「今回の問題の根底には、機能性表示食品という、トクホよりもゆるい基準で健康食品市場を広げる仕組みをつくったことにあるのではないか」
 

 

 小林製薬(大阪市)製の紅麹(べにこうじ)を配合したサプリメント「紅麹コレステヘルプ」の服用が原因とみられる健康被害が相次いでいます。このサプリメントは国の表示制度である「機能性表示食品」に届け出をしています。今回の事態で同制度の問題点も浮かび上がってきました。(都光子)

 「心配で毎日尿を調べている」というのは、Aさん(70代)=東京都=。2月から1カ月半、「紅麹コレステヘルプ」を1袋と半分飲んだところで、健康被害のニュースが飛び込んできました。

 健康には人一倍関心をもち、食品も処方薬も安全なのか調べてから飲んでいました。「そんな私なのに、今回ひっかかってしまった」とAさん。

“史上初”
 同サプリメントのパッケージに踊る“史上初”“紅麹”の文字…。「紅麹がコレステロールを下げる効果があるのは知っていて、紅麹だけないか探していて、この製品にいきつきました」

 今では腎障害が出ないかハラハラする毎日を送り、自分でキットを購入し尿たんぱくを毎日チェックしています。

 

 

 食品安全グローバルネットワーク事務局長で薬学博士の中村幹雄さんは「紅麹の一部菌株に有害物質『シトリニン』をつくり、腎臓の病気を引き起こすものもある。小林製薬は『未知の成分』と言うが、シトリニンに似た物質が混入したのではないか」と言います。

 2014年に欧州で紅麹由来のサプリメントが原因と疑われる健康被害があり、EU(欧州連合)がシトリニンの規制値を導入。日本でも基準があります。紅麹は着色料として調味料や菓子類など広く使われています。中村さんは「今回は着色料ではなく濃縮されたサプリメント。実際どのくらいの量を摂取することになるのか明らかにすべきだ」と言います。

審査不要
 機能性表示食品制度は15年4月から始まった制度。企業の責任で、商品パッケージに機能性を表示することができるもので、消費者庁に届け出られた食品です。

 それ以前からあった「特定保健用食品」(トクホ)は、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を受ける必要があります。

 安倍晋三首相(当時)は13年の「成長戦略第3弾スピーチ」で、「健康食品の機能性表示を解禁する」と宣言しました。トクホでは「お金も時間もかかる」ので、国に届け出るだけでよい制度をつくるというのです。安倍氏は機能性表示食品制度の導入を「世界で一番企業が活躍しやすい国の実現」と位置付けました。国民の利益より経済優先で導入された形です。

 中村さんは指摘します。「今回の問題の根底には、機能性表示食品という、トクホよりもゆるい基準で健康食品市場を広げる仕組みをつくったことにあるのではないか」

 

 

きょうの潮流

 みそやしょうゆ、みりんや酢、お酒も。無形文化遺産にも選ばれた和食は、健康的でおいしいと世界から注目されてきました▼豊かな日本の食文化。その礎が麹(こうじ)です。米や麦、大豆などに麹菌を加え培養させたもので、多彩な調味料や日本酒づくりには欠かせません。醸造の現場には「一麹」という言葉があり、職人たちは麹の質にこだわってきました

 

▼多くの発酵食品にも使われ、日々の食生活を支えてきた麹。菌の種類が違うとしても、商品名に麹がつき、しかも製薬会社が悪玉コレステロールを下げると銘打ったサプリメントに大勢がひかれても不思議ではないでしょう

 

▼紅麹原料を使った小林製薬の機能性表示食品が原因と疑われる健康被害が相次いでいます。昨日の会社側の会見では、これまでに5人が亡くなり百人以上が入院。相談件数は1万5千件にも上っていると。不安はとめどなく広がっています

 

▼健康に役立つと宣伝されたサプリで健康被害を受けたとなれば、とんでもない。会社が問題を把握してから2カ月も公表が遅れたことも批判を浴びています。国の食品安全委員会によると欧州では紅麹由来のサプリによる健康被害が報告されています

 

▼機能性表示食品は安倍政権が成長戦略の一環として導入。事業者の届け出のみで国の審査はなく、安全性への懸念が指摘されていました。サプリによる健康被害は後を絶ちません。被害者の救済とともに、制度を改める。それが古くから息づく健康な食づくりにもつながるはずです。

 

 

小林製薬「紅麹」事件の黒い疑惑。173社リスト?御用学者?2件のアベ案件?いま消費者が本当に知りたいこと

 

《泣きたいのは飲みきって手元に証拠のない私の方だ》

《泣きたいのは紅麹の購入者でしょうどう考えたって》

との意見が多数書き込まれた。医療に関する書籍の出版経験もある50代の男性ライターはこう話す。

「そもそも小林製薬が問題を把握したのは1月15日、そこから問題を発表した3月22日まで2ヶ月以上も時間がかかっています。対応が後手後手すぎて、消費者の不安が高まるのも当たり前です」

一方で、紅麹に関する風評被害を懸念する声や、過剰反応を慎むようにとの指摘も散見される。それらは果たしでどこまで信用できるのか。

消費者が取りうる「自己防衛策」はあるか
小林製薬は24日に同社製の紅麹を国内外の卸売業者52社に販売していたことを発表したが、28日には厚生労働省が該当の52社から原料の供給を受けた173社を公表。こちらの記事に全社名が掲載されている。

「紅麹は近年になって健康食品の原料として注目を集めており、今回問題となっている小林製薬のサプリの原材料名にも『米紅麹(米、米胚芽、紅麹菌)』と明記されています。この紅麹菌の培養液から抽出したのがベニコウジ色素で、食品の着色料として古くから利用されているものです。厚労省が発表した173社の製品にはベニコウジ色素を使用した企業も含まれているはずです」(前出の男性ライター)

とは言え公表されたのは企業名であり、消費者が普段目にする商品名ではなく、上掲の記事によれば厚労省は各々の社に「小林製薬と同じ原料を使って同じ程度の量を摂取する製品や、過去3年以内に医師から健康被害が1件以上報告された製品がないかを調べるよう依頼するとしている」とある。

つまり国民には「今後の調査結果を待て」とのことなのだが、現時点だけでも5名の死者が出ている状況で、ただ指をくわえて見ているわけにもいかないという消費者が多数だろう。

そのような中で話題になっているサイトがあるという。情報を提供してくれたのは40代の男性ネットメディア編集デスクだ。

「ヨドバシ・ドット・コムが食品の成分まで検索できるとネットユーザーたちの間で評判になっています。検索ボックスに『紅麹』や『ベニコウジ』と打ち込むと、使用されている商品が表示されます」

ヨドバシ・ドット・コムとは言うまでもなくヨドバシカメラが運営する通販サイトで、最短で注文当日に商品が届くのが売りだ。早速筆者も試してみたが、「紅麹」で検索をかけると1,459件もヒットした。

「『対象商品が多すぎる』と嘆きの声もありますね(笑)。もちろんヨドバシに登録されている情報や検索システムが100%信頼できるかどうかは意見が分かれるところですが、消費者心理を考えると、これが評判になるのは当然ではないでしょうか。『風評被害を助長する』といった意見もありますが、それは酷というものです」(同前)

“やらせレビュー”を見抜くシステムを使ってみた結果
同じ通販サイトでも、Amazonはまた別の使い方ができるという。

「中国系業者による“やらせレビュー”に汚染されて、最近はまったく当てにならないとも言われているAmazonのカスタマーレビューですが、例えばDHCの紅麹サプリ関連レビューは多くの人に参照されています」(同前)

DHCといえば、同社元会長による朝鮮半島出身者への度重なる差別発言が問題視されたことが記憶に新しい。現在国内で販売されているサプリに小林製薬の紅麹は使用していないと発表している。

「カスタマーレビューには“DHCの紅麹サプリが原因”と主張する購入者の体調不良が多数書き込まれているのですが、“やらせレビュー”を疑ってこの商品を『サクラチェッカー』で確認してみたのですが、“合格点”が出ました」(同前)

「サクラチェッカー」とは、Amazonを始めとした通販サイトのサクラやヤラセ、ステマのレビューを簡単に見抜くという最近話題となっているシステムだ。

「DHCの紅麹商品と体調不良の因果関係は不明ですが、少なくともレビューはヤラセではないようです」(同前)

小林製薬由来の紅麹を使用していないというサプリであっても、購入者の「不調を訴える声」が上がっているのは事実のようである。

“正義のアベ”と“ヤバい方のアベ”

紅麹サプリの問題を把握してから発表に至るまで2ヶ月以上を要した小林製薬だが、X(旧Twitter)にはこんな投稿がなされている。

 

小林製薬、紅麹コレステヘルプの健康被害を報告した病院の教授を当初「クレーマー」として対応していた
http://rabitsokuhou.2chblog.jp/archives/68961133.html
処方箋医薬品のメーカーMRに比べたらたしかに対応は遅いかもね
大学病院から報告があったら何ならその日の内に飛んでくるよね

そのリンク先には、日本大学医学部の阿部雅紀主任教授が診察した3名の患者の疾患について、その原因が小林製薬の紅麹サプリである可能性を同社に伝えたところ、「同様の情報はない」との説明を受けたと報じるNHKのニュース番組の内容が引かれている。阿部主任教授が問い合わせを行ったのは2月1日とされ、小林製薬が問題を把握した1月15日以降であることが注目される。ネット上では早くも“正義のアベ”と称賛されていると前出のネットメディア編集デスクが情報をもたらしてくれた。

 

今回の問題に関して、テレビで積極的にコメントを発しているのは東京大学の唐木英明名誉教授。複数の番組で、小林製薬の紅麹から発見され被害の原因になった疑いのある“未知の成分”について、「誰かが意図的に持ち込んだ可能性」を口にしている。

しかしXにはこのようなポストが。

小林製薬の紅麹問題、唐木英明先生があちこちでコメントされているようですが
唐木先生がコロナ禍に「ワクチン最低1回接種でデルタ株は風邪になる!」みたいな酷い主張をしていたことや、機能性表示食品制度の黒幕である森下竜一氏と繋がり深いことなど踏まえ、話を聞いた方がいいと思いますよ…

大きな被害を出している小林製薬の紅麹サプリは、故・安倍晋三元首相が2015年に経済成長戦略のひとつとして導入した機能性表示食品制度を“利用”して信用を得てきた製品。その導入の旗振り役となったのがポスト内に名の挙がっている森下竜一氏だ。

「そんなこともあって、唐木先生は森下さんを“サポート”しているのでは、など言う声も一部では上がっています。御用学者扱いですよね」

上記の阿部主任教授が“正義のアベ”なら、機能性表示食品制度を導入した安倍晋三元首相は“ヤバい方のアベ”となってしまうのか。

多数の消費者が、カネミ油症事件や森永ヒ素ミルク事件を連想してしまうほどの今回の大事件。これ以上の被害が広がらないことを切に願う。