次期戦闘機輸出の閣議決定に強く抗議し、撤回を求める
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 政府は26日、国家安全保障会議(NSC)9大臣会合を持ち回りで開き、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、国際共同開発する防衛装備完成品の第三国への輸出解禁を決めた。当面は英国、イタリアと開発中の次期戦闘機に限定する。

 共同開発品はこれまで、開発相手国を除き輸出できなかった。政府は昨年12月、外国企業の技術を用いて国内で製造する「ライセンス生産」の装備品について、輸出規制を大幅に緩和。これに続く安全保障政策の大転換となる。

 自民、公明両党の協議に基づき、政府は26日の閣議で、なし崩しの輸出拡大を防ぐ「歯止め策」を決定。実際に輸出する際は、個別の案件ごとに閣議決定する。従来はNSCの決定事項だったが、意思決定のプロセスを厳格化。与党の事前審査も担保する。

 

 

 木原稔防衛相は26日の記者会見で「厳格な決定プロセスで、平和国家としての基本理念を引き続き堅持することをより明確な形で示すことができる」と強調した。 

 

 

次期戦闘機輸出の閣議決定に強く抗議し、撤回を求める
                                  2024年3月26日 日本共産党政策委員長 山添 拓

一、岸田政権は26日、日英伊が共同開発・生産する次期戦闘機の日本から第三国への輸出を可能にする閣議決定を強行した。これは昨年12月の殺傷武器輸出解禁(外国企業からライセンスを得て日本が生産した殺傷武器をライセンス元国へ輸出できるようにする)につづく暴挙である。殺傷武器の輸出拡大は、「戦争国家」づくりをめざす「安保3文書」にもとづくもので、「平和国家」としての戦後の歩みを大本から覆し、「国際紛争助長国家」「死の商人国家」への道を突き進むことに他ならない。日本共産党は閣議決定に強く抗議し、撤回を求める。

一、次期戦闘機は、「いずれの国においても実現されていない新たな戦い方」をする最新鋭機であり、殺傷武器の最たるものである。英伊にとっては英伊独西が共同開発したユーロファイターの後継であるが、同機はサウジアラビアに輸出され、イエメン内戦で空爆を行い、多数の民間人が犠牲になった。次期戦闘機が第三国に輸出された場合、さらに破滅的な攻撃に使用される危険性があることは明白である。

一、政府・与党は次期戦闘機輸出には「三つの限定、二重の閣議決定」で歯止めを主張するが、およそ通用しない。「輸出するのは次期戦闘機に限る」というが、強力な殺傷能力を持つ最新鋭戦闘機を可能にして、その他は輸出できないという理屈は成り立たない。「輸出先は日本と『防衛装備品・技術移転協定』を締約している国に限る」としているが、現在15カ国と結んでいるこの協定は、国会の関与もなく政府の一存でいくらでも増やすことができる。「現に戦闘が行われている国は除外する」とするが、日本が輸出した後に戦闘を開始する事態は十分あり得る。加えて、閣議決定を二重に行ったところで、国民と国会に諮らず、政府・与党の密室協議で進めることに他ならず、なんら歯止めにならない。日本が開発・生産に加わる次期戦闘機が無辜の市民の命を奪うとともに、戦闘機をはじめとする殺傷武器の輸出競争を激化させて逆に地域の安定を脅かす可能性はまったく排除されない。

一、政府は、第三国への輸出について「市場が大きくなり効率化する」などと、販路拡大でコストを安くし、多売により儲けを増やす――まさに「死の商人」の論理を露骨に表明した。軍需産業の儲けのためなら命の犠牲もいたしかたない、国際紛争を煽り立てて「経済の糧」にすると言っているに等しく、「死の商人国家」への堕落である。

一、日本は、自民党政府のもとでも、このような危険で堕落した道は拒否してきた。1976年に三木政権が表明した「武器輸出三原則」は、「国際紛争を助長しない」との理念にもとづき事実上武器輸出を全面禁止し、1981年には衆参両院本会議が同三原則の厳格な運用を求める決議を全会一致で可決した。にもかかわらず岸田政権は、次期戦闘機の第三国輸出という歴史的暴挙を、国会を無視し、自民党、公明党の「協議」と一片の閣議決定で強行した。議会制民主主義をも踏みにじるものであり、断じて認めることはできない。閣議決定の撤回と、「武器輸出三原則」の立場に戻ることを強く求め、そのために全力をあげる。

 

 

「国民合意を捨てた」 戦闘機輸出解禁に見る政府自民の「国会回避」

 
安全保障政策で国民の合意を得る機会を政府は捨てている――。日英伊で共同開発中の次期戦闘機の第三国への輸出解禁をめぐり、国会の審議・議決を経ずに閣議などで決定した手続きについて、安保政策に詳しい常葉大の柴田晃芳教授(政治学)はこう指摘します。そこには長らく続く政府・自民党の「国会回避」の戦略があるといいます。

 ――政府が国際共同開発の次期戦闘機の輸出を解禁しました。

 冷戦の終結後、日本は安保政策の幅を広げてきました。2012年の第2次安倍政権以降、変化がかなり早く進んだとは思いますが、21世紀の流れの一環だと私はとらえています。

 戦闘機はかなり攻撃的な兵器で、いま、共同開発に関わっていない第三国に輸出することの是非が議論になっています。ただ、この議論には特殊な事情があります。

 日本が輸出した次期戦闘機が実際に人を殺すことに使われるという単純な話ならば、国内で強い反発が出るのは当然です。ただ、戦闘機は抑止力を構成する重要な要素でもあり、また共同開発なので日本で独自に判断し切れません。日本が輸出しなくても、日本の技術を英伊がどう扱うかについて完全にはコントロールはできないでしょう。

柴田さんは、国会審議を経ずに政府が輸出解禁の決定手続きを進めたことを問題視します。同時に、「55年体制」から続く野党側の責任も指摘します。