子供の人権が守られない、重大な欠陥法案が出来上がってしまった。

 紛争を解決する場となる家裁の役割が高まるが、人手が足りているとは言い難い。虐待やドメスティックバイオレンス(DV)に迅速に対応して子の安心・安全を守れるかも焦点だ。

 

 

 

 離婚後の父母がともに子の親権を持つ共同親権を可能にする民法などの改正案が19日、参院本会議で審議入りした。衆院では、父母が親権を決める際、力関係に差があって合意を強いられることを防ぐため、付則が修正されており、参院の審議では修正内容に沿った運用が担保されるかなどが焦点となる。(大野暢子)

 

◆「DVや虐待の再被害生む」
 本会議では野党から共同親権導入への懸念が相次いだ。立憲民主党の石川大我氏は「法案は当事者である父母の合意がなくても、裁判で共同親権となる制度だ」と問題視。日本維新の会の清水貴之氏は「ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の再被害が生じるという不安の声がある」と指摘した。
 小泉龍司法相は、家裁が共同親権か単独親権かを判断する際に父母の合意より、子の利益を重視して決めると強調。DVや虐待の恐れには「親権の共同行使が困難な場合、裁判所は必ず単独親権と定めなければならない」と述べた。

 改正案は共同親権となるケースを事実上、厳格化する修正を行った上で、自民、公明、立民、維新、国民民主各党などの賛成多数で衆院を通過。共産党とれいわ新選組は反対した。 

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◆世論の理解、道半ば
 参院で19日に審議入りした離婚後の共同親権を導入する民法などの改正案は、どんな時に一方の親だけで決められる日常行為に含まれるかなど分かりにくい点が多く、制度への世論の理解は道半ばだ。父母の一方が拒んでも共同親権になり得る仕組みが妥当かや、子の安全・安心を守れるか、人手不足の家裁に適切な対応が取れるかなど、参院で議論を深めなければならない課題は多い。 

 父母が話し合いで共同親権を決めた場合だけでなく、意見対立で親権の在り方を合意できなくても家裁の判断次第で共同親権になり得ることに対しては、衆院で賛成に回った野党からも懸念が消えない。

 

◆立民の主張、衆院では修正に反映されず
 立憲民主党は衆院での改正案の修正協議で「父母の合意がない場合は共同親権を認めるべきでない」と主張したが、修正には反映されなかった。共産党はこの件を重くみて衆院で改正案に反対した。

 同じく反対したれいわ新選組は声明で「子の重要事項を決める度に別居する親の顔色をうかがわなくてはいけなくなり、同居親と子の心身の負担が増大する」と訴え、子どもへの心理的な悪影響を危ぶむ。

◆新規の家事事件は10年で3割増し、迅速に対応できるか
 紛争を解決する場となる家裁の役割が高まるが、人手が足りているとは言い難い。虐待やドメスティックバイオレンス(DV)に迅速に対応して子の安心・安全を守れるかも焦点だ。

 国民民主党の川合孝典氏は19日の参院本会議で「裁判所の体制や民間に依存した避難など、支援が極めて脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘した。同様の不安は与野党に残っているが、政府から実のある答弁は聞かれなかった。

 最高裁によると、家裁が扱う新規の家事事件は2012年の約85万件から、22年に約114万件に増加。調停の平均審理期間は、18年の6カ月から22年には7.2カ月に伸びた。改正案が成立すれば26年までに施行され、共同親権への変更申し立てや、共同親権の父母が子の養育で対立した際の調停なども家裁が担う。

 首都圏の家裁で調停委員を務める女性弁護士は取材に「既に事件が多すぎて家裁は手いっぱい。子の人生を左右する判断が遅れたり、虐待の危険が見過ごされたりしないか」と案じた。

 

 

性別変更の厳格化を提言、自民・女性守る議連「ふわっとした多様性で片付けられぬ」

 
「ふわっとした多様性」とは何たる言いぐさだ。当事者の心情を逆撫でしている。どれほどの苦労を背負って日々送られてきたであろうか…隣の人に声を出せない。こんな不条理を自民党は続けろというのか。余りにも残酷だ。人の痛みを理解できないこいつらは国会議員の資格がない。
 
柴山昌彦
私のコメントが見出しになっています。一方、立憲民主党では「父母」の呼称を止める法案が検討されているとのこと。社会の根幹に関わる大議論です。→ 性別変更の厳格化を提言、自民・女性守る議連「ふわっとした多様性で片付けられぬ」(産経新聞)
 


性同一性障害特例法を巡り、自民党有志議員でつくる「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」のメンバーは19日、小泉龍司法相と面会し、性別変更する際の要件の厳格化を盛り込んだ提言を提出した。生殖機能の喪失を要件とした特例法の規定が憲法違反と判断されたが、規定の撤廃が広がれば、性同一性障害を抱える生来の男性と、「女性のなりすまし」との見極めが困難になりかねないとの指摘もある。小泉氏は「さまざまな論点が議論され、多くの国民に理解してもらい、一番いい形で進むことができればと思う」と述べた。

■女性スペースを守る議員立法を先行

提言では、10年以上継続して性同一性障害の治療を受け、他の性別で社会生活を営んでいることの確認を新たな要件に加えている。女性の生殖機能を持った「法的男性」が出産した場合に備え、民法上の親子関係などを整理する必要にも言及している。

さらに、女性専用トイレ、浴室、更衣室、女子寮など、男女が「生来の性別」で分けられたスペースに関して、国や地方自治体、事業者など管理者に対して女性の安心・安全を守る努力義務を課す議員立法を作成する方針を盛り込み、各省庁に協力を求めた。

議連共同代表の片山さつき元地方創生担当相は小泉氏に対し、「理念法として『女性スペースの安心・安全を守る議員立法』を先行し、世の中の不安を取り除いていく」と述べた上で、特例法について「慎重に国民にとっていい形での改正をされるならお願いしたい」と訴えた。

■腰を据えて考えるべき課題

特例法は、性別を変更するために複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で①18歳以上②未婚③未成年の子がいない④生殖不能⑤変更後の性別の性器に似た外観を備えている─の要件を定めている。最高裁は昨年10月、④の要件を違憲と判断し、⑤についての憲法適合性の審理を広島高裁に差し戻している。④と⑤を合わせて「手術要件」といわれる。

提言を提出後、議連の副代表を務める柴山昌彦元文部科学相は記者団に「(女性のなりすましなどによる)性犯罪に近いことが起きかねない不安が起きている。女性スペースの安全確保が極めて大きな検討課題で解決しなければならない」と強調した。「(手術要件が撤廃された場合)精神的な判断だけで性別変更が認められる可能性が出てきている。(法的)男性である母親、女性である父親も出てくる。腰を据えて慎重に考えるべき課題だ。ふわっとした多様性で片づけていいのか」と疑問視した。(奥原慎平)