きょうの潮流
 

 経団連の十倉会長が思わず気色ばみました。サプリメントなどの機能性表示食品の解禁を、経団連がくり返し要望した事実を記者から問われ、「むかし、規制緩和を言ったから、けしからんというおしかりですか」と

 

▼重大な健康被害を生んだ小林製薬の紅麹(べにこうじ)サプリメントは、パッケージに「悪玉コレステロールを下げる」と大きく表示されていました。このように健康への効果を、国への届け出だけで商品に表示できるのが、機能性表示食品です。第2次安倍政権が2015年にこの制度を導入しました

 

▼モデルにしたのは米国のダイエタリーサプリメント健康教育法です。米国では同法の制定を機に、健康食品の市場が4倍に急拡大しました。日本でも市場拡大が期待できるとして、05年以来、経団連は何度も、食品の機能性表示の規制緩和を要望していました

 

▼日本共産党をはじめ、消費者団体や日弁連は、安全性をなおざりにする機能性表示食品の解禁に反対してきました。食の安全・監視市民委員会共同代表の佐野真理子さんは「今回の深刻な健康被害は起こるべくして起きた」と、本紙日曜版(4月14日号)で語っています

 

▼十倉会長も事の重大さに気づいたのか、先の言葉に続けて「ひとの健康にかかわる問題ですから、もう少し厳しく慎重にやるべきだった」と弁明しました

 

▼過ちて改めざる、これを過ちという―『論語』にもこんな教えがあります。最優先は国民の健康と食の安全。それを危うくする制度はすぐに改めるべきです。

 

実質賃金23カ月連続マイナス「過去最長タイ」の一方で「1億円以上」役員報酬994人 痛み分からぬ経営トップに寄せられる怒り

 
厚生労働省は「物価の上昇に対して、賃金の伸びが追いついていない状況が続いている」としている
今頃、気ついた⁉️
 
 
 
 厚生労働省が4月8日に発表した2月の毎月勤労統計調査で、物価の変動を反映させた実質賃金が、前年比1.3%減と、23カ月連続のマイナスとなった。

 実質賃金が23カ月連続で減少するのは、リーマン・ショック前後の2007年9月~2009年7月以来。比較可能な1991年以降の過去最長に並んだ。厚生労働省は「物価の上昇に対して、賃金の伸びが追いついていない状況が続いている」としている。

 一方、連合が集計(4月2日)した今春闘の賃上げ額は、定期昇給分とベースアップ相当分を合わせて、平均で月額1万6037円、率にして5.24%と、1991年以来、33年ぶりの水準に達した。

 経団連の十倉雅和会長は、「(春闘では)想定以上の結果(賃上げ)が中小企業にも見られていると思います。賃上げという意味では、本当にみなさん、よくやっていただいた」とコメントしている。

 だが、賃上げ分も物価上昇で消えてしまう現状に、SNSでは怒りの声が噴出している。

《物価上昇を上回る年金の値上げはないの? 生活ますます苦しくなりますよ!》

《都合の良いデーターだけを集めて 達成しましたとか 言い始めるのでしょうし、国民には届かない声です》

《賃金上がっても、その分所得税が上がるので、実質賃金アップとは思ってませんが、間違ってますかね?》

《総理就任時の公約、所得倍増計画は、どのように計画され、今どの段階か? よくわかりませんね。》

《原油高、円安でコストインフレがまた再燃し家計がきびしくなりそうです。まさかその上、2%インフレ達成と誘導されて金利上げられたらたまらないです。》

《物価上昇を上回る賃上げができるのは、大企業や上場企業…。中小零細企業は、毎日自転車操業で、内部留保もない…。》

 実質賃金が下がり続ける一方で、大企業の役員報酬は増えている。東京商工リサーチの集計では、2022年度に1億円以上の役員報酬を開示した上場企業は474社、994人。前年より社数で40社、人数で66人増え、いずれも過去最多を記録した。SNSにはこんなコメントも。

《「失われた30年」の中で、労働者の賃金が30年間で最低になってOECD38か国で日本だけ賃下げになっています。ところが大企業の役員報酬は過去最大です。報酬トップの役員の時給は232万円で最低賃金の2311倍》

 ちなみに、住友化学会長である経団連の十倉会長が、2022年に受け取った役員報酬は1億1800万円。物価上昇とて、痛くもかゆくもないだろう。
 
 

岸田訪米も売り材料に…円安“防衛ライン”1ドル152円あっさり突破、空前の「売国」に投機筋ウハウハ

 
 
 日本売りが一段と深まっている。円が売りに売られ、市場が「防衛ライン」とにらんだ1ドル=152円の節目をスルッと突破。34年ぶりの安値となる160円台は目前だ。売り材料は、岸田首相が浮かれまくっている国賓訪米だから目も当てられない。「外交の岸田」を自負し、政権浮揚をかけた外遊のせいで日本は沈没。どの面下げて戻って来るつもりか。

 円安が加速したのは、日本時間10日夜に米労働省が発表した3月の米消費者物価指数(CPI)だった。上昇率が市場予想を上回り、6月とみられてきたFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ開始が先送りされるとの見方が台頭。米長期金利も大幅上昇し、日米金利差を意識した円売り・ドル買いの動きが広がり、153円台の壁を突き破った。拍車をかけたのが、岸田首相の訪米ツアーだ。深夜から日米首脳会談がはじまり、その後は共同記者会見がセットされていた。

 金融ジャーナリストの森岡英樹氏はこう言う。

「政府・日銀が最後に為替介入したのは2022年10月。1ドル=151円台後半だったことから、市場は152円を防衛ラインとみていましたが、岸田首相がバイデン大統領と協議をしている最中に介入はできまいと足元を見られた格好です。緊密な日米関係の演出を目的とした訪米中に、為替操作国と見なされるようなマネはできない。投機筋にそう見透かされ、円売りポジションをとられてしまった」
 
投機筋はやりたい放題
 
空前の朝貢外交を展開中(バイデン米大統領と乾杯する岸田首相=米公式夕食会で)/(C)ロイター

   為替介入の実行にあたっては、相手国の理解を取り付けるのが不文律。岸田首相は米国に足を踏み入れた瞬間から「日本は米国にとって最大の投資国だ」と触れ回り、貢献を喧伝しているのに「介入しますんで、ひとつよろしく」とは口が裂けても言えないだろう。岸田首相の帰国予定は14日午後。それまで投機筋はやりたい放題だ。

「介入の原資は外貨準備。取り崩すには、その大半を占める米国債を売却しなければならず、米国債の利回り上昇を招いてしまう。すると日米金利差は拡大し、円安は加速する。いずれにせよ、ジレンマから抜け出せません」(森岡英樹氏)

 米国隷従を徹底した安倍元首相を超える空前の朝貢外交を展開中の岸田首相は、軍事面では在日米軍と自衛隊の一体化を深化。売国奴と言わずして何と言うという話だ。

「外交の岸田」は浸透する兆しが全くないが、「売国の岸田」はしっくりくる。
 
 

岸田政権でまさかの実質賃金23カ月連続減、国民を蚊帳の外に置いた「勘違い政策」の元凶

窪田順生:ノンフィクションライター

 

 

「新しい資本主義」が大スベり、賃上げは大企業止まり
「春には、春闘があります。近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待します」(首相官邸ホームページ、22年1月17日)

 今からおよそ2年前、「聞く力」のアピールで、当時は内閣支持率57%(NHK世論調査)と人気絶頂だった岸田文雄首相は、国会の施政方針演説でそのように語っていた。ただ、今にして思えば、この時が「終わりのはじまり」だったのかもしれない。

 岸田首相が得意満面で「一気に反転」とぶちまけたこの時から、実質賃金はなんと23カ月連続で減少していく。これだけ長期間におよんで国民が貧しくなっていく現象は、2008年のリーマンショックを挟んだ、2007年9月〜2009年7月以来のことだ。

 では、なぜ岸田政権の「新しい資本主義」は、ここまで豪快にスベってしまったのか。

 いろいろな意見があろうが、「敗因」のひとつはわかりきっている。「新しい資本主義」と言いながら、高度経済成長期に社会に定着した「古い資本主義」から脱却できなかったからだ。

 具体的に言うと、日本経済の課題を解決していく上で、あらゆることで大企業を基準に物事を考え、大企業が変われば日本経済も変わっていくーーという「大企業中心主義」ともいうべき誇大妄想にとらわれてしまっていたのである。

 その「病」を、これ以上ないほどわかりやすく示しているのが、先ほどの施政方針演説以降も首相が繰り返し訴えていた「春闘で賃上げトレンドをつくる」という言葉だ。

 残念ながら、これは客観的な事実やデータとかけ離れた、「根性論」のようなものだと言わざるを得ない。

 

大企業がいくら賃上げできても、大半の中小には関係のない話
 日本の賃金が低いのは、国内企業の99.7%を占めて日本人の7割が働いている約350万社の中小企業の賃金が低いから、というのは有名な話だろう。

しかし、その中でも特に低賃金の温床となっているところは知られていない。

 それは、「小規模事業者」である。これは従業員が5人から20人という規模で、いわゆる「家族経営の小さな会社」をイメージしてもらえばいい。この小規模事業者は350万社ある中小企業の中でも8割以上を占めている。

 つまり、日本の賃上げをしていこうと思ったら最もテコ入れをしなければいけないのは、この「小規模事業者の賃上げ」ということである。

 そういう現実を踏まえて、岸田政権が掲げていた「春闘で賃上げムード」という政策を冷静にふりかえってみよう。

 日本の労働組合は激減していて、現在2万2789組合。「従業員29人以下」になると21組合しかない(2023年労働組合基礎調査)。春闘で賃金の爆上げを勝ち取ったところで、全国350万社の中小企業に波及しないというのは、説明の必要もあるまい。

 波及しないどころか、中小企業で働く7割の日本人をどんどん貧しくしてしまう恐れがある。

 政府が「春闘で賃上げムードを」と要請すれば、大企業はそれに協力をせざるを得ない。ただ、ボランティアでやっているわけではないので、当然賃上げ分を補うために「値上げ」に踏み切っていく。ただ、これは大企業にとっては悪い話ではない。

 これまでは値上げや価格改定をすると「高い」「消費者をナメているのか」とボロカスに叩かれたものだが、今回は政府の要請を受けて仕方なくの対応だ。つまり、国が大企業の「値上げ」にお墨付きを与えたような形なのだ。消費者から文句を言われても「いや、人件費高騰ですので」と言い訳が立つ。

 こうして大企業の「値上げラッシュ」が加速しているわけだが、99.7%を占める中小企業が同じことができるのかというと難しい。結果、日本人の7割は給料が上がらないまま、大企業社員の賃金と物価だけが上昇していくという状況が続いて、気がついたら「実質賃金23カ月連続減」という悲惨な状況になっていたというワケだ。

 

「大企業が賃金上げれば、中小企業にも波及する」は幻想
 このような話を聞くと、「大企業が賃上げすれば、下請け企業などの賃金も上がっていくわけだから、それなりに影響があるのでは?」と思う人もいらっしゃるかもしれない。

 ただ、それも「大企業中心主義」にとらわれてしまっている方特有の考え方だ。

 よくドラマやマンガでは、大企業の下請けで搾取されたり、低賃金で無理な仕事を振られる町工場のような中小企業が登場する。そのため、「中小企業ってのは大企業の下請けが多い」と思い込んでいる人が多いが、それはフィクションが広めた誤ったイメージで、現実ではかなりレアだ。

「中小企業白書2020年版」の中には、「受託事業者の現状」という項がある。これは下請法に基づく受託取引のある事業者を、広義の「下請事業者」と捉え、その現状を調査・分析したものだ。それによると、中小企業全体で「下請け事業者」はわずか5%しかないのだ。

 もちろん、これは業種によってレイヤーがある。例えば、情報通信業が最も多く36.2%、次いで製造業が17.4%、運輸業、郵便業が15.2%、卸売業は3.1%、小売業は1.0%、宿泊業、飲食サービス業にいたっては0.1%しかない。

 そんな「下請けの実像」を踏まえて、大企業の賃上げがどこまで波及をするかを考えていこう。

 確かに、IT業界は最も下請けが多いのでそれなりに波及するかもしれない。しかし、製造業や運輸業は1割程度しかないし、卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業に関して大企業の影響は「皆無」と言ってもいい。

 大企業の下請けをしている中小企業は確かに存在している。その中には、春闘の賃上げの恩恵を受けて、自分たちも賃上げができたという成功事例もあるだろう。

 ただ、それは日本経済の実情に照らし合わせると「超マイノリティ」な個別ケースに過ぎない。少なくとも、日本人の7割が働く「中小企業全体の賃上げ」とは関係のない話なのだ。

 

なぜ岸田政権は「大企業中心主義」にとらわれるのか
 さて、このように「大企業が賃上げしたら中小企業も賃上げできる」という考え方がいかにトンチンカンなのかということをわかっていただくと、みなさんは不思議に思うことだろう。

 政府には頭のいいエリートが山ほどいる。データを見てちょっと冷静に考えれば、全体の0.3%に過ぎない大企業が賃上げして、99.7%の中小企業に波及をさせるなんて話が荒唐無稽だということはすぐにわかる。この30年、先進国で日本だけ平均給与が上がっていないという現実からも疑いようがない。

 にもかかわらず、なぜ岸田政権は「大企業中心主義」にとらわれているのか。

 まず、身も蓋もない話をすると、ひとつには「自民党の選挙対策」ということも大きい。

 大企業を中心に構成される経団連は、毎年秋になると、「社会貢献の一環」として約1700の会員企業・団体に、与党(自民党)に献金を促す。そして、自民党は選挙でも大企業の組織力をあてにしている部分がある。

 だから、自民党は露骨に大企業を優遇をする。例えば、岸田政権は大企業に対して「賃上げ」で協力をしてもらう代わりに、「賃上げ減税」という優遇措置をした。中小企業のほとんどは赤字企業で法人税を払っていないので、恩恵はない。つまり、これも「大企業中心主義」を体現した政策ということだ。

 しかも、「大企業中心主義」のメリットには、国民に対して“やってます感”を出したアピールができるということもある。

 実はこれまで説明した「大企業中心主義」にとらわれているというのは、岸田政権だけではなく、マスコミ、そして我々国民にも当てはまることではないか。

 

中小のサービス産業が日本経済を支えている
 マスコミは、正月になると必ず経団連の賀詞交換会で、「今年の景気はどうですか」なんてやっている。国民の中にも「トヨタなど大企業製造業が日本経済をけん引している」と考えている人は多い。

 実際は、日本のGDPの7割はサービス産業で、日本人の7割がここで働いている。そして、サービス産業には圧倒的に中小企業が多い。「大企業が日本経済をけん引している」というのは間違ったイメージで、現実の日本経済は、中小のサービス産業がけん引しているのだ。

 なぜこんな勘違いが定着したのかというと、高度経済成長期のマスコミと教育のせいだ。

 1968年に、日本のGDPがドイツを追い抜き、世界2位になった。同じくらいの生産性の国のGDPは人口に比例する。実はこの時期、日本の人口はドイツを抜いて、先進国の中で世界2位になったので、そこまで驚くような話ではなかった。

 ただ、そこでマスコミがやらかした。「技術大国のドイツを追い抜かしたということは、これは日本の技術力が抜いたということだ」という斬新な説をふれまわったのである。当時、ホンダやソニーという「大企業製造業」が、世界で存在感が高まっていたことにこじつけたのだ。

 普通の国なら、「さすがにそれはないでしょ」というツッコミが入るところだが、日本人は戦前からこういう「日本スゴイ論」に目がない。結果、小学校などの教育現場にまで浸透し、「戦後、日本が奇跡の経済成長を果たしたのは、ホンダやソニーなど世界一の技術をもつ大企業のおかげ」というご都合主義的な話を、教師が当たり前のように子どもたちに教えるようになった。気がつけば、「日本経済をけん引しているのは大企業」という“神話”が常識として定着してしまったのである。

 今、日本のGDPは中国とドイツに抜かれて世界4位まで転落した。この現象について「中国やドイツの技術力が、日本を上回ったからだ」と思っている日本人は少ないはずだ。

 中国は約14億も人口がいるので生産性が上がれば、日本など軽く上回るのは当然だ。ドイツも人口は日本よりも少ないが、労働生産性が日本を大きく上まっているので追い抜かした。「高い技術力をもつ大企業がけん引した」なんて話は関係ないというのが事実なのだ。

 ただ、そういう本当のことを言っても、あまり国民ウケは良くない。昭和に支持された神話”も否定することになるので、なんとなくバツも悪い。

 そこで国民ウケを狙う政治家としては、「大企業が日本経済をけん引して、彼らを優遇すればシャワーのように景気の良さが波及していく」というストーリーを今もふれまわっているというワケだ。

 政治家としても、そういう政策を進めた方が、経団連も喜ぶので、選挙対策的にもありがたい。やめる理由が見当たらない。

 かくして、「大企業中心主義」は続いていく。来年も「春闘で賃上げムードを」とか言っているのだろう。実質賃金減少記録はもうしばらく更新されていくのではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)