政府が日本学術会議の独立性を損なう法人化を狙うなか、同会議は22日、東京都内で総会を開きました。会員からは、政府案への批判とともに学術会議として積極的に対案を示していくべきだとの訴えが相次ぎました。

 岸田文雄政権は2023年12月、学術会議を国の機関から切り離し法人化する方針を決定。外部者らが学術会議の会員選考や運営に関与する「助言委員会」、大臣が任命する「監事」「評価委員会」などを新設するとしています。今月15日には、同会議の在り方を検討する有識者懇談会に、組織体制と会員選考のワーキンググループを設置し、具体的な検討を進めています。

 総会の議論では「政府には法人化の必要性と合理性を明示的に説明する責任があるのに、一切示していない」「学術会議が国の機関であることは、政府が学術の意見に耳を傾ける姿勢をもっていることを国内外に示すものだ」など、法人化への反対意見が次々表明されました。

 学問が国に弾圧された戦前の歴史と、学術会議の会員任命拒否問題に言及した上で、学術会議が法人化された後の日本の将来を危惧する声もあがりました。光石衛会長は、「(政府側で)学術の活動が理解されないまま議論が進んでいる」と指摘。1949年に設立された学術会議の「75年の歴史が途切れる状況に陥りつつある」と危機感を示し、「途切れさせない任務をわれわれは負っている」「ここ3カ月が勝負だ」と述べました。

 同日、学術会議前では、軍学共同反対連絡会が宣伝行動し、政府の狙いは、軍事研究に反対してきた同会議の弱体化だとし、学術会議に市民との対話を求めました。

 

 

政府からの独立性必須
学術会議総会 法人化方針で声明

 


 

 日本学術会議(光石衛会長)は23日、前日に続き都内で総会を開き、岸田文雄政権による法人化方針は同会議の懸念を解消していないと指摘し、政府からの独立性の担保が必須だと再度強調する声明を発表しました。

 学術会議は2023年12月9日の総会で、政府の法人化案に対し、学術会議の自主改革に必要な方策が検討されていないとして、懸念する点を提示し、協議を求める声明を出していました。しかし政府は同月22日、法人化方針を決定しました。

 今回の声明は、法人化は必ずしも自律性・独立性の強化を意味しないと指摘。改めて▽政府への勧告機能などを確保し、それを支える国家財政支出を中心とした十分な財政基盤の保証▽組織・制度での政府からの自律性・独立性▽会員選考での自律性・独立性―などの満たすべき要件を列挙し、政府に「継続的かつ建設的な協議」を求めています。さらに、主要国それぞれの国を代表するアカデミーも「日本学術会議の改革動向を懸念をもって注視している」と述べています。

 総会では、声明案について「学術会議はよりよい役割を発揮するための改革方針(21年決定)にそって取り組みを進めており、法人化の必要はないことを打ち出してほしい」といった意見も出されました。

 

 

日本学術会議が法人化方針に懸念「必ずしも自律性・独立性の強化を意味しない」…政府案に難色

 

 日本学術会議は23日、学術会議を国から独立した法人に移行させる政府案に懸念を示す声明を発表した。「法人化が必ずしも自律性・独立性の強化を意味するものではない」などと、政府の方針に難色を示した。

 

 政府は現在、有識者懇談会で、学術会議の組織形態のあり方などを検討している。声明では「学術会議は、ときに政府の方針に対して批判的であることも必要だ」と指摘。「機能を十分に発揮するには、政府からの独立性を徹底的に担保することが重要だ」と訴えた。一方、政府に対し、「安定した十分な財政基盤が保証されるべきだ」と財政支援の継続を求めた。


学術会議と「意思疎通」を
参院委で井上氏 首相答弁示し要求

 

 



(写真)質問する井上哲士議員=23日、参院内閣委

 日本共産党の井上哲士議員は23日の参院内閣委員会で、政府が日本学術会議を国の機関から切り離して法人化する方針を打ち出し、同会議の在り方を検討する有識者懇談会で検討を進めていることについて、岸田文雄首相の「期限ありきではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進める」との国会答弁を踏まえるよう求めました。

 岸田首相の答弁は2023年、政府が同会議の会員候補の選考過程に介入する法改定を一方的に発表した際、衆院予算委員会で日本共産党の宮本徹議員が改定法案提出中止を迫った際のもの。井上氏は、改定法案の国会提出は断念されたが、その後、同会議の法人化の検討が進められているとして「この検討においても首相答弁が当然踏まえられるべきだ」と追及しました。

 内閣府の笹川武総合政策推進室長は「期限ありきではなく学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めていく」と答えました。