「ぬるま湯の時代終わった」「急激な変化ない」日銀政策変更に経済界

 
ぬるま湯に浸かってるのは経団連や一部の上級国民だけです!
 
 
 日本銀行が脱・異次元緩和へと踏み出したことについて、経団連の十倉雅和会長は19日、「ぬるま湯の時代が終わった。そこから出て歩き出すということだ」と語り、持続的な経済成長に向けた「正念場に入る」との認識を示した。

 記者団の質問に答え、市場との対話も含めて「非常にスムーズな政策判断だった」と歓迎した。ただし、長く続いたゼロ金利政策はカンフル剤だったと振り返り、「基本的に金融政策はインフレ抑制のための政策であって、経済成長を促すような異なる役割を過度に長く負わせるのは良くない」とも指摘した。

 関西経済連合会の松本正義会長は「デフレ脱却への歩みを着実に進めていることを示すものだ」と金融政策の転換を評価した。日本商工会議所の小林健会頭は「当面は緩和的な金融環境が続くとされており、市場や経済に大きな影響をもたらす急激な変化はないと考えている」とのコメントを出した。

 

日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」

 
この記事を読んでいると、政権側に立った人の記事は何とも別世界で論しているようにしか見えない。この様な層の仲間入りをしたい人が、株価に夢中になりどうすれば多くに財産を増やせるかだけに躍起になっていくのだろうなあ~愕然としながら読んだ記事であった。
 
 
 日本銀行が2024年3月18日、19日に開催された金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の変更に踏み切った。利上げは17年ぶりであり、長く続いたゼロ金利政策がいよいよ終わりを告げる。今回の決定は、大規模緩和策によって激しく歪んだ日本の金融システムを正常化するための、長く険しい道のスタートラインに過ぎない。金利の上昇によって、むしろ国民生活への逆風は強くなる可能性が高く、ここからがむしろ本番といえるかもしれない。
 
「インフレ」「デフレ」は悪いことなのか
 日銀は2013年4月から市場に資金を大量投入して国債を買い上げ、金利をほぼゼロに抑える大規模緩和策を実施してきた。短期金利の調整だけでは不十分と判断した日銀は、本来、政策の対象外である長期金利にもその範囲を広げ、「イールドカーブ・コントロール」と呼ばれる長短金利操作に染めた。

 短期間に大量の資金が提供されれば、市場にはインフレ期待が生じる。インフレ期待が生じれば、多くの企業が設備投資などを活性化させ、これが実体経済にプラスの効果を与えると、当時の安倍政権は考えていた。安倍政権は「デフレ脱却」を政治的なスローガンとして掲げていたが、本来、デフレ脱却という言葉は政治的スローガンにはなりえない。

 なぜなら、インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。

 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス(=大規模緩和策)というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう。

デフレだから不景気になったわけではない
 上記で説明したように、当初、日本政府はインフレ期待に働きかけることによって設備投資を起点とする持続的な成長を実現しようと試みた。経済学的な一般論として市場にインフレ期待が醸成されれば、現金保有は相対的に不利になるため設備投資が増加する可能性が出てくる。

 だが、それは経済全体が健全であればの話であって、将来に対する不安材料が大き過ぎたり、経済が機能不全を起こしている状況では、企業は設備投資に資金を回さない。不動産や外貨など安全資産に資金を退避させるにとどまり、インフレだけが進んで、実体経済はまったくよくならないというシナリオが濃厚となる。

 筆者を含め、一部の専門家は、経済全体の仕組みを変えていく政策とセットにしなければ、単に物価上昇だけが進み、景気は良くならず、国民生活が苦しくなる可能性について指摘してきた。

 だが当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった。

 ちなみに、不景気の時にはモノが売れず、物価が下がりがちなので、デフレになりやすい。したがって景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。

 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう。
 
本当の「円安最大の原因」
 だが多くの国民が、「物価が上がって景気が良くなる」という意味で、「デフレ脱却」という言葉を理解しただろうし、ひょっとすると安倍氏自身も、そう思っていたかもしれない。さらに言えば、今でも大半の人がデフレ脱却=好景気と理解しているのではないだろうか。

 だが何度も説明しているように、インフレ、デフレと景気が良いことは何の関係もなく、私たちの生活水準向上とも関係がない。景気が良くならなければ、私たちの生活水準も上がらないが、現状では景気が良くなっていない以上、私たちの生活も向上していない。むしろインフレによって物価が上がり、逆に生活が苦しくなっているのではないだろうか。

 アベノミクスによる大規模緩和策は、世界でも突出した水準であり、失敗した際に被るリスクも超ド級である。ある意味で日本人は世界の中で自ら先頭に立ち、失敗した場合のリスクが致命的に大きい政策を、危険を顧みず実施するという、大変な役割を買って出た。

 想定されていた通り、十分な成果は得られず、600兆円という空前絶後の国債の山という時限爆弾のみが残ってしまった。過去2年、日本円は1ドル=100円台から150円台まで、一気に3分の2まで減価している。

 メディアでは日米の金利差が原因と報じているが、厳密にいえば金利差で為替が動くことはありえない。最終的には日米のマネー供給量の違い(とそれにともなう物価見通し)が円安最大の原因であり、エベレストのように積みあがった600兆円の国債の処理ができていないことが、激しい円安を招いているのだ。

 GDP(国内総生産)と同規模のマネーを短期間で市場に大量供給しているにもかかわらず、それを吸収する経済活動の拡大が見込めない以上、当然のことながら、その大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。

 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった。
 
正常化のタイミングは今しかない
 日銀の本音としては、すぐにでも大規模緩和策をやめ、金利を引き上げないと日本経済が最悪の事態を迎える可能性があり、このタイミングでの政策転換以外、選択肢など存在しなかっただろう。

 だが、多くの日本人はこうした現状について理解しておらず、景気にとって逆風となる金利の引き上げを実施することには大きな政治的ハードルを伴う。

 しかし「神風」といってしまうと不謹慎かもしれないが、今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。

 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。

 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう。

 つい最近まで、自民党の安倍派を中心に、日銀のマイナス金利解除について「アベノミクスを否定するのか!」といった意見が出され、日銀の行動を強くけん制していた。だが、裏金問題が政権を揺るがす事態にまで発展し、今の自民党内にアベノミクス云々を議論している余裕はない。

 逆に言えば、今のタイミングしか日銀にとっては正常化に踏み切ることはできず、ここで失敗すれば半永久的にタイミングを失う可能性が高かった。その意味では、日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。

 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない。

加谷 珪一
 
 

日本株大混戦へ…!「円高×株安」の連鎖がはじまった今が買い!「大乱調相場」を生き残るプロが厳選した「珠玉の9銘柄」を一挙公開する!

 
日銀「緩和終了」で乱調相場へ
 好調をつづけてきた日本株だが、足元で調整含みの「乱調相場」の様相を呈してきた。

 前編『「金融緩和終了」で起こる「円高×株安」の大乱調相場…! 日銀・植田総裁の「決断」を機に「下がらない! &期待大!」の超優良株を探してみた! 』で指摘したとおり、背景にあるのは、米FRBの利下げ期待と日本銀行のマイナス金利撤廃などの引き締め懸念だ。そのため、円高ドル安が進行しやすい地合いとなっており株価は乱調をきたしている。
 
 これまで日本株の上昇の原動力であった円安から、日米の政策転換を機に円高へのトレンドへと流れが変化するため、需給も同様に逆流が始まるのは自然なことだ。

 今後は、突発的な急落には注意が必要だろう。

 では、このような相場環境では、投資自体を避けるべきなのかというと、そうとは言い切れない。これまで相場全体を押し上げたのは大型株であり、今後は放置されてきた銘柄に光があたりはじめる環境となる可能性が高いからだ。

 そんな中小型株は、これまでの上昇相場から大きく出遅れていることもあり、大幅な下落リスクは小さく、かつこれからはじまる乱調相場の中で買いが入り、大きく上昇することも期待できる。

 そこで今回、筆者は様々な厳しい条件を課して、中小型株996銘柄から珠玉の銘柄を検討した。結果、抽出された銘柄はたったの「9銘柄」だ。そこから浮かび上がるのは、これからの乱調相場を悠然と生き残り、さらに将来性も抜群の「鋼の鎧」を身にまとった銘柄である。

 以下、その抽出方法を克明に解説し、注目するべき珠玉の9銘柄を公開していこう。

996銘柄の中から選び出された「希少銘柄」
 足元の「乱調相場」の地合いでは、どのような中小型株が魅力的といえるのだろうか。いくつかの切り口は存在するが、今回はシンプルかつ強固な要素を組み合わせて銘柄を選定していくことにする。

 まず、前提となる中小型株の定義だが、TOPIXを構成する2149銘柄の現時点の時価総額の中央値が590億円程度であるため、500億円がざっくりとした大型株と中小型株の境界線となってくるだろう。現在の該当数は996銘柄だ。

 続いては、需給面だ。前述の通り、日経平均株価が大きく下落する際に、中小型株は底堅さという特性を存分に発揮することが強みである。

 しかし、当然ながらすべての中小型株がその強みを保有しているわけではないため、その点を定量的に検証していく必要があるだろう。
 
波乱相場に強い「防御力」
 今回は、単純にコロナ・ショックから反転を始めた2020年3月末から現在に至るまでの期間で、日経平均株価が1%以上の強い下落を見せた日のみに限定して各銘柄の騰落率を平均し、下落相場に対する耐性値を観察することにした。

 結果を言ってしまうと、残念ながら日経平均株価が1%を超えて下落する相場環境において、平均騰落率がプラスとなるやんちゃな銘柄は存在しなかった。しかし、マイナス1%の基準の半分のマイナス0.5%以上であれば、市場の下落の半分以下しかダメージを受けないという高い「防御力」を有した銘柄といっていいだろう。

 また、そういった需給面の耐性があっても、ただでさえ事業リスクが高い中小型株について、業績を完全に無視することはさすがに危険だろう。そこで、気休め程度ではあるが、今期予想で営業増益が予想されているという点も条件に加えておきたい。

 ちなみに、中小型株はアナリストにカバーされていない銘柄の方が多く、長期のコンセンサス予想が取得できないために今期の会社予想を使用して営業増益率を算出している。

注目したい「配当銘柄」
 さらにもう一点、見ておくべき補強要素がある。それが、配当利回りだ。なぜ配当利回りを現在のような相場見通しの不安定な局面で注目すべきなのかといえば、配当は「下方硬直性」が強いことで知られるからだ。配当は、利益の減少に比して減配されにくいことが定量的に分かっている。

 図:TOPIXの一株当たり利益と一株当たり配当の推移

 経営者の視点で考えても、減配や無配転落は株主に対する裏切り行為であり、発表時に株価が急落することは当人たちも認識していると思われ、安易な決断ができないという事情もあるだろう。

 そのため、株価が下落したとしても、その利回り分の配当は確保できる可能性が高いため、高配当利回り株はしばしばリスク回避時の資金の逃避先として好まれる場合がある。

ディフェンシブは高配当から
 加えて、逆張りの投資家、つまり株式市場の下落時に買い向かって株価を下支えする投資主体は、言うまでもなく個人投資家である。そして、この個人投資家は、高配当利回り株へ好んで投資をすることで知られている。

 特に、今年から新NISAの開始に伴って新規の個人投資家も急増し、彼らの買いの需給が少なからず株式市場に影響を与えていることは疑いないだろう。

 このことから、配当利回りが一定の水準に達しているかを見ることが、その銘柄の防御力をさらに高めることにつながるだろう。前述のように、中小型株は成長過程にある企業が多く、事業投資を優先せざるを得ない事情もあり、大型の成熟企業と比較して十分に株主還元が実施できない銘柄も存在する。

 そのため、基準としては市場平均のレベルを上回っていれば十分な水準と判断して良いだろう。現在、TOPIXの予想配当利回りは2.3%程度なので、これ以上の配当利回りであれば中小型株としては魅力的な水準感だ。

一挙公開!波乱相場に圧倒的に強い「珠玉の9銘柄」
 そして、中小型株996銘柄のうち、この厳しい条件を満たす「鋼の鎧」を身にまとった強固な銘柄は、わずかに9銘柄のみであった。参考までに掲載しておく。

 
図:鋼の鎧を身にまとう「防御力全振り」の中小型成長株

 さらに連載記事「まだある「日本の割安株」…! 絶好調の東証「‟割安”企業一覧」入りを目指す、プロ厳選「珠玉の15銘柄」を一挙公開する!」では、東証PBR改革で有望視される「割安銘柄」についても詳しく紹介しているので、ぜひ参考としてほしい。

大川 智宏(智剣・OskarグループCEO兼主席ストラテジスト)