旧統一教会の問題は、社会、政治だけでなく、司法の場でも風化が進んできたという指摘です。被害の実情、そして教団の悪質なお金集めの実態について、しっかりとその事実を見ての司法判断が求められます。

 

 

東京地裁の旧統一教会側への10過料の決定から思うこと
文科省庁は旧統一教会に対して行った7回にわたる質問権行使の一部について報告しなかったことに対して、東京地方裁判所は過料10万円の決定をしました。これにより、旧統一教会に初めて行政罰の決定がなされました。

1.東京地裁の旧統一教会側への過料の決定から思うこと
旧統一教会の田中富広会長に、過料10万円の司法団が出された件については、「旧統一教会側への過料10万円が決定 たかが10万、されど10万 解散命令の司法判断に向けた重要な一歩」に詳細を書いています。解散命令への司法判断に近づくような決定になったといえます。

 

● 旧統一教会側への過料10万円が決定 たかが10万、されど10万 解散命令の司法判断に向けた重要な一歩

東京地裁は過料の決定のなかで、旧統一教会への「報告徴収の手続について、違法の廉(かど)はうかがわれない」としており、教団側の主張であった「報告徴収自体が違法」や「報告を拒否したことは正当」などという主張はことごとく退けられたことになります。

さらに、22件の過去の教団の違法性を問う民事裁判にも言及しており、この民事裁判の1件の当事者である私としても、天網恢恢疎にして漏らさずの思いを強くしています。被害を生み出した悪質な行為は必ず報いを受けます。

それは、まさに教団が霊感商法などを行う上で勧誘トークで使う「因果応報」(悪い行いをすれば、自らに悪い報いがやってくるの意)が自らの身に訪れたことになった結果になっていると感じています。

2.法テラスの援助制度はすべての財産を奪われた被害者への救済への第一歩
3月19日より、法テラスにおいて、特定不法行為等に係る被害者の法律援助業務が開始されました。その内容は、解散命令請求等の原因となった不法行為等とされており、旧統一教会が指定宗教法人になっています。

施行当日に行われた司法記者クラブの会見で、阿部克臣弁護士は、その内容を次のように話します。

被害者の資力を問わずに援助すること
費用の償還・支払いを一定期間猶予すること
償還等を免除できる範囲を通常より拡大することとし、その範囲を具体的に想定する
「これにより、法テラスによる弁護士費用等の援助制度について、資力を問わずに誰でも広く利用できるようになります」とのことです。

全国統一教会被害対策弁護団の村越進団長も「本日(3/19)以降のご相談ご依頼につきましては、原則として全件に特例法を利用いたします」として「法テラスにおける通常の法律扶助では償還(お金を返す)が原則になりまして、償還免除というのは、生活保護の受給者などとかなり限定されていますが、今回の特例法では償還免除の範囲がかなり広くなっています。どのくらいの人が免除になるかは、ケースバイケースですけれども、最終的に負担を伴わないで救済を求められる方が相当の割合になると思っております」と画期的な援助がスタートすると話します。

木村壮弁護士は、具体的な事例として「例えば主婦の方ですごく献金してしまったあとでも、親族も、例えば夫とか家族もそのことを知って、お前にはお金を管理させられないと言われてしまう方が結構多いんです。そういう方は、家にはお金があってももう依頼するだけのお金を出してくれとかというのは言えないような状況にあります。そういう方についても最初に費用がかからないということは、非常に大きなことで、依頼する動機になるのではないか」とも話します。

昔の被害で返金が難しい可能性のあるものでも、まずは相談することをお勧めします。

 

3.念書に署名させられたことによる1審、2審の敗訴判決が覆される可能性が出てきた
被害者家族である中野容子さん(仮名)の高齢の母親が約1億円もの献金をして、返金の裁判を起こしましたが、信者時代に旧統一教会に対して「返還請求や不法行為を理由とする損害賠償請求など、裁判上・裁判外を含め、一切行わないことをここにお約束します」との念書に署名をさせられて、教団側はその様子をビデオで撮っていたことで、1審、2審とも敗訴しています。しかし中野さんは諦めずに最高裁に上告しました。

 

今年年6月10日に最高裁判所は、2審(高裁)の判決の変更に必要な手続きである、弁論を行うことになりました。これにより、地裁、高裁で判断された敗訴の判決が見直される可能性が出てきました。先日、この件を受け手、国対ヒアリングも開かれましたので、その内容も記事としてアップ致します。

4.司法の場でも、宗教被害に関する風化が進んだのではないかとの弁護士の指摘
最高裁で判決が見直される可能性が出てきたことを受けて、紀藤正樹弁護士は「この問題については、2020年前後に同じ(念書に署名をさせられた)事案に関して、結論が分かれる判例がいくつか出てました。オウム真理教事件が1995年に起きてからは、カルトに対する問題点についての国民的な理解が進んで一定程度、判例にも統一教会の実態について理解を示す判例が増えたわけですけども、2010年後半から同じ事案なのに、過去の判例との結論が異なるという、ブレるものがいくつか出てきたんです。合意書とか念書とかそういうものがあっても、勝った事例と負けた事例があるんですね」といいます。

さらに同弁護士は「私は、(この問題は)宗教問題、宗教被害に関する風化じゃないか。政治や我々の社会の風化だけじゃなくて、宗教被害問題に関する理解に関して裁判所でも風化が済んだと思うんです。今回、最高裁が弁論を開くというのは、まさに風化に対する自分たちの反省を込めて再開したと考えてまして、裁判所は同じ事案に関して、あるいは同じ実態を持つ宗教被害に関して結論がブレてしまうこと自体が、被害者から見たら公平感がないわけで、法の公平性に反するわけです。良い判決が出ることによって、宗教的被害をめぐる事件に関する楔(くさび)を打っていただきたい」とも話します。

 

旧統一教会の問題は、社会、政治だけでなく、司法の場でも風化が進んできたという指摘です。被害の実情、そして教団の悪質なお金集めの実態について、しっかりとその事実を見ての司法判断が求められます。