AUKUS、またはAukus(オーカス、/ˈɔːkəs/ ;「Australia[オーストラリア]・United Kingdom[イギリス]・United States[アメリカ]」の頭文字)は、アメリカ、イギリスおよびオーストラリアの三国間の軍事同盟である。

 

 

 大谷翔平問題よりもずっと重要な課題があるにもかかわらず、日本のマスメディアは十分な報道をしない。その結果、日本はますます戦争への道に引きずり込まれようとしている。

 

FTの報道

 3月24日、FT(フィナンシャルタイムズ)は「日米安全保障協定、過去60年で最大の改定を計画」というショッキングな記事を公表した。ジョー・バイデン大統領が4月10日にホワイトハウスで岸田文雄首相を迎える際に、両者は在日米軍司令部を再編する計画を発表する予定だというのだ。

 具体的には、ハワイのインドパコムにある司令部のひとつ、米太平洋艦隊に所属する米軍の統合任務部隊の新設が検討されている。これにより、艦隊の四つ星司令官は、現在よりも多くの時間を日本で過ごし、日本での支援体制を強化することになる。「やがて、米軍のさまざまな部門を含むタスクフォースは、日本に移っていくだろう」と書かれており、東京から19時間遅れ、6200km離れたハワイにあるアメリカ・インド太平洋軍司令部との連携強化のための再編が行われることになるのは確実な情勢だ。

 日本は2025年、自衛隊の各部隊間の連携を強化するため、「統合作戦司令部」を設置する予定だ(2025年3月までに自衛隊の恒久的な統合司令部を設置することを約束し、さまざまな部門からなる自国の軍隊をよりよく調整することを積極的に求めている)。これにより、日米双方の軍事協力が強まることになると解説されている。

ロシアの報道

 興味深いのは、ロシアの報道機関は日本のマスメディア以上にこの問題を迅速かつ的確に取り上げ、詳細に分析している点だ(たとえば、「FT、中国の脅威を理由に防衛条約を更新する日米の決定を知る」や「日米両国は、より高速な技術を活用することを決定した」を参照)。

 後者によると、考えられる構想の一つは、「米太平洋艦隊の一部である米統合軍事任務部隊の新設である」とされ、「その司令官は日本での滞在時間を増やし、より大きな権限を持つことになるだろう」とのべている。「そしてやがて、米軍のさまざまな部隊を含むタスクフォース全体が日本に移転することになる」という。

 第二の選択肢は、在日米軍司令部の権限拡大である。現状によれば、日米共同作戦の主要な司令部は、ハワイにある米軍インド太平洋軍司令部である。この機能の一部を日本に移転しつつ、日本における日米両軍の連携強化をはかろうとしているというわけだ。

 記事の最後の段落三つを紹介すると、つぎのようになる。

 「日本の懸念は常に米国でも共有されてきたが、中国の脅威をそらすことに重点が置かれていた。先週、5月に退任した米インド太平洋軍司令部のジョン・アキリーノ司令官は、米下院軍事委員会で演説し、中国が「第二次世界大戦以来の規模」で軍備を増強していると警告した。過去3年間で、中国軍は戦闘機を400機以上、軍艦を20隻以上増やし、ミサイルの数を倍増させたという。

 ここからアメリカが導き出した結論は、北京は必ずしも台湾との戦争を望んでいるわけではないが、それでも2027年までに台湾を侵略する準備を整えておきたいということである。そのため、アメリカは「より迅速に行動する」必要があると司令官は考えた。たとえば、極超音速ミサイルや巡航ミサイル防衛システムを、昨年12月にアメリカ議会が決定した2029年ではなく、早ければ2027年にグアムに配備するのだ。

 このような背景から、東京とワシントンは、日米両国の軍隊がこの地域で起こりうるあらゆる紛争に、より迅速に対応できるようになることは、決して余計なことではないと考えたようだ。」

 

AUKUSに引きずり込まれる日本

 ロシア語の報道機関「ヴェードモスチ」は3月21日付で、「日本とカナダはAUKUSに引きずり込まれる」という記事を公表している。「日本とカナダが、軍事・政治ブロックAUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリア)に部分的に参加するかもしれない」というのである。この記事は、3月19日付の「ポリティコ」の記事「日本とカナダが2024年末までにAUKUSに参加する可能性」を受けたものだ。

 「ポリティコ」では、AUKUSに参加する3カ国の協議関与しているある上級外交官は「ポリティコ」に、「日本とカナダは2024年末か2025年初頭までに、広範な軍事技術協力に署名するAUKUS協定のいわゆる第二の柱(Pillar 2)と呼ばれるセクションに参加する可能性があると語った」と報じられている。AUKUS安全保障協定は2021年9月に初めて発表された。その最初の部分である第一の柱(Pillar 1)では、米英がオーストラリアの原子力潜水艦建造を支援する。協定のPillar 2は、3カ国が人工知能、極超音速ミサイル、量子テクノロジーなどの分野で高度な軍事技術を開発するための取引に合意することだ。

 Pillar 2への協力体制構築が急がれている背景には、ドナルド・トランプが新大統領に就任する場合を見越して、彼の就任前に強固な体制を形成し、後戻りをしにくくするためだとされる。

 英国とオーストラリアは3月21日、新たな防衛・安全保障協力協定に調印した。これを紹介するロシア語の報道では、「東京がAUKUSに参加するという話は、この同盟が創設された直後からほとんど始まっていた」と指摘されている。とはいえ、オタワも東京も、AUKUSに正式に加盟すべきかどうかについては、まだコンセンサスを得ていない。他方で、「AUKUSに将来加盟する可能性のある国としてよく名前が挙がるのがニュージーランドである」と紹介されている。他方で、先に紹介した「ポリティコ」には、「日本、カナダ、ニュージーランド、韓国が参加を表明している」と書かれている。

 

日本、AUKUS部分的参加へ

 実は、「産経新聞」は2022年4月12日付で「AUKUS参加、米英豪が日本に打診 極超音速兵器など技術力期待」という記事を公表している。どうやら、岸田首相の訪米に合わせて、AUKUSへの部分的参加表明があっても不思議ではない情勢なのだ。

 先の「ヴェードモスチ」では、「日本のAUKUSへの完全加盟はまだ問題になっていないが、部分的な参加は政治的、経済的、軍事産業的に日本にとって有益である」、という国際関係大学の中国・東アジア・SCOセンターのオレグ・パラモノフ上級研究員の見方が紹介されている。第一に、トランプ大統領がホワイトハウスに復帰し、その結果、ワシントンが同盟国への対応により厳しく、より指示的なアプローチをとる危険性がある場合に備えて、この方法で日本は米国との制度的結びつきを強化する。第二に、東京はまた、AUKUSを通じて、「AUKUSの第2の柱」(原子力潜水艦開発は含まれない)からのより機密性の高い技術や有望な開発品へのアクセスも期待できるという。

 記事では、「日本の防衛産業の国際化も進み、貴重な新しい経験を得ることができる」と指摘されている。最後に、「日本の保守派は、AUKUSで採択された基準への準拠を口実に、サイバーセキュリティ分野での規制強化を正当化する好機だと考えている」、とパラモノフの結論が紹介されている。

 さらに、私の友人、国立研究大学高等経済学院複雑欧州国際研究センターのヴァシリー・カーシン所長の見解として、「日本は非常に大きな科学技術的潜在力を持っており、オーストラリアよりもAUKUSに多くの利益をもたらすことができるだろう」との意見も記されている。

 どうだろうか。これがいまの日本の直面するもっとも重大な問題なのではないか。

塩原 俊彦(元高知大学大学院准教授)

 

「衆院選挙はこの秋に、自民党さん、そのほうが絶対お得ですよ」山口那津男・公明党代表がそう言い切る

 

 

 3月27日、公明党の山口那津男代表(71)が都内で講演し、次の衆院選は今年の秋を希望するとともに、来年夏に予定されている参院選や東京都議選との同日選挙や接近した日程での衆院選には反対の意を示した。その真意とは? 
 

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 山口代表は講演でこう語った。

「衆参ダブル選挙のように大きな選挙が重なると、やはり公明党の選挙に注ぐエネルギーが分散されます。一緒に戦う自民党としても、あまり大きな選挙を重ねないほうが、協力がうまくいきますよ、お得ですよっていうことを申し上げてきたわけで、そういう意味では(次の衆院選は)来年の参議院選挙と都議選とは少し離したほうがいいと」

「お得ですよ」ってバーゲンでもあるまいし……。一体どういうことなのか、公明党の支持母体である創価学会の元会員に聞いた。

「選挙にエネルギーを注ぐのは公明党ではなく創価学会です。学会員が知り合いの非学会員に投票を呼びかけ、いわゆるF(フレンド)票を集めるわけですからね」

 2013年の参院選の選挙特番「池上彰の参院選LIVE」(テレビ東京)で、インタビューに答えた学会員が「選挙をやると功徳が出る」と答えたことがある。

減少する公明票
「彼らにとってはまさしく、信心と選挙は同列です。信心深い学会員ほど熱心に選挙活動を行なってF票を集めるのです。ですから、電話の相手から嫌な顔をされるのがわかっていてもお構いなしです。とはいえ、ダブル選挙、トリプル選挙といった同日選挙となると、投票をお願いしなければならない候補者が増えてしまう。都議選だけなら地域の公明党候補1人だけをお願いすればいいのですが、参院選が加わると比例の公明党候補、地域によっては選挙区の公明党候補、もしくは連立を組む自民党候補を推さなければなりません。さらに、衆院選も加われば、計5人もの候補をお願いしなければなりません」

 電話がかかってくるほうもなかなか大変である。

「加えて、学会員の高齢化が進んでいます。学会員の中で最も多いのは終戦直後に生まれた団塊の世代ですから、若くても今年75歳です。かつての参院比例区は党名を書けばよかったのですが、現在は個人名も書けるようになりましたから、複数の候補者の名前を覚えるのは大変。その学会員の知り合いだって高齢者でしょうから同じことです。だから票に繋がりにくい。そのため山口代表は、選挙はずらしたほうが自民党にとってもお得ですよと言いたいわけです」

 実際、国政選挙での公明党の比例区得票数は、2005年の衆院選の約898万票をピークに減少している。19年の参院選は653万票、21年の衆院選は711万票、22年の参院選は618万票 。創価学会の信者数は公称827万世帯だが、このままでは600万票を割りかねない。

「898万票を取った05年の衆院選は、小泉純一郎首相が突然、衆議院を解散した、いわゆる“郵政選挙”でした。急遽の陣頭指揮が入った時、学会は団結します。一気呵成にみんなが動いたことが票に繋がったのでしょう。一方、あらかじめ選挙時期が決まっている参院選などは、前々から準備を行って選挙活動をするのですが、高齢化が進んだほか最近では旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題もあって、そもそも折伏(新信者の獲得)も思うように進まないと聞きます。これでは組織は弱体化するばかりでしょう」

 昨年11月15日には池田大作名誉会長も死去(享年95)した。

 

“常勝関西”で全敗も? 
「その影響も少なくないと思います。学会から離れた人ですら池田名誉会長の死にはショックを受けています。そもそも公明党は池田名誉会長が作ったものですし、最も選挙に熱心な方でした。特に地域に根ざしている婦人部(現・女性部)は『池田先生が言われるから頑張ろう』を合言葉に選挙活動を行ってきましたから大変ですね」

 デイリー新潮は今年1月11日に配信した「池田大作氏が亡くなっても創価学会は例年通り『新年勤行会』を盛大に…会員から『喪に服す気はないのか』、そうせざるを得ない事情も」で、総選挙が近いため喪に服すこともなく学会員を鼓舞する上層部を嘆く信者がいると報じた。

「創価学会も公明党も、長いスパンで見ると学会員も公明党票も減っていくことを覚悟していると思います。大量得票が望めなくなりつつある比例区よりも、今後は選挙区で公明党議員を当選させるようにシフトしているのはその焦りの表れです」

 衆院選で連続10期当選の公明党幹事長・石井啓一氏(66)は、中選挙区だった1993年の旧東京5区での初当選を除いて、すべて比例東京ブロックでの当選だったが、次期衆院選では埼玉14区から出馬すると発表。また、参院選の比例区で連続4期当選の山本香苗氏(52)は、次期衆院選で鞍替えして大阪16区から出馬する予定だ。ただし、公明党の現職がいる大阪と兵庫の衆院6選挙区(大阪3、5、6、16区、兵庫2、8区)は、次の選挙で全敗するかもしれないという予測が永田町では流れている。

「“常勝関西”といわれるように、大阪と兵庫の6選挙区では公明党が長く議席を獲得してきましたが、民主党政権が誕生した09年の衆院選では全敗したこともあるので、意外に脆いところもある。学会員の選挙活動の弱体化に加え、次期衆院選では関西で勢力を伸ばす日本維新の会が6選挙区に候補者を立てる予定なので、確かに公明党が全敗する可能性はあるでしょう。そのため山口代表にすれば、自民党総裁戦後の内閣支持率が上向いた時に、なんとしてでも衆院選をやってもらうしかないということでしょう」