きょうの潮流
 

 この季節になると口ずさみたくなる歌があります。〽五月の若者が 五月の娘に赤い花ささげる 五月の花…

 

▼学生時代にキャンパスで耳にした女性コーラス。ゆるやかなメロディーとみずみずしい歌詞に、初夏の到来を感じたものです。歌集を見ると、作詞作曲が峯陽(みね・よう)と

 

▼50年代、東大音感合唱研究会に参加しうたごえ運動を主宰する井上頼豊、関忠良らに師事。後年「おばけなんてないさ」など子ども、幼児向けの作詞・作曲で知られ、NHK「みんなのうた」で30曲以上も放送されるほどに

 

▼この峯さんが、全国老地連(全国老後保障地域団体連絡会)の名称で知られる、たたかう高齢者運動のリーダーを担った上坪陽(かみつぼ・ひかり)さんだったとは。訃報記事を目にした筆者にとって、二重の驚きでした

 

▼その活躍がひときわ輝いたのが、2008年4月に強行実施された、75歳以上の高齢者を差別する後期高齢者医療制度の廃止・中止を求める運動でした。同年5月14日、降りしきる雨の中、600人を超す高齢者が厚労省包囲行動。「雨が降ろうが、風が吹こうが、今日の天気よりいまの政治の方がもっと悪い」。酷寒の年末、48時間の怒りの厚労省前座り込みでも「かけがえのない命と人生を守れ」と

 

▼運動に寄せる思いは日本高齢期運動連絡会のニュースに紹介された、第1回全国高齢者大会愛唱歌への上坪さんの応募作品にくっきりと。「長生きして良かったと だれもがいえる明日をめざして 歩きましょう あなたとともに…なかまとともに」

 

 

2024年度から後期高齢者医療の保険料が値上げ。負担が増えるのはどんな人?

 

2024年1月下旬に公表された厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2024年度の公的年金例として下記のように記載がされています。
 

 ・国民年金(満額受給):6万8000円
 ・厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):23万483円

公的年金は、老後生活の「収入の大きな柱」となりますが、上記に記載された金額は「額面の金額」であり、この金額全てを受け取れるわけではありません。

年金は「収入」にあたるため、税金や社会保険料が天引きされた状態で振り込まれます。

その天引きされる項目の1つとして「後期高齢者医療の保険料」が挙げられます。

後期高齢者医療保険料は、2023年5月12日に「75歳以上の後期高齢者医療保険料を段階的に引き上げる改正健康保険法」が成立しており、一定の年収要件を満たした75歳以上の人を対象に保険料が値上げされる予定です。

では、2024年度から後期高齢者医療の保険料が値上げによって、負担が増えるのはどんな人なのでしょうか。

本記事では「2024年度から後期高齢者医療の保険料の値上げ」における概要や負担が増える対象者について解説していきます。

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

そもそも「後期高齢者医療制度」とは?
まずは「後期高齢者医療制度」について確認しておきましょう。

後期高齢者医療制度とは、原則75歳以上(一定の障害があると認定された65歳以上の人)のすべての人が加入する「公的な健康保険制度」となっています。

後期高齢者医療制度は、医療費の自己負担を軽減することを目的としており、制度を利用することで高齢者が安心して医療を受けられるようになります。

後期高齢者医療制度の運営は、各都道府県に設置された「後期高齢者医療広域連合」が行っており、すべての市町村が加入しています。

●後期高齢者医療制度の保険料はいくら? 
前述したように、後期高齢者医療制度は原則75歳以上の高齢者が加入対象となっていますが、年金からいくら保険料が天引きされるのでしょうか。

後期高齢者医療制度の保険料は、下記の2種類の保険料で構成されています。

 ・均等割額:被保険者が均等に負担する保険料
 ・所得割額:被保険者の前年の所得に応じて負担する保険料
保険料は各都道府県によって異なるため、気になる方は住所地を管轄する都道府県の後期高齢者医療広域連合のホームページで確認してみると良いでしょう。

一例として、東京都の場合は、下記のように記載がされています。

東京都の場合、均等額割は「4万6400円」、所得割額は「賦課のもととなる所得金額×9.49%」となっています。

世帯構成や所得額によっては保険料が減額されるケースもあります。

一例として、東京都後期高齢者医療広域連合の「保険料の決め方・賦課」が公表している、後期高齢者医療制度の保険料計算例は下記のとおりです。

上記は「後期高齢者医療制度の保険料」のみであり、実際にはここに所得税や住民税なども天引きされるため、年金を収入源として生活している人にとって負担は大きいといえます。

また、2024年度には後期高齢者医療制度の保険料がさらに値上げすることが決定しています。

 

後期高齢者医療制度の保険料が2024年度から値上げに
後期高齢者医療制度の保険料は、ここ数年増加傾向にあり、2024年度においても保険料の値上げが決定しています。

大きな理由としては、少子化の影響により高齢者を支える現役世代が減少し、一人当たりの負担が高まっていることが挙げられます。

上記の背景から、負担分を「高齢者と現役世代で折半」できるよう、2年に1回の頻度で高齢者負担率が見直しされており、2024年度には実際に保険料の値上げがされる予定です。

●後期高齢者医療保険料の値上げで負担が増えるのはどんな人? 
2024年度の値上げについては、各都道府県や収入によって負担額が異なりますが、一例として厚生労働省「医療保険制度改革について」では、各年収ごとの保険料額の例を掲載しています。

上記表をみると、高収入の人ほど保険料の値上げによる影響・負担が大きいことが見込まれます。

たとえば、年収400万円の人の場合は増加額が1万4500円なのに対して、年収1100万円の人の場合は、13万円もの増加となります。

高収入の人ほど負担が大きくなる要因として、賦課限度額の引き上げがあり、これが負担額に直結していると言えるでしょう。

低所得者には保険料の軽減措置もある?
後期高齢者医療の保険料が値上げにより、高収入の人ほど負担額が大きくなると解説しましたが、所得の低い人に対して、広域連合によっては「保険料の軽減措置」が予定されています。

具体的な保険料の軽減措置として下記が挙げられます。

 ・均等割額の軽減
 ・所得割額の軽減
 ・被扶養者だった方の軽減

上記のように、低所得者における保険料の負担を軽減する目的で、各広域連合によって軽減措置が設けられています。

また、災害や事業の休廃止などで著しく所得が減少した場合は、申請により「保険料の減免」を受けられるケースがあります。

より詳しく知りたい方は、住所地を管轄する都道府県の後期高齢者医療広域連合のホームページで確認することをおすすめします。

 

老後の保険料・税金負担を考えておこう
本記事では「2024年度から後期高齢者医療の保険料の値上げ」における概要や負担が増える対象者について解説していきました。

少子化の影響により、シニア世代における保険料の負担が大きくなりつつあります。

老後について「年金額(収入)」だけに目がいってしまいがちですが、そこから天引きされるお金(税金・保険料)にも目を向けて、老後に備えた準備や意識をしておけると良いでしょう。

参考資料
 ・厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
 ・東京都後期高齢者医療広域連合「保険料の決め方・賦課」
 ・厚生労働省「医療保険制度改革について」
 ・東京都後期高齢者医療広域連合「後期高齢者医療制度 保険料計算例」