国が指定した経済安全保障上の機密情報を扱う民間事業者らへの身辺調査導入などを柱とする「重要経済安保情報保護法案」が22日、衆院内閣委員会で審議入りした。政府は、国会が関与しない機密指定に関し、内閣府の独立公文書管理監がチェックを担当すると説明したが、機密指定基準など依然としてあいまいな点が目立っている。

◆指定や解除のチェックは「内閣府の独立公文書管理監が行う」
 この日は自民・公明両党の与党質問のみで、何が指定情報に当たるのかを自民の簗和生氏ら複数の議員が質問した。高市早苗経済安保担当相は「重要インフラへのサイバー攻撃を想定した政府の対応案や、重要物資の安定供給の障害となる情報、国際共同開発に関し外国政府から提供された情報」などと例示。だが具体的な指定要件は、法案成立後に政府内で決める運用基準で示す考えを示した。

 

 公明の吉田久美子氏は、政府がどの情報を機密指定したかを国会に共有しないことを踏まえ「指定が真に必要で適正なものかどうかを監督できる仕組みが必要」と指摘。内閣府の担当者は、国会の非公開会議への提供は可能とした上で、指定や解除のチェックに関し「内閣府の独立公文書管理監が行う」と説明した。
 適性評価のための身辺調査を行う内閣府の組織に関し、自民党の鈴木英敬氏がただしたが、担当者は「職員の専門性や体制は、指定情報や調査の件数の見込みなどを精査し進めたい」と説明。鈴木氏は「時間的余裕はなく、何も決まっていないということでは駄目だ」とくぎを刺した。

法案によると、政府はインフラや重要物資の供給網に関する情報のうち、漏えいが日本の安全保障に支障を与える恐れがあるものを「重要経済安保情報」に指定。その情報を民間企業などに提供する際には、守秘義務契約を結び「適合事業者」に指定する。情報を扱う社員らは身辺調査を受け、セキュリティー・クリアランス(適性評価)で認定を受ける必要がある。(大杉はるか)

 

 

森永卓郎氏が指摘する「原則を覆して戦闘機輸出解禁の背景」

 

 

 
 
3月15日、自民・公明両党が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出を解禁することで正式合意した。これまで日本は、殺傷能力のある武器の輸出を認めてこなかった。憲法9条の下で、日本は専守防衛に徹することになっており、殺傷能力のある武器を輸出すれば、第三国の戦争に加担することになってしまうからだ。

その原則を覆すということは、日本の防衛政策の大きな転換になるのだが、なぜ政府は決断をしたのか。もちろん一次的には、数兆円とも言われる戦闘機の開発費を賄うためには、第三国への輸出による規模拡大が不可欠だということがあるのだが、私はもう一つ背景があると考えている。それは、日本の航空産業の灯を守るということだ。
 
昨年2月、三菱重工は、開発を進めてきたMRJ(後にスペースジェットと改名)の開発プロジェクトからの撤退を発表した。総事業費1兆円超で、自動車と並ぶ主力産業への成長を期待された航空機開発が露と消えたのだ。
MRJの開発が発表されたのは、2008年だった。2014年には試験飛行用の機体が公開され、2015年に初飛行を果たした。2019年度までに、累計の飛行時間は3000時間を超えた。燃費が良く、安全性の高いMRJは、世界の航空会社の注目を集めた。しかし、MRJの納期は6回も延期され、最終的に開発が中止されてしまったのだ。

2013年に三菱航空機の三代目社長に就任した川井昭陽氏は、テレビ愛知の取材に、飛行機を安全に飛ばす技術力が足りなかったと答えている。しかし、三菱重工は、戦後も航空機を作り続けており、航空機開発の技術は十分蓄積されていた。

それが、なぜ大空を飛ぶことができなかったのか。その原因はアメリカが型式証明を与えなかったからだ。MRJは北米市場をメインターゲットにしていたが、どうしても米国からの型式証明取得が必要だったのだが、米国は許可しなかった。

しかし、これはおかしな話だ。ビジネスジェットで今や世界的な評価を得ているホンダジェットには、型式証明が与えられている。ホンダジェットは、アメリカ本土で製造されているからだ。

戦闘機に型式証明は不要だから、今回の共同開発は進むだろう。しかし、アメリカが自衛隊の主力戦闘機としての採用を認めるかは不透明だ。MRJの悪夢を繰り返さないためにも、早い段階からの日米交渉が重要になるだろう。特にトランプ政権が誕生した場合には、米国製戦闘機を押し付けてくるから、要注意だ。