自衛隊を実質的に米軍の指揮統制システムに組み込む方向へ。
岸田総理大臣は、来週アメリカで行うバイデン大統領との首脳会談で、日米同盟による抑止力と対処力の向上を図る方針です。会談では自衛隊と在日アメリカ軍の部隊連携を、より円滑にするための指揮統制のあり方をめぐり、協議が行われる見通しです。
岸田総理大臣は、来週、国賓待遇でアメリカを訪問し、10日にバイデン大統領との日米首脳会談に臨みます。
安全保障環境が厳しさを増す中、岸田総理大臣は首脳会談を通じて日米同盟による抑止力と対処力の向上を図る方針です。
陸・海・空の各自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合司令部」が来年3月までにできることから、アメリカ政府内でも在日アメリカ軍司令部の権限を強化する案が出ています。
こうした状況も踏まえ、両国の部隊連携を、より円滑にするための指揮統制のあり方をめぐり、協議が行われる見通しです。
岸田総理大臣は「指揮統制という観点からの日米間の連携強化は相互運用性と即応性を高めるためにも非常に重要な論点だ」と述べました。
また会談では、半導体やAI、量子などの最先端技術の研究開発やサプライチェーンの強じん化といった経済安全保障面の協力に加え、アメリカが主導する月探査計画「アルテミス計画」を含めた宇宙分野での連携についても意見が交わされ、成果は共同声明などとして公表される予定です。
岸田首相「訪米」が負の遺産に…来年にはもういないかもしれない日米首脳が結ぶ戦後最大の防衛条約=今市太郎
2024年度の予算案が国会を通過したことで、岸田首相はなんら裏金脱税議員に対する処分も明かにしないまま無理やり問題解決をはかろうとしていることが丸わかりで、ご本人のここからの最大のテーマは9日から国賓待遇で行う「訪米」にシフトしはじめているようです。
国民に事前になにも知らせないまま、この泡沫首相はまた対米従属の約束をバイデンに差し出すつもりのようです。
今度は戦後最大の「日米新防衛協定」締結か
英国フィナンシャルタイムズは3月末の記事として、この4月10日に予定されている日米首脳会談に合わせ、両国が1960年の安保改定以来で最大の防衛関係の見直しを計画していると報じています。
つまり、これこそが岸田首相のバイデン大統領への凄まじく大きな「手土産」で、勝手に防衛予算倍増を閣議決定した昨年に加えて、さらに日米の防衛協定を強化し、米国からの軍事品の購入を加速させようとしていることがうかがわれる状況となってきています。
しかし現在の政治状況を考えてみますと、これは日米双方ともに大きな違和感を覚えるものがあります。
バイデン氏は大統領選落選レームダック、岸田氏は最低支持率で辞任秒読み
足元の米国大統領選挙戦では、民主党が司法を利用してトランプの出馬を目いっぱい邪魔してきたものの、結局、出馬を阻止することはできず、バイデンは現職であるにもかかわらず支持率であきらかにトランプに劣勢の状況に陥っています。
本来は裏の司令塔であるオバマが別の候補を突然立てるのではないかとも思われていましたが、どうもこの老人を鼓舞して選挙戦を戦うしかない状況に追い込まれているようです。
「もしトラ(もしもトランプが再び大統領になったら)」は、一段と「ほぼトラ」に近づいており、今年11月の選挙でバイデンが完敗すれば即座にレームダック化し、来年2月にはトランプ政権が再スタートになりかねない状況です。
そんな中でまたバイデンにそそのかされて、いいように米国の都合に合わせた対米従属戦略を加速させ、防衛費だけが国の予算の中で突出してしまうことを本当に国民は許せるのか、いや許していいのかが最大の問題になりそうです。
先述のフィナンシャルタイムズの報道では、在日米軍の機能を拡充することで「中国の脅威」に対応し、台湾有事の際などに円滑な連携を可能にするのが目的とのこと。
岸田訪米時には米軍と自衛隊の連携を強化するため、在日米軍司令部の再編を発表することも予定されているようで、日本はどんどん米国の傘下で戦争に直面する危険性が高まることになります。
また岸田政権が閣議決定でさっさと決めてしまった日本がイギリス・イタリアと共同で開発する次期戦闘機の第三国への輸出についても当然、背後に米国の差し金が動いているのは明白。
憲法違反だろうが前例を見ない防衛費の増額だろうが、もはや岸田首相はやりたい放題の状態を迎えていることが見えてきます。
植田日銀の大規模緩和維持政策は岸田政権への防衛財政ファイナンスのため?
日銀・黒田総裁時代の異次元緩和は、3月の政策決定会合での「マイナス金利の解除・YCCの撤廃・日経ETF買いの終焉」でいったんは幕を閉じたかのように見えます。
これも見方によっては、岸田政権への財政ファイナンスの継続にも見えます。防衛増税で賄えない部分は結局、日銀が財政ファイナンスで補うことになるのではないかという疑惑も高まる一方の状況です。
確かに中国との向き合い上、日本をどう戦争から回避させるかは相当に大きな問題です。ウクライナの次に極東で危ないのは“台湾”であり、「中国が明日にも攻めてくるかもしれない」という米国一流の本邦への恫喝を、どこまで真に受けるのか。単に米国に従うだけではなく、事前外交を含めて中国とどう向き合うかを、戦争前にもっと真剣に考えるべき状況にあることを痛感させられます。
米国は日本に対してしきりに中国リスクを煽ってきますが、バイデン政権でもイエレンなどはなんとか中国との関係をつなぎとめるために積極的に動いていますし、トランプが次期大統領になれば中国との関係もかなり変化し、経済での対立はあっても政治・軍事的な対立は大きく回避される可能性も残っています。
ほとんどの国民からそっぽを向かれてまったく支持されていない岸田泡沫政権が、ここで勝手に振る舞って余分な条約を締結し、払わなくてもいい防衛装備品の購入に前のめりになるのはいかがなものでしょうか。
個人的には違和感しか残らない状況に陥っています。
「平和の少女像」展示の芸術祭負担金訴訟で名古屋市の敗訴確定 守られた表現の自由
愛知県で5年前に開かれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の実行委員会(会長・大村秀章知事)が名古屋市に負担金の未払い分約3380万円の支払いを求めた裁判で、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は3月6日、名古屋市の上告を棄却する決定を出した。市に全額の支払いを命じた一、二審判決が確定した。
芸術祭の企画の一つとして開かれた「表現の不自由展・その後」は旧日本軍「慰安婦」を象徴する「平和の少女像」や昭和天皇のコラージュを燃やす場面を含んだ映像作品「遠近を抱えてPartⅡ」などに抗議や脅迫が殺到。開幕3日目に中断、閉幕間際に再開した。
河村たかし名古屋市長は芸術祭実行委の会長代行だったにもかかわらず、不自由展会場を視察して「日本人の心を踏みにじるもの」と展示中止を求めた。閉幕後には元最高裁判事を座長とする第三者委員会を設置。その報告書を踏まえ、負担金約1億7100万円のうち未払い分の不交付を決めた。
実行委は20年5月、名古屋市を提訴。市は裁判で、不自由展に展示された「平和の少女像」「遠近を抱えてPartⅡ」など3作品は多くの鑑賞者に不快感や嫌悪の情を催させる「ハラスメント」性が強く、「反日」に偏っていて政治的中立性を欠き、公共事業としての適合性に著しく反している、そのような展示に負担金を交付することは地方財政法や地方自治法に違反する、などと主張した。
名古屋地裁は22年5月、「芸術活動の性質に鑑みれば、不快感や嫌悪感を生じさせるという理由で、ハラスメントなどとして芸術活動を違法だと軽々しく断言できない」と市の主張を退け、同年12月の名古屋高裁判決も支持した。
市は二審敗訴後の23年1月、「遅延損害金の拡大を止めるため」として同約550万円を含む3900万円余りを「仮払い」。裁判費用も220万円余りかかっているが、河村市長は敗訴確定後の3月7日、「残念を通り越している」と報道陣に不満を漏らすなど反省の色はうかがえない。この一件以来「犬猿の仲」の大村知事は「当然で妥当な判決。私どもの主張がすべて採り入れられた」と述べた。
否定された「裏書き効果」
当時、河村市長らの「標的」とされた作品の作家は何を思うのか。市の第三者委の報告書で「天皇肖像画等を含むビデオ」と記された「遠近を抱えてPartⅡ」を出品した大浦信行さんは「司法としての判断で表現の自由がギリギリ守られたことになるのかな」とぽつり。自身が監督し、出品作品にも引用した映画『遠近を抱えた女』はベルギーの映画祭で好評を博したものの、日本の映画館では一般上映できないままだ。「作家自身が萎縮してしまうのが怖い。『あいち』のようなことがあると、そういう表現をしたらダメなんだって暗黙のうちに浸み込むっていうか、無意識に線引きしちゃう」。
昨年、『遠近を抱えた女』の2作目が完成、海外の映画祭への出品を予定している。「大事なのは、作家の創造力はそれでも死なないという心意気。誰かしら見てくれている、それを信じたい。『あいち』で鍛えられましたよ」と大浦さん。
武蔵野美術大学の志田陽子教授(憲法・芸術関連法)は「芸術は、日ごろ当然と思っている見方をあえて引っ繰り返したり、何となく見なくて済ませていることをむき出しにしてくれたりする。これをハラスメントだ、ダメだと言ってしまうと、現代芸術は成り立たない。このことを正しく理解した判決を地裁は書き、最高裁に至るまで支持した」と評価。さらに、負担金を交付すれば作品の政治的主張を後押しする印象を与えかねないと市が主張する「裏書き効果」を否定した一審判決を、二審、最高裁が支持したことを重視する。
「自治体が公共施設を貸したり、後援したりしたとしても、その主張の内容を後押ししているのではなく、芸術や政治的主張など市民の表現活動を後押ししているだけ。今回の最高裁決定は、市民や文化行政が本来の筋道を取り戻す社会的影響を与えるものになりうる」と期待を寄せている。
井澤宏明・ジャーナリスト