《岸田政権が進めるまやかしの負担増》「子育て支援金は“隠蔽増税”だ」 元経産官僚らが「見直しではなく、撤回すべき」と緊急声明

 
 
 少子化対策に充てる費用を公的医療保険料に上乗せして徴収する「子育て支援金」の制度創設を含む関連法案が4月19日、衆議院本会議で可決したが、この制度に有識者から「待った」の声が上がっている。財政学者の小黒一正氏や経済ジャーナリストの磯山友幸氏ら29人の知識人が〈「子育て支援金」制度の撤回を求める〉と緊急声明を発表したのだ。

 この制度をめぐっては、政府は加入者1人あたりの負担額をめぐる説明の揺れが指摘されながらも、裏金問題の騒動を尻目に、するすると国会審議をすり抜けた。法案は参院に送られるが、緊急声明のとりまとめに携わった元経産官僚で政策工房代表の原英史氏に問題点を聞いた。(聞き手/広野真嗣・ノンフィクション作家)

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 私たちはこの制度の「見直し」ではなく、「撤回」を求めています。この制度は根本的に間違っているので、撤回しかありえません。今国会に提出された当初、政府は「実質負担増はない」「1人月平均500円弱」などと説明していましたが、その後、負担額の説明はコロコロかわりましたよね。もっと問題なのは、報道はこの金額の話ばかりに偏ってしまい、この制度の“根本的な欠陥”がまったく見過ごされたまま、法律が成立しようとしていることです。

 根本的な欠陥とは何か。そもそも、医療保険は病気になった時に備える社会保険であって、「少子化対策」はその目的から外れています。しかも、現役世代に重く負担がのしかかり、少子化対策に逆行しています。

 そうした本末転倒が起きる最大の原因は、国民に負担増を求める説明から政治が逃げているということにあります。岸田文雄首相は〈異次元の少子化対策〉を掲げる一方、〈増税や負担増はしない〉という矛盾した方針を打ち出しました。少子化対策をやるなら国や自治体の税財源から出すのが当然なのに、政治が議論から逃げたために、役所は〈社会保険料で取る〉という“ごまかし”のプランを仕立て上げた。要するに子育て支援金は、取りやすいところから取るという“隠蔽増税”なのです。
 
 
マスコミも経済団体もおかしい
 そうした議論が深まらなかった大きな原因のひとつに、経済団体や健保組合連合会のようなステークホルダーが沈黙していることがあります。

 本来なら、社会保険料を折半することで負担が生じる企業も反対の声をあげるはず。しかし、昨年秋に内閣官房やこども家庭庁の官僚がこうした団体を軒並み回って「反対しないで」と説得して回ると、その説得が効いてしまった。これで黙ってしまうほうも情けないですが、マスコミも同じです。全国紙では加入者の負担金額の話に終始して、根本論に立ち入る批判はしていません。

 じつはマスコミがちゃんと報じないだけで、野党議員は国会でじつに的確な質問をしています。ただ、何がなんでも徹底抗戦して止めさせる、という構えにならなかったのは、国民の反発が弱かったからでしょう。与党も衆議院の採決に踏み込んでも強い批判は起きない、とタカを括ってしまった。国民の反発が強ければ、与党もこんな拙速な国会運営はできなかったはず。

 今回の緊急声明を主要政党には届けていますが、立憲民主党や日本維新の会からは、「なんとか撤回させましょう」と心強い反応をもらいました。参議院の議論に注目しています。
 
 
財源の議論の前に、一度、撤回を
 立憲民主党は、日銀が保有している上場投資信託(ETF)から出ている分配金を代替財源として活用する修正案を提出しましたが、財源の議論を始めると、議論はまとまらなくなるんです。私は増税せずに歳出削減を通じて財源を出すべきだという考え方ですが、「消費税でやるべき」という人もいれば、「資産課税でやるべき」という人もいる。国債(借金)でまかなうべきという議論もあるでしょう。

 ただ、ここで誤魔化されてはいけないのですが、いずれの立場であろうと、社会保険料に上乗せして財源に充てる政府方針が間違っていることだけははっきりしている。

 岸田政権は、国民がよくわからないうちにごまかし切ってしまおうという作戦のようですが、こんなものはいずれ国民に見透かされるに決まっています。バレた時に、国民の激しい怒りを買うに違いありません。そんなことになる前に、一度、立ち止まって撤回してもらい、1年かけて正面からの議論をしないと。

 支持率が低いことがネックになるなら、負担が生じるような子育て支援の支出を止める選択肢もあるはずです。増税であろうと、歳出削減であろうと、どのような提案をしても反発は食らいます。その反発から逃げない政治を期待しています。(了)

【プロフィール】
原英史(はら・えいじ)/1966年生まれ。通商産業省(現・経済産業省)入省後、中小企業庁制度審議室長、規制改革・行政改革担当大臣補佐官などを経て退職。2009年に設立した株式会社政策工房の代表取締役社長のほか、大阪府・市特別顧問、NPO法人万年野党理事、外国人雇用協議会代表理事などを務める。主著に『岩盤規制』(新潮新書、2019年)、『国家と官僚』(祥伝社新書、2015年)など。


パックン 年金納付引き上げ案への国民反応に驚き「アメリカだったら大きな反発、フランスなら…」
 
 
 お笑いコンビ「パックンマックン」のパックンことパトリック・ハーラン(53)が18日、フジテレビ系「Live News イット!」(月~金曜後3・45)にスペシャルキャスターとして生出演し、政府が年金改革に向けて掲げている検証項目について自身の考えを示した。
 
 年金制度の維持のため、厚労省が掲げる改革案の一つとして5項目を発表。その中で物議を醸しているのが、年金納付額の引き上げ案だ。
 
 これまで60歳までと決められていた年金の支払いを65歳まで5年間、延長することをにらみ、検証する方針を固めた。5年の延長となれば、単純計算で1人約100万円の負担増となるが、受取額の増加は月当たり数千円程度に留まる可能性がある。番組で街の声を取材すると、負担増や将来の支給に不安やあきらめの声が聞かれたほか、国の制度に頼らない資産形成を口にする人もいた。
 
 取材を行ったフリーアナウンサー青井実は「納得していないけど、怒るというより、とにかくしょうがないんだと“丸”を付ける姿が印象的でした」と、町の人の声を総括した。
 
 見解を求められたパックンは、「苦笑とはいえ、みんなよく笑顔で受け入れてくれているんですねと」と、穏やかな反応に驚きを口にした。その上で「これ、アメリカだったら大きな反発、フランスとかだったら暴動が起きるくらいの条件だと思うんです。ずっと支払っていた時の約束と、もらう時の約束が違うじゃないかと」と、各国の国民性とも比較して訴えた。
 
 さらに「皆さん、素直なのはいいですけど、もう少し声を上げていいと思いますよ」と、おとなしすぎる日本国民に呼びかけていた。
 
 

反省ゼロの自民に公明幹事長も異例の苦言 「政治資金規正法改正案なし」「派閥存続」でよぎる30年前の悪夢

 
 
 さすがに腹に据えかねたのだろう。

 自民党派閥の政治資金パーティーの裏金事件を巡り、同党と政治資金規正法改正の与党案協議に入った公明党の石井啓一幹事長(66)が19日の会見で、「問題の当事者は自民だから、自民案をまとめる努力もぜひ強く求めたい」「(自民案を)公にされることが本来のあり方ではないか」などと発言。公明党がすでに会計責任者だけでなく議員本人の責任も問える「連座制」導入や、パーティー券購入者の公開基準引き下げなどの改正案を示しているのに対し、いまだに具体策を示さない自民党に対して苦言を呈した。

「踏まれてもついてゆきます下駄の雪」などと揶揄される公明党の幹部が、表立って自民党の姿勢に“注文”を付けるのは異例だが、無理もない。石井幹事長が言う通り、裏金事件の“張本人”は他でもない自民党なのだ。にもかかわらず、まるで他人顔だ。


 やはり、自民党には「反省」という言葉はない。それは「解消」したはずの派閥が今もなお“存続”し続けている状況からも明らか。

 最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)や二階派(志師会)などの派閥を舞台に繰り広げられた裏金作り。岸田文雄首相(66)は唐突に「派閥解消」を打ち出し、自身の岸田派(宏池会)の解散を表明。以降、安倍、二階、森山、茂木の各派閥もこれに続いた。
 
 ところが一部報道によると、解散を決めたはずの各派とも、政治資金規正法に基づく「その他の政治団体」の届け出を取り下げておらず、事務所も残ったままだという。さらに懇親会や昼食会などを開いてメンバーが集まっている派閥もあるという。

■「何の問題の解決にもならない」立憲の馬淵議員の指摘通りの展開に

 大騒ぎした「派閥解消」とは一体何だったのか。思い出されるのが、自民党が「リクルート事件」をきっかけに1989年5月にまとめた「政治改革大綱」。「国民の政治に対する不信感は頂点」「国民とのずれを深く反省し、国民の信頼回復を果たさなければならない」などとして、当時も「派閥解消」を掲げたが、結局、掛け声倒れに終わった。

 今回の裏金事件でも自民党は「政治刷新本部」を立ち上げ、「国民の信頼回復に努める」「派閥解消」などと言っているが全く同じ。デジャビュというのか、悪夢を繰り返しているようだ。

 3月2日の衆院予算委員会で、立憲民主党の馬淵澄夫議員(63)は岸田首相の「派閥解消」について、こう言っていた。
 
「総理は唐突に、直接的に裏金の解決には至らない自民党の派閥の解消を表明して、煙に巻こうとされました。総理はいつも(略)火の玉であったり、あるいは先頭に立つと言って、大変勇ましい、国民に受けそうな言葉を発せられます。しかし、その後は全くの無関心の放置。(略)何の問題の解決にもならない。したがって、成果はゼロ」

 これに対し、岸田首相は「派閥の解消、これも煙に巻くものではないかという御指摘がありましたが、(略)派閥の関係者とよく諮った上で、けじめをつけるために解散をしたということであり、これは対応として決しておかしなものではなかったと思います」と答弁していたが、今の状況を見る限り、どうやら裏金事件は馬淵氏の指摘する通り最悪の展開になりつつあるようだ。