防衛省の異常なイスラエル贔屓
 問題の契約は、防衛省が今年度に本格着手するドローン等の無人兵器に関する研究開発「無人アセット防衛能力」の一環として、IAI社(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)や、エルビット・システムズ社などイスラエルの軍事企業から攻撃用ドローンを導入し、運用実証を行うというものです。今年2月20日に行われた市民団体「大軍拡と基地強化にNO!アクション2023」が行った防衛省交渉において、その事実が明らかになりました。


 

 イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃開始から、来月で半年になります。今月13日時点でガザ保健省によると、少なくとも3万1272人のパレスチナ人が殺害され、そのうち約7割は女性と子どもだとのこと。さらに7万3024人が負傷したとのことです。国際人道法においては、戦争中であっても民間人を殺傷してはならないと定められており、意図的に民間人を攻撃、或いは民間人の被害を防ごうとしないことは、戦争犯罪です。イスラエルによる戦争犯罪が連日行われている中、驚くべきことに、防衛省がイスラエルの軍事企業のドローン兵器を導入しようとしているのです。しかも、イスラエルの軍事企業側は、その製品の「性能」を防衛省にこの3月中に示すとしています。つまり、防衛省のイスラエルの軍事企業からの兵器の導入が、ガザの人々のさらなる犠牲を招くことになりかねないのです。また、防衛省の振る舞いは、流石にイスラエルの戦争犯罪に対し憂慮する姿勢を見せ始めた上川陽子外務大臣の顔に泥を塗るものであり、岸田政権の迷走ぶりを表しているとも言えます。

*本記事は、theLetterでの記事を転載したものです。

〇防衛省の異常なイスラエル贔屓
 問題の契約は、防衛省が今年度に本格着手するドローン等の無人兵器に関する研究開発「無人アセット防衛能力」の一環として、IAI社(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)や、エルビット・システムズ社などイスラエルの軍事企業から攻撃用ドローンを導入し、運用実証を行うというものです。今年2月20日に行われた市民団体「大軍拡と基地強化にNO!アクション2023」が行った防衛省交渉において、その事実が明らかになりました。

 


杉原こうじ(NAJAT・緑の党)
@kojiskojis
<ブログ緊急更新>
【撤回を!】防衛省が無人攻撃機の導入候補にイスラエル製多数を選定!
https://kojiskojis.hatenablog.com/entry/2024/02/25/214212

ジェノサイドと民族浄化を続けるイスラエルから血まみれの殺傷武器を買おうとする超弩級の暴挙。絶対に止めなければいけません💢

経緯と問題点に加え、抗議先も掲載。大拡散希望🍉

 

 それによると、既に防衛省は今年1月から2月にかけて、Heron MK 2(IAI社製)、Sky Striker(エルビット・システムズ社製)などイスラエル産ドローン兵器運用実証を行うとして契約しているとのことです。しかも、防衛省が運用実証を行うドローン兵器7種のうち、実に5種がイスラエル産であるなど、露骨なイスラエル贔屓が目立ちます。防衛省側は入札価格や性能を判断基準にしたとも主張しますが、ガザ攻撃の非人道性や後に述べる日本の外交方針への配慮が足らない点は批判されてしかるべきです。

 


山添 拓 事務所
@yamazoejimusyo
防衛省は「5機種は求める機能、性能を満たす。入札を経て低価格のものとして契約した」と認めました。「ガザで実戦に投入され実証報告がされることもあるのでは」と質すと、同省は「現時点でそうした実験があるとは確認していない」と述べるのみ。#山添拓 議員は契約をやめるよう強く迫りました。

 

 

 本件について、今月13日、参院外交防衛委員会で山添拓議員が質問。イスラエル軍事企業が今月中にドローン兵器の実証結果を防衛省に報告する見込みであることを指摘した上で、「ガザ攻撃の実戦に投入され、その結果を報告してくるということが考えられるのではないか」と追及しました。これに対し、防衛省・防衛装備庁の久沢洋調達事業部長は「そのような実証実験を行われるということは確認しておりません」と答弁、事実上、はぐらかしたのですが、仮にこの答弁の通りだとしても、日本がイスラエル軍事差企業の兵器を導入することが、ガザの被害を助長することならないかの確認をしていないこと自体が無責任だと言えます。とりわけ、実質的な軍事組織である自衛隊を管理する防衛省が、戦争犯罪に対する問題意識が低いことは極めて由々しきことです。

 

〇日本の外交に深刻な捻じれ

この時期に防衛省がイスラエルの軍事企業の兵器を導入することは、ガザ攻撃に対する日本の外交方針にも深刻な矛盾を生じさせています。上述の13日の国会質疑で山添議員は上川外相に対し、昨年12月のガザ停戦を求める国連総会決議に日本が賛成した理由を質問しました。これに対し、上川外相は

「我が国は昨年12月初頭の戦闘再開以降、ガザ地区 の人道状況がさらに深刻化していた中において、人道的観点から再度の戦闘休止や停戦を求める声が一層高まっていたこと、また決議案がグテーレス国連事務総長が国連憲章第99条に基づき発出したことを踏まえて、我が国も総合的に判断をし、賛成表を投じた」

 と答弁しています。さらに、国際司法裁判所(ICJ)が今年1月26日に、イスラエルに対しパレスチナ自治区ガザ地区でのジェノサイド(大量虐殺)を防ぐためにあらゆる対策を講じるよう命じたことについても、上川外相は同27日に談話を発表、「ICJの命令は当事国を法的に拘束するものであり、誠実に履行されるべきもの」だと述べています。

 つまり、外務省としては、イスラエル軍によるガザの民間人への無差別攻撃を憂慮し、ICJの「ジェノサイドを防げ」という命令を支持しているのです。その最中に防衛省がイスラエルのドローン兵器の導入することは日本の外交方針に反していますし、イスラエルに対しても「日本政府はガザでの虐殺を懸念しているように振舞っているが、実際には口先だけ」「ICJの命令も軽視している」という受け取られかねない、非常に問題のあるメッセージを送ることになります。これは、人道的・倫理的に許されないことであることは勿論、防衛省は上川外相の顔に泥を塗ったとも言えるでしょう。また、「次の首相」として期待が高まっているとの世論調査もあると報じられる上川外相が本件について、どう対応するのかしないのかも、問われるところです。

 


〇「ガザ虐殺に加担するな」との批判

 ガザ虐殺を防げというICJの命令とこれを支持する上川外相の談話は、少なくとも民間レベルでは重く受け取られているようです。伊藤忠商事はその子会社である伊藤忠アビエーションが、イスラエル軍事企業大手エルビット・システムズとの協力関係の「覚書」を昨年3月に結びましたが、今年2月にその覚書を「終了」させると発表しました。その理由として伊藤忠商事が会見で明言したのが、ICJ命令と上川外相の談話なのです。

 上述の防衛省との交渉を行った市民団体のメンバーの杉原浩司さんは「民間企業が協力覚書の段階で関係を断ったにもかかわらず、防衛省が、こともあろうに虐殺を支えている軍需企業の武器を税金で購入するとは言語道断。まるでウクライナへの侵略戦争を続けるロシアの武器を買うに等しい暴挙であり、これほど露骨な虐殺への共犯行為はない」と憤ります。

 上述の国会質疑でも、山添議員は「そもそも専守防衛の下で攻撃用ドローンの導入そのものが問題だと考えるが、ICJでジェノサイドが指摘されるタイミングでイスラエル製兵器の導入を決め、イスラエルの軍事産業を支える、これは絶対にやってはならない」と防衛省の姿勢を追及しました。

 

 防衛省はこうした市民や野党からの批判に真摯に耳を傾けるべきでしょうし、また岸田政権としても、防衛省の振る舞いによって日本の外交が、事実上、「二枚舌外交」となってしまっていることへ対応すべきなのでしょう。

(了)

 

 

「外相の無駄遣い」参院でも 上川陽子氏に質問したのは2日間で1人、わずか4分の答弁

 
 
令和6年度予算案を巡る参院予算委員会の審議でも上川陽子外相が質問を受けることなく、閣僚席で過ごす時間が目立っている。岸田文雄首相と全閣僚が出席した参院予算委の3月4、5日の基本的質疑で、上川氏が答弁に立った時間は計4分に満たなかった。外交に充てられる時間を空費したともいえる。日本維新の会や国民民主党などは国会の運営を見直す必要があるとの立場だが、自民党や野党第1党の立憲民主党にそうした機運はない。

参院予算委の基本的質疑では、2日間で16人の与野党議員が質問に立った。だが、上川氏に質問したのは石垣のり子氏(立民)一人だけだった。石垣氏は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対する資金拠出の再開などガザ情勢をめぐり上川氏に3問質問。上川氏が答弁した時間は合計で3分50秒だった。
 
産経新聞社の計算では、2日間の予算委の開会時間は計13時間52分だったが、上川氏はそのほとんどの間、質問を受けることなく参院第1委員会室で過ごしたことになる。
衆院の状況も大差なく、岸田文雄首相と全ての閣僚が出席した2月5~7日の衆院予算委の基本的質疑で、上川氏が受けた質問は3日間で2問。計21時間の質疑時間の中で、上川氏の答弁は約7分だった。

「空費」した時間があれば、各国外相との電話会談や駐日大使との面会といった外交ができる。国会が外相を「無駄遣い」し、外交を制約しているといえる。

衆参予算委の基本的質疑への全閣僚の出席は国会の慣例で、国会法などに明文規定があるわけではない。与野党が申し合わせれば運営方法の変更は可能だ。

衆参予算委の基本的質疑の現状について、国民民主の榛葉賀津也幹事長は15日の記者会見で「見直さなければならない。上川外相には外交をやってもらわなければならない」と述べ、答弁者として副大臣を活用すべきだとの考えを示した。その上で「ただ、野党第1党を含めた多くの皆さんの理解なくして国会改革はできない」と付け加えた。

(原川貴郎)