桐生市の生活保護問題 「福祉事務所へ行くぐらいなら死んだほうが…と思わせる福祉って」 全国調査団が会合

 

 雨宮さんはこれらの事件と比べても、桐生市が10年間で生活保護受給世帯を半減させ、直近で受給する母子世帯が月平均2世帯まで減るなど、特異さが際立つ点を指摘する。分割支給を実施し、通院のための交通費をほとんど支出していないのも特徴で、「さまざまな事件を見てきたが、桐生は独自ルールがすさまじい」と批判。監査する立場の県についても「どこまで状況が分かっているのか。分かっていれば、こんなに放置されていない」と述べた。

 

 

 生活保護費を満額支給しないなど群馬県桐生市による違法性が強く疑われる制度運用を巡り、研究者や支援者らで結成した「桐生市生活保護違法事件全国調査団」が4日、同市中央公民館で会合を開いた。
 

 出席者から事例報告があり、生活困窮者支援団体「つくろい東京ファンド」(東京)のスタッフで、フリーライターとして桐生市で取材を重ねた小林美穂子さんは「多くの人に、福祉事務所へ行くぐらいなら死んだほうがましだと思わせる福祉とは何なのだろうか。構造的な問題を探っていきたい」と話した。
 

 また、調査団が桐生市に提出していた公開質問状に対する市の回答が示され、吉永純・花園大学教授(公的扶助論)は「保護費を1カ月を超えて全額支給しない法的根拠を聞いたら、ないとの回答だった。これには本当に驚いた」と市の対応を批判した。
 

 調査団は5日、午後1~3時に美喜仁(びきに)桐生文化会館で市民集会「誰もが人間らしく生きるために」を開く。シンポジウムのパネリストに小林さん、吉永教授、市民団体「反貧困ネットワークぐんま」の町田茂事務局長ら5人が登壇し、生活保護や生活困窮者支援のあり方について意見交換する。詳細はHPに掲載しており「桐生市全国調査団」で検索。(小松田健一)

 

 

「税金で飯食ってる自覚あるのか」生活保護受給者に窓口で威圧 桐生

 

 

 群馬県桐生市が生活保護費の支給で不適切な対応をしていた問題で、桐生市生活保護違法事件問題全国調査団(団長・井上英夫金沢大学名誉教授)は4日、同市内で報告会を開催した。受給者が市の窓口で相談員から「お前は税金で飯を食っている自覚があるのか」「生活保護は他の自治体で申請しろ」などと威圧的な対応をされた事例が新たに報告された。また、同市が警察OBを生活保護担当の部署に非常勤嘱託職員として採用し、専門外の就労支援に当たらせていたことも判明。調査団は5日、県や市などに改善を要望する。【遠山和彦】
 

会で報告した「反貧困ネットワークぐんま」の町田茂さんによると、1月にフリーダイヤルで同市の生活保護支給について情報を募ったところ、窓口で相談員に威圧的な態度で申請を思いとどまらせるような対応をされたという訴えが多数寄せられた。相談員から「帽子をかぶって何様だ」と追い返されたり、「全てお前に原因がある」などと人格を否定するような発言をされたりしたという訴えもあった。
 

 情報提供時に「本当のことを話すと桐生市に仕返しをされる」「絶対に自分の名前を公表しないで」という人もいたといい、町田さんは「これまで窓口などでどれだけ多くの嫌がらせを受けてきたかが分かる」と説明する。
 

 また、調査団の調べで、2012年7月から市が警察OBを非常勤嘱託職員として生活保護の面接相談業務の補助者として採用していたことも明らかになった。生活保護の相談者による威嚇や不当要求に対応する狙いだったが、警察OBは相談者が不当要求者でなくても相談員として対応していた。また専門外の就労支援員として勤務することもあったという。
 

 市によると、福祉課には3係があり、現在は警察OBは保護係に2人、社会福祉係に1人の計3人が勤務している。調査団は「警察OBは対行政暴力事案に限って関与するよう見直すべきだ」として5日に市などに改善を要請する。

 

 

作家・雨宮処凛さん、桐生生活保護問題に「独自ルールすさまじい」

 
 
 群馬県は5日、桐生市が生活保護費の支給で不適切な対応をしていた問題で、取り組みを求めた全国調査団に対し、市町村に対する監査と相談窓口の担当者向けの研修を見直すと約束した。調査団が同日、県と市に面談。市が保護費総額を急減させたなどとして、徹底的に実態を解明するよう要望した。

 作家で反貧困活動家の雨宮処凛さんは「桐生市生活保護違法事件全国調査団」の呼びかけ人の一人で、5日の県への要望にも同席した。調査団に加わった理由について、「(桐生市は)めちゃくちゃなことをやっている。知れば知るほどびっくりすることばかりなので来た」と取材に話した。

 生活保護を巡っては、これまでも2012年に生活保護を門前払いされた札幌市の姉妹が病気や寒さで死亡し、20年には大阪府八尾市で生活保護受給者の母子が餓死・孤立死するなど、自治体が窓口で生活保護の申請を阻む「水際作戦」や生活保護の実効性が問題視されてきた。

 雨宮さんはこれらの事件と比べても、桐生市が10年間で生活保護受給世帯を半減させ、直近で受給する母子世帯が月平均2世帯まで減るなど、特異さが際立つ点を指摘する。分割支給を実施し、通院のための交通費をほとんど支出していないのも特徴で、「さまざまな事件を見てきたが、桐生は独自ルールがすさまじい」と批判。監査する立場の県についても「どこまで状況が分かっているのか。分かっていれば、こんなに放置されていない」と述べた。【田所柳子】