嫌われ4人衆の政治生命は風前のともしび。だが、そもそも裏金議員は「非公認」程度では許されない。この際、潔く「議員辞職」すべきではないか。

 

腐った世襲リンゴが何か言ってる……

 

 

 

裏金事件を巡って自民党は、安倍派のキックバック処理を協議した幹部会合(2022年8月)に出席した塩谷元文科相と下村元文科相、西村前経産相、世耕前参院幹事長の4人に「選挙での非公認」以上の処分を科す方向で調整中だ。この4人を含め安倍、二階両派の議員計82人の処分を4月上旬にも決定するという。

衆参の政治倫理審査会では、安倍元首相が「キックバック中止」を指示したにもかかわらず、安倍死去後の幹部会合を経てキックバックが継続となった経緯が焦点となっていたが、4人とも「知らぬ存ぜぬ」。厳しい処分は当然だろう。

驚くのは安倍派内から4人を擁護する声がほとんど上がらないことだ。同派の稲田幹事長代理も24日のフジテレビの番組で、4人の処分について「まだ不透明なところは多いと思う」と苦言を呈していたほどだ。

 

「安倍派の幹部は派閥の運営を牛耳り、閣僚ポストも事実上、独占してきました。エラソーに中堅・若手を指導していた。なのに、幹部としての説明を求められても『オレは知らない』と責任逃れです。無責任にもほどがある。いまや、若手議員まで『安倍派所属』というだけで悪者扱いです。誰かが処分されないと収まりませんから、『非公認』は当然でしょう。派内で彼らをかばう声はありませんね」(安倍派議員の秘書)

“異次元”の嫌われっぷりだが、党の公認がもらえないとなると、4人とも次の国政選挙は落選の危機だ。

最も危ないのは、衆院静岡8区の塩谷氏。立憲民主党の候補と一騎打ちだった前回21年選挙では、2万票以上の差をつけられて落選し、比例復活の憂き目にあった。「党の公認がなければまず勝てない」(地元関係者)。無所属だと比例復活できないため、“ただの人”へまっしぐらだ。

東京11区の下村氏も厳しい。

「前回衆院選では立憲の候補に3万票以上の差をつけて当選したが、野党票を合算すると横並びになる。さらに、非公認だと公明党の推薦を得られない可能性が大きい。選挙区内の公明票は3万票超だから、一気に“黄信号”です」(都政関係者)

西村前経産相は選挙区内で「釈明ビラ」


 

前回衆院選で共産党候補に9万票以上の差をつけて圧勝した西村氏も盤石ではない。不安材料は、泉房穂前明石市長が立憲の候補者として浮上していることだ。

「西村さんは選挙区内の淡路島の3市では圧倒的な強さを誇る。しかし、3市の投票者数は全体の3分の1。残る3分の2は明石市です。知名度抜群の泉さんが明石市で大量に得票する展開になれば、党の公認がない西村さんは危ない。1月下旬の釈明会見直後に明石駅前でビラを配ったのも、相当な危機感があるからでしょう」(県政関係者)

参院議員の世耕氏は来年、改選を迎える。前回19年選挙では、和歌山選挙区(定数1)で野党統一候補に19万票もの大差で勝利。しかし、県全域が選挙区の参院選を非公認で戦うのは、当選5回の世耕氏といえど苦しい。

 

「世耕さんは23年春の衆院和歌山1区補選を巡る対応でミソをつけた。二階元幹事長が勝てる候補として鶴保参院議員の擁立を狙ったが、主導権を握りたい世耕さんが猛反対。元職擁立にこぎ着けましたが、あろうことか日本維新の会の新人に負けてしまったのです。この一件で、世耕さんは県連の不信を買った。党の公認なしで、地元議員が選挙支援をしてくれるか微妙です。維新に強力な候補を立てられたら、厳しい選挙戦になるでしょう」(官邸事情通)

嫌われ4人衆の政治生命は風前のともしび。だが、そもそも裏金議員は「非公認」程度では許されない。この際、潔く「議員辞職」すべきではないか。

 

 

「庶民は増税・自民党は脱税、これはあまりに理不尽だ!」  裏金問題を告発した市民団体がデモ

 
「庶民は増税・自民党は脱税。これはあまりにも、理不尽だ!」
 


 国会で政治倫理審査会が開かれても一向に解明されない自民党のパーティ券裏金問題をめぐり3月7日、東京・霞が関の財務省前に苛立ちと怒りの声が響いた。いわゆる“5人衆”(萩生田光一、西村康稔、松野博一、高木毅、世耕弘成の各議員)をはじめとする自民党安倍派有力議員ら10人を2月1日に所得税法違反(つまり脱税)の疑いで東京地検へ告発した市民団体(本誌2月9日号既報)が、この裏金に課税せよとする「申入書」を財務省・金融庁へ提出。終了後には記者会見も行なった。

 申入人は「自民党のウラガネ・脱税を許さない会」(以下、同会)藤田高景代表と代理人弁護士3人。趣旨は次の2点だ。

①今回問題の自民党各議員の裏金は、すべて「雑所得」として計上させ、課税対象とするべきである。②国税庁が今年1月付で作成した政治資金に係る「雑所得」の計算等の概要の文書を撤回し、政党から受けた政策活動費や、個人・後援団体などの政治団体から受けた、政治活動のための物品等による寄付などは、すべて一律に「事業所得」として計上させ、課税対象とするべきである。

 そのうえで「課税対象」とする理由として、昨年12月からの政治資金規正法違反に絡む捜査で安倍派の領袖が立件されなかったことを挙げて「逮捕・起訴などは計3名、それも小物・雑魚の類で事件は終結した」と批判。

 さらに、国民にはインボイス制度で税の捕捉を強化しておきながら「国会議員は報告書を修正すれば一件落着ではないか」と疑問を提示しつつ、萩生田氏が報告書の訂正で収入総額、支出総額、翌年への繰越額などすべてを「不明」と記載したばかりか裏金の2728万円が「机の引き出しにしまっておいた」などとした欺瞞とも言うべき事例のほか、二階俊博氏や橋本聖子氏など8議員のケースを列挙。改善案としては「政治家の収入は事業所得とし、秘書等の人件費や事務所の家賃等は通常の事業所得と同様に必要経費として計上させるべき」だと提案している。
 
赤木俊夫さんの命日に
 7日13時半、藤田代表ら同会メンバーが「自民党のウラガネ・脱税は許さない」と書かれた横断幕を掲げて財務省前の歩道をデモ行進。その後、金融庁に入り担当者に申入書を提出した。デモでは行進を妨げた警官と揉み合いになる一幕も。提出から戻った藤田代表は「政倫審は嘘だらけだ!」と一喝し、かつての金丸信・自民党副総裁(当時)による佐川急便闇献金事件なども挙げながら「過去には切り込んで捜査をした。今回も調査すべきだ」と訴えた。

 近くの衆議院第二議員会館で同会が開いた会見には藤田代表らのほか古賀茂明(政策アナリスト・元経済産業省官僚)、山田朗(明治大学教授・歴史学者)、雨宮処凜(作家)などの各氏が発言した。

 山田氏は「昭和初期と状況が類似している。金融恐慌に政治が対応できず国民の信を失い民主主義が崩壊し、大陸でも問題が生じて軍部が台頭。五・一五事件へつながった」と警鐘。同会の活動を「政治が腐敗した今、市民の民主主義を活性化する行動は意味がある」と評価した。古賀氏は「今日3月7日は森友問題で自死した赤木俊夫さんの命日。財務省職員はそれを肝に銘じてほしい。パーティ券は企業も個人も禁止するべきだ。今、そういう政治の動きがある。皆で後押ししたい」と述べた。

薄井崇友・フォトジャーナリスト