの関係者が、金融政策の転換が行われれば円高に戻すと説明していたのに、その逆になっている背景には、為替市場に対する認識不足がある。
 
為替というのは相対取引であり、相手が存在する以上、日本側の要因だけで市場を動かすことはできない。この原稿を書いている時点で為替介入は実施されていないが、仮に行われたとしても、相手の経済環境を変えることは不可能であり、抜本的に円高トレンドに戻すのは難しいだろう。

仮に円高に転じることがあるとすれば、日銀が本格的な利上げに舵を切り、膨張したマネーを吸収するフェーズに入った時である。

日本円は過去3年間で、1ドル=100円台から150円台まで3割も減価した。一連の円安については、アメリカの金利が高く、日本がほぼゼロ金利なのでマネーがドルに流れていることが原因と説明されてきた。

その論理でいけば、日銀が利上げに転じれば円高になるとの予想が成立する。実際、多くの専門家は日銀が政策転換を表明すれば円高になると説明していたが、フタを開けてみると、むしろ円安が進んでいる状況だ。

■日本は当面、緩和的政策を続けざるを得ない

為替というものが2国間の相対的な関係性で決まる以上、日本が金利を上げても、相手国の金利がさらに高ければ状況は変化しない。

アメリカは簡単に利下げできるような環境になく、一方で日銀はマイナス金利を解除したとはいえ、日本経済は急激な金利上昇に耐えられないので、当面、緩和的政策を続けざるを得ない。アメリカは金融引き締めが続き、日本は金融緩和が続くということなので、円安は進みやすいとの解釈になる。

さらに言えば、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備理事会)は、過去2年間で1.5兆ドル(約230兆円)もの資金を市場から回収する一方、日銀は600兆円のマネーの回収が全く進んでいないだけでなく、国債の買い入れを当分継続する予定であり、市場にはマネーが供給され続ける。

マネーの供給過剰はインフレ要因となるため、市場は日本の物価上昇は簡単には止まらないとみている。日米の金利差が縮小せず、日本のインフレ予想が高まっている状況なので、当然、為替市場には円安の力学が働く。

今回の日銀の政策転換は日本にとっては大きな変化かもしれないが、日米両国という視点で見ると、状況は何も変わっていない。結果として円安が進みやすいという環境もそのままである。

■「円安が進んでほしくない」という感情が論理的判断を邪魔

多くの関係者が「相手」の存在を見落としてしまうのは、「これ以上円安が進んでほしくない」という感情が論理的判断を邪魔するからだろう。

筆者は円安が進み始めた2年前、1ドル=110円の段階から「近い将来、1ドル=150円台に到達する可能性が高い」と繰り返し主張してきた。だが筆者の主張に対しては「絶対にあり得ない」など、感情的な反応ばかりが返ってくる状況だった。

しかしながら市場というのは冷徹であり、感情的に否定したところで現実のファンダメンタルズを変えることはできない。今後、為替市場は日本にとってさらに厳しい状況になる可能性が高く、望まない事態が次々と起こるだろう。そうであれば、なおさら冷静な対応が必要である。

 

「通貨危機起こりかねない」155円を突破した円安に…国会議員が警鐘 「ひろゆき」論破で話題となった米山隆一議員「口先介入は限界」

 
 元新潟県知事で立憲民主党所属の米山隆一衆院議員(56)が25日、自身のX(旧ツイッター)を連続更新。日本時間24日夜に外国為替市場で1990年以来となる1ドル=155円を突破し、その後も進行する円安について私見を述べた。

 実業家の「ひろゆき」こと西村博之さんとX上で激論、論破したことで話題になった米山議員は「円相場がついに155円を突破しました。歯止めのかからない円安から通貨危機すら起りかねないリスクもあります。口先介入は限界で、コントロールできない事態になる前に利上げをするしかないと思います。勿論それにはコストがかかりますが、遅くなるほどそのコストは上がります」と持論を展開。
 
 続く投稿で「未だに『アベノミクスは良かった』という人がいますが、お金を大量にジャブジャブ貸し出したのですから一定の効果があるのは当たり前、問題はそのコストは先送りされていただけで、今私たちが負担しなければならないと言うことです。世にただ飯も魔法の杖もありません」と、安倍元首相が推し進めたアベノミクスがもらたした影響にも触れた。
 
 フォロワーは「爆弾が爆発してないだけで、爆弾の威力はどんどん大きくなってる感じ」「介入への兆候を警戒ということは、円安が進むことで儲けている人がいるということですよね?」「マーケットが決める事。変動相場ですから、円安円高に良いも悪いも有りません」など、さまざまな声が寄せられた。
 
 

円安「日本経済にダメージ」 原材料高や消費者心理悪化 経営トップら

 
 
 東京外国為替市場で円相場が一時1ドル=155円台後半に下落した25日、企業経営者からは国内経済への悪影響を警戒する声が相次いだ。

 原材料を輸入に頼る企業は負担増を懸念。物価高による消費マインド減退につながる恐れもあることから、円安の恩恵を受ける輸出企業などからも「日本経済にダメージを与える部分が出てくる」(工藤幸四郎旭化成社長)と不安視する声が聞かれた。

 東京ガスの南琢常務執行役員は25日の決算記者会見で、「ガスの原料や電力の燃料は円安が進めば高くなる」と調達コストの増大を懸念。「ここまで円安が進む状況は想定していない」と厳しい表情で語った。海外産の原材料を使う食品メーカーも「円安が長期化すれば(事前に設定したレートで取引する)為替予約で補えない」と顔を曇らせる。

 インバウンド(訪日客)需要に沸く百貨店も、輸入品の再値上げなどによって「国内客が買いにくくなる局面に入る場合も考えられる」(安田洋子日本百貨店協会専務理事)と警戒。旅行業界は円安による訪日客の一段の増加で「オーバーツーリズム(観光公害)がさらに問題になる」と負の側面にも気をもんでいる。

 円安で海外事業の収益が押し上げられる企業も「日本の社員の相対的な給与の価値も影響を受ける。必ずしもいいことばかりではない」(小木曽聡日野自動車社長)と「安いニッポン」化の弊害を指摘。時田隆仁富士通社長は「大きな変動は企業経営の立場から好ましくない」と述べた上で、「政府や日銀、各国のコミュニケーションで抑制されると期待している」と適切な対応を求めた。