子どもへの性暴力「加害者を取り締まる法律だけでは限界」 元ジャニーズJr.らが訴える性教育の必要性

 
辛い時間を必死で生きてきた彼らは強くなった。二度と同じ被害者を出させないという固い決意だ。
 
 
子どもへの性暴力をなくすために、何が必要なのか。そんなテーマで、旧ジャニーズ事務所(SMILE-UP.)創業者の故・ジャニー喜多川氏からの性被害を告白した当事者らが中心となり、4月6日、東京都内でシンポジウムが開催された。

主催は「1 is 2 many 子どもへの性暴力を根絶するAction Plan(ワニズアクション) 」。元ジャニーズJr.の中村一也さん、二本樹顕理さん、飯田恭平さん、大島幸広さん、長渡康二さんらが中心となって結成した。子どもの頃に受けた性被害についての民事訴訟の時効撤廃を求めるキャンペーンを実施する他、予防啓発などに取り組んでいる。

●「加害者を取り締まる法律だけでは限界」
シンポジウムでは専門家から、年齢に応じた性教育の必要性が呼びかけられた。
 
犯罪被害者支援に取り組む上谷さくら弁護士は、刑法改正により前進はしているものの「加害者を取り締まる法律だけでは限界です。いくら法律を厳罰化しても響かない人がいる」として、「子どもたちが被害に気付き、訴えられるための環境づくりが必要」だと訴えた。

上谷弁護士によれば、幼少期に受けた性被害について数十年が経過してから相談が寄せられるケースが増えているという。子どもに対する性犯罪の特徴として、子ども自身が被害を受けたと認識できないことが多く、認識できても周囲の大人に相談したり、法的な措置をとったりするまでには時間がかかる点があげられる。
 
加害者臨床を行っている精神保健福祉士の斉藤章佳さんも「子どもが何をされたのか認識しないという問題がある。親が『忘れて欲しい』と裁判にならないケースもあり、(子どもに対する性犯罪は)闇に葬られる数が多いという現場の感覚がある。(公的な被害の)数字がどれだけ正確なのか疑問に思っている」と話した。

元ジャニーズJr.の中村一也さんは「性についての知識を知ることは、被害を生み出さないために、被害者にとっても加害者にとっても重要。ジャニー氏による性加害でも、何をされているかわからないとか、被害を受けても周りに声を上げられなかった人もいた。これから育っていく子どもたちのために、性被害を生ませない社会を作っていきたい」と意気込みを語った。

●「先生、オレこのまま刑務所からでたくないよ」
専門家からは次のような提言があった。

◆上谷さくら弁護士
子どもたちが被害に気付き、訴えるための環境づくりが必要です。子どもが「被害」とわからないケースや、「イヤだ」と思っても「大人に伝えたら怒られるかもしれない」と黙っていることがあります。

大人になってから、幼少期の性被害を告白した人たちに「どういう環境が整っていれば言えましたか?」と聞くと、「それ(被害内容)が許されないこと、やった人がおかしいという知識が欲しかった」と言います。

「助けて」といった時に、信じて怒らない大人の存在、そして年齢にあった性教育が必要だということです。子どもたちは正しい答えを求めていますが、大人から正しい知識が得られないために、先輩やネットなど間違いだらけの情報を得てしまいます。

また支援にかかわる人の人材育成、資金投入も不可欠です。性被害者には支援者の存在が不可欠ですが、その人たちのやる気や使命感に頼っているのが実情です。

◆精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さん
刑務所で性犯罪のプログラムをした時に「先生、オレこのまま刑務所からでたくないよ。また絶対に小さい子をやってしまうのがわかっているから」と言われました。性犯罪者に治療が必要という話が出てきますが、性加害をしないためのかかわりを続けるのが加害者臨床の本質です。

性暴力は性的欲求や衝動によるものではなく、支配、優越、強さの主張といった様々な欲求から行われます。そして小児性愛者には純愛幻想、飼育欲、支配感情という、3つの特徴的な認知の歪みがあります。

「私は他の加害者とは違います。だって挿入時はローションを使って痛みを感じないよう配慮しています」「相手が3歳だと記憶には残らないからwin-winです」という人もいました。これはおかしいと彼らに思わせなければいけません。

少年鑑別所で青少年たちに会うと、性的同意やプライベートゾーンについて誰も知りません。教わっていたら性加害をしなかったかもしれないと聞くこともありました。再犯は防ぐことができますが、初犯は防げません。しかし初犯を防ぐ方法論として、包括的性教育は効果があるのではないかという期待があります。
 
 

それはないだろう東山紀之CEO!英BBC「捕食者の影」のインタビューで開き直り連発のウラ(元木昌彦)

 
 
【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

節操のないテレビ局や企業が、春からの新番組やCMに次々旧ジャニーズ事務所のタレントたちの起用を始めている。

ジャニー喜多川による多くの少年たちへの性的虐待があったジャニーズ事務所は、ジュリー藤島社長がそれを「事実」と認めて謝罪・引責辞任して会社を解体。被害者救済の新会社「SMILE-UP.」を設立したが、補償の実態さえ十分に開示してない現状で旧ジャニーズのタレントたちの“復活”を放置しておいていいのか。
3月30日、英公共放送BBCがジャニー喜多川追及第2弾として、東山紀之「SMILE-UP.」CEOのインタビューを放送した。
 
モビーン・アザー記者の切り込み方は鋭く、東山はたびたび言葉に詰まる。見ていて、この東山という男、社長失格ばかりか人間としても失格なのがよく分かる。

冒頭、CEOとしてやるべきことはと問われ、「これだけのスタッフたちを路頭に迷わすことはできない」と答える。新会社がジャニー喜多川の毒牙にかかった被害者救済のために設立されたということが、スッポリ頭から抜け落ちているようである。

東山自身が、ジャニー喜多川が欲望を満たすために少年たちを住まわせていた「合宿所」にいたのに、喜多川の不適切な行為を知らなかったのか、自身も被害者ではないのかという直截(ちょくせつ)な質問には、「僕自身はまったく聞いたことがなく、現場を見たことも、先輩や後輩から話を聞いたこともない。自分は不適切な振る舞いに及ばれたことはない」と全否定したが、これは想定内。興味深いのは、2004年に最高裁でジャニー喜多川の少年たちに対する性加害が認定されたのに、なぜ事務所内で噂にもならなかったのかという問いに対する答えである。

「あの時は麻原彰晃(の地裁判決=筆者注)に全ての目が行っていて、新聞も書くことがなく、一般の人たちもジャニー喜多川の判決に目が行っていなかったから、事務所内でもそれについて話すことはなかった」と答えたのである。メディアや日本人だってこの問題に無関心だったではないかと開き直っている。

アザー記者は今回のインタビューの核心に迫る。彼は、被害を受けたジュニアから、事務所のスタッフたちからも性的虐待に遭ったと言っていると聞く。すると東山は「僕が聞いているのは2人だ」と認めたのである。アザー記者は突っ込む。社内で少年への虐待があったのだから、その情報は警察に提供する必要があるのではないか。「僕らには法的権限がない。被害を受けた当事者が刑事告訴すればいい」と、まるで他人事である。しかもスタッフの1人は東山の当時のマネジャーだったのに……。

さらに、虐待された被害者たちをネットなどで誹謗中傷することに対してどう思うかと問われ、「言論の自由もあると思う。その人にとってそれが正義の意見なんだろうと思うこともあります」と答えたのである。言論の自由をここで使うか!

被害者だと訴える中に嘘を言っている人間が多くいると自社サイトで指摘するなど、とても被害者に寄り添って早期に問題を解決しようと考えているとは思えない。この東山CEOの強気や増長、開き直りの背景には、テレビ局やスポンサー企業との関係回復があることは否めないだろう。元のもくあみである。

日本の良識あるメディアも「日ごろの取材への対応も後ろ向きだ。当初の約束は有名無実化している」(朝日新聞3月30日付社説)などと座して嘆いてないで、少しはチェック機能を果たせよ。 (文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)