新NISAは「おやめなさい」と断言した荻原博子が警告する「投資すれば豊かな暮らしができる」という国の「大ウソ」

荻原 博子
 
すでに、その経済循環は崩れ、「上」と「下」がはっきり二極化しているのが日本経済だ。
こうした中で、多くの人に夢を抱かせているのが、「新NISA」に象徴される「投資」だ。国を挙げて「投資をすれば豊かな暮らしができる」と大宣伝している。
だが、これまで述べてきたように、日本経済は「アベノミクス」で完全に二極化し、さらに歪んだ経済政策を続けたために、日銀は3つの大きな爆弾を抱えることになった。
「投資」するのはいいけれど、その前に、今の歪んだ経済状況について、しっかりと理解し、日銀爆弾が炸裂しても傷を負わない逃げ道だけは、しっかり確保しておくべきだろう。

 
 
「新NISA元年」となった2024年は空前の株高に沸いている日本の市場。だが、〈話題の新NISA、実は「落とし穴」だらけ…荻原博子が「おやめなさい」と断言するワケ〉などでブームに乗った投資に警鐘を鳴らす経済ジャーナリストの荻原博子氏は、今の株高の先には大きな「日銀リスク」が待ち受けていると指摘する。それはひとつではなく、「金利リスク」「為替リスク」「株価リスク」という、3つの「爆弾」を抱えているというのだ。

〈「株価4万円超え」に沸く日本株市場が一気に崩壊するかもしれない…日銀が抱える「3つの爆弾」〉に続いて、その内実を詳にしよう。

円安は日本経済を潤すのか
2つ目の爆弾は、「円安」。

「円安」は、庶民には厳しく、輸出企業は濡れ手に粟で儲かる環境と言える。これも、黒田日銀の「異次元緩和」で生み出されたものだ。

「異次元緩和」でじゃぶじゃぶに流された資金は、金利が上がらない日本から、コロナが終わって金利が上がりはじめた海外に流れ出した。日本では金利ゼロでも、アメリカなら4〜5%の金利がつく。そのため、円が売られてドルが買われて「円安」が進む。結果、企業業績はよくなる。


それがわかっている外国人などが先回りして日本の株を買い、日本の株高が始まった。
ただ、「円安」は本当に日本経済を潤すのか?

いまだに輸出産業が儲かれば、日本経済が良くなると信じている人は多い。

だが、たとえばトヨタの場合、「円安」になっても、日本から出荷する車の台数はそれほど増えない。なぜなら、すでに世界各地で現地生産になっているからだ。

車の出荷台数は増えなくても、為替で1ドル130円のものが150円になれば、円換算での儲けは約2割増える。まさに濡れ手に粟だ。

庶民の家計は疲弊している
ただ、国内の車の出荷台数が増えているわけではないので、雇用も生まないし設備投資も増えない。

「円安」は、日本の輸出企業を潤し、企業業績にはプラスだが、かつてのようにそれが日本経済全体を潤すことはない。

「円安」は、いっぽうで庶民生活を疲弊させる。日本は、小麦やガソリンをはじめとする生活費必需品の多くを海外から輸入している。その輸入品が、コロナが終わって世界中で需要が高まる中で高騰した。しかも、日本ではそこに「円安」という価格を押し上げ要因も加わっているので、さらなる物価上昇となった。

2月15日に発表されたGDP速報値が2期連続マイナスで、ブルームバーグやBBCなど世界メディアは相次いで、日本は景気後退に入ったと報じた。

米ドル定期6ヶ月 年8.00% 税引前
ソニー銀行
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最終的には3月11日公表の確報値では、設備投資が改善されてことでマイナス0・1%(年率0・4%)プラス0・1%(年率0・4%)と好転したことで、かろうじて世界的に景気後退の指標とされている2期連続マイナスは免れた。だが、中身をみると、景気後退としか言えない状況になっている。

なぜなら、GDPの半分以上を占める「個人消費」が、速報値のマイナス0・3%からさらに減ってマイナス0・4%となり、実体経済を根底から支えるはずの個人消費の弱さが際立つことになったからだ。

庶民は疲弊し、財務省は消費税収入が過去最高で高笑い。物価高は、庶民の家計を直撃するが、政府の財政は潤うことも忘れてはいけない。

円安は最悪のカードに
庶民の家計は、コロナで疲弊し、物価高で疲弊しているが、2022年の国の税収は、前年度比6.1%増の71兆1374億円で、3年連続で過去最高を更新した。企業業績が回復して法人税収が膨らんだほか、消費税収が物価高によって過去最高となったからだ。

「円安」によって、企業も政府も大儲けしている中で、どんどん先細りになっているのが庶民の家計だ。

総務省が8日に公表した1月の家計調査では、2人以上世帯の消費支出は前年同月を6・3%下回り、11ヵ月連続の消費減となっている。物価高の中で、物価に見合う賃金上昇が見られず、実質賃金も22ヵ月で減少している。

下がっているのは実質賃金だけでなく年金も同じで、「マクロ経済スライド」という年金のち給付水準を下げる方式で支給されるために、引き上げ率が低く抑えられ、結果的に物価高に追いつかない実質目減りとなっている。
 
「円安」は、個人消費を直撃し、消費を減らす最悪のカードとなっている。

この「円安」を止めるには、黒田「アベノミクス」の置き土産の「異次元緩和」から早く抜け出さなくてならないが、甘い汁を吸ってきた企業や政府、そして何より「円安」の追い風で4万円台を一時突破した株式市場にとっては、痛みを伴う大きな爆弾となる。

大株主・日銀はこれからも買い続ける?
日経平均を押し上げる、日本の大株主「日銀」。

3つ目の爆弾は、「アベノミクス」に協力して、日銀が買い続けてきた67兆円もの「日本株」だ。

安倍内閣は株価連動内閣とも言われ、景気の良さを演出するために、黒田日銀にETF(上場投資信託)をとおして積極的に株を買わせ、株価を維持させてきた。

結果、日銀は67兆円もの株を保有する、日本で一番の大株主となっている。なんと、日銀が10%以上の株を持つ企業がプライム市場には72社もある。

たとえば、アドバンテスト株は、23年3月末で日銀の間接保有額が5968億円で25・6%、TDKは3742億円で20・4%、あのユニクロのファーストリテテイリングに至っては、1兆8532億円もの株を持ち保有比率は20・3%。そのほか、太陽誘電、東亜鉛、日東電工、トレンドマイクロ、東京エレクトロンなど、20%近い株の保有者が日銀という状況だ。

大株主といっても、日銀は経営には口を出さない物言わぬ株主だが、「力不足なら退場」がルールの資本主義の中では、国が安定的な大株主というのは、あり得ない状況だ。投資家も、「株が下がっても日銀が買うから大丈夫」というモラルハザードに陥っている。やってはいけない領域に、安倍政権は日銀を踏み込ませた。

日銀が大株主になる前の日本の株式市場では、良くも悪くも株価が将来示す羅針盤となっていた。みなさんも、株価が上がれば半年後には経済が良くなり、株価が下がれば半年後に経済が悪化してくるといった経済のセオリーを学んだことがあるだろう。

だが、日本だけはこの経済のセオリーは通用せず、株価と景気が完全に切り離されてしまっている。

こうなると大変なのは、黒田日銀の置き土産の67兆円もある株の処分だ。なぜなら、これだけ巨額になると、すぐに処分するというわけにはいかないからだ。

日銀が含み損で債務超過に陥る日
植田日銀総裁は、2月6日の衆議院予算委員会で、「上場投資信託(ETF)の買い入れについて、2%の物価目標の実現が見通せるようになったときには他の緩和手段も含めて継続することが良いか検討する」と述べるにとどめている。

そう言うしかないだろう。なぜなら、実際に処分しなくても、「日銀が株を売り始めた」という噂が出ただけで、株式市場が暴落する可能性があるからだ。

かといって、現在持っている株は、ETFもあり、こちらは信託報酬などのコストがかかり、これだけで年間500億円の手数料がかかると言われている。

しかも、持っている間に株が暴落すると、日銀の財務内容を悪化させることにもなりかねない。2020年3月9日、日経平均が取引時間中に2万円の大台割れとなった。日銀が、株の含み損で債務超過に陥るのではないかと噂された。もし、そうなったら、日本の中央銀行としての信頼は地に落ち、日本が売られて「円安」になり、「金利」も日銀がコントロールできない状況になるかもしれない。

そうしたリスクを減らすためにも、黒田日銀の置き土産の膨大な株を早く処分しなくてはならない。

だが、足元の景気は改善しているかに見えるが、消費はどんどん冷え込み、その先は不透明。動くに動けないのだろう。

日本経済の「上」はピーカン、「下」は土砂降り。

こうした中で、日銀が期待を寄せているのが、春闘による賃上げ。

人手不足のために、今年の春闘では一部の大手企業ではかなりの数字が出ていて、3月13日の集中回答での賃上げ率は、サントリーHD約7%、イオンリテール6・4%など、満額回答も出て来ている。

ただ、これが日本の労働者の7割が務める中小零細まで浸透するかといえば疑問。なぜなら、日本企業では大手が下請けの利益を吸い上げる状況が続いているからだ。

「上」は好調でも「下」は悲惨
こうした中で、中小零細企業にとって人件費のアップは廃業、倒産に結びつき、東京商工リサーチによれば、2023年の企業倒産(負債1000万円以上)は、前年の6428件から大きく伸びて8690件となった。しかも今年4月には政府のゼロゼロ融資(コロナ下の無利子無担保融資)の返済のピークが来るために、倒産件数はさらに増えて1万件を超えるとも言われている。

「上」は好調でも、「下」は悲惨という二極化が進む経済状況になっている。

そして、今の日経平均は、好調な「上」の経済の象徴なのだ。

日本には178万社の企業があり、従業員10人以上の企業だけ見ても44万社ある。このうち上場している企業が約4000社。日経平均に採用されている企業はその内のわずか225社だ。本来なら、日経平均を日本企業全体のメルクマールとするのには、かなり無理があるだろう。

だが、以前の日本経済には、日本を代表するような企業が儲かれば、半年後には他の企業も儲かって経済全体が良くなるというセオリーがあった。大手企業の従業員の給料が上がれば、中小、零細企業にまでそれが波及するという期待があった。そして、政府も未だにそう言っている。

だが、すでに、その経済循環は崩れ、「上」と「下」がはっきり二極化しているのが日本経済だ。

こうした中で、多くの人に夢を抱かせているのが、「新NISA」に象徴される「投資」だ。国を挙げて「投資をすれば豊かな暮らしができる」と大宣伝している。

だが、これまで述べてきたように、日本経済は「アベノミクス」で完全に二極化し、さらに歪んだ経済政策を続けたために、日銀は3つの大きな爆弾を抱えることになった。

「投資」するのはいいけれど、その前に、今の歪んだ経済状況について、しっかりと理解し、日銀爆弾が炸裂しても傷を負わない逃げ道だけは、しっかり確保しておくべきだろう。
 
 
 

話題の新NISA、実は「落とし穴」だらけ…荻原博子が「おやめなさい」と断言するワケ

 
NISAのポイントはやはり「非課税」
2024年から始まる「新NISA」。ネット証券大手のSBIホールディングスや楽天証券などは、すでに口座数が1000万を超えていて、個人の関心も高まっているようです。

「NISA」とは、国がつくった非課税で投資ができる口座。通常の投資だと、儲かった額に対して20%ほどの税金(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0・315%の合計20・315%)がかかります。ところが、「NISA」の口座にある投資商品は、この税金がかからずに非課税となります。

たとえば、100万円で買った株が110万円で売れたとすれば、10万円の利益となり、通常の証券口座では、この利益の中から2万315円の税金が引かれ、実質的な手取りは7万9685円。一方で「NISA」の口座に入っている投資商品では、非課税のため10万円がそのまま実質的に手元に残る、という仕組みです。

「NISA」には、これまで「一般NISA」と「つみたてNISA」という2種類がありました。

「一般NISA」は、上場株式や投資信託などを買っていくというもので、年間に使える金額の上限が120万円。また非課税保有期間は5年でした。つまり、保有限度額は600万円となります。
 
一方の「つみたてNISA」は、金融庁が定める一定基準を満たした投資信託などを文字通り積み立てで買っていくというもの。年間の上限は40万円(保有限度額800万円)で、非課税保有期間は20年でした。

この「NISA」の投資額と非課税保有期間が、表のように2024年1月から広がります。これが「新NISA」と呼ばれる制度です。

現行の「NISA」の大きな欠陥は、保有期間が限られていること。このため運用がうまくいけばいいけれど、損が出るとダメージを防ぎようがないということでした。

新NISAのメリットとは
たとえば100万円で買った株が50万円になってしまったら、通常の証券口座なら株価が100万円に戻るまで「塩漬け」にして、待ち続けることが可能です。評価損は抱えることになりますが、損を確定させることは避けられます。

ところが「一般NISA」を使って100万円で買った株は、口座に5年間しか置いておくことができません。一度も100万円を超えず、5年後に50万円だったとしても、そこで売るか、新しい口座に移しかえなくてはなりませんでした。

しかも、移しかえた場合、その時の株価が取得価格となります。100万円で買って50万円になった株を一般の証券口座に移すと、取得価格が50万円ということになってしまいました。

このため、この株がやっと100万円に戻ってよかったと思っても、50万円の株が100万円に値上がりしたと見なされてしまうのです。

この場合、利益が50万円出たという扱いになり、50万円の20%で10万円の税金がかかります。元々は100万円で買った株を100万円で売ったわけですし、通常の証券口座ではかからなかった約10万円の税金を「NISA」では支払わなくてはならないということになっていたわけです。

けれど、「新NISA」では、口座が恒久化され、保有期限が無期限となったため、こうした「NISA」の欠陥は解消されました。これは大きなメリットと言えるでしょう。

だとすれば、すぐにでも「新NISA」を始めるべきでしょうか?
 
「新NISA」のメリットについては、金融庁をはじめとして各銀行、証券会社でも山のように出ていていますから、メリットについてはそちらにお任せし、あえてここではデメリットについて書きたいと思います。
 
「制度からくるデメリット」
「新NISA」には、「制度からくるデメリット」と、「思い込みによるデメリット」の大きく2つのデメリットがあります。

まず、「制度からくるデメリット」について見てみましょう。

「新NISA」の「制度としてのデメリット」は、「損」に弱いということです。投資をする方は、少しでも損を減らすために「ナンピン買い」や、「損益通算」「損失繰り越し」などを駆使します。けれど、「新NISA」では、こうした手法をフルには使えません。

1.「ナンピン買い」が難しい

「ナンピン(難平)買い」とは、保有している銘柄の株価が下がったときに、さらに買い増しをして平均購入単価を下げる買い方。たとえば、100万円の株を1株買い、これが50万円になってしまったら、さらに100万円で2株買えば、平均取得価格は約67万円になりますから、100万円になるまで待っていなくても、株価が67万円以上になったら売れば利益が出ます。

この株が、さらに30万円になってしまったとしたら、90万円で3株買えば、トータル290万円で6株持てますから、1株あたりのコストは約49万円。つまり、株価が49万円以上になると、利益が出ます。

ただ、「新NISA」では、1年間に240万円までしか株を買うことができず、同じように「ナンピン」で取得コストを下げようと思っても、230万円で4株しか買えない。この場合、株価が58万円以上にならないと利益が出ません。

しかも、「新NISA」の投資の枠は240万円なので、すでに他の投資商品を買っていたら、その年はどんなに株価が下がっていても、買い増すことはできません。

これでは、株式投資の自由度があまりに低いと言わざるをえません。「新NISA」のほかに普通の証券口座を持つという人もいるでしょうが、そうなると、「損益通算ができない」「損失繰越ができない」などのデメリットも出てきます。

2.「損益通算ができない」

「損益通算」とは、赤字部分と黒字部分を相殺することを言います。

たとえば、「新NISA」の投資枠は小さいので通常の証券口座も持つという場合、A社の株を「新NISA」で100万円で買い、B社の株を同じく通常の証券口座で100万円買ったとします。この場合2つの株を売るときに、A社の株が70万円になってしまい、B社の株が130万円に上がっていたら、通常の証券口座なら赤字から黒字を差し引きして儲けはゼロにすることができるため、税金を納めなくてもいいということになります。

ところが、A社の株が「新NISA」の口座にある場合には、この「損益通算」ができないので、B社株の利益の30万円に対して、約6万円の税金を払わなくてはなりません。
 
3.「損失繰り越しができない」

「損失繰り越し」とは、株取引で出た損失を、翌年以降最長3年間、繰り越しすることができるというもの。例えば、200万円で買った株を100万円で売らなくてはならなくなったら100万円の損になりますが、通常の口座ではこの損は翌年以降に繰り越されます。

ですから、次の年に50万円の利益が出て、その次の年にまた50万円の利益が出たとしても、損している100万円を最長3年間は使えるので、儲けに対して税金を支払う必要は無くなります。

もちろん「新NISA」の口座でしか投資しない人は「損益通算」も「繰り越し控除」も必要ないので問題はありませんが、「新NISA」の投資枠だけでは本格的な投資をするのには使用出来る枠が小さいので、別途に証券口座を持っている人も多いでしょう。そういう人にとっては、デメリットとなるのは間違いありません。
 
思い込みによるデメリット
4.「口座を一人一口座しか持てない」

「新NISA」の口座は、一人一口座しか持てません。また、その年に売買できる金融機関は一社だけです。金融機関を変えることもできますが、かなり手続きが面倒で、一年に一度しかできません。気に入らない商品だったので売ってしまったとしても、翌年まで待たなくては、会社を変えてまた買うということはできないのです。

しかも、投資枠が空いていたとしても、次の年に持ち越せません。例えば、「成長投資枠」の240万円で目一杯に株を買い、途中で100万円分を売って枠が100万円できたとしても、その100万円分の枠は、次の年には持ち越せません。次の年に240万円プラス100万円の買い付け枠ができるわけではないのです。従って年間240万円という枠をオーバーすることはできません。

枠があってオーバーすることができないというのは、タイミングを見て売ったり買ったりといった、機動的な売買で儲けたい投資家にとっては不便で、結果的に買ったらずっと持っているような投資商品に偏っていくことになりかねません。

次に、思い込みによるデメリットも大きいように思います。

なぜなら、金融庁による「新NISA」のPRを見ていると、投資というのは長期で資産形成をしていくもという刷り込みが強く、「売り買いで機動的に儲けていく」という投資の本質が薄められているからです。

つまり、本格的に株を売り買いするような投資家向きではなく、あくまで投資初心者に「これで老後は安泰」という安心感(幻想と言ってもいいかもしれません)を与えながら投資させていくというのが狙いだからです。

ですから、投資初心者であればあるほど「新NISA」がお題目のように唱えている「長期投資」はいいものだという思い込みに陥りそうですが、気をつけたほうがいいと私は考えています。
 
シミュレーション通りにいくのか
金融庁の「NISA特設ウェブサイト」には、「資産運用シミュレーション」という「NISA」で積み立をしていくと、将来いくらくらいになるのかということを計算するコーナーがあります。

これをやってみると、いくら積み立てれば将来どれくらいに増えるかということが表示されます。投資期間が長ければ金額が大きくなるため、投資初心者が見たら、すぐにでも「新NISA」を始めなくてはと思うことでしょう。
 
けれど、そんなにうまくいくものでしょうか。

そもそも「積立」という言葉から「積立預金」イメージする人が多のではないでしょうか。そういう人にこんなグラフを見せたら、NISAさえはじめれば必ず儲かると錯覚してしまいかねません。

しかし、忘れてはいけないのは、投資である以上、こんな綺麗な右肩上がりはありえないということ。投資には、値下がり、つまり右肩下がりもあり得るのです。

図は、日経平均の30年間の推移ですが、それこそ山あり谷あり。一本調子で上がっていくことなどありえません。

「新NISA」で選べる投資信託には、インデックスファンド(日経平均などの指数に値動きが連動する商品)が多いですが、仮に経平均が3万8915年の時に日経平均のインデックスファンドを買った人は、5年年後には半額近くなり、2009年3月には、7054円を付けています。ピーク時の5分の1以下です。

一方10年前に買った人は2倍になっています。

インデックスファンドでも、これくらい激しい値動きがあるのですから、「長期投資なら安全に増える」という幻想は抱かないほうがいいでしょう。