小林製薬『紅麹コレステヘルプ』の“紅麹”成分で被害者続出!医師に聞いたサプリへ健康食品の「安全性」、弁護士に聞いた小林製薬への「法の裁き」

 
「治療費や労働能力喪失率といった逸失利益や後遺症の慰謝料など、個別事情に基づいて判断されるため、予想することは難しい。ですが、類似例でいえば'07年にアマメシバという植物を用いた健康食品を摂取したことで、閉塞性細気管支炎などの健康被害を受けたと2人の女性が製造会社などに対して損害賠償を請求した際は、最終的に製造会社は被害者2人に対して約4600万円支払うことになりました」
 
 
 “あってはならない”事件が起きてしまった。

「3月22日、医薬品などの大手メーカー『小林製薬』は、製造・販売した紅麹を含むサプリメントが腎機能に異常を生じさせ、死亡事例を含む健康被害を引き起こす可能性があると発表。近年、まれに見る社会問題に発展しています」(全国紙記者、以下同)

小林製薬“紅麹”が招く巨額賠償
 小林製薬は、1886年に創業した『小林盛大堂』をルーツに持つ老舗企業。『熱さまシート』や『アンメルツ』など、数々のロングセラー商品を販売していることでも知られている。

「問題となった紅麹成分が含まれている『紅麹コレステヘルプ』『ナイシヘルプ+コレステロール』『ナットウキナーゼ さらさら粒GOLD』の3つの商品を回収すると発表。小林製薬のホームページには、いずれの商品も紅麹に含まれる成分がLDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールを下げる効果があるとうたっていました」
 
 '21年4月から日本全国で販売された『紅麹コレステヘルプ』は、すでに約100万個の売り上げがあったというが。

「今年に入ってから、複数の医師から小林製薬の紅麹成分が入った製品の利用者が健康被害に遭っている可能性があると、同社に報告されていたようです。

 小林製薬が調査したところ、3月16日には、製造した紅麹の一部に健康被害につながる“想定外の成分”が入っている可能性を認識するに至ったと発表しています」

 2回目の会見が行われた3月29日時点では、小林製薬の紅麹が原因と疑われる死者は70代から90代の男女5人。入院患者は114人、体調不良を訴えての通院や通院希望者は680人に上ることがわかった。

「サプリを購入した人以外にも不安は広がっています。小林製薬が製造した紅麹は、着色や風味づけにも利用され、食品メーカーや卸売業者も含む173事業者に原料が供給されていました。

 そのため“小林製薬の紅麹を使用している”として、ファミリーマートや生協連のコープが一部商品を自主回収すると発表しました」

 日常生活を脅かす事件となったが、真相解明には時間がかかりそうだ。

「検査では、問題となった商品から毒性のある『プベルル酸』という物質が検出されたと発表されましたが断定には至らず。紅麹自体に問題があるのか、小林製薬の製造過程に問題があるのか、わかっていません。

 紅麹は小林製薬以外の会社も製造や販売をしていますから、臆測の域を出ないSNS上での発言も懸念されています」
 
 この騒動を医療従事者はどのように受け止めているのか。『四谷内科・内視鏡クリニック』で院長を務める高木謙太郎医師に話を聞いてみた。

「紅麹は赤い色をしたカビの一種。古くから発酵食品や食品の色づけなどに使用されます。紅麹に含まれる一部成分は高コレステロールの治療に使われる成分と同じですから、一定の効果はあると考えられます」

 一部の報道では、紅麹菌の中には『シトリニン』というカビ毒を作る成分があり、腎臓の病気を引き起こす可能性があるともいわれている。

「紅麹自体は、現状では広く活用されていますから、大量に、もしくは長期にわたって摂取などしない限り大きな影響はないと思います。
 
 しかし、個人差もありますし、もし紅麹を継続的に利用したという自覚があって、足のむくみや尿の出が悪いなど異変がある場合は、病院で検査を受けてもいいかもしれません」(高木医師、以下同)

 紅麹を含め、サプリや健康食品を摂取する上で留意すべき点はあるのか。

「今回の事件は、異物混入の可能性がありますし、今後の検証で明らかになるまで明言はできません。しかし、含有成分によっては、蓄積すれば腎臓や肝臓に何かしらの影響を与える可能性はあります」

 真相が明らかになるまで消費者の不安は払拭できないが、多くの企業の危機管理業務に携わった経験を持つ、社会構想大学院大学教授の白井邦芳氏は、小林製薬の対応が事態を大きくしたと苦言を呈する。

「回収を含めた巨額のコストを伴う経営判断がしづらかったのだと思います。ここで販売をストップしてしまえば、売り上げに多大な影響を及ぼすことになる。調査をして、確実な結論が出るまで待とうと考えたことが、間違った選択だったのだと思います」

 不測の事態こそ、早急な対応が求められると訴える。

「健康被害が刻一刻と拡大している状況を考慮すれば、経営陣が認知してから遅くとも48時間以内に発表するべきだったと考えます。人の命に危機が及ぶ可能性があったわけですから、調査中でも、使用の停止や販売の一時中止などを決定するべきでした」(白井教授、以下同)
 
巨額の賠償責任と刑事罰の可能性も
 経営陣の判断の甘さや自浄能力のなさを指摘し、小林製薬の今後を憂える。

「腎臓というのは厄介で、悪化すれば人工透析の使用など、重篤な後遺障害が残ってしまう可能性があります。症状の悪化に伴い、将来的に巨額の賠償金を求められる可能性もあります」

 実際、小林製薬が法の裁きを受ける可能性はあるのか。弁護士法人ユア・エース代表の正木絢生弁護士に聞いてみた。

「食品衛生法上、“有毒な、もしくは有害な物質が含まれ、もしくは付着し、またはこれらの疑いがある”食品を販売してはならないとされています。

 仮に、小林製薬が製造した製品と健康被害の因果関係が明らかになった場合、法人の代表者や従業者などは3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処される可能性があります。法人自体も1億円以下の罰金刑に処される可能性があります」

 刑事罰の可能性もあるようだが、遺族や被害者に対しての補償が発生するとしたら、いくらになるのか。

「治療費や労働能力喪失率といった逸失利益や後遺症の慰謝料など、個別事情に基づいて判断されるため、予想することは難しい。ですが、類似例でいえば'07年にアマメシバという植物を用いた健康食品を摂取したことで、閉塞性細気管支炎などの健康被害を受けたと2人の女性が製造会社などに対して損害賠償を請求した際は、最終的に製造会社は被害者2人に対して約4600万円支払うことになりました」(正木弁護士)

 海外でも報じられている小林製薬の紅麹ショック。日本政府も国を挙げて究明に乗り出すとしている。

 

「製薬会社とは名ばかりの“アイデア商品屋”」「開発責任者にすら生薬の知識がない」 紅麹問題で揺れる小林製薬の“儲け重視”の企業体質

 
体質が維新と合致している!
 
 
「製薬会社とは名ばかりの“アイデア商品屋”」
 小林製薬が作った紅麹成分入りサプリメントを摂取した人に健康被害が相次いでおり、すでに5名もの死者が確認されている。内情を知る関係者らは、甚大な被害を生み出した背景にあるのは、“儲け重視”の企業体質だ、と指摘する。それは一体――。
 
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 小林製薬は偶然、運悪く事件を起こしてしまったわけではないのではないか。大惨事が起きた背景にある特異な企業体質について、同社関係者はこう明かす。

「そもそも、小林製薬は社名に“製薬”と銘打っていますが、処方箋が必要な医療用医薬品を取り扱っていません。商品はすべて薬局などで買える一般用医薬品か健康食品、または日用品の類です。製薬会社とは名ばかりで、本当の姿はケチさと目ざとさにかけては天下一品の小林一雅会長(84)が率いてきた、“アイデア商品屋”なのです」

 1919年に設立された同社は、6代にわたって創業家の小林家が経営してきた。かつては薬品の卸売りが主力事業だったが、現代表取締役会長の一雅氏が60年代以降、アイデア商法路線に舵を切り数々の商品をヒットさせて会社を拡大し現在の礎を築いた。

「甲南大経済学部を卒業して62年に入社した一雅さんは自らのアイデアで、69年にトイレ洗浄剤のブルーレットを、75年にはトイレ芳香剤のサワデーを発売して成功させました。まだ日本のトイレの多くがくみ取り式だった64年、アメリカを旅行した時に見た水洗トイレの清潔さや芳香剤の爽やかな香りが、イメージの原点になったと」(同)

 75年には、肩こりに効く鎮痛消炎剤の容器を横に曲げ、商品名をアンメルツヨコヨコとして、これもメガヒットに導いたという。76年に4代目社長に就任して以降も、冷却ジェルシートの熱さまシートや洗眼薬のアイボンなど数多くのアイデア商品を、ユニークなネーミングと共に世に送り出していった。

「プロジェクトマネージャーですら生薬の基礎的知識を持ち合わせていなかった」
 小林製薬は、儲けを重視し過ぎるあまりに疑念の目を向けられることもあった。さる製薬会社関係者は声を潜めてこう語る。

「開発部門に薬理作用の知識のある人間が少な過ぎるんです。10年ほど前は特にひどくて、脂肪を落とすナイシトールという漢方薬のシリーズがあるのですが、プロジェクトマネージャーですら生薬の基礎的知識を持ち合わせていませんでした。漢方の主な原材料は天然由来の生薬ですが、副作用などのリスクがないわけではない。ずさん過ぎる会社の体制に唖然とした記憶があります」

 もちろん、開発部門がこの調子だったことでお客様相談室のスタッフも、

「最低限必要な知識すら有していませんでした。だから、顧客からの問い合わせに対して“漢方だから安全ですよ”などと誤った内容の“珍回答”を繰り返していたのです」(同)
 
被験者の身長を故意に低く記録
 薬に対するいい加減な姿勢は、2013年に発覚した不祥事からもうかがい知ることができる。それは小林製薬にとって市販薬とはいえ初めての治験が必要な医薬品として、肥満症改善薬を開発していた時に起きた。

「治験の現場でコーディネーターが小林製薬の要望に応じるために、被験者5人の身長を故意に低く記録したのです。データ改ざんが明らかになった後、小林製薬は治験支援を請け負った企業に損害補償を求める方針を発表するなど自らが被害者である旨を強調しましたが、傍目には無理筋でした。治験に求められるレベルがさほど高くない一般用医薬品とはいえ、初めての試みでいきなりこのような雑な過ちが露呈してしまうなんてあり得ない」(同)

 この治験では、実施した医療機関の職員も被験者に含まれており、実施の方法自体が医療倫理的に問題視されていたとも。かねて承認済みで治験の要らない薬ばかりを売り、研究開発費を軽視しケチってきたからこそ起きた不祥事だとはいえまいか。

 4月4日発売の「週刊新潮」では、甚大な被害を生み出した企業体質、さらに今後の経営上の危機などについて4ページにわたって詳報する。

「週刊新潮」2024年4月11日号 掲載