「日本は米国と共にある」。岸田首相が米議会で宣言しました。国内では見せられない喜色満面の笑みを浮かべて。「日本の国会では、これほどすてきな拍手を受けることはまずない」。演説のつかみで使った自虐ネタは、この人の厚顔無恥ぶりを表しているかのよう
米国が果たしている役割はすばらしいと天までもちあげ、私たちは米国のグローバル・パートナーであり続けると誇らしげに訴えかけた首相。日本を米国の戦争に巻き込む危険も顧みずに。いったい、背負っているのはどちらの国なのか
裏金事件もそっちのけで、この演説に備えスピーチライターを雇い、出発前から練習にいそしんでいたそうです。列強のいいなりにならず、主張すべきは主張した歴史はどこへ。いまこそ国中で大騒ぎするときです。
そして私達に辛苦を簡単に肩代わりさせているのが岸田です💢
こども家庭庁が4月9日に公表した、子育て支援金制度の年収別徴収額(試算)が話題です。試算によると年収600万円なら1000円、年収800万円は月1350円、年収1000万円は月1650円を徴収するとのこと。しかし、残念ながらこの制度、「消費税0.8%分のステルス増税」と言えるのです。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
● 国民の負担増? 「子育て支援金」試算案で物議
岸田政権の掲げる異次元の少子化対策の中核といえる子育て支援金制度について、こども家庭庁が発表した財源の試算案が「結構、国民の負担が多くなるね」ということで物議をかもしています。
子育て支援金制度とは国が子育て世代に手厚い支援をする制度です。その財源が税金だけではまかなえないため、新たに国民全体から広く徴収することになり、その負担についての試算案が公表されたというのが今回のニュースです。
「異次元の」というほどお金をかけて少子化対策を実施する覚悟をみせた一方で、実現には財源が足りなかった政策です。
そしてふたを開けてみたら、やはり1兆円分の財源は国民による負担という話になってきました。これまで「全体として実質的に負担は生じない」と言ってきた話はやはり絵に描いた餅で、「負担はワンコイン」と後出しで出てきた情報も、実はワンコインでは済まない構図に変わってきたわけです。
先に読者の皆さんがイメージできるようにざっくりと全体像を説明します。
子育て世帯は厚生労働省の直近の調査によれば全世帯の18.3%です。シンプルにモデル化して説明すれば約2割。その子育て世帯の支援金の財源を10割の世帯(=子育て世帯を含む全世帯)から徴収する仕組みだと理解することができます。
ですから月500円のワンコインなら子育て世帯に使える財源は月2500円になりますし、月2000円を徴収すれば月1万円が活用可能になります。
それで今、世間がざわついているのはどうも試算結果を見ると負担レベルは後者なのではないかという話なのです。
● 「労使が折半して負担」の条件で 賃上げに悪影響の可能性も
日本の一世帯あたりの平均所得は545万円ですが、労働者の大半が属する高齢者世帯以外の世帯の場合は665万円です。
子育て支援金の試算によると年収600万円の人の2028年度の負担額が月1000円となっています。
仮に夫婦共働きだとして片方が年収400万円、もう片方が年収200万円で世帯合計が600万円の場合も同じで、ふたり合計で月1000円の徴収になります。
そしてここが一番あやしいところなのですが、その試算は会社員や公務員が入っている健康保険から徴収するとされていて「労使が折半して負担」とも表現されています。
会社員が入る被用者健康保険では給与明細に入っている健康保険料は実は半分の金額で、残り半分は会社が負担しています。
ですから労働者が負担する月1000円とは別に、雇用者も1000円負担するようにも読めるのです。雇用者が1000円負担するといってもそれはもともと人件費の一部ですから、負担が増える分は賃金上昇を抑える方向に力学が働きます。
つまり、制度上は折半して負担でも、実質は労働者が負担することになるのです。
加藤鮎子こども政策相は記者会見で「機械的に計算した数字だ。正確なものではないが、議論の役に立てていただきたい」とおっしゃっているので、今後議論をしていく中で、平均的な所得の世帯の負担額が月1000円なのか、それとも実際は会社があと1000円負担して実質的に月2000円なのかがつまびらかになっていくことと思われます。
● 「月2000円負担」が既成事実化する 可能性も
それでこういった議論に騙されないようにするために重要な視点が「結局は2割の子育て世帯の支援財源を10割の世帯が負担するのだ」という全体像の理解です。
月1万円レベルの支援を国が考えているのであれば、わたしたち国民から広く徴収する負担分は当然月2000円になります。
さらにいえば、今回の子育て支援金は「これまで支援が薄かった0歳から2歳までの子どもを重点的に支援する」という議論があります。
仮に試算として3歳から18歳までをゼロで計算すれば対象世帯は6分の1、支援は全子育て世帯にまんべんなくする場合と比較して6倍給付できます。つまり月2000円の徴収で月6万円分の支援財源を確保できます。
この月6万円という金額は、公表されている少子化対策の施策と近い数字です。
もともと政府は制度の使い道を4つに絞ると説明しています。妊産婦への10万円支給、育児休業給付の引上げ、こども誰でも通園制度、児童手当の拡充がその4つです。
対象世帯が受けるサービスは月1万円では足りない施策ですから、こうやって給付対象の子育て世帯の数を絞るつもりなのだなと捉えるとだんだん数字の辻褄があってきます。
このように政府がどんな使い道を想定しているのかをチェックすれば、月500円なのか月2000円なのか、政府はどちらを想定しているのかが推定可能なわけです。
子育て支援金制度はこの後、国会での審議が本格化していきます。
野党が頑張ってくれて元のワンコインに戻る可能性もないとはいえませんが、こういった制度は常に膨張する性質があります。
最終的には月2000円負担が既成事実化していく流れができていく未来を予測するのが妥当な線でしょう。
● 子育て支援金は 消費税0.8%分のステルス増税だ
それにしても現役世代はすっかり政府のATMとなり果てています。新制度に怒りをぶつける際に重要なのは「搾取の全体像」を把握することです。
そもそも消費税が10%に引き上げられた背景は、福祉財源を確保するためのはずでした。福祉財源から子育て支援を行えばいいだけの話ですが、それでは足りないからあと2000円というのが今回の話です。
しかし、私が一番問題だと思うのは今回、不足財源を増税しなかったことです。
国民や企業が所得の中からどれだけ税金や社会保険料を払っているかを示す国民負担率は直近では47.5%まで上がっています。Xでは「五公五民」がトレンドワードになりました。
年収600万円の世帯が五公五民で消費できるのは約300万円。“月2000円”の場合、年間2万4000円の追加負担が発生します。これは自由に消費できるはずの300万円のうち0.8%を占めます。
つまり、月2000円の負担増は生活者の目線では消費税が0.8%上がったのと同じです。
でも「消費税を上げる」というと選挙で負けるから、別の財布から搾取すると国が言っているのです。
皆さんが払う年金はそのまま高齢者の年金に流用されますし、健康保険料も構造は同じです。そこに介護保険料も加わっているというのが皆さんの実態です。
「健康保険や介護保険はいつか自分に戻ってくるから税金ではなく保険なのだ」というのは理屈です。
しかし、「子育て支援金の恩恵が自分に戻ってこない場合、保険にならないのではないか?」と疑問がわくわけです。
なぜ、健康保険から徴収するのでしょう?結局のところ子育て支援について国がやろうとしているのは消費税0.8%分のステルス増税です。
選挙で「自民党と公明党は4万円の減税をしました」と言いたいという理由が透けてみえます。馬鹿な国民は騙せるとでも思っているのでしょうか。
「五公五民」がトレンドワードになったのは、江戸時代の四公六民よりも令和の暮らしが厳しいという意味です。そもそも江戸時代では不作で年貢が五公五民に陥ると一揆がおきたものです。
現代の民主主義では一揆に代わるものは政権交代ですが、それがどうにも起きそうにもない。また一段と寒い時代が訪れたのだと私は思います。
鈴木貴博