4月は食品が半年ぶりの値上げラッシュとなり、6月には電気やガスの補助金が終わるといわれています。少子化支援金や防衛増税など、今後は負担が増えることばかり。たとえ定額減税があっても、家計にとってはマイナスでしょう。

岸田首相のバラマキ作戦をうのみにして、財布のひもをゆるめてはいけません。

 

 

3月28日「税制改正関連法」が成立しました。6月から「定額減税」が実施されます。

定額減税は1人につき所得税を3万円、住民税を1万円減税するもの。ただし給与収入が2千万円を超える方は対象外になりました。

定額減税は、扶養家族も対象です。たとえば専業主婦の妻と子ども1人を扶養する会社員のAさんは、3人家族ですから所得税は9万円、住民税は3万円、合計12万円が減税されます。減税の方法は、所得税と住民税で異なります。

所得税は、会社員なら給料から天引きされています。たとえば先のAさんが天引きされる所得税が毎月1万5千円とすると、6月は天引きゼロ、7月もゼロと、所得税の減税額9万円に達する11月までゼロが続きます。Aさんは12月から1万5千円に戻ります。

自営業者などの所得税は、2025年に行う確定申告で減税します。

いっぽう住民税は、6月の徴収をなくし、7月から減税分を11カ月で均等に分けて減らします。

Aさん世帯の住民税が年間18万円とすると、18万円から住民税の減税分の3万円を差し引いた15万円を11等分。15万円÷11=1万3千636円を7月以降11カ月間納めるかたちです。

■トラブルを怖れたのかマイナンバーカードを使わずに

定額減税の目的は、物価高に対抗できるよう税金を減らして手取りを増やすこと。ですが、減税だけだと税金を納めていない世帯に支援が届きません。

そこで、住民税非課税世帯などには1世帯あたり7万円の給付を行います。低所得の子育て世帯には、18歳以下の子ども1人あたり5万円を追加します。

さらに、税金を納めていても、ふるさと納税などの節税で、2024年中に納める税額が定額減税の額より少ないケースもあります。こうした減税しきれない方には、夏以降に不足分の給付を行います。

結果、定額減税は(1)減税だけ(2)給付だけ(3)減税と給付の両方の3種類ある複雑な制度になりました。実務担当者の苦労がしのばれます。

なにより減税ではなく給付金が欲しいと思いませんか。でも、国は「減税」にこだわった。定額減税を議論してい2023年秋、岸田首相を“増税めがね”と揶揄する風潮に対抗したかったのでしょう。

加えて、給付ならマイナンバーカードが使えます。マイナンバーカードに公金受取口座をひもづけている方には、給付は簡単に完了するはず。国がそう喧伝していたのですが、実際は、ひもづけミスなどさまざまなトラブルが噴出するのを怖れたのか、マイナンバーカードは使われません。

4月は食品が半年ぶりの値上げラッシュとなり、6月には電気やガスの補助金が終わるといわれています。少子化支援金や防衛増税など、今後は負担が増えることばかり。たとえ定額減税があっても、家計にとってはマイナスでしょう。

岸田首相のバラマキ作戦をうのみにして、財布のひもをゆるめてはいけません。

「女性自身」2024年4月23日号

 

円安で押し寄せる負担の荒波…GWは「食品値上げ」と「電気・ガス月1500円増」に備えよ

 
物価目標達成
3月の消費者物価上昇率は2.6%。伸び率は22年4月から2年連続で日銀の物価安定目標の2%以上となった。リフレ派もMMTも理論的に完全に破綻している。円安インフレが続き、経団連企業はボロ儲け、中小企業・農業・非正規は苦しい。
 
 
「最近の急速な円安・ウォン安への日韓の深刻な懸念を認識する」──。きのう(18日=日本時間)から米ワシントンで始まったG20財務相・中央銀行総裁会議は、それに先立ち日米韓3カ国の財務相が通貨安への懸念を共有する異例の展開となった。「1ドル=155円」の攻防が続く中、米韓を巻き込んで円安を牽制しても、歯止めをかけられそうにない。円安の長期化で家計は苦しくなるばかりだ。

 ◇  ◇  ◇

 18日の円相場は、日米韓が共同で「円安・ウォン安の懸念」を表明した後も、1ドル=154円台前半でもみ合い。政府・日銀の為替介入を警戒した動きと交錯しているが、34年ぶりの円安水準に張りついたままだ。

 円安が長引けば、コストプッシュ型のインフレが進み、モノの値段は上がる。帝国データバンク(TDB)の調査によると、今年の値上げ品目数は7月までの累計で6433品目。年間の平均値上げ率は昨年が15%だったが、今年は19%に上るという。

「円安に加え、原油価格の高騰も懸念されます。昨年秋ごろから円安や原材料高を背景とした値上げは一服していましたが、足元の状況は、秋に値上げが相次いだ2年前と酷似しています。現状は購買力の低下を避けるため、値下げ圧力が強いものの、今秋以降に円安の影響が出てくる可能性があります」(TDB情報統括本部・飯島大介氏)

 5月は家庭用オリーブオイルが約20~80%、缶やペットボトル飲料などが約8~14%値上げされる予定だ。今のところ5~7月の値上げ品目数は、加工食品や酒類、菓子を中心に約1000品目にとどまるものの、年間で最大1.5万品目の値上げが想定されている。

 ただでさえ、家計を逼迫する要因に事欠かないのに、さらに重くのしかかるのが電気・ガス代の値上げだ。

 5月使用分(6月請求)の家庭向け電気・ガス料金は大手電力10社、都市ガス4社の全社で、前月よりも値上がりする。

 要因は、政府が昨年1月から実施してきた「電気・ガス価格激変緩和対策事業」に基づく補助金が半減するため。電気の補助額は1キロワット時あたり3.5円から5月使用分は同1.8円に、ガスは1立方メートルあたり15円から同7.5円に縮小する。
 
円安に歯止めかけつつ補助出すべき
 
すでに季節は一気に夏日、大手電力8社は最高益だったのに…

   さらに、6月使用分からは補助が完全に打ち切られるため、家計の負担増は必至だ。6月使用分(7月請求)は一体、いくらになるのか。電気使用量を標準的な家庭の月平均300キロワット、ガスを月平均34立方メートルと仮定して機械的に計算すると、電気代は月540円、ガス代は255円の補助が消滅する。それを加味した4月使用分からの値上げ幅は、電気代は約1000円、ガス代は約440円の負担増が見込まれる。【別表】に主要地域をまとめた。

 よりによってクーラーの使用が増え、電気代がかさむ時期と重なるのだ。より家計負担増がズシリとのしかかる。

「輸入物価の高騰と円安が国民生活を圧迫していることは明らかなのに、政府はいまだに円安の修正に本腰を入れようとしない。本来なら、日米の金利差が埋まらずに円安を招いているのだから、金融政策を転換しつつ、円安に歯止めをかけるまでの間は国民に補助を出すのが筋でしょう。政府の場当たり対応では輸入物価が上がり続け、そのツケは家計に回ってきます」(経済評論家・斎藤満氏)


 裏を返せば、食品が値上がりし、電気・ガス代の負担が増える直前の今こそ、お金の使い時である。まだモノが安いうちに、ゴールデンウイークは買いだめに徹した方がよさそうだ。

 

 

「実質賃金」過去4年で下がった業界、上がった業界は?物価上昇で金融・保険業は年収18万円減

 

 

厚生労働省は、4月8日に「毎月勤労統計調査」(従業員5人以上)の今年2月の速報値を発表。正社員など一般労働者の「現金給与総額」は、36万616円で前年より2%増えたものの、物価の変動を反映させた「実質賃金」は前年より1.3%減となった。

 

生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんがこう解説する。

「高騰する物価に賃金の上昇が追いつかず、生活実感に近い実質賃金が目減りしているということです。実質賃金を計算するときに使用するのが『消費者物価指数』(総合)です。

2020年を100とした指数で今年2月は106.9となり、前年同月比で2.8%上昇しています。


物価上昇分を差し引いた実質賃金がマイナスになるのはこれで23カ月連続。2008年秋のリーマンショック前後の2007年9月~2009年7月に並び過去最長となりました」

2021年9月から本格的に始まった物価上昇によって実質賃金は全体的にマイナスだが、業種によってはその下げ幅が大きかったり、逆にプラスに転じたりしているものもある。

そこで本誌では、厚生労働省が毎月公表している「毎月勤労統計調査」から、業種別の正社員の2月の月収と2017~2023年の平均月収(ともに「きまって支給する給与」)を調査。2020年の平均月収を100とした指数として月収の推移を調べてみた。

注目してほしいのが、2024年2月の指数。消費者物価指数の106.9より大きければ、その業種は、賃金の増加幅が物価上昇分より大きくなっていることになる。

今年2月の平均月収で、大きく指数を下げているのが「鉱業・採石業等」(31万4千312円、指数97.7)。2020年の平均月収より額面は7千538円減っており、物価上昇を加味した、2020年を基準とする実質賃金(以下同)を算出すると2万7千826円減少だ。

さらに「金融業・保険業」(41万33円、指数102.8)では、実質的な減少額は1万5千456円。

もともと月収が高いことから、物価上昇の影響で大きく実質賃金を減らし、年間で18万5千472円も目減りしている。

「日本銀行の低金利政策が続いたことで収益を減らしたことも影響しているのかもしれません。実際、低金利の恩恵を受けた不動産業では昇給しています。とくに地方銀行では収益が悪化していたところにコロナの影響も重なり厳しい状況が続いていました」(柏木さん)

また「製造業」(34万3千98円、指数103.3)では、実質賃金を算出してみると32万952円。月1万1千257円、年間13万5千84円も目減りしていた。

「原材料やエネルギー価格の上昇、輸送費の高騰などの価格転嫁がうまくできなかったことも実質的な賃金が上がっていない要因のひとつ。また製造業では、IT技術者や半導体不足が影響。業務効率化やコスト削減にロボットを活用するなどの『IT投資』が思うように伸びていません。また中小の製造業では後継者不足の問題も影響しているのでしょう」(柏木さん)

 

マイナス金利政策解除で実質賃金が上がる予想も
「金融業・保険業」や「製造業」の今後はどうなるのだろうか。

「3月19日に日銀が17年ぶりにマイナス金利政策を解除したことで、金利が復活し、利ざや拡大の期待が高まりました。業績も上がり、今後は実質的な賃金も上がっていくことが予想できます」(柏木さん)

人事コンサルタントで新経営サービス代表取締役社長の山口俊一さんがこう語る。

「銀行では、取引先からのやっかみを嫌って初任給はこれまで抑えられていました。ところが、優秀な人材を採るためならなりふり構わずという感じで、大手銀行や地方銀行も初任給を上げてきました。それに合わせてさらなる賃上げも行われるでしょう。また昨年の4%近く、今年の4%を超える賃上げを牽引したのは製造業。今後収益性が高まれば物価上昇を超える昇給の余地も出てきます」

一方、実質賃金を大きく増やした業種もある。

「飲食サービス・宿泊業」(月収30万6千808円、指数121.8)は、実質賃金では3万5千155円増えていることが明らかに。

山口さんが語る。

「『飲食サービス・宿泊業』はもともとほかの業種と比較して給料が低かったこと、さらにコロナ禍が拡大して宿泊施設や飲食店が打撃を受けた2020年が基準で、その後の外国人が国内を訪れるインバウンド効果があったことが上昇率を大きく伸ばした要因です。

美容院やクリーニング店などの『生活関連サービス等』(30万6千235円、指数108.7)にも言えることですが、最低賃金が年4%ほど上がっているパートタイマーが多く、パートの給料につられる形で正社員の給料も上昇しています」

さらに「運輸業・郵便業」(35万3千187円、指数106.9)もわずかだが実質賃金が上昇している。

「トラックなどのドライバーの時間外労働の上限規制が適用される『2024年問題』による物流の停滞が危惧されているとおり、運輸業は圧倒的な人手不足です。人材を確保するため給料を上げざるをえないのです。またJALやANAが貨物事業を強化するなど業界の動きも活発です。

自動運転などでのAIの導入がそれほど進んでいないこともあり、人材確保のために今後も給料は上がっていくことが予想されます。

また『建設業』(37万2千2円、指数104.9)も人手不足が大きな問題。今年3月、政府は賃金が低い一方、労働時間が長い労働環境を改善する法律の改正案を閣議決定しました。国の後押しを受け昇給が続く可能性も」(柏木さん)

人手不足といえば「医療・福祉」(32万7千357円、指数102.3)も深刻だが……。

「訪問介護事業者の4割が赤字という収益が厳しい介護職の給料は“ない袖は振れない”で上がっていません。職員の処遇改善加算(手当)という国の補助による下支えがあって、2020年と比べて月収は多少増えていますが、この物価上昇にはとても追いついていません。

介護サービスを利用する高齢者が増えることを考えても、介護保険料で賄うのは難しい。なんらかの対策が必要でしょう」(山口さん)

平均賃上げ率が5%超えとなった今年の春闘の結果から、すぐに実質賃金がプラスに転じるとの予測も出ているが、値上げラッシュがさらに加速することも。予断を許さない状況はまだまだ続く。

「女性自身」2024年4月30日号