喉元過ぎれば何とやらで、このまま不誠実な態度を続け、なし崩し的な営業拡大を進めていくとすれば、被害者はもちろん、ファン、現役タレントも傷つけることになってしまうのではないか。

 

 

着々と進んではいるようだが――。
SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)の被害補償特設サイトが更新され、故ジャニー喜多川氏による性加害問題の補償状況を報告した。サイトでは
《被害者救済委員会から、性被害に関する事実確認等が終了した方々に対して個別に補償内容の連絡が行われております》
と説明。現在、補償受付窓口への申告者数は“981人”で、そのうち、補償内容の通知を行ったのは“434人”。内容に合意したのは“377人”で、補償金の支払者数は“354人”だという。
一方で
《弊社への在籍および被害のいずれの事実も確認できないとの結論に至った方々に対しまして、弊社から補償を行わない旨の連絡を、本日までに『93名』の方に行いました》
と明かした。つまり申告者981人のうち約1割は補償対象ではなかったということだ。
申告者とSMILE社のやりとりについて語ったのは、同社社長の東山紀之氏。先日BBCによる単独取材に答え
「実際問題、話がかみ合わない方がいらっしゃったり、面白半分で来る人たちもいる」
と話した上で、
「(被害者から)真実じゃないことというのもちゃんと訴えてほしいという話は多々聞きました。金銭的なことも踏まえて」
と被害者側からの要望もあり“ウソ申告者”をあぶり出すことに注力していることも、インタビューで明かしていた。
また、誹謗中傷も問題となっている。昨年10月には『ジャニーズ性加害問題当事者の会』のメンバーが亡くなるなど、バッシングはいまも続いている。東山氏はBBCの取材で誹謗中傷について聞かれ
「まず何をもって誹謗中傷とするのか」
と提起し
「言論の自由もあると思うんですね。僕は別に誹謗中傷を推奨しているわけでもなく、多分その人にとってはそれが正義の意見なんだろうなと思う時もあります。なので誹謗中傷をどういうところでライン引きするかは大変難しいと思っています」
と述べた。この“言論の自由”と“誹謗中傷”を同列に扱うかのような答えに、批判が殺到。補償会社トップとしての資質が問われている。
SMILE社は被害者全員の救済を目的とした会社で、それが終われば、会社は解体される。一連の性加害問題を追及してきた「当事者の会」メンバーで元ジャニーズJr.の長渡康二氏もこのほど同社との話し合いを終えたようで、自身のSNSを通じて
《スマイルアップ社とのやり取りは全て終わりました》
と報告。
《でもなんにも心は癒えてない。むしろ苦しい》
とつづった。
「“ウソ申告者”がいることはもちろん問題ですが、そのことをSMILE社がことさらアナウンスし、摘発することに躍起になることが、本当の被害者への誹謗中傷に繋がっているとの見方もあります。実際に11月には『当事者の会』のメンバーが、誹謗中傷により自殺に追い込まれていますからね。金銭的だけでなく、精神的にも本当の意味での被害者救済には、SMILE社はまだまだ至っていないということでしょうね」(テレビ局関係者)
元忍者の志賀泰伸氏のように、現状ではSMILE社の補償交渉には応じないという人たちも大勢いる。となると『全員救済』というのは不可能で、SMILE社はある程度の時期まで存在せざるをえないだろう。まだまだ道のりは遠く、険しいようだ――。

 

 

旧ジャニーズが突き進める「不誠実で不適切で不謹慎」な“悪手”…「当事者の会」元代表も不信感あらわ

 
 
旧ジャニーズ事務所の新会社スタートエンターテイメントは、アイドルグループ嵐とエージェント契約を締結。グループとしての契約で、TOKIOに続いて2組目だ。またアイドルグループ「timelesz」(旧Sexy Zone)の菊池風磨も同社とのエージェント契約を結んだと発表した。

旧ジャニーズ事務所所属タレントのマネジメントを担う同社。旧ジャニーズの性加害問題はジャニー喜多川氏のほか、スタッフ2人の関与があらためて問題視されているなか、版権や補償、ファンクラブなど、スマイルアップ社との関係もクリアになっていないとの指摘などはどこ吹く風。「タレントに罪はない」「むしろ被害者」との主張で突き進んでいる印象なのである。
 
元ジャニーズで、被害者の補償問題などに寄り添う「当事者の会」元代表の平本淳也氏はこう言う。
「スタート社の福田淳社長が『全く独立した会社』と強調されていることからして、関係者が違和感を募らせていると思います。旧ジャニーズ事務所のタレントなら、スタッフも財産も、業界への影響力も受け継いでいるのは周知のこと。昨年から、僕も問題提起している通り、保有する財産、関連会社、株式なども移譲によって関係を継続していくというのであれば、看板のすげ替えとみられても致し方ないでしょう。性加害込みでつくりあげられた土台、利益をもとに、その救済もブラックボックス化したまま、エンタメをつくろうという姿勢こそ不謹慎じゃないかと思います」

もともと旧ジャニーズ帝国は一族経営だが、ジャニー喜多川氏から全権を引き継いだ藤島ジュリー景子氏は今も「陰の女帝」として、全権を掌握しているとの指摘も多い。

「たとえば旧ジャニといまだに『癒着』『ズブズブ』とされるテレビ朝日。いち早くスタート社のタレント起用再開を明言したのは日本テレビですけど、テレ朝は東京の有明に『ジャニーズ劇場』を計画しているというのには驚いた。このプロジェクトは早河洋会長の肝いりとされますが、ジュリーさんの姿が見え隠れしている」と、長くジャニーズをみてきた某広告プロデューサーは言う。

■テレビ局も喉元過ぎればで…

スマイル社が真っ先にあたるとした被害者補償は、救済委員会からの連絡に対し、申告者約200人が返信しておらず、補償額などで悩み続けていることが明らかになっている。前出の平本氏のもとには連日、そうした被害者たちの悩みや2次被害などの苦しみが寄せられているという。

「スタート社の運営に対して、すべてを反対し否定というわけではありません。ですが長年にわたって、苦しみ続けてきた被害者たちの救済、補償を全うし、完結させるまで、一定の線引きがあってしかるべきではないでしょうか。現役のタレントたちやファンの方々に対して、この問題をどうのと言うつもりはみじんもありません。それでも、性加害問題は解決どころか、ブラックボックス化している算定基準、ふるい落としなどで、悲痛なるつらい思いをまた踏みにじられたように感じている被害者は少なくないのです」(平本氏)

喉元過ぎれば何とやらで、このまま不誠実な態度を続け、なし崩し的な営業拡大を進めていくとすれば、被害者はもちろん、ファン、現役タレントも傷つけることになってしまうのではないか。
 
 

「みんな経験」「女優として生きていくなら」 立場を悪用、芸能界で後を絶たない性加害

 
 
自身の会社に所属するアイドルの少女(17)にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反容疑でタレントマネジメント会社役員の男(40)が警視庁に逮捕された。「成功したいなら言うことを聞くように」「この業界では普通のこと」。今回の事件に限らず、芸能界では旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害問題をはじめ、芸能界での成功を夢見る思いに付け込んだ性加害が後を絶たない。

「昔も今も売れている子たちはみんな経験してきた」「ベッドシーンもある」。今年2月、準強姦と準強制性交容疑で逮捕された元芸能プロダクション顧問の男は犯行の際、こう説明していたという。被害女性は男が顧問を務めていたプロダクションに所属していた。
 
俳優の女性にわいせつな行為をしたとして準強姦罪で逮捕・起訴された映画監督の男は、演技指導名目で行為に及んでいた。被害女性は「抵抗すると駄目な女優とされ、女優として生きていくことが難しいと思った」と話したという。
芸能事務所役員や映画監督といった強い立場を背景に性的関係を迫るだけでなく、そもそも肩書を詐称しているケースもある。昨年12月、警視庁に不同意わいせつ容疑で逮捕された男は、実在する大手芸能事務所の代表取締役を装って女性に声をかけていた。「芸能関係で仕事したいという夢につけ込んで、あわよくば肉体関係を持てると思った」と供述したという。

昨年10月に公表された令和5年版「過労死等防止対策白書」では、芸術や芸能の従事者延べ640人を調査。声優・アナウンサーの約14%、俳優・スタントマンの約11%が「性的関係を迫られた経験がある」と回答した。