企業・団体献金について二つの意見のどちらに近いか、朝日新聞社が郵送世論調査(2月末~4月上旬)で聞いたところ、「利益誘導につながりかねないから、認めない方がよい」が79%に上った。「政治活動は自由だから、認めた方がよい」は15%と少なかった。

 岸田文雄首相は最高裁判決を引いて、「企業の政治活動の自由」を理由に献金禁止に否定的だが、世論の理解を得られていない。

 仮に企業・団体献金を禁止するなら税金を原資とする政党交付金を増やしてもよいかと聞くと、「増やしてもよい」は17%。「そうは思わない」が78%と圧倒的に多かった。

 企業・団体献金を「認めない方がよい」という意見に近いと答えた人でも、献金を禁止する場合の交付金増額に否定的な回答が8割を占めた。

 企業・団体献金を禁止する代わりに、政党交付金を増やそうとしても、それにはかなり抵抗感の強い世論の雰囲気がうかがえる結果だ。

 調査は全国の有権者から3千人を無作為に選び、郵送法で実施した。有効回答は1962。回収率は65%だった。(磯田和昭)

 

 

「裏金」解明は放置のまま「改憲」具体化に走る岸田政権 衆院憲法審査会では「資格ない」「不見識」と批判

 
「長年、国民を欺き、議会制民主主義の土台を踏みにじってきた自民に改憲を語る資格はない」
 
 衆院憲法審査会は11日、今国会で初の実質的な議論となる自由討議を行った。自民党は、岸田文雄首相(党総裁)が約束した9月の総裁任期までの改憲実現に向け、緊急事態条項の条文案を作成する起草委員会の創設を提案。野党第1党の立憲民主党は、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件の全容が明らかになっていないとして「自浄作用のない自民が改憲を論ずることに正当性があるのか」とけん制し、首相の主張通りに議論を進めることに慎重な姿勢を示した。(三輪喜人)
 

 


◆「今国会で節目を」起草委員会設置を提案
 自民の中谷元氏は憲法審で「緊急時の国会機能の維持については、いつでも条文起草作業に入れるところまで議論が進んでいる」と強調。改憲原案の起草委の設置を各党派に呼びかけた上で、定例日の毎週木曜以外の憲法審開催も持ちかけて「今国会中に一定の『節目』が迎えられるよう努力する」と意気込んだ。
 
 日本維新の会の馬場伸幸代表は自民の提案に同調して「首相は9月の総裁任期までの改憲実現の前提となる国会発議をした上で衆院解散すべきだ」と指摘。維新に加え、国民民主、衆院会派「有志の会」は約1年前、共同で条文案をまとめており、改憲に前向きな立場だ。
 
◆自民党大会で「総裁任期中に実現」強調
 首相は保守層の支持を得るため、事あるごとに改憲への意欲を見せる。3月の党大会では「総裁任期中に実現するとの思いで条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速する」と明言した。そんな首相に対して、国民の玉木雄一郎代表は審査会で「威勢のいいかけ声だけは続けている。パフォーマンスにしか見えない」とやゆした。
 
 
 立民などは、裏金事件で多くの議員が法律違反をしていた自民が、改憲論議を急ピッチで進めることを疑問視する。

◆改憲の主体は「縛られる権力側ではない」
 逢坂誠二氏は「憲法も社会の変化に応じて不断の見直しを行うことが求められている」としつつ、改憲の主体は憲法に縛られる権力側ではなく、主権者である国民だと強調。憲法の順守義務を負う首相が期限を区切った改憲に意欲を示すことを「不見識だ」と訴えた。

 共産の赤嶺政賢氏も「長年、国民を欺き、議会制民主主義の土台を踏みにじってきた自民に改憲を語る資格はない」と厳しい言葉を浴びせた。

◆参院では裏金議員3人を差し替え
 参院でも裏金づくりをしていた憲法審の幹事3人が交代する事態に発展している。与党筆頭幹事を務める自民の佐藤正久氏は10日の憲法審後、記者団に「今回の始まりは異常かつ異例だ。自民側に責任がある」と話した。