防衛相「大東亜戦争」削除「慰霊重要で問題化は本意でない」 維新・松沢氏「主体性ない」

 
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木原稔防衛相は16日の参院外交防衛委員会で、陸上自衛隊第32普通科連隊が公式X(旧ツイッター)で硫黄島(東京都小笠原村)を「大東亜戦争最大の激戦地」と表記し、その後に撤回した理由について、「慰霊そのものが重要であり、今回大東亜戦争という表記によって、大きな問題化することは本意ではないからだと報告を受けている」と述べた。日本維新の会の松沢成文参院議員の質問に答えた。
 
連隊は今月5日、Xで「大東亜戦争最大の激戦地硫黄島において開催された日米硫黄島戦没者合同慰霊追悼顕彰式」への隊員の参加を報告。その後、「戦後、占領軍の命令で『大東亜戦争』の呼称は禁止された」(朝日新聞)と報じられるなど「大東亜戦争」の表記が一部メディアに問題視された結果、同連隊は誤解を招いたとして、投稿から「大東亜戦争」を削除した。

木原氏は「激戦の地であった状況を表現するため、当時の呼称を用いた。その他の意図は何もないと報告を受けている」と重ねて強調した。

「大東亜戦争」は開戦直後の昭和16年12月に閣議決定された日本側の呼称。連合国軍総司令部(GHQ)は20年12月の覚書で「大東亜戦争」の使用を禁じたが、それはサンフランシスコ平和条約に伴う日本の主権回復で失効した。

松沢氏は「GHQは『太平洋戦争を使え』と言っていたが、その立場の米軍から文句がきていないのに、日本のメディアがおかしいといい始めて、自衛隊が修正してしまう。主体性のなさに、ちょっとがっかりしている」と語った。大東亜戦争の表記について「真珠湾攻撃の前にアジア大陸で戦火が吹いて回った。アジア内陸で行われた戦争、インド洋で行われた戦争を太平洋戦争といっても、太平洋と関係ない。大東亜といったほうが地理的概念としてふさわしいとの考えもある」と指摘した。(奥原慎平)
 
 
 
 
 1月に陸上自衛隊幹部らが靖国神社を集団参拝する際に陸上幕僚監部が作成した内部文書で、靖国神社の文章をほぼ引き写して「大東亜戦争」という呼称を肯定的に使っていたことが13日、本紙の調べでわかりました。この表現を巡っては、陸自大宮駐屯地(さいたま市)の第32普通科連隊がSNSで投稿し、その後、削除していました。

 
 「大東亜戦争」の表現を使っていたのは、「令和6年の年頭航空安全祈願ロジ」と題する内部文書です。防衛省が日本共産党の穀田恵二衆院議員に資料提出したもので、「陸上幕僚監部内で組織的に共有された行政文書」(4月3日・衆院外務委員会での鬼木誠防衛副大臣答弁)です。

 文書では、1月9日の小林弘樹陸幕副長(現、中部方面総監)ら幹部の参拝経路や時程表などが記されています。

 「靖国神社の起源等」というページでは、同神社の歴史を紹介。その中に「…大東亜戦争(第2次世界大戦)などの対外事変や戦争に際して国家防衛のために亡くなられた方々の神霊が祀(まつ)られており、その数は246万6千余柱に及びます」「…大東亜戦争終結時にいわゆる戦争犯罪人として処刑された方々などの御霊(みたま)も祀られています」と記載されています。どちらの記述にも下線があり、参拝参加者らに強調して伝えたい箇所とみられます。

 靖国神社のホームページにある「靖国神社の由緒」というコーナーでは、内部文書とほぼ同じ文章を記載しています。

 「大東亜戦争」という呼称は、戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が国家神道との決別を求めた「神道指令」で「国家神道、軍国主義、超国家主義」に緊密に関係する言葉だとして、使用を禁止しました。日本政府も「一般に政府として公文書で使用していない」(8日、林芳正内閣官房長官)としています。

 32連隊の「大東亜戦争」の投稿を巡っては、木原稔防衛相が「硫黄島が激戦の地であった状況を表現するため、当時の呼称を用い、その他の意図はなかった」と、苦しい釈明に追われています。

 
 
 

<社説>「大東亜戦争」投稿 自衛隊の歴史観を憂う

 
 陸上自衛隊の部隊がX(旧ツイッター)への投稿で、アジアへの侵略戦争を正当化する文脈で使われることが多い「大東亜戦争」という表現を用いた=写真。陸海の隊員が靖国神社に集団参拝したことも明らかになっている。過去の戦争を美化する歴史観が自衛隊内で広がっていないか憂慮する。
 
 陸自大宮駐屯地(さいたま市)の第32普通科連隊は5日、日米が戦った硫黄島(東京都小笠原村)の戦没者追悼式への参加をXの公式アカウントに投稿した際「大東亜戦争最大の激戦地」と記した。この表現は8日に削除した。
 
 日本は1941年12月の開戦直後、アジアの解放を名分に「大東亜戦争」と呼ぶことを閣議決定した。戦後「大東亜戦争」の呼称は連合国軍総司令部(GHQ)に禁じられ、現在は日本政府も一般に公文書では使用していない。
 
 代わって「太平洋戦争」の表現が定着したのは、破滅的な敗戦につながったアジアへの侵略と植民地支配を戦後、幅広い日本国民が反省したからにほかならない。
 
 同様に自衛隊も現行憲法の下、旧軍と制度的に断絶する形で発足した。にもかかわらず、陸自部隊が公式アカウントで一時的とはいえ「聖戦思想」を疑われかねない投稿をしたことは深刻である。
 
 懸念はこれにとどまらない。海自司令官と幹部候補生学校卒業生らが昨年5月に、陸自幹部ら22人が今年1月に、靖国神社を参拝した。もちろん隊員にも信教の自由はあり、防衛省は私的参拝と結論付けて問題視はしていない。
 
 しかし、参拝が強制でなくてもA級戦犯を合祀(ごうし)し、先の戦争を正当化する神社に自衛隊員が集団参拝した事実は残る。内外から歴史観を疑問視され、憲法が定める政教分離にも抵触しかねない。
 
 内閣府による最新の世論調査では、自衛隊に「良い印象を持っている」は90.8%に及ぶ。文民統制の下、防衛と災害救援、国際貢献を積み重ねてきた結果だ。
 
 一連の言動は自衛隊が築き上げてきた信頼を自ら損なうことになりかねない。防衛省・自衛隊は疑念を招く言動は慎むよう隊員への指導・教育を徹底すべきである。