金属労協傘下で、中小製造業などの労組でつくる産業別組織JAMの安河内賢弘会長は同日開いた記者会見で「大手と中小の格差は容認できない水準まで開いている。背景には公正な取引がされていないことがあり、価格転嫁の取り組みの強化を続ける必要がある」と話した。

 

 

 今年の春闘で、中小企業に対する賃上げ回答が本格化している。主要製造業の産業別組織でつくる金属労協が2日発表した中小労組が獲得した賃上げは平均で月8千円を超え、比較可能な2014年以降で最も高い。ただ、上げ幅では大手との差は広がっており、持続的な賃上げには課題が残る。

 金属労協の集計では、組合員300人未満の中小労組で、賃上げを獲得した598組合の平均額は月8019円だった。一方、1千人以上の大手労組の190組合は1万2389円で、中小との差は4370円。大手と中小の差は、前年同時期(1818円)の2倍以上に広がった。

 

 

大手企業の賃上げ報道に沸くも中小企業は賃上げの原資なし…全体の3割の企業が賃上げ予定なし

 
 
◆自動車メーカーなどの賃上げは50年ぶりの高水準

自動車メーカーなどの労働組合で作る「自動車総連」は3月20日、今年の春闘交渉が実質的に決着した186組合の賃上げ額は平均1万3,896円と発表。これは去年を4,067円上回り、1974年以来50年ぶりの高水準となりました。

また、自動車総連の7割を占める300人未満の中小組合は1万2,211円の賃上げで、比較可能な1995年以降最高額に。
モデルでタレントの藤井サチさんは、賃上げ報道については「いいニュース」、「いい流れ」と喜びつつも、それがどこまで中小企業に波及するのかを憂慮。「政府は(企業に対し)価格転嫁するよう打ち出しているけど、(そのやり方は)もう少し工夫できると思う。例えば、価格転嫁したところには減税をするとか、そういったことが効果的なのでは」と政府に善処するよう求めます。
 
紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんも、中小企業の賃上げに対する政府の施策を注視。「賃上げしたら控除の割合が増える『賃上げ促進税制』で中小企業をサポートしているが、黒字の企業はいい。ただ、中小企業は大企業に比べると、赤字決算の企業が多い。赤字企業は控除が増えたところで収める税金がないので『賃上げ促進税制』を使う意味がない。そういった赤字企業にどうアプローチしていくかが今後の課題」と指摘します。

◆大企業に対し、中小企業の3割は賃上げ予定なし

城南信用金庫などが今年3月に中小企業に対して行った調査によると、「賃上げ予定」とした企業は約36%。対して「まだ決めていない」が約33%、「賃上げ予定なし」は約31%でした。賃上げしない理由としては「賃上げの原資がない」が73%で、原材料費の高騰などが影響していると思われます。今年の春闘では大企業が軒並み満額回答でしたが、中小企業の経営状況は依然として厳しい状態が続いています。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは、「中小企業の賃上げが実施されないと(経済的に)いいサイクルには入れないんじゃないか」と危惧します。

この日、体調不良のため欠席となったキャスターの堀潤の代演としてMCをつとめるキャスターの荘口彰久さんは、今後、賃金上昇がインフレを上回ったとしても、そうした状況を受けて政府が増税をするのではないかと案じます。

これに藤井さんも「社会保険も上がる見込みなので、そうなると手取りは結局変わらないのではないか」と共感していました。