世耕弘成氏が一転「記憶にない」会合の「記録が出てきた」…でも裏金還流協議は否定 黒塗り日程表で潔白主張

 
証人喚問が急務だ。
 
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、世耕弘成前参院幹事長は29日、安倍派会長だった安倍晋三元首相がキックバック(還流)の中止を決める前の2022年3月2日、自らを含む幹部会合に出席していたことを認めた。一方で、協議内容は参院選の候補者調整だったとし、還流を巡る会合との疑惑を否定した。国会内で本紙などの取材に答えた。
 
 
 世耕氏によると、会合は衆院議長公邸で開催。参加者は安倍、世耕両氏と、当時、派閥事務総長だった西村康稔前経済産業相、前派閥会長で当時衆院議長だった細田博之氏の4人。
 世耕氏を除く3人の名前や日時、会場が記載された「日程表」を記者団に配り、自身の潔白を主張した。配布された日程表は「※打ち合わせ(■連関係)」と会合内容が一部黒塗りだった。世耕氏は伏せた部分について観光関係の団体と説明した。(山口哲人)

◆世耕氏の発言は…「もう一度日程表を徹底的に精査した」 
 世耕氏との主なやりとりは以下の通り。

 記者 2022年3月、議長公邸で会合はあったか。そこで安倍派のパーティー券収入のキックバック(還流)について話したか。

 世耕氏 まず、先日の政治倫理審査会で、3月に議員会館事務所で安倍首相を交えたパーティー券に関する打ち合わせがあったかという趣旨の質問をいただきました。3月に安倍さんと会館でそういう話をした記憶は全くなかったので、「そういう記憶はありません」と申し上げました。

 また、安倍事務所や主要な事務所で行われた打ち合わせの日程表は全て捜査当局にも提出しております。その中にも3月の会合は入っておりませんでしたので、「日程表にもそういったものは載ってなかった」と答弁しました。
 
 
 その上で一昨日、細田議長も入った形で安倍会長と西村事務総長と私で打ち合わせが行われたという趣旨の一部報道があり、もう一度日程表を徹底的に精査したところ、3月2日15時から約20分間、議長公邸で細田議長、安倍会長、西村事務総長との打ち合わせが行われた記録が出てまいりました。

 その記録には、議題も明確に書いてあり、相手もあるので名前は申し上げませんが、とある民間の業界団体関連という表記になっておりました。それを頼りに私の記憶を呼び起こしたところ、22年3月は参院選の4カ月前で、候補者調整が最終局面でありました。

 そういう中で、清和会の立候補希望者がある地方から出たいという希望を持っておられましたが、もうその県では既に県連で候補者をほぼ決めておりましたので、そのまま選挙に突入すると共倒れになってしまうかもしれないということで、その方を比例区に回っていただこうと。
 
 そのためには、やはりそれなりの団体を付けなければいけませんので、名前は申し上げませんが観光関連の業界団体に付いてもらって、本人納得の上、比例で選挙を戦っていただくことになったわけであります。

 細田議長は観光産業振興議員連盟の会長を務められるなど、観光関連の業界とは非常に付き合いが古く、深い方でありましたので、議長公邸を訪ね、その団体を候補者に付けてもらいたいとお願いに行ったという打ち合わせであります。

 派閥のパーティーについては全く議論していませんし、議長と議論するような話ではないと思います。

 日程表、もしよければこれ、どうぞ皆さん(自ら印刷してきたA4の紙を記者団に配布)。ちょっとマスキングしてありますけれど。黒塗りで「連関係」となっているのは、業界団体の名前で略称で書いてあります。
 
記者 この紙はスケジュール帳か。

 世耕氏 うち(の事務所)はスケジュールをPDFでコンピューターの中になるべく残すようにしてます。それをもう一度、1枚1枚点検して出てきたということです。

 記者 還流については協議していないのか。

 世耕氏 全くありません。
 
 
 記者 3月の会合について政倫審で「記憶にもスケジュール帳にもない」と答弁したが。

 世耕氏 3月に議員会館事務所で安倍さんを含めてパーティー券の打ち合わせをしたかどうかということは、本当に記憶になかったし、記録にもなかったし、事実としてなかったということだと思います。日程表が出てきたことで明らかになったと思います。

 記者 4月の会合で安倍会長から還流中止の話があったが、それ以前の会合で相談はあったか。

 世耕氏 全くありません。

 記者 還流中止の話は4月会合が初めてか。

 世耕氏 初めてです。
 
 

自民党が森喜朗元首相側から水面下で聴取 関与なしと認定したもよう、追加聴き取りは想定せず

 
お仲間で聴取をしたってダメ。頃棒が頃棒に聞き込みをするっていう事。国民を愚弄するな!
 
 
派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、自民党が既に、安倍派(清和政策研究会)会長経験者の森喜朗元首相側から水面下で話を聞き取っていたことが分かった。資金還流が始まった経緯や2022年に復活した状況について尋ね、関与なしと認定したもようだ。追加聴取は現時点で想定していない。政権幹部が29日明らかにした。野党が反発し、国会での説明を要求するのは必至だ。

自民党の聞き取り調査や国会の政治倫理審査会の証言を通じ、清和会の資金還流は1990年代後半ごろに始まった疑いが持たれている。森氏は98年~06年、首相在任中の約1年間を除いて会長を務めた。22年の還流復活の際は安倍晋三元首相の死去後で、派内に影響力を持っていた。

自民筋によると、党関係者が森氏側から聞き取った。開始や復活の経緯を把握していないと説明したという。安倍派幹部の追加聴取と並行して実施した可能性がある。岸田文雄首相ら党執行部は、高齢の森氏にこれ以上話を聞く必要はないとの判断に傾いた。

野党は、事情を知るのは森氏だとして事実確認を訴えてきた。今後、聴取内容を国会に報告するよう要求を強めそうだ。首相は28日の記者会見で、党による聴取について「政治責任を判断するために聞き取り調査を行っている。誰を対象にするかは明らかにしない」と述べるにとどめていた。

首相は26、27両日、22年8月の安倍派幹部協議に出席した当時会長代理の塩谷立、下村博文両氏、事務総長の西村康稔氏、参院側会長だった世耕弘成氏の4人から直接聴取を実施した。安倍派は当時、会長だった安倍晋三元首相が前月に死去し、後見役の森氏や幹部を中心に結束を確認した時期だった。(共同)
 

世耕氏が2022年3月の安倍派幹部による会合を認める…“キックバック”巡る協議は否定 西村氏も参加認める

 
 
自民党・安倍派の政治資金問題をめぐり、29日午後、世耕前参院幹事長が、2022年3月にも幹部会合があったことを認めた。ただ、キックバックをめぐる協議は否定している。

世耕氏は、国会内で記者団に対し、「精査したところ、3月2日に打ち合わせがあった」と話し、これまで記憶にないとしてきた、2022年3月の安倍派幹部による会合の存在を認めた。

一方で、「あくまで参院選に関する打ち合わせ」だとして、いわゆる「キックバック」に関する議論はしていないと強調した。

また、西村前経産相も取材に応じ、この会合に参加していたと認め、場所が当時の細田衆院議長の公邸だったと明かしている。
 
 

裏金問題を打開したい岸田首相の「聴取」って…実態は「密談」では? 気付けば「岸田1強」への権力闘争

 
「実態解明ができていない中での党内処分は奇異だ。今後も国会の場で真相を明らかにする努力が必要で、偽証に罰則が適用される証人喚問は当然するべきだ」
 
 
 自民党裏金事件で岸田文雄首相が自ら行っている「聴取」。国を代表する立場の首相が疑惑の対象から直接聞き取る異例の調査だが、非公表で、法的な根拠もない。一方で党内のライバルは次々に力をそがれており、首相は「したたか」との見方も。永田町では、真相解明も権力闘争次第なのか。来月の議員処分で幕引きを図ろうとする動きに、批判が高まっている。(森本智之、曽田晋太郎)

◆「今さら新しいことが出る?」冷めた声
 「正直、何をやっているかわかりにくいね」(60代会社員)。裏金事件で岸田氏が行っている追加聴取。国会や霞が関に近い東京・日比谷公園で聞くと、首をかしげる人が多かった。
 
 岸田氏がこれまでに聴取した安倍派の幹部らは既に国会の政治倫理審査会に出席。「派閥の政治資金パーティーの会計に関わっていなかった」「知らなかった」などと証言していた。別の60代男性は「あの説明に納得している人もいないと思うが、岸田さんがいまさら聞いて新しいことが出てくるとも思えない」。
 岸田氏は26日に塩谷立氏、下村博文氏、27日に西村康稔氏、世耕弘成氏と、安倍派で幹部を務めた4人を国会近くのホテルに呼び、個別に聞き取りをした。だが岸田氏は聴取の内容を明かさず、不透明感が強まっている。

◆「森元首相が関与」報道にも沈黙
 聴取問題は、28日の国会でも火種に。パーティー券販売ノルマを超えて販売した分を議員に還流するキックバックの仕組みは、安倍晋三元首相が2022年4月に中止を指示したが、死去後に復活した。その判断に「森喜朗元首相が関与していた」と安倍派幹部が岸田氏の聴取に明かした、と日本テレビが報道した。
 
 
 立憲民主党の辻元清美氏が事実関係を尋ねたが、岸田氏は「今の時点で申し上げることは控える」と、ここでも明かさなかった。森氏の聴取を行うかについて「(聴取対象に)含まれうる」とまでは述べたが、実際に行うかという肝心な点は明言を避けた。

 不透明感ばかり漂う岸田氏の聴取。交流サイト(SNS)では、「(岸田派も裏金をつくっていたことから)岸田首相が聴取というのは出来の悪いジョーク」「身内だけの事情聴取ごっこ」などと批判が目立つ。ジャーナリストの青木理氏は「ホテルの密室で話を聞く。内容は当人たちにしか分からない。『聴取した』という手続きを踏むことで、国民に説明責任を果たしたふりをしているだけでは」と突き放す。

◆自民党総裁自ら聴取の異例ぶり
 聴取といえば、一般には警察や検察の厳しい事情聴取が思い浮かぶが、青木氏は「捜査当局が行うわけでもない、国会の場でもないかぎカッコ付きの『聴取』であって実態は密室での密談。案外、これまで明らかになっていなかった本音が語られているかもしれない。もしかしたら『どこまでの処分なら、みんなが納得するか』なんて相談しているだけかもしれない」と皮肉たっぷりに岸田氏の説明不足を批判する。
 
 
 そもそも総裁自らが聴取に乗り出すのも異例だ。衆院事務局職員から参院議員に転じ、長く国政を見てきた平野貞夫氏は「本来は幹事長が段取りして、党紀委員会が行うのが筋。党の処分を決めるのに総裁自ら調査するなんて異常だ。党内の規律が保てていない」と自民党内のごたごたぶりを指摘する。

◆「首相はしたたか」という、小沢一郎氏の見方
 こうした中で26日、「首相はしたたかだ」という言葉が永田町を駆け巡った。共同通信によると、発したのは立憲民主党の小沢一郎衆院議員。裏金事件に絡み岸田氏が清和政策研究会(安倍派)を崩壊させ、二階俊博元幹事長を次期衆院選不出馬に追い込んだとの見方を記者団に示した。
 
 
 首相就任後の経緯を振り返ってみよう。岸田氏が会長を務めた岸田派は党内第4派閥にとどまり、安定した政権運営のためには最大派閥・安倍派の意向をむげにできない状況だった。ただ、派閥会長だった安倍元首相が銃撃事件で死去。浮かび上がった自民と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点は安倍派議員が最も多く、その勢いに陰りが見えていた。

 そこへ昨年末に安倍派の裏金疑惑が表面化すると、閣僚や党の要職を務めていた派の実力者「5人衆」は全員その職を辞し、岸田政権から一掃される結果に。裏金疑惑が事件に発展すると、首相は岸田派の解散を表明。安倍派、二階派なども解散することになった。
 
 今月に入ると、裏金とされる不記載額が、立件された議員を除き最多だった二階氏が、次期衆院選への不出馬を表明。首相は国会で、かつて清和会会長を務めた森元首相について「追加聴取の対象となる関係者の中に入る」と言及した。

◆生き残りをかけた勝負「首相のエネルギーに」
 あたかも政敵を追い落とすかのような首相の一連の動き。ネットでは「クーデター」「もう誰も止められない」などと指摘する声も上がる。

 政治ジャーナリストの泉宏氏は「『岸田1強』として党内で勝ち残るための戦略が描いた通りに進んでいる。首相は(裏金問題が表面化した)昨年末から生き残りをかけた勝負を始めており、それが政治家として生き抜いていくエネルギーになっている」とみる。
 
 「自民は森政権が誕生して以降、清和会の支配が続いており、ここにきて反撃の構図が現れてきた。安倍派を分裂、解体、消滅させる大きな戦略の中で全てが進んできて、成功している。今後、森氏の聴取もするのではないか」

 首相が派閥解散の流れをつくる中、麻生派と茂木派は残ったが、「茂木派では『反茂木』の議員の離脱が相次いだことで、茂木(敏充幹事長)氏の力をそいだ」。また「呼ばれていないのに首相自ら出席を表明して、政倫審に安倍派幹部を引きずり出した」とする。

◆派閥支配が崩れ、総理・総裁1強に?
 他方、政治アナリストの伊藤惇夫氏は「局面は打開できるが、首相がその後の展開や方向性を考えて決断しているか疑問」と話す。「派閥解消も中途半端に終わり、政倫審ではかえって疑惑を深めた。ただ、大半の派閥は溶解し、党の運営システムが崩壊したことで結果的に総理・総裁の力が一番強くなった。首相の動きを止める集団も見当たらず、周りが崩れる中で、首相だけが地面に足をつけて立っている構図だ」と解説する。
 
 
 党内でポスト岸田の有力候補も見当たらず、今秋の党総裁選再選に向け、権力基盤を固めているようにみえる岸田氏。自ら安倍派幹部への聴取を続けているが、政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「やってる感を出しているだけ。第三者が聴取するのではなく、党内の問題を自分たちで裁くのは権力闘争だからだ。内閣支持率は低調だが、ライバルもおらず、総裁選を乗り切れると考えているのでは」と語る。

 岸田氏は4月初旬にも党内処分をして裏金事件の幕引きを図るとみられる。今後は与野党での政治改革の議論に移る見通しだが、それでは真相解明にも再発防止にもつながらない。前出の伊藤氏は「実態解明ができていない中での党内処分は奇異だ。今後も国会の場で真相を明らかにする努力が必要で、偽証に罰則が適用される証人喚問は当然するべきだ」と指摘する。
 
 

裏金解明ないまま予算強行

参院本会議 山添議員が反対討論

暮らし圧迫 大軍拡

 
 
 自民、公明両党は28日の参院本会議で、裏金事件の真相解明もないまま、2024年度予算案の成立を強行しました。日本共産党と立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組、沖縄の風は反対しました。
 
 予算案の採決を巡っては、同日朝の参院予算委理事懇談会で、自民党安倍派での裏金キックバック(還流)の経緯をめぐり同派幹部らが国会で虚偽答弁をしていた可能性が浮上。同派幹部に対する自民党の追加聴取の説明をめぐって紛糾し、予算委の開会が約2時間遅れる事態となりました。

 予算委での質疑後に開かれた理事会で自民党側は、追加聴取内容の来週中の報告などを約束。再開した予算委で同予算案が可決され、同日の参院本会議に緊急上程されました。

 日本共産党の山添拓議員は、同日の参院本会議で反対討論に立ち、物価上昇が続き、「家計は悲鳴を上げ、実質賃金は22カ月マイナスだ」と批判。大企業の内部留保に課税して財源をつくり、中小企業への直接支援、非正規ワーカーの待遇改善など実効ある賃上げ策に踏み出すよう迫りました。(要旨)

 本予算案が過去最大の8兆円に迫る軍事費を計上する一方、訪問介護の基本報酬の引き下げ、改定年金率が物価上昇率を下回っているなどと批判し、社会保障費の抜本的な増額を求めました。

 政府が英国、イタリアと開発する次期戦闘機輸出の閣議決定に断固抗議し、撤回を要求。「対話と協力の平和外交の努力こそ進めるべきだ」と迫り、自民党政治を終わらせ、希望ある日本への転換を主張しました。

 所得税法、地方税法、地方交付税法の改定案がそれぞれ自民、公明などの賛成多数で可決。日本共産党は反対しました。
 
 

自民党の混迷示す予算

小池書記局長が会見

 
 日本共産党の小池晃書記局長は28日、2024年度予算成立を受けて国会内で記者会見し、「来年度予算は、国民の切実な願いに応えることができない自民党の深刻な混迷を示すものになった」「自民党政治をいよいよ終わらせるために全力をあげて奮闘する決意だ」と表明しました。

 小池氏は自民党派閥の裏金事件を巡り、清和政策研究会(安倍派)の幹部協議が2022年3月に行われていたとの証言や、安倍派のキックバック(還流)の復活に森喜朗元首相が関与していた疑惑が新たに浮上していると指摘し、「いよいよ証人喚問が必要な段階に来ている」と強調。問題を根本的に解決するために企業・団体献金の全面禁止が必要だと述べました。

 小池氏は、能登半島地震については「被災者が安心して戻れるような踏み込んだ支援が行われているとはいえない」と指摘。中小企業の賃上げについても「効果がないと言わざるを得ない『賃上げ減税』にしがみつき、一方で大企業にさらなる減税を行っている」と批判しました。

 さらに、岸田政権が予算審議の最中に次期戦闘機の輸出推進を閣議決定したことは断じて許されないと批判。軍事費8兆円に迫る大軍拡を進めていることは深刻な国民の暮らしとの矛盾を生み出していると指摘し、「社会保障の充実や子育て支援、中小企業支援、農業予算を拡充することと大軍拡は両立しないことがはっきりした」と述べました。