選挙“不敗神話”にほころび、学歴詐称疑惑再燃、自公の離反…「初の女性総理」もいまは昔、小池都知事「政界引退」のシナリオ

 
 
 小池百合子東京都知事の“不敗神話”が崩れ始めた。4月21日投開票の目黒区長選で、自ら推した元都議が現職に競り負ける結果となったのだ。
 
「これまで、都内の首長選では連戦連勝でした。2021年の千代田区長選、2023年の豊島区長選では、元都議や都幹部などいずれも“小池色”の強い首長を当選させてきました。その後も、2023年12月の江東区長選、2024年1月の八王子市長選では、自公が推薦する候補の応援に入り、当選させています。今回、連勝がストップしたことで“選挙に強い”という小池神話に、ほころびが見え始めた、といっていいでしょう」(政治担当記者)

 4月28日には衆院東京15区の補選が投開票を迎えるが、小池知事が擁立した乙武洋匡(ひろただ)氏(無所属で出馬)も、敗色濃厚といわれている。

「マスコミ各社の情勢調査では、乙武氏は元格闘家の須藤元気氏と4位を争っています。これは小池氏にとって想定外だったでしょうね」

 こう語るのは元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏だ。

「小池氏は、もともとは都民ファーストの会だけでなく、自民、公明、国民民主の推薦を受けて乙武氏が圧勝すると見越していました。ところが、公明党が乙武氏の過去の女性問題に反発して推薦を見送ったのをきっかけに、自民党も推薦をやめました。

 その理由は、小池氏自身が出馬を見送ったことが何より大きい。小池氏は補選に電撃出馬して国政復帰し、自民党に復党、そして9月の総裁選で初の女性総理、というシナリオを描いていました。そこに、自民党の非主流派や公明党が目をつけ、不人気の岸田文雄総理に代わる新しい選挙の顔として“小池総理”への期待を高めていたんです」(鮫島氏・以下同)

 ところが、小池知事は土壇場で出馬を取りやめ、代わりに乙武氏を擁立した。

「自公としては、梯子を外された思いだったでしょう。これが大きな潮目になった。自公が推薦を取りやめたことで、乙武氏を応援してくれるのは、都ファのほかは国民民主党だけという状況になりました。さらに、小池氏の学歴詐称疑惑が再燃。過去の女性問題とのダブルパンチで、乙武氏は大失速したわけです」

 もちろん、選挙で連敗すれば、小池知事にとっても痛手は大きい。

「小池神話は完全に崩壊し、小池氏の求心力は急速に落ちて、自公の“小池離れ”がますます加速するでしょう。小池氏自身の国政復帰の芽も、ほとんどなくなります」

 とくに、学歴詐称疑惑が再びクローズアップされたことで、小池知事の都知事選「不出馬」の可能性まで高まったという。

「この問題は、簡単には終わりません。小池氏は会見で、カイロ大学が発行した声明文があると繰り返しましたが、偽装と疑われる声明文の作成に関してはいっさい、答えていないわけです。疑惑を告発した元側近の小島敏郎氏は、過去のメールを証拠保全していて、小池氏が7月の都知事選挙に出馬するなら、学歴詐称で刑事告発すると表明しています。

 ただでさえ、出馬を躊躇するところでしょうが、選挙で連戦、連敗すると、どんどん求心力が弱まります。国政復帰の芽がなくなった小池氏には用がない、と言わんばかりに、自公の両党はジワジワと距離を置き始めています。その状況で、小池氏が7月に本当に都知事選挙に出馬できるのか疑問です」

 小池知事自身も、内心は不出馬に傾いていると鮫島氏はみる。

「都知事としてやり残したことがあるなら別ですが、そもそも彼女自身、都知事を長くやりたかったわけではないでしょう。“初の女性総理”を目指すためのステップアップとして、都知事というポストを利用してきたわけです。初の女性総理の道が閉ざされたいま、疑惑まみれのなかで、果たして3選を目指して出馬する意味があるのかどうか。

 選挙に出れば、また学歴詐称疑惑を追及されるでしょうし、告発者の小島氏は、都ファの事務総長や都の特別顧問もやっていたから、ほかにも小池氏を追い込むネタをいろいろ持っているはずです。小池氏が不出馬を表明するまでは追及の矛を収めないでしょう。小池さん自身、内心、出ようかどうしようか悩んでいるんじゃないでしょうか。最後は自ら不出馬を選ぶ、つまり都政を投げ出す可能性が高いと思います」

 都知事選不出馬、それはすなわち、小池知事の政界引退を意味する。

「もともと、環境省の役人だった小島氏は、環境問題への取り組みに共鳴して、小池氏を支えてきたと思われます。しかし、最近の小池氏は明治神宮外苑の再開発問題でも、環境破壊に通じる巨大な利権の再開発ばかりやっています。小島氏の学歴詐称告発の狙いは、小池氏を政界引退に追い込むことにあったとみるのが妥当だと思います」

 小池知事はまだ都知事選出馬について明言していない。4月28日、補選の結果次第で、小池知事は“決断”を迫られることになる――。
 
 

小池都知事に忍び寄る「政治生命」の危機…目黒区長選で“子飼い候補”落選、公明党もソッポ

 
 
 “子飼い”の落選に、さぞ焦っているに違いない。28日投開票の衆院3補欠選挙で、東京15区から出馬した作家・乙武洋匡候補を支援する小池都知事が窮地だ。21日に投開票された東京・目黒区長選で全面バックアップした「都民ファーストの会(都ファ)」の伊藤悠元都議が落選。小池知事自身の求心力低下は必至だ。

 ◇  ◇  ◇

 区長選は、無所属現職の青木英二区長が約2万5000票を獲得して当選。

 伊藤氏は約2万票を得たが、次点に沈んだ。小池知事は選挙期間中に再三、伊藤氏の街宣に駆けつけ「目黒には3つの名物がある。目黒のサクラ、目黒のサンマ、伊藤悠だ」などと応援していたが、あえなく“撃沈”した格好である。

「青木、伊藤両氏はもともと民主党所属で、支持層がかぶる。そこに、立憲民主党推薦の元都議も出馬。いわゆる『民主系』支持層の票が割れた結果、伊藤氏は当選に届かなかった」(地元関係者)

 敗因は他にもある。小池知事と良好な関係にある公明党が伊藤支援に動かなかったことだ。都ファ関係者は「公明票が青木陣営に流れてしまった」とこぼす。
 
 公明関係者はこう言う。

「定数3の都議選(目黒区選挙区)で、伊藤さんと公明候補はしのぎを削ってきた経緯があり、伊藤さんを支援する理由はない。今回は完全な自主投票だった」

■狂った都知事3選のシナリオ

 小池知事は、これまでの都政運営で公明の提案を“丸のみ”し、友好関係を築いてきた。その結果、2020年の前回知事選では支援を得るに至った。加えて、公明の支持母体・創価学会の女性部には「小池ファン」も多いとされる。それにもかかわらず、今回は公明にソッポを向かれてしまったわけだ。

「東京15区補選を巡っては、公明が毛嫌いする不倫スキャンダルを抱えた乙武さんの擁立を、小池知事が主導。一時、浮上した相乗り推薦が立ち消えになりました。さらに、小池知事自身も学歴詐称疑惑が再燃。公明が小池知事と距離を取り始めてもおかしくありません」(永田町関係者)

 前出の公明関係者は「我々の支持層は小池さんへの好き嫌いで票を投じるわけではない」と言い切った。今回の一件で、小池氏の知事3選シナリオに狂いが生じかねない。
 
「知事は、昨年末の江東区長選で都ファ推薦の候補を勝たせ、年明けの八王子市長選では自公推薦の候補を支援して当選に導きました。さらに、目黒区長選、東京15区で勝ちを重ねることで、今年7月の知事3選につなげる思惑があった。そう考えると、目黒区長選の負けはかなり痛い。東京15区の情勢も絶望的で、『連敗』濃厚です。さらに、公明まで離れれば、知事3選も遠のくでしょう」(都政関係者)

 さしもの“女帝”も政治生命の危機だ。
 
 

小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし

 
 
 元側近の告発で学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事。7月の都知事選での3選に黄信号が灯ったと見られているが──。
 
 本人は4月12日の会見で、「カイロ大学が自分の卒業を認めている。卒業を認める資格があるのは大学だけ」と疑惑を全面否定すると、連日、衆院東京15区補選に擁立したファーストの会副代表・乙武洋匡氏の応援のため街頭に立ち、ヤジを浴びても、「お騒がせしています」と笑みを浮かべる余裕を見せる。

 月刊誌『文藝春秋』(5月号)で学歴詐称工作に荷担したと“懺悔暴露”した小島敏郎氏(元都民ファーストの会事務総長)が今度は、「小池氏を公選法違反で刑事告発する」と表明するなど騒動は広がっているが、小池ブレーンの1人はこう言う。

「彼女は逆境ほど燃える。前回の都知事選も学歴詐称を追及する書籍がベストセラーとなる中で6割の票を取って圧勝した」

「きっと勝負に動くはず」
 その小池氏は、補選の方針を大きく転換した。

 これまでは都内の市長選で逆風の自民党推薦候補を支援して勝利させ、「都知事選を有利にするために自民党に恩を売った」(自民党都連幹部)と見られていたが、今回の補選では自民党の乙武氏への推薦を断わり、「反岸田」を鮮明にしたのだ。

「知事選や都議会運営を考えたら自民と協力したほうがやりやすい。だが、彼女は風に敏感。岸田文雄・首相の6月解散が濃厚になってきて、都知事選より総選挙を睨んでいるのではないか」(同前)

 疑惑再燃で小池氏にも逆風の状況だが、当の本人は“どこ吹く風”で、むしろ野心を燃えたぎらせているというのだ。

 実際、小池氏が率いる「都民ファーストの会」は区長選や都議補選で勝利し、国政政党を目指して設立した「ファーストの会」も次の総選挙を睨んで昨年“小池政治塾(ファースト政経塾)”の2期生を募集するなど、候補者育成を続けてきた。

 都民ファーストの会代表の森村隆行・東京都議が語る。

「前回の衆院選では候補者を立てられませんでしたが、次の総選挙ではファーストの会として候補者を出し、国政に出ていこうという方針です」
 
 小池氏は都民ファの都議や新人擁立により総選挙で一定の議席を得て、国会のキャスティングボートを握る青写真を描いているとされるが、カギは本人が出馬するかだ。

 ジャーナリスト・角谷浩一氏は小池氏の狙いをこう見る。

「小池氏は来る総選挙で自身の国政復帰を念頭に置いているでしょう。いま、ポスト岸田に上川陽子・外相らの名前が挙がっているが、女性政治家のトップランナーを自負する小池氏にすれば、『私のほうがもっとやれる』という思いが強い。

 自民党に勢いがあれば小池氏を相手にしないが、いまの自民党は裏金問題で強い逆風に晒され、総選挙になれば議席を大きく減らし、自公合わせても政権を維持できない可能性がある。その時、小池氏が国政で一定の勢力を持っていれば、存在をアピールできる。政権に入って外務大臣や副総理なりのポストを得て、その先に総理の道も拓けると判断すれば、彼女はきっと勝負に動くはず」

 学歴詐称疑惑を払拭できなくても、「初の女性総理」は諦めない。岸田首相よりも、はるかに厚顔にして大胆不敵な政治家であることは間違いない。

※週刊ポスト2024年5月3・10日号