来年度予算案が可決された。安保三文書に基づく大軍拡を加速させる一方、「物価高を上回る賃上げ」の実効性が乏しくくらしに冷たい。
なにより裏金づくりの真相解明に背を向け、金権腐敗の根を断つ企業・団体献金にしがみつく自民党政治に、これ以上委ねることはできない。

 

岸田首相 予算成立 “ことし中に物価上昇上回る所得必ず実現”

 
 
新年度予算の成立を受け、岸田総理大臣は28日夜、記者会見し、盛り込まれた経済政策などを着実に実施することで、ことし中に物価上昇を上回る所得を必ず実現させることなどを約束すると強調しました。

為替市場「あらゆる手段排除せず適切に対応」
岸田総理大臣は記者会見で、外国為替市場で円安が進んでいることをめぐり、市場介入の必要性を問われ、「為替相場はファンダメンタルズ=基礎的条件を反映して安定的に推移することが重要で、少なくとも過度な変動は望ましくない。政府として高い緊張感を持って為替動向を注視していきたいが、行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せず、適切な対応をとりたいというのが政府の基本的な考え方だ」と述べました。

政治資金の透明性「デジタル化など通じて透明度高める」
岸田総理大臣は政治資金の透明性を確保する方策について、「デジタル化を通じて透明性を高め、管理をより正確に行うことができることは大変重要なことだ」と述べました。

その上で、「自民党の政治刷新本部の中間とりまとめの中でも、デジタル化などを通じて透明度を高めることは当然やらなければならないと明記しており、その方向で政治資金規正法を考え、政府の取り組みを考えることはあるべき方向だ」と述べました。

米大統領選「選挙情勢かかわらず同盟の重要性改めて世界に示す」
岸田総理大臣はことし秋のアメリカ大統領選挙でトランプ前大統領が再選する可能性も想定しているのかと問われたのに対し、「今の国際情勢の中で日米関係は重要だという共通認識は党派を超えて強まっていると確信している。『もしトラ』という話もあったが、選挙情勢にかかわらず、日米同盟の重要性を改めて世界に示すことは重要だ」と述べました。

プライマリーバランス「黒字化を念頭に努力」
岸田総理大臣はプライマリーバランス=基礎的財政収支の目標について、「2026年以降については正直、今現在まだ決まっていない。2025年の黒字化が視野に入ることを念頭に努力を続けていきながら、2026年以降についても政府として目標などを考えていきたい」と述べました。

来月訪米予定「強固な日米同盟を示すことは大変重要」
岸田総理大臣は来月予定しているアメリカへの公式訪問について、「国際社会が複雑かつ多様な課題を抱える中で、日米の固い結束や同盟の重要性はますます高まっている。今回の公式訪問を通じて、両国の緊密な連携や強固な日米同盟を世界に示すことは大変重要だ」と述べました。

森元首相への追加聴取は「判断に必要あるなら聴き取り行う」
岸田総理大臣は森元総理大臣を追加の聴取の対象に含めるのか問われ、「誰を対象にするのか、これから誰を呼ぶのかといったことは明らかにしない中で聴き取りを行ってきた。政治責任を判断する上で必要があるなら聴き取りを行うことを考えていくということだ」と述べました。

拉致問題「諸懸案の解決へ動かしていきたい」
岸田総理大臣は北朝鮮による拉致問題をめぐり、「日朝間で実りある関係を実現することは双方の利益に合致し、地域の平和と安定にも大きく寄与するという考えは変わっていない。諸懸案の解決に向けて努力していきたいと思っているが、相手のあることだ。従来の日本の基本方針を実現するため、引き続き、私直轄のハイレベルでの対応を行っていきたい。その中で拉致問題をはじめとする諸懸案の解決へ動かしていきたいと強く願っている」と述べました。

関係議員の処分について「政治責任や道義的責任を総合的に判断」
岸田総理大臣は関係議員の処分について、「関係者は政治家なので、政治責任や道義的責任を判断しなければならない。その判断にあたっては、政治資金収支報告書の不記載の金額や程度、それぞれの政治家としての役職や議員歴、さらには説明責任の果たし方を含む信頼回復に向けた努力の状況を総合的に判断していくことになる。その上で党紀委員会などの手続きを経て厳しく対応していきたい」と述べました。

来月の補欠選挙「厳しい意見受けながらの選挙になる」
岸田総理大臣は来月予定されている補欠選挙について、「国民の大変厳しい声の中で、厳しい意見を受けながらの選挙になると思うが、訴えをしっかり行っていきたい」と述べました。

その上で、「たとえば政治への信頼回復、自民党改革も示していかなければならないし、経済再生の実感を国民に届けることも訴えていかなければならない。さらには災害、厳しい国際環境の中で国民の命や暮らしを守る実行力を持っているのはどの政党なのか、これらを強く訴えていかなければならない」と述べました。

来月の補欠選挙「態勢整え勝敗ラインを考える」
岸田総理大臣は補欠選挙について、「今、2つの選挙区では候補者を検討中の状況で、どういった選挙を準備して戦うのかを至急、詰めさせている。検討中なので、この段階で勝敗ラインまで申し上げるのは難しいと思う。まずは態勢を整えた上で、全体の中で勝敗ラインを考えていくことになる」と述べました。

解散について「課題に一意専心 それ以外は今は考えていない」
岸田総理大臣は衆議院の解散について、「政治への信頼回復や経済の再生、賃上げなどの先送りできない課題に一意専心、取り組んでいくことに尽きる。 それ以外のことは今は考えていない」と述べました。

「デフレ心理を一掃し新たなステージに移行」
岸田総理大臣は「分配と成長の好循環をしっかり回し、デフレ心理を一掃し、新たな経済成長のステージに移行することが政治の立場から言うデフレからの完全脱却だ。前向きな兆しが随所に出てきており、完全脱却へ30年ぶりのチャンスを迎えている。チャンスをつかみ取り、後戻りさせないことに私の政権の存在意義はあるという強い覚悟を持って取り組んでいきたい」と述べました。

「来週中にも処分行えるよう進めたい」
岸田総理大臣は「現在、自民党執行部で追加の関係者の聴き取りを行っている。必要があれば、さらに聴取を行うことを考えている。来週中にも処分を行えるようプロセスを進めていきたい」と述べました。

予算成立 “ことし中に物価上昇上回る所得必ず実現”
冒頭、岸田総理大臣は新年度予算には物価高への対応や賃上げへの施策が多く盛り込まれていると説明するとともに、「震災対応をはじめ重要施策を全速力で実行していく」と述べました。

続いて、いまの経済状況について、「春闘での力強い賃上げの流れ、史上最高水準の設備投資に海外からも大型戦略投資が相次いでいる。しかし、デフレ脱却への道はいまだ道半ばで、数十年に1度の正念場にある」と述べました。

そして、正念場を乗り越える施策の1つとして、ことし6月以降、所得税の減税などを行うことに触れ、「官民が連携して『賃金が上がることがあたり前』という前向きな意識を社会全体に定着させていく」と訴えました。

その上で、働く人の7割を占めるとされる中小企業の「賃上げと稼ぐ力」を強化する支援が重要だとして、▽人件費にあたる「労務費」が適切に価格転嫁できる環境整備を進めることや、▽赤字企業も含め、賃上げを後押しする税制支援を講じていくことなど、あらゆる手を尽くしていく方針を示しました。

このほか、日本の稼ぐ力を復活させる上で、エネルギー輸入で海外に数十兆円が流出している現状を変える必要があるとして、新年度中をめどとした「エネルギー基本計画」の見直しに向けて議論を加速させる意向を明らかにしました。

一方、先に金融政策が転換されたことをめぐり、今後も政府と日銀による緊密な連携を堅持していくと述べました。

最後に、「国民に『物価高を乗り越える2つの約束』を明確に申し上げる。『ことし、物価上昇を上回る所得を必ず実現する』。そして『来年以降に物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる』」と強調しました。
 

「子ども・子育て支援金」であなたの負担はどうなる?

 
政府が「子ども子育て支援金」の額の試算を初めて公表。「実質的な負担はゼロ」というが、どう見てもゼロではない。
医療保険への上乗せにしたために、国保か被用者保険かで負担が異なり、逆進性もあるなど矛盾が生じている。説明できない仕組みは選ぶべきでない。
 
 
加入者1人あたり平均月350円~600円。
子どもなど扶養されている人を除いた「被保険者」で試算すると最も高い場合は950円。
少子化対策の一環として、政府が公的医療保険を通じて集める「子ども・子育て支援金制度」。

医療保険の種類ごとの「支援金額」の試算が初めて公表された。

一方、政府は支援金による「実質的な負担はゼロ」と説明する。

与野党双方から「わかりにくい説明だ」という声が上がっているが、本当に新たな負担にはならないのだろうか。
(三藤紫乃、高橋太一、鹿野耕平)
 
公表された試算は
まずは政府が公表した試算の詳細を見てみたい。

「子ども・子育て支援金制度」は2026年度から始まり、初年度は6000億円、2027年度は8000億円、2028年度以降は1兆円が徴収される予定だ。

きょう公表された試算では、この3年間の医療保険制度全体の加入者1人あたりの平均月額が示され、2026年度は250円、2027年度は350円、2028年度は450円となった。

医療保険の種類ごとの2028年度時点での「支援金額」は以下のとおりだ。

あなたの「支援金額」は?
 
 
(会社員など)
◆大企業に勤める人などが加入する健康保険組合で、扶養されている人も含めた加入者1人あたりの支援金額は平均で月500円。
◆主に中小企業に勤める人などが加入する「協会けんぽ」で450円。
◆公務員などが加入する「共済組合」はすべての保険のなかで最も高い600円。

こうした保険では、子どもなど、扶養されている加入者は「支援金」を支払わないため、保険料を支払っている「被保険者」1人あたりで見ると700円から950円となる。

また、収入に応じて金額は変わる。

労使折半が前提で同じ額を事業主も支払うことになる。
 
 
(国民健康保険)
自営業者や非正規労働者などが加入する国民健康保険では、1人あたりの平均で400円だ。
実際の額は世帯ごとに所得や人数に応じて決められるが、高校生以下の子どもについては人数に含めないほか、低所得の世帯への軽減措置も講じられる。世帯あたりの平均的な額は600円としている。

(後期高齢者医療制度)
75歳以上の高齢者にも全体の8.3%の負担を求めるとしていて、1人あたり平均で350円。

ただ、実際の額は所得や自治体の財政状況によって異なる。

政府の説明は?
「支援金制度」は、2028年度までに実施する少子化対策の「加速化プラン」に必要だとされる年間3兆6000億円のうち、1兆円の財源を調達するための新たな仕組みだ。

創設が初めて打ち出されたのは去年6月の「こども未来戦略方針」。
 
その後、政府は公的医療保険制度を活用することを決めた。

理由について、もっとも幅広い世代の人が保険料を支払っていること、少子化や人口減少に歯止めをかけることができれば、社会保障に関わる制度全体の持続可能性も高まること、企業も負担することを挙げる。

つまり社会全体で子どもや子育てを支えようということだ。

ただ、政府は「支援金による実質負担はゼロ」と説明する。

「こども未来戦略方針」では「国民に『実質的な追加負担』を求めることなく、少子化対策を進める」と記され、今の国会でも、岸田総理大臣や加藤こども政策担当大臣は、「歳出改革と賃上げで社会保障負担率の抑制の効果を生じさせ、その範囲内で制度を構築していくことにより、全体として実質的に負担は生じない」と繰り返し答弁している。
 
 
一方で、加藤大臣は医療保険の加入者1人あたりの「拠出額」は、2026年度は300円弱、2027年度は400円弱、2028年度は500円弱になると国会で答弁してきた。

メリットも
また、2月には「支援金制度」の創設によって、子どもが18歳までに受けられる給付が1人あたり平均でおよそ146万円増えるという見通しも初めて示された。

今の児童手当とあわせると、1人あたり平均でおよそ352万円が給付されることになるという。

負担だけではなく、メリットも示すことで、少子化対策と財源確保の必要性を強調するのが狙いだ。
 
 
「実質負担ゼロ」って本当?
実際の負担はどうなのか。

保険料に上乗せする形で「支援金」を支払うのであれば、一人ひとりの負担額は増える可能性もある。

しかし、政府は一人ひとりの保険料の負担ではなく、個人や企業など国民全体の所得=国民所得に占める社会保険料の負担の割合、「社会保障負担率」を「実質的負担」の指標としている。
 
 
ただ、その説明は複雑だ。

「社会保障負担率」は平成元年度(1989年度)は10.2%だったが、新年度(2024年度)は18.4%になる見通しだ。

少子高齢化で今後も保険料負担は増えていくとみられるが、政府は、
1「分子」となる保険料の負担増を、医療・介護の歳出改革でできるだけ抑える
2「分母」となる国民所得を賃上げを進めて増やす
この方法で「社会保障負担率」の上昇をできるだけ抑え、抑えられた範囲内で「支援金」を拠出してもらうため「支援金」によっては「負担率」は上がらないというのだ。

窓口負担増などは“負担ではない”
また、社会保障の歳出改革では、医療や介護サービスの窓口負担が増えたり、サービスが削られたりする可能性があるが、政府は保険料は増えず、社会保障負担率の増加にはつながらないことから、「実質的な負担」には含まないとしている。

さらに、医療や介護の分野で働く人の賃上げなどを行うため、2023年度と2024年度で3400億円の保険料の負担増が見込まれるが、社会全体の賃上げに伴う保険料の増収で賄えるとして、これも「実質的な負担」を計算する際の保険料負担増には含めないと政府は整理した。

なぜ「負担増」を避けるのか
なぜ政府はここまで「負担増」ということばを避けるのか。

政府関係者はこう解説する。

「『支援金制度』が打ち出された去年6月に政権が気にしていたのは『身を切る改革』を掲げた『日本維新の会』の統一地方選挙などでの躍進。防衛増税への逆風もあって、負担増は言い出せなくなった」

しかし、財源がなければ、少子化と人口減少を食い止めることはできないとして、生み出されたのが「実質負担ゼロ」の説明だったというのだ。

でも、わかりにくい
こうした政府の説明には与党からも「わかりにくい」という声が出ている。
 
公明党 高木政務調査会長
「わかりにくい説明で、国民理解がなかなか進まない要因の1つではないか。もっと真正面から支援金制度の意義や必要性を説明するべきだ」

野党からは「複雑な説明や計算式を作って国民にわからないようにして、財源だけを集めようという魂胆が透けて見える」といった批判が出ている。

説明はうそではないが・・・
官僚からも、次のような声が聞かれる。

「マクロでバーチャルな説明なので、わかりにくいと言われればそのとおりだ」

「うそをついたり、ごまかしたりしているわけではないが、この説明で進まざるを得なくなったのが残念。自業自得といえばそれまでだが」

次のように語る官僚すらいる。

「支援金は負担増と言わざるを得ない。将来世代のために正面から負担をお願いするべきだった」

専門家はどうみる
「子ども・子育て支援金制度」をめぐっては、社会保障制度に詳しい専門家の間でも賛否が分かれています。

慶應義塾大学の権丈善一教授は「支援金制度」は、高齢者や企業も含めた社会全体が連帯して、少子化や人口減少の課題解決に取り組む画期的な枠組みだと評価しています。
 
今回の試算については次のように述べました。

慶應義塾大学 権丈善一教授
「幅広い世代で支えるという理念を実現しながらも、負担能力にはきちんと配慮しようという姿勢を感じる。例えば、基礎年金だけで年収80万円しかない高齢者の支援金はひと月50円だ」

一方、政府が「支援金によって『社会保障負担率』は上がらないため『実質的な負担はない』」と説明していることについて「2028年度に仮に賃金が上がると、今とその時の500円の負担感は違ってくる。『率』で考えないと実態が見えなくなると前から言ってきた」と理解を示しました。

そして、「政府は制度の意義と理念をしっかりと国民に説明するべきだ」と述べました。

日本総合研究所の西沢和彦理事は保険はリスクに備えるものだとして、医療保険を活用することへの疑問を示しています。
 
そのうえで、「事業主にも負担を求めるのは、賃上げの流れにも逆行しかねない。現役世代の負担が重い社会保険料ではなく、資産も反映される税による財源確保がふさわしい」と述べました。

また、今回の試算については「情報が不足している。国会で政府が答弁していたように1000円を超える人もいるはずだし、高い人では数千円になるはずだ」と指摘し、より詳しい情報の提供が必要だという考えを示しました。

さらに「実質的な負担は生じない」という政府の説明について次のように批判しました。

日本総合研究所 西沢和彦理事
「国全体では負担が増えないと言うが、個々の家計で見ればそうではない。賃金が上がるかは人によって違うし、医療や介護の窓口負担が上がったり、サービスが削られたりすれば、それも負担増なので詭弁だ」

国会で本格議論へ
これまでの国会をふりかえると「支援金制度」のあり方と政府の説明のあり方に議論が集中し、肝心の少子化対策の内容の議論が深まっているとは言えない。

「子ども・子育て支援法」などの改正案は4月に国会で審議入りする予定だ。

少子化と人口減少が加速する中、待ったなしの対策はどうあるべきなのか、裏付けとなる財源はどうあるべきなのか。

国民生活に大きな影響を与える内容だけに、分かりやすい形で情報が提示され、議論が尽くされることを願っている。
(3月29日 ニュース7で放送予定)
 

岸田首相 会見で「2つの約束」 物価上昇上回る所得「今年、実現」「来年以降、定着」

 
 
岸田首相は28日夜、2024年度予算の成立を受けて記者会見し、国民に対する「物価高を乗り越える2つの約束」として、「まず、今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現する」「来年以降に、物価上昇を上回る賃上げを必ず定着する」と表明した。

また、岸田首相は「今、我々は、デフレから完全に脱却する千載一遇の歴史的チャンスを手にしている」と指摘。

「豊かな日本を次世代に引き継げるか否か。我々は、数十年に一度の正念場にある」と述べた。

そして、「官民が連携して物価高を上回って可処分所得が増えるという状況を確実に作り、国民の実感を積み重ねていく」と強調。

「賃金が上がることが当たり前という前向きな意識を社会全体に定着させていく」と述べた。
 

イヤイヤ期?
小学6年生でも
もうちょっとマトモだよ。