深刻な政治不信の元凶となり、自党の案すら示せない崩壊しきっている自民党!

「経済安保情報保護法案」の危険性

昨年8月に開かれた国家安全保障戦略に基づく防衛力強化に関する関係閣僚会議では、各省の民生利用目的の研究を軍事に動員するため「特定重要技術」が指定されたと指摘。高市早苗経済安全保障担当相が「情報セキュリティーの強化」の必要性について発言したことも示し、「民間の研究者等に適性評価が必要になるということか」とただしました。高市担当相は「一定の要件を満たす従業者であれば受けてもらう」として否定しませんでした。

 

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、自民、公明両党が政治資金規正法改正に向けた実務者協議を始めた。大型連休明けに野党との協議に入り、6月23日までの今国会中に成立を図る。

 しかし、自民党は規正法改正案を自ら示さず、公明党との協議で与党案を取りまとめるという。組織的、継続的な多額の裏金づくりの当事者が自らの考えを示さないのは無責任極まりない。

 自民党総裁の岸田文雄首相は、今国会中の規正法改正実現を繰り返し言明し(1)議員本人への罰則強化(2)第三者による監査徹底(3)デジタル化による政治資金の透明化-を党内に指示していた。

 抜本改革には程遠い内容だが、この程度の再発防止策すらまとめられないのであれば、政権担当能力を欠くと言わざるを得ない。

 

 裏金事件を巡り、自民党は党内調査を行ったが、形ばかりにとどまった。衆参政治倫理審査会の開催には応じたものの、詳細な説明は避け、真相解明には至っていない。裏金づくりの経緯や実態が不明のまま、再発防止策を打ち出せるはずもあるまい。

 自民党が自ら案を示せば、野党側が求める企業・団体献金や政治資金パーティーの全面禁止などの抜本改革に消極的姿勢が際立つという計算もあるのだろう。だとすれば、自浄能力の欠如を自ら認めるに等しく、裏金事件を反省していないと断じるほかない。

 28日投開票の衆院3補選のうち自民党が候補者を擁立したのは島根1区にとどまるが、自民党候補のいない2選挙区でも最大の争点は「政治とカネ」だ。首相は「政治の信頼回復に向けた取り組みをしっかり訴えなければならない」と語るが、空虚に響く。

 自公協議では、会計責任者にとどまらず議員本人も処罰の対象になる連座制の導入や、政策活動費の使途公開義務化など、公明党の主張を自民党が受け入れるかどうかが焦点になる。

 「クリーンな政治」を掲げてきた公明党は厳しい姿勢で協議に臨むべきだ。妥協すれば、自民党と「同じ穴のムジナ」に見られることを覚悟せねばなるまい。

 自民党は再発防止策の内容を公明党と野党各党との協議に委ね、その結果を受け入れてはどうか。深刻な政治不信の元凶となり、自党の案すら示せないのであれば、もはや口出しする資格などない。

 

 

機密の範囲はヒミツです? 「経済安保情報保護法案」参院審議入りするのに、運用の詳細は「後で決める」

 

 

 
 経済安全保障上の機密情報を扱う民間事業者らを身辺調査するセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度の導入を柱とした「重要経済安保情報保護法案」が17日、参院本会議で審議入りした。機密情報の指定範囲や適性評価を巡る制度の核心部分は、成立後に政府が定める運用基準で決めることになっており、詳細は固まっていない。政府による恣意(しい)的な指定やプライバシー権の侵害が懸念されるが、参院の審議でどこまで解消されるかは見通せない。(近藤統義)
 
◆「指定の範囲は法案成立後に…」
 岸田文雄首相は本会議で「外国政府との情報共有が円滑になり、国際共同研究の進展も期待できる」と法案の必要性を強調。与野党から情報指定が際限なく広がらないか問われたが「指定の範囲は法案成立後に閣議決定する運用基準で明確化する」と従来通りの答弁を繰り返した。
 
 法案では「重要経済安保情報の指定や解除、適性評価の実施、適合事業者の認定」に関する運用基準を政府が定めることとしている。2014年施行の特定秘密保護法も同様で、秘密指定の具体的内容や身辺調査の項目はすべて運用基準で詳細に規定された。法案審議では政府の答弁が抽象的になり、今回の法案でも衆院側の審議で議論が深まらない要因になった。
 
 
 立憲民主党の杉尾秀哉氏は17日の質疑で「運用基準に委ねるのではなく、法案審議の過程で明確な歯止めのルールを示すべきだ」と指摘。首相は正面から取り合わず「法案で国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならないと規定している」と述べるにとどまった。

 衆院では、制度の運用状況を国会が監視する政府案の修正が行われ、与党や立憲民主党、日本維新の会などの賛成多数で9日に通過した。

◆「支障を及ぼす恐れ」判断基準が曖昧
情報法制に詳しい右崎正博独協大名誉教授(憲法学)の話 

 運用基準を閣議決定すれば何でもできるんだというやり方は議会制民主主義の軽視そのものだ。岸田政権は次期戦闘機の日本から第三国への輸出方針を閣議決定したが、憲法解釈の変更を閣議決定して集団的自衛権の行使を容認した安倍政権と変わらない。

 特定秘密とも共通するが「漏えいが安全保障に支障を及ぼす恐れがある」ということをどういう基準で判断するのか曖昧だ。運用基準や政令で対象を具体化するという重要経済安保情報の漏えいには罰則が科される。政令による処罰を禁じる憲法73条6号に抵触する可能性があるほか、処罰の対象行為をあらかじめ法律で定めなければならないという憲法31条が求める「罪刑法定主義」にも反する。

 
 適性評価は本人の同意が前提というものの、家族や同居人の国籍なども調べられる。評価の結果や調査を拒否した事実も会社に通知され、憲法19条の思想信条の自由を侵害する可能性がある。憲法13条の幸福追求権に含まれるプライバシー権に対する重大な脅威になることは疑いない。

 参院で議論が深められることを期待したい。

 重要経済安保情報保護法案 防衛や外交など4分野の情報保全を目的とした特定秘密保護法の経済安保版。半導体など重要物資の供給網や重要インフラに関して国が保有する情報のうち、流出すると安全保障に支障を与える恐れがあるものを「重要経済安保情報」に指定。重要情報を扱う人の身辺調査をする「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を導入する。情報漏えいには5年以下の拘禁刑などを科す。