キックバックの真相究明せず幕引き? 基準不明の「処分」に不満の自民党議員「二つのピースが欠けている」

裏金にまみれた自民党というコップの中で
「役職停止」だの何だのと言っても
それは汚れたコップの中の話。
そもそも党員でない大多数の国民にとって
何の意味があるか。
主権者に対して何の責任を取ったことにもならない。
 
 
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で85人がキックバック(還流)を受けていたにもかかわらず、離党勧告や党員資格停止の比較的重い処分は5人にとどまった。責任を押し付けられた格好の安倍派からは、処分を逃れた岸田文雄首相に「道義的・政治的責任も問われるべきだ」(塩谷立元文部科学相)と不満が渦巻く。首相が真相究明や自らの責任に向き合わず、政治不信が極まる中、恣意的(しいてき)な処分でけじめを演出できるのか。(井上峻輔)
 
◆「なぜこうなったのか…」離党勧告の塩谷立氏
 「長期にわたり大規模かつ継続的に組織的な不正が疑われている。派閥幹部の立場にありながら適正な対応を取らなかった政治責任は極めて重い」。党紀委員会の報告を受けた茂木敏充幹事長は4日夕、党本部で安倍派幹部に厳しい処分を科した理由を説明した。
 
 その40分ほど後、安倍派で座長を務めた塩谷氏は議員会館で記者団に囲まれていた。離党勧告と知らされて「非常に厳重な処分で残念。なぜこうなったかの説明を聞きたい」と表情をこわばらせた。
 
 塩谷氏は党紀委に提出した弁明書で、首相らが処分の原案を綿密に検討したことに対して「独裁的・専制的な党運営には断固として抗議する」と強く非難。他にも「処分に合理性がない」と不信の声が相次ぐ。
 
 安倍派幹部らは裏金づくりについて「知らぬ存ぜぬ」と口をそろえる。安倍派で2022年に一度は中止が決まった還流を継続した理由も不明のままだ。
 
◆「岸田派」の会計責任者も立件されたのに
 それでも党執行部は処分の軽重の判断に欠かせないはずの実態解明を棚上げにし、区切りを付けるための結論を急いだ。大量に処分すれば、党内で恨みを買い、世間的にイメージも悪化する。それを避けようと、処分対象を「不記載額500万円以上」に限定した。
 首相は「説明責任を見極めて処分する」と言っていたのに個別の事情はほとんど考慮されなかった。金額の線引きは茂木氏が決めたとされるが、党幹部は「根拠はない」と認める。
 
 岸田派でも元会計責任者が立件されたが、首相は安倍派とは「次元が違う」として都合よく自身を処分対象から除外。茂木氏は、所属議員の多数に不記載があった派閥幹部で対応を怠って大きな政治不信を招いたケースと、不記載額が500万円以上のケースのお手盛りな基準を挙げて「この二つに当てはまらない」と述べ、首相が不問に付された理由を説明した。
 
◆森元首相を国会招致しないまま
 安倍派元会長で今も政界に影響力を残す森喜朗元首相は、裏金づくりが始まった経緯や復活の背景を知りうるとされるが、自民は処分や国会招致に消極的で真相は闇の中。首相には早期の処分決定で局面を打開する思惑があったが、国民の信頼回復にはほど遠い。
 
 中堅議員は今回の処分について「首相と森元首相という二つのピースが欠けている。これでは国民は納得しない」とつぶやいた。
 
 
 
きょうの潮流
 
 あすから新スタートとなるNHK「プロジェクトX」。番組では中島みゆきさんの「ヘッドライト・テールライト」がエンディングテーマとして使われてきました。いまその替え歌がSNSで話題になっています
 
▼♪キックバック/TELL A LIE(うそをつく)/記録ない/記憶もない/ものまね歌手の清水ミチコさんが自身のユーチューブチャンネルで自民党の裏金問題を痛烈に皮肉っています。「どんな悪事もいいメロディに乗せると感動的になる?」実験だと
 
▼風刺が効いている、お笑いはこうあるべき、庶民の思いを代弁してくれた―。寄せられる反響の声は、この問題に渦巻く市井の怒りや不信の表れともいえます
 
▼政治資金パーティーの裏金事件をめぐり、自民党が安倍派幹部らの処分を決めました。基準もあいまいで適切かどうかも判断できず、自身の派閥も法に違反していた岸田首相の責任も問われない。これは何のため? もやもやだけが残る決め方です
 
▼組織ぐるみで不正に集めた巨額を裏金とし、使った先も明らかにしない。自分を守るため、組織を守るため、今をのりきればいいと、平気でうそをつく。そんな姿が政治や社会にまかり通ってしまえば、この国の先行きは暗闇に閉ざされてしまいます
 
▼先の中島みゆきさんの歌は、歩んできた道と、これから進む道という、名もなき人々の人生の旅路を照らします。過去からつづく未来。国民から見放されても省みない現在の自民党と岸田首相に、その道はあるのか。
 
 
真相解明なく39人処分
自民裏金議員 残る40人は「注意」のみ

 
 自民党は4日、裏金事件の関係議員を処分するため、党紀委員会(逢沢一郎委員長)を開きました。岸田文雄首相や二階俊博元幹事長などの派閥のトップへの処分はありませんでした。処分されたのは、党の調査で不記載・誤記載があった裏金議員・選挙区支部長85人のうち39人。残る約40人は茂木敏充幹事長が「注意」するのみです。裏金事件をめぐる最大の政治的争点である真相解明について何ら具体的な進展のないまま、処分となりました。

首相と二階氏 おとがめなし
 党執行部は安倍派の有力議員「5人衆」のうち、塩谷立・元文科相と世耕弘成前参院幹事長を離党勧告としました。事務総長経験者の下村博文元政調会長と西村康稔前経産相は「党員資格の停止」1年間。高木毅前国対委員長は党員資格停止6カ月。松野博一前官房長官と萩生田光一前政調会長を「党の役職停止」1年としました。

 二階派幹部だった武田良太元総務相は役職停止1年としました。

 政治資金収支報告書への不記載が3526万円と最多だった二階氏については、次期衆院選の不出馬を表明したことを受けて処分を見送りました。首相は会長を務めた岸田派の元会計責任者が立件されましたが、党執行部は首相自身には不記載がないとして処分対象から外しました。

 

岸田首相の思惑 萩生田氏は軽い処分、党役職停止1年 9月総裁選での再選へ萩生田氏取り込み?

 
すべてが党利党略だ。
「5人衆の中で森喜朗元首相とも距離が近く、安倍派でも影響力が高い点を考えると(2段階重い処分の)“選挙における非公認”ぐらいが妥当。処分を軽くすることで、総裁選に向け萩生田氏を取り込もうとしているのではないか」
 
 
 派閥の政治資金パーティー裏金事件で自民党は4日、関係議員ら39人の処分を決めた。岸田文雄首相ら執行部が厳罰方針を党紀委員会に提示し、了承された。安倍派の衆院側、参院側でトップだった塩谷立、世耕弘成両氏は、除名に次いで2番目に重い「離党勧告」。派閥で事務総長経験者の下村博文、西村康稔、高木毅の3氏には、3番目に重い党員資格停止を科した。幹部協議に出席した下村、西村両氏の停止期間は1年。高木氏は参加していなかったことを加味し6カ月の停止。派閥幹部でやはり事務総長を務めた松野博一氏と、萩生田光一氏は6番目に重い「党の役職停止」とした。
 注目された首相自身、二階派の二階俊博会長には結局、処分はなし。首相は「個人として不記載がなく、岸田派の不記載は事務的なミスで所属議員に資金が渡っていなかったため」と理由を説明した。党総裁でもある首相は無傷。加えて、安倍派が資金還流を復活させた理由、裏金は何に使ったのかなど、実態解明がなされない中で処分だけを急いだことに党内からは不満が噴出した。

 発表された処分には、首相の思惑が透ける。永田町では「萩生田氏の処分の軽さが突出している」との指摘があった。萩生田氏は“安倍派5人衆”の一人だが、塩谷、下村、松野、西村、高木氏とは違い、派閥の実務を取り仕切る事務総長を経験していない。それだけ処分が軽くなったとの見方もある。ただ、不記載額は立件ラインギリギリの2728万円と金額が大きい。

 政治評論家の伊藤惇夫氏は「5人衆の中で森喜朗元首相とも距離が近く、安倍派でも影響力が高い点を考えると(2段階重い処分の)“選挙における非公認”ぐらいが妥当。処分を軽くすることで、総裁選に向け萩生田氏を取り込もうとしているのではないか」と推察。9月の党総裁選で再選を目指す岸田首相、さらにポスト岸田を狙う茂木敏充幹事長の“思惑”が働いたとの見方を示した。「萩生田氏は安倍派の若手議員を束ねる存在。森氏、麻生太郎副総裁、菅義偉前首相ら党の実力者とのパイプも太い。取り込むメリットがある」とした。

 岸田首相と茂木氏は、岸田首相が「派閥解消」を茂木氏への相談なしに表明したといわれる件などで“溝”が深まっている。総裁選をにらみ、今回の処分ばかりは呉越同舟だったようだ。
 
 

裏金2728万円でも「実質おとがめナシ」萩生田光一氏に寄せられる批判…自民関係者は「東京15区」の大失敗に怒り心頭

 
 
 4月4日、自民党の裏金問題をめぐり、「党の役職停止1年」の処分が下された萩生田光一衆院議員に対し、「処分が軽すぎる」などと批判が殺到している。
 
「萩生田氏は裏金キックバック問題で、政治資金収支報告書への不記載が2728万円にのぼり、昨年12月22日に党政調会長を辞任しました。

 その後、収支報告書を訂正しましたが、支出の目的、金額、年月日を不明とするなど、訂正そのものも『いい加減すぎる』と批判が出ました。

 1年間役職に就けないものの、すでに政調会長を辞任しているため、実質的にはおとがめナシになりました」(政治部記者)

 この処分にSNS上では、

《役職辞任してる #萩生田光一 処分は役職停止1年。はぁ? 無罪放免ってことだよね?》

《裏金を止めなかったのに、党役職停止1年ですか?????》

 などと批判が相次いでいる。2022年6月の参院選前に、生稲晃子氏をつれて旧統一教会の集会に参加していたことも明らかになっており、

《萩生田光一への処分を見ていると、言われる通り統一教会の陰の力を感じざるを得ない》

 といった意見も――。

 萩生田氏に対する批判はこれにとどまらない。

 今年2月に党の都連会長を続投することが決まり、現在もその役職にある。4月5日、萩生田氏が都連会長を辞任する必要があるかと問われた岸田文雄首相は、党役職停止の対象は党本部の役職であり、都連会長の続投は可能との認識を示した。

 これに対し、元都連所属議員は「萩生田さんは都連会長もやめるべき。都議や区議も怒っています」とし、こう続ける。

「萩生田氏は、都連の公認候補選びの実質的な決定者ですが、候補志望者や候補予定者に対しては『俺の言うことを聞かないやつは選ばない』的な態度で接してきますし、態度がめちゃくちゃ横柄です。

 比較的若い都連の議員たちは、以前から『萩生田さんには早く都連会長をやめてほしい』と陰口を叩いています」

 さらに「東京15区補選」に関しても、萩生田批判が噴出している。自民党都連関係者が、怒り心頭でこう話す。

「東京15区の補選では、都民ファーストが擁立する乙武洋匡氏に相乗りすることになりました。萩生田さんは裏金問題のゴタゴタで身動きが取れず、相乗り自体は党本部主導でしたが、この選択はおかしい。負けを回避したかに見えますが、それは大きな間違い。負けてもいいから、独自候補を擁立すべきでした。

 なぜなら、乙武氏がもし当選すれば、次回から15区に自民党は党公認候補を立てられなくなるからです。次の衆院選で自らが推薦した現職の乙武氏に対抗馬を立てることは道理に反します。ですから東京の選挙区を一つ手放すことになったのです。

 都連の候補者選定の実権を持つ萩生田会長は、独自候補の擁立を死守すべき立場にあった。この件に関しても、都連会長である萩生田さんの責任は重大ですよ」

 今後、萩生田氏が都連の会長を続けるかどうかは、都連が判断するというが、萩生田氏がみずから辞任するようなことはなさそうだ。

 

「最大のミステリー」裏金処分「党役職停止」の萩生田光一氏は「実質おとがめなし」と野党指摘

 
 
岸田文雄首相は5日の衆院内閣委員会で、自民党派閥政治資金パーティー裏金事件を受け、5日に党党紀委員会が関係議員39人に下した処分をめぐり、安倍派有力幹部だった萩生田光一前政調会長への処分が甘いとして「最大のミステリー」だと、野党に指摘を受けた。

立憲民主党の山岸一生議員は「(処分の基準に)いろんな不明確さがある中で、最大のミステリーが萩生田議員の取り扱い」と、党役職停止1年にとどまった萩生田氏の処分に言及。「(安倍派の)事務総長(経験者)ではなかったということだが(不記載)金額は(2728万円と)突出して、政調会長でもあった。だれもが認める(有力)議員だが、すでに(政調会長を)辞めている」とし、事実上の有名無実化した処分ではないかとした。

岸田首相は、萩生田氏の役職停止は党本部の役職が対象になるとし、党東京都連会長や、選挙区支部長などは対象外との認識を示したため、山岸氏は「実質的におとがめなしということですね」と皮肉った。

首相は「1年の党の役職停止は、党規約に定められた厳正処分のうちの1つだ」と主張し「なぜこんなに処分が甘くなったのか」と指摘されると「個々の議員へのさまざまな意見があるのは承知しているが、自民党としてその党規約に基づいて、しかるべき手続きを踏んだ上で判断している。さまざまな指摘はしっかり受け止めるが、大変重いものだ」と主張した。

萩生田氏は、森喜朗元首相に近いことで知られる。山岸氏は、森元首相に電話で聴取を行ったことを明かした岸田首相に、「萩生田氏への配慮は話題になったか」と問うたが、首相は「聞き取り調査の内容を明らかにすることはしない。何かやりとりがあったか?ということだが、ありませんでした」と否定した。