「派遣社員の雇用」は《企業にとって好都合》でしかない「恐ろしすぎる真実」…「社会保険料の削減」だけでない、一般的に知られていない「驚きの事実」

 
一般的に人件費と言えば、従業員への給与や社会保険料が該当だろう。だが、これら人件費は消費税がかからない。一方で、派遣社員を受け入れたことにより支払う派遣料金は外注費に該当し消費税が発生する。そのため、派遣社員の受け入れは節税対策としても機能するのだ。
 
 
大手を中心に幅広い企業で派遣会社が利用されている。その理由はなぜだろうか。そこにはさまざまな理由があり、一般的に言われている表向きの理由以外に、実はあまり表立っていわれていない理由もある。そこで、企業が派遣会社を使う理由について解説していく。

派遣社員を取り巻く就業環境の概要
話を進めていくに当たり、まずは派遣の仕組みから解説していこう。派遣には派遣先、派遣元、派遣社員の3者が存在し、派遣先は実際に派遣社員が働く会社である。派遣元は派遣社員が所属する企業だ。つまり、派遣社員が雇用されているのは派遣元になる。

そして派遣先はあくまでも、派遣元との間で結ばれた派遣契約に基づき、派遣社員を受け入れるに過ぎない。派遣先は派遣社員を雇用していないものの、派遣契約によって指揮命令権を有し、派遣社員を業務に従事させることができる。
 
当然、給料の支払いも派遣先から直接なされるわけではない。まずは派遣先から派遣元へ「派遣料金」という形で支払いがなされる。そこから派遣元に生じる諸経費を差し引き、残額が派遣社員に給料として支払われるというわけだ。
このように、派遣社員という就業形態は3者がかかわり、通常の企業と従業員という1対1の雇用関係よりも複雑なものになる。それゆえ、一般的に派遣社員を使うと時間単価では割高になる。派遣先が支払う派遣料金には派遣会社の利益分、いわゆるマージンが上乗せされるからだ。

派遣社員の求人票を見ながら具体的に考えてみよう。都内なら事務仕事でも時給1400円程度が相場だろう。エクセルで関数が利用できることなど少し高度なスキルを要求される仕事内容であれば1700円を超えることもある。
 
仮に時給1400円で派遣社員を受け入れた場合、派遣先が支払う派遣料金は1時間1400円ではない。一般的なマージンは約30%なので、実際に支払う派遣料金はおおよそ2000円程度になると予想される。

時間単価で2000円となると、月収換算で40万近い金額になる。簡単な一般事務で月給40万円という待遇はそうそうありえない。普通に考えれば、自社で20万円から30万円で社員を雇った方が割安だ。

一般的に語られる派遣社員を雇うメリット
では、なぜ高い派遣料金を払ってでも企業は派遣社員を利用するのだろうか。派遣社員の仕組みについて知るとそういった疑問が湧いてくるだろう。実のところ、マージン分を考慮しても派遣社員を受け入れるメリットはいくつもある。
 
その1つが健康保険や厚生年金等の社会保険だ。通常社員をフルタイムで雇う場合、社会保険に加入させなければならない。社会保険は労使折半であり、従業員が負担している額と同額を企業も負担する。それは企業にとって人を雇う際の大きなコストとなる。

この点、派遣社員は派遣元が社会保険に入れることになる。そのため、派遣社員を受け入れる派遣先は社会保険料がかからない。加えて派遣先は社会保険に対する加入や脱退といった各種届け出も不要となるため、事務的負担も減らすことができるのだ。

また、派遣社員が何かしらの問題を起こした場合、雇用主たる派遣元に責任を追及できるため、責任の所在が明確でその追及も容易になるメリットもある。
 
さらに、人員数の調整も容易だ。一般的に一度雇用した人間を解雇するのは容易ではない。会社都合で解雇しようとすれば、それが労働問題に発展することもある。

しかし、派遣社員であれば、大抵の場合1ヵ月から3ヵ月の契約更新を続けていくことになるため、期間満了時に契約を更新しなければ、いつでも切ることができるというわけだ。

イベントの開催等で人がたくさん必要な時や、人件費に余裕があるときに多く受け入れ、人が不要な時期や人件費を削減したいときは契約を更新しなければいい。

ここまでが一般的に語られる派遣社員を使うメリットだろう。だが、派遣社員を企業が使うメリットはこれらにとどまらない。さらに「隠れた理由」が存在している。

消費税の節税ができる
一般的に人件費と言えば、従業員への給与や社会保険料が該当だろう。だが、これら人件費は消費税がかからない。一方で、派遣社員を受け入れたことにより支払う派遣料金は外注費に該当し消費税が発生する。そのため、派遣社員の受け入れは節税対策としても機能するのだ。

具体的に説明しよう。企業が所轄税務署に納める消費税は、受け取った消費税と支払った消費税を差し引いた額になる。例えば、1200円の消費税を受け取り、1000円の消費税を払うと、納付する消費税は200円だけで済む。つまり、派遣社員を積極的に受け入れることで支払う消費税を減らすことができるわけだ。

また、受け取った消費税より支払った消費税の方が高ければ、その超過分については還付される。このように、派遣社員の受け入れは節税対策として優れている面もある。消費税は効果的に節税することが難しく、企業が赤字か黒字かどうかに関係なく支払う必要がある。そのため、売上高が高く消費税を節税したい大企業などを中心に、派遣が積極的に利用されているのだ。

派遣社員を雇うメリットは、この他にも「昇給や賞与が不要」だったり「優秀な社員の絞り込み」など、「派遣社員は企業にとって便利な道具」だと言わんばかりの好都合な背景が企業側にある。
 
 

「派遣社員と正社員」の待遇格差…「同一労働同一賃金」は見かけだけだった!派遣社員が置かれている「恐ろしすぎる事実」を暴く

 
昇給や賞与が不要で予算管理もしやすい
近年では、“同一労働同一賃金”という考えのもと、派遣社員と正社員との間の待遇格差が問題視されている。ただ実態としては、派遣社員に対する昇給や賞与の支給は必ずしも必要ではない。
 
派遣社員と正社員とで完全に同じ待遇とすることまでは求められていないからだ。能力や業務内容等を勘案した結果、正社員の方が高待遇で派遣社員の待遇がそれより低くなったというように合理的な理由に基づく差は容認されている。

そのため、単純な入力業務や在庫管理など、正社員が行う必要のない仕事は派遣社員に任せる方がコスパのいいこともあるのだ。例えば、正社員で雇う場合、昇給させず賞与も不支給という条件での雇用は難しい。しかし、派遣社員であれば派遣元が条件に見合った人を探してくれる。こちらで探す手間もなく、効率的に望む条件での人員確保ができるのだ。

企業において昇給や賞与を不支給とすることができる点は非常に大きい。月収20万円の人間に1ヵ月分の賞与を支給すれば、社会保険の企業負担分を除いても20万円の支出になる。社員が100人いれば賞与は2000万円になり、そこに社会保険料まで加わるとすれば年間での支出は莫大な額になる。そこに加えて定期昇給も実施するとなると毎年じわじわ人件費も上がっていく。

その点、派遣社員に切り替えてしまえば、昇給も賞与も不要にすることもできる。時間単価では割高でも、長期で見ると人件費の削減につながるわけだ。また、派遣社員の派遣期間は一定期間ごとに区切られており、労働時間で派遣料金が決まるため、月単位・年単位での予算管理もしやすいというメリットもある。
 
効率よく安価で正社員を雇用することもできる
なかなか表には出てこない話であるが、派遣社員として人員を受け入れることによって、結果的に効率よくかつ安価に正社員を採用できることもある。なぜなら、派遣社員として受け入れた人員も、派遣元との協議の上、派遣先の正社員として採用できるからだ。中には正社員化を前提として6ヵ月以内の期間を決めて派遣される紹介予定派遣なるものもある。

一般的に人材紹介サービスを通じて人員を採用する場合、採用する人間の年収を基準に35%前後の率で算出される人材紹介料が生じる。年収300万円の人間を採用する場合でも105万円の人材紹介料が生じるのだ。10%の消費税を加えるとなんと120万円にもなる。

それに対して、一度派遣社員として受け入れた人材を採用する場合、その紹介料のパーセンテージは小さくなるのが一般的だ。派遣期間など諸条件にもよるが、20%から25%程度が相場になるだろう。

このように、最初に派遣社員として受け入れれば、正社員への切り替えはもちろん、派遣社員として継続して就業させることも可能だ。受け入れる企業としては幅広い選択が可能である。

急成長しているベンチャー企業の中にはまずは派遣社員として受け入れ、その中から優秀な社員を直接雇用の正社員に切り替え、派遣社員たちを束ねる管理者にしていくような人材を採用している会社もある。
 
企業は派遣社員を便利な道具として利用しているに過ぎない
企業が派遣社員を利用するのには経費削減や節税、人事にかかわる工数の削減など多くのメリットを享受するためである。いわば派遣社員を1つの便利な道具として利用しているに過ぎない。
 
世間では派遣社員の存在についてさまざまな意見が飛び交っていて、その是非は度々議論されている。派遣社員の是非についてはともかく、一部企業で積極的に利用されていることやその裏側について知っておくことは、就職や転職の際に役立つだけでなく、今後の日本社会の在り方を考えるに当たって必要な知識となるだろう。

派遣社員がどのようなものであり、どのような目的で利用されているのか。それについて今一度自身で調べてみてはいかがだろうか。