昔は確かに朝から夜まで子供たちと向かい合って生き生きとした教育現場が数多く見られた。そこには教育現場が教職員の工夫で一致団結し「民主的教育」に取り組んでいたからだ。しかし、今はそう簡単ではない。政治が教育現場に介入し、おおらかに子供たちと接する時間を削られ、教育現場とは余り関係の無い雑務に追われているのが今の現状。創意工夫で教職員が一丸となってという雰囲気さえ奪われている。余裕がないのである。昨日のニュースをを聞いていると、教職員増員の話は一切なし、その代わりに学校外の人たちが教師の仕事を補佐するとか…。何がしたいねんという事ばかり。

 

教師が現場で生き生きと子供たちと接していくには、先ず教職員の数を増員、そして教育現場に政治が介入させない場所にする事である。今の現場は「生き甲斐」を奪う教育現場になっている。教育者として誇りを持って生き抜きたいという教職員を増やし、子供と向かい合って共に成長できる場にすべきである。

 

 

 「このままでは教師や子どもたちが乗った船が沈んでしまう」。教員不足や長時間労働の解消に向け、文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審)の特別部会で19日、残業代の代わりに支給する現行の「教職調整額」の拡充を柱とする素案が示された。これに対し、現職の教員らは記者会見で「『定額働かせ放題』と言われていた問題が解決しない」と訴えた。【西本紗保美】

 同日の特別部会で示された文科省の素案では、教職調整額について現行の月額給料の4%から10%以上に引き上げることなどが盛り込まれ、委員から大きな異論は出なかった。

 特別部会の前に、現役の教員らでつくる団体「給特法のこれからを考える有志の会」は文科省内で記者会見を開いた。

 

 約5年前から、現役教師として実名・顔出しで活動する岐阜県立高校教諭の西村祐二さん(45)は、同日までに給特法の抜本的見直しを求める署名が約8万3000筆集まったことに触れつつ、素案に残業代支給が盛り込まれなかったことについて「4%定額働かせ放題が10%定額働かせ放題になるだけだ」と痛烈に批判した。
 

 西村さんは「残業が自発的なボランティアとされる仕組みこそが、教師を苦しめ、(過労などによる)死に至らしめてきた。金額に換算すると手取りが(月額)1、2万円増える程度で、大変せこい」と断じ、教育現場を「船」に例えて「このままでは沈む」と警鐘を鳴らした。

 人材開発を専門とする立教大経営学部の中原淳教授も「調整額の『お見舞金』程度の引き上げは、長時間労働のストッパーにはならない」と苦言を呈した。

 過去に長時間労働による適応障害や離婚を経験したという東京都内の公立中学校の主任教諭、五十嵐夕介さん(40)も登壇。東京都が独自に設けた主任教諭制度の導入により負担も増えているとして「働いた分だけ賃金がもらえるという当たり前のことが実現せず、希望が持てない」と訴えた。

 教員志望の若者からも声が上がった。中央大法学部4年生の宇恵野珠美さん(22)は、学部内で当初は100人以上が教員養成課程の授業を取っていたが、教育実習を受けた人数は20人に減り、「教員採用試験を受ける」と話しているのはさらに2人のみだという。

 宇恵野さんは「私たちはお金を稼ぎたいのではなく、一人一人の児童生徒と向き合いたいから教師を目指している。長時間労働や残業の実態を知り、教師の道を諦めたという学生を数多く見てきた。声を聞いてほしい」と訴えた。

 2021年に公立校教員の労働実態の独自調査を実施し、中学教員の7割超が「過労死ライン」を超えていたことを明らかにした名古屋大大学院の内田良教授(教育社会学)も発言した。

 教員の実態について「保護者からの要望と『子どものために』という教育論があるため、なかなか業務が減らない」と分析。「『公立校は特殊だから』という議論がまかり通り、(人件費の)お金が足りないから業務を削減しようという努力が生じない。賃金と労働時間がリンクすれば、長時間労働の抑止力となるはずだ。真っ正面から議論した方がいい」とした。

 

 特別部会は2時間以上に及んだ。傍聴を終えた西村さんは「もっと危機感を持ってほしい。このままでは何一つ変わらない」と注文を付けた。

 

 

「お金じゃない、長時間労働に歯止めを」現場の声届かず…教員の働き方改革案は「定額働かせ放題」のまま

 

 

 教員の働き方改革を検討している中教審の特別部会は19日、公立学校教員に残業代を出さない代わりに支給する月給4%相当の教職調整額を、10%以上に引き上げることを柱とした素案を示した。調整額を定めた教員給与特別措置法(給特法)を巡っては、「定額働かせ放題」の温床で長時間労働につながるとして、廃止を求める声が現職教員らから出ている。案では、制度を維持した上で処遇改善を図るとした。(榎本哲也)

◆残業手当変わりの「調整額」引き上げ、ポスト増設で対応
 部会は5月にも議論をまとめる。文部科学省は答申を受け法改正を検討する。

 

 現行の教職調整額4%は残業時間が月平均8時間程度だった1966年度の調査が根拠。文科省の2022年度の調査では、月45時間超の教員は小学校で64.5%、中学校は77.1%だった。
 長時間労働に歯止めをかけるために残業手当を支給すべきだ、との意見が教員の労働組合などから出ているが、素案は「教師の職務の特殊性を踏まえると(残業手当は)なじまない」と指摘した。教職調整額の増額とともに、学級担任を持つ教員の手当を他の教員より増額することも提言した。

 ほぼ全ての教科を教える小学校教員の負担を減らすため、教科担任制を拡大する。現行の5、6年生に加え、3、4年生でも教科担任をつけられるようにする。

 現在は新卒1年目の教員が担任を持つことも少なくないが、これを避け、副担任などから始められるよう教員定数の改善を目指す。

 若手教員を支援するため、校長、教頭・副校長、主幹教諭に加え、中堅教員が就く新たなポストを設ける。東京都が独自に設けている「主任教諭」などを想定している。

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◆現職「最悪の結末」、大学生「教師は魅力低い職業に…」
 「お金じゃない、残業に歯止めをかけて」。中教審部会が示した教員働き方改革の素案について、調整額を定める給特法の廃止を求め続けている現職教員らは訴えた。

 

 

 「調整額の増額は最悪の結末。残業が自発的ボランティアと見なされ、それを期待される。この給特法の枠組みが教師を苦しめ、死に追いやってきた」。岐阜県立高教員の西村祐二さん(45)は声を荒らげた。給特法の実態は「定額働かせ放題」だとして、実名で廃止を訴え、署名活動などを続けている。この日、給特法を考える「有志の会」メンバーと共に文部科学省内で会見。「お金が欲しいわけではない。残業を減らして」と繰り返した。

 都内の公立中学校主任教諭、五十嵐夕介さん(40)は、連日夜10時まで働き翌朝8時に出勤する働き方を続けた結果、適応障害の診断を受け、家庭が崩壊した苦い経験がある。「最近は、部活動などは改善したが、生徒指導や保護者対応などの忙しさは変わらない。声を上げなければ絶望のままだ」と訴えた。

 

 公立校教員を目指す大学4年生の宇恵野珠美さん(22)は、「私の学部には教職課程を履修している学生が100人以上いたが、教育実習に行ったのは20人、教員採用試験を受けるのは2人だけ。他は私立校などを目指している」と現状を話し、「今の就活生はワークライフバランスを非常に気にしている。教師という職業は魅力の低いものになっている。安心して教職を目指せる世の中になってほしい」と話した。